石油・エネルギー

石油・エネルギー・原発

2019年9月21日 (土)

予見可能性、NHKが追及

 他のマスコミが報道しない事実の追及をNHKがしている。通常のテレビ報道番組では出てこないが、デジタル1番でNHKに合わせ、リモコンのdボタンを押すと地元の天気予報などが出てくる。ここでリモコンの青ボタンを押すと、見出し項目一覧が現れる。それを上下ボタンで選べば、内容の文字が読める。また、ネットでも見ることができる。

 分量が多いので、肝心なところを要約する。取材は「東京電力刑事裁判 取材班」が行っている。37回におよんだ公判からは、これまで知られてなかった”新事実”が次々に明らかになったということである。

⓵茨城県にある日本原子力発電東海第二原発では、東日本大震災が起きる3年前には、巨大津波への対策を進めていた。

⓶東京電力の現場担当者たちは、巨大津波への対策を進める考えで原子力設備をもつ他の4社との会議でその旨を表明していた。

⓷東電の最高意思決定は、いわゆる「ご前会議」で決まる。2008年2月の御前会議で津波の予測と対策案を提出したが、出席していた上司からは、「特に異論はなかった」と報告されていた。ただし経営幹部は、記憶にない、とする。

⓸その後被害を防ぐための予算と完成時期を提出するが、だれがどの場で意思決定するのか、社内で現場と幹部の意思がずれたまま、津波対策の具体化は進まなかった。

⑤日本原電は、国に対して、政府がかかわっていた地震調査会議の出した「長期評価」に基づいてとっていた対策を、他社(東電)との横並び意識から外部に漏れないようにしていた。理由は自治体などからの追及を避けるとか、経産省の意向を無視して独走できないということらしい。

 ここでも「忖度」万能だ。

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2019年9月20日 (金)

予見可能性

 「予見可能性 は、日常使う言葉ではない。塾頭がはじめて知ったのは、昔、炭労争議の裁判で判決に出てきた時ではなかったかとと思う。

高級な法律用語に聞こえたが、文字の意味は「あらかじめ知っていたかどうか」を判断するという程度のことで、深い意味はなさそうだ。

 ところがこの一語が裁判に使われると、「この紋どころが目に入らぬか」というような効果を発揮するから不思議だ。

 福島第1原発事故で、巨大津波に襲われる可能性を予見できたのに、措置を怠ったことが業務上過失致死傷罪に当たるとして、強制起訴されていた東電旧経営幹部3被告に対して、「予見可能性があったと認めることはできない」という判決を東京地裁がくだした。

 東電は、政府の地震調査研究本部の「最大15.7mの津波が原発に襲来する可能性がある」とする試算を08年3月に受け取っており、東電担当者から具体的に敷地が浸水する可能性について報告を受けている。

 判決はそれを指摘しておきながら、「具体性や信頼性が不十分」だから予見することが不可能だった、としている。

 浸水したら何が起きるか、それを防ぐにはどうすべきか、という具体的なことを考えるのは東電である。専門家の指摘に福島県沖を震源地としていないなどを理由に信頼性に疑問を抱くなど、東電幹部が評価すべきことではない。

 1973年79年と2度にわたったオイルショック当時に、東電幹部も在職していたはずだ。石油不足は、当時の電源の主流を占めていた石油(重油)火力からの脱却・多角化が盛んに議論された。

 当然原子力も話題とされたが、すでにそのころ発生していた人為的ミスによる危険とか、事故による放射能被害の大きさから原発慎重論が支配していたことを東電幹部が知らないわけがない。

 上記判決は、全くナンセンスだ。

 これと同様な案件は民事訴訟でも進んでいる。約30件の訴訟のうち9地裁・支部で12件の判決が出た。このうち前橋地裁では予見可能性を認めており、今後まちまちの判断になりそうだ。

 司法が国の責任をどう判断するか。韓国の徴用工問題と性格は違うが、重要なテーマであることには違いない。

 

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2019年9月17日 (火)

トランプ商法

 14日、サウジアラビア東部にある石油施設2カ所が攻撃を受け、黒鉛を上げて炎上する画像がテレビで放映された。攻撃したのは、ドーロン、無人機、巡行ミサイルなど報道によりまちまちで、飛んできた方向も北西方向イランからというが、アメリカは断定を避けており、イラン側も攻撃はしていないという。イエメンのフーシー派は盛んに犯行声明を出すが、目の敵であるはずのアメリカやサウジはそれを否定している。

 最強の軍事力を展開している地帯で、それがわからないはずはない。なんとも奇妙な話である。アメリカがイランと戦争を望むのであれば、イランの犯行と断定すればいいのに、トランプはハメネイ師と話し合いもあるといい始め、イラン側は強くこれを拒否する。

 どうやら、緊張を極限まで高めておいて、話し合いという、北朝鮮でとってきたやり方と似ている。そうすると、アメリカ側の自作自演が疑われるのだが、それでは、塾頭の好まない「陰謀論」になってしまう。

 この地帯には、設備で働く人のため、高層アパート群も立ち並ぶが、居住者はインド人など外国出稼ぎ労働者が住んでおり、メーターの監視などで1日を過ごす仕事を軽蔑するべトウインのサウジ人はいない。

 従ってあまり被害者意識はなく、原油の高騰というプラス面に目が向く。危機意識は金になるのだ。

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2019年9月 6日 (金)

市長お気に入りの電気自動車

 市川市の市長が公用車として、アメリカ製高級電気自動車ステラを導入したことについて批判が多く、ついに断念、リース解約に至ったことが、地方だけでなく全国ニュースになっている。

 これまで本塾で取り上げなかったのは、市長の思惑、政策との関連、高額な費用と車種の選択など、断片的な報道ではわからないことが多かったせいだ。

 村越祐民市長は、共産党を含む野党5党推薦を受けで当選した市長で、塾頭も市内に残る帝国陸軍最古と思われる煉瓦造倉庫を遺跡として活かすという公約を買って一票を投じた人だ。

 排気ガス問題だというが、なぜそれが高級外車導入になるのかが結びつかない。

 市長はもともと電気自動車に関心があり、渡米した際いろいろなメーカーの車に試乗した結果上記車が乗り心地、性能、機能などが最も優れており、これを市長車とすることで宣伝が行き渡って、ごみ収集車など市の管理する車両全体に及ぼせると思ったらしい。

 究極的には、内燃機関車より電気自動車の方がローコストになる。ただし、その電気が原発や石炭火力に頼るようでは放射能や温暖化ガスから解放されない。

 市長車をはじめ、従来はトヨタ車が多かったようだ。トヨタは、燃料電池である水素を動力源とする研究では先んじており、すでに実用化が進んでいる。中国など海外からの引き合いもあるという。

 水素は、太陽光その他の再生可能電源で電気分解して生産できる。設備さえあれば低コストで貯蔵・運搬も可能だ。ネックは、水素スタンドが普及していないことで、単に充電設備を作るだけでいい電気自動車のようにはいかない。

 革新市長なら、なぜより無公害なシステムに迫るトヨタと組むことを考えなかったか。

 トヨタなら市有車採用への便宜を得たり、スタンド用地の斡旋など、様々な具体化へのタイアップができたと思うのだが。

 「燃料電池車なんて馬鹿げてる。」EVで名を馳せたテスラ社CEOイーロン・マスク氏の言葉だという。まさか、これに村越市長が洗脳されたとも思えないのだが、日本のマスコミもここまで掘り下げてほしい。

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2019年7月19日 (金)

大量無差別殺人と武器規制

 京都のアニメ関連会社で放火があり、従業員など74人のうち逃げ遅れた33人が死亡し、35人が重軽傷を負ったということである。

 一人の犯行でこれだけの人数を殺傷したという例は、これまでにあっただろうか。アメリカでは銃による乱射事件頻発を受けで、銃の販売規制を強化すべきだという議論が盛んになった。

 塾頭が訪米中に手にした量販店のチラシに、毎月某日は銃の特売日、お買い得の何割引き商品豊富、などとあるのには驚いた。

 学校で乱射事件があり、大勢の犠牲者が出たが、一度に60人以上の死傷者を出すことはちょっと困難であろう。

 武器はなにも銃に限ったことはない。携行缶に入れたガソリンは立派な武器である。無差別テロでは、多く爆弾が使われる。かつて、秋葉原でトラックの暴走による大量無差別殺人があったが、トラックも使われ方によって武器になる。

 毒物の食品混入という大量殺人は、古くからある伝統的な方策だが、近くはサリン、vxガスから放射能物質など武器の種類は実に多様化した。

 しかし、入手が簡単でこんなに大勢を殺傷できる武器は、ガソリン以外にない。携行缶によるガソリンの販売は、直ちに禁止すべきだ。無人給油所、車のタンクからの抜き取りなどなど困難な問題もあるが、建物が高層化している現在、ガソリンの武器使用禁止の方策を検討する時期に来ているのではないか。

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2019年7月10日 (水)

エネルギー政策も選挙戦から脱落

 今日(7/10)の毎日新聞社説のひとつは「19年参院選 エネルギー政策 脱炭素への道筋が見えぬ」である。その最後の結論部分を引用する。

欧州諸国は石炭火力全廃に向けてエネルギー政策を転換している。欧米金融界は石炭火力関連など温暖化対策に逆行する事業から投融資を引き揚げている。

日本は急速にエネルギー政策の転換に取り組まなければ、海外の投資マネー流出などで経済にも打撃が及びかねない状況だ。与野党は表面的な議論に終始せず、脱炭素社会実現への道筋を示すべきだ。

 本塾は、前々回、選挙戦で外交が全くと言っていいほど政策として示されていない、と指摘したばかりである。エネルギー対策もまた然り。安倍首相が世界各国を歴訪しても日本の政治は日々取り残されていく。その有様は国難と言っていいほどだ。

 引用をさらに続けよう。(その1)

中国メディア・東方網は6月30日、日本で水素電池車の量産が間もなく始まろうとしていることについて「電気自動車EVの発展に力を注いでいるわれわれは道を誤ったのだろうか」とする記事を掲載した。

記事は、EVがいいのか水素電池車がいいのかという議論が絶えない中で、隣国の日本が「まるで飛ぶかのような速さ」で水素電池車の量産段階に入ろうとしているとし、液化水素をエネルギーとして、飲用可能レベルな水のみを排出するというトヨタの水素電池車MIRAIが間もなく量産を開始すると紹介した。

そして、水素電池車の開発は以前より進んでおり、複数の技術がその技術を持ってきたものの、中でもトヨタは先を進んでおり、2014年には最大航続距離500キロのMIRAIを日本国内で発売したと説明。そのころ中国ではまだ「EVをどうやって急発展させていくか」について悩んでいたとしている。

そのうえで、日本企業が水素電池車の開発、生産で世界の先頭を行く状況には、行政による支援が大きく関係しているとし、その例として日本政府が水素・燃料電池戦略ロードマップを打ち出し、2025年までに水素電池車を20万台、30年には80万台にまで増やすことを想定していると紹介した。

記事は、水素電池車への取り組みが急速に進んでいる日本に対し、EVを全力で発展させようとしている中国について「方向性が間違っているのだろうか」と疑問を提起した。そのうえで、両者のどちらがいいか悪いかについては現時点ではまだはっきり言えないとし、少なくとも現状ではEV生産が世界的に大きなトレンドになっていることは間違いないと説明。水素電池車はコストの問題を含めて技術的な課題がまだまだ多いと伝えている。

その一方で、もし技術的なブレイクスルーが実現すれば、水素電池が新エネルギー車として持つ意味は間違いなく高まることになるとし、「恐ろしいのは、日本がすでに量産段階に入ろうとしているなかで、わが国がまだスタートライン付近にいることだ」と指摘した

https://news.livedoor.com/article/detail/16709099/

(その2)

トヨタ自動車は太陽光発電の電力を活用し、水素を製造・貯蔵・供給できる小型の水電解式水素発生充填(じゅうてん)装置「SimpleFuel(シンプルフューエル)」を元町工場(愛知県豊田市)に導入した。同社が2015年に公表した環境目標「トヨタ環境チャレンジ2050」の一つである「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けた取り組みの一環。

シンプルフューエルは工場敷地内にある太陽光で発電した電力を利用して、水の電気分解により低炭素水素を製造し、さらに圧縮・蓄圧した上で、燃料電池(FC)フォークリフトに充填するまでの工程を一貫して対応できる水素ステーション。水素の製造量は最大99Nm3/日(約8.8kg/日)で、FCフォークリフト7台~8台分の充填ができる。(SUISO KEN)

 燃料電池・水素の利用は、塾頭かねてからの持論である。海外の評価が高いのに、自民党が議論を避けているのは、原発再稼働の党是があるからだろう。

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2019年6月 5日 (水)

ウランから水素へ

(NHKニュース)

JR東日本は、燃料電池で走る鉄道車両を開発し、2020年代半ばの実用化を目指すことになりました。

この鉄道車両の動力源は、次世代のクリーンエネルギーとして注目される水素です。屋根の上に水素タンクが設置され、車両の下の部分にある燃料電池で空気中の酸素と反応させて電気をつくり走行します。二酸化炭素は排出しません。

水素を一度満タンにすると、約140キロの走行が可能です。通常の電車と異なり、火力発電所で発電された電力を使わないため、環境にやさしいという特徴があります。

また、架線や変電所も必要ないため、設備の維持コストを減らすことが可能だということです。

 塾頭が最も期待している次世代エネルギーは、水素である。化石燃料(石炭・石油類)の中では、CO₂やSO₂など公害ガス排出が最も少ないメタン(天然ガス)の主成分であり、日本近海の深海に多く堆積するメタンハイドレートはまだ手つかず状態にある。

 それをそのまま燃やせば、少量とはいえ、温暖化ガスが出るし、メタンハイドレートが泡として海面に出てくれば、やはり温暖化ガスになってしまう。

 中国では、電気自動車の開発が他に先行しているというが、それを既存の電源プラグで取り込むのでは、火力発電や原発の電気を使うことになり、完全な再生可能エネルギーにはならない。

 水素は燃やすのではなく、電池として使うのである。太陽光発電で得た電気で水を電気分解して水素を得る。その水素を水にもどす過程で、再び電気が得られるということになる。

 化学反応を効率的に行う触媒、水素の液化、その保管・運搬・補給の施設など何がしかの技術開発が必要であるとしても、実用化には数年あればいい。費用もそうかからないだろう。家庭用燃料電池システムは、電力・ガス・石油等エネルギー関連会社などですでに開発されている。

 前述のように鉄道会社が開発するのであれば、広大にわたる線路上を太陽光パネル設置の空間として利用を考えたらどうか。電車に送る送電線はいらなくなるし、電柱も利用できる。

 これまで、農地の上は作物の生育に影響するというので、パネル設置ができないという考え方だったが、支柱の高さやパネルの幅を工夫することで農産物生育に支障を来たさないということが分かった。

 太陽光発電作り過ぎも水素が解決してくれる。放射能廃棄物の処分場所もない原発に比べれば、前途洋洋だ。

 

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2019年5月21日 (火)

ゴミ分別は役所の仕事に

 役所から、「伐採枝は資源ごみとして〇曜日に」という知らせがきた。今、最も軽いが最も袋が多きくなるのがプラスチックである。これが多すぎて一部は中国に輸出され、それがあまり始めたので不法投棄され、海洋汚染の原因になっているという。

 買い物をすれば、プラスチック容器がついてくる。これが再生できるというので、貼ってある紙をはがしたり、食品などの汚れを水で洗ったり手間をかけて分別していた。

 プラスチックの種類は多い。使えないものは燃やすか埋めるしかない。しかし、使えないプラスチックを燃やす、という処分方法が記事として出てこない。

 伐採枝は、生きているとき温暖化ガスのCO₂を取り込むので、燃やしてその分を排出してもOKのバイオ資源だという説明だ。石油からとれる合成樹脂・プラスチックももとは、大量の酸素を生み出す植物性プランクトンだから、同じではないか、と思うがこれが違う。

 石油は何億年も前から長い期間をかけて生成される。それを一挙に燃やすのでとても追いつかない、という論理になる。

 家庭で分別するのに、袋を何種類つくってもそんなことまで気を配ることは無理。ゴミ収集は、生活ごみとそれ以外に単純化し、それ以上の分別は役所の仕事にしたらどうか。原発再開を考えるより、簡単なことだ。

 

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2019年5月 9日 (木)

イランで得点を(再掲)

 今、トランプがとっている行動により、イランが苦境に立たされている。これは、過去にもあったことで目新しい事件ではない。その時、原油輸出制裁の網をくぐってタンカーを回し、危機を救ったのが日本の企業である。

 その第一船が川崎港に入港したのは、66年も前(1953年)の明日に当たる5月10日である。以下の記事も9年前のものであるが、あえて手を加えずに再掲する。

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 一冊の古い本を引っぱり出してきた。冒頭のグラビア頁に記念写真がある。写るメンバーは鳩山首相の父、若き日の鳩山威一郎氏、鳩山首相のお母さんの父、ブリジストン社長・石橋正二郎氏と夫人つまり鳩山首相の祖父母、ほかに4人関係者がいるが、ソファの中央に座るのは、主賓であるモサデグ・イラン首相の“密使”ホスロプシャヒ氏である。

 場所は東京麻布にある石橋邸の応接室で、昭和27年(1952)3月28日、講和条約が発効しGHQが廃止される1か月前のことらしい。その本の名は『イラン石油を求めて・日章丸事件』読売新聞戦後史班編<昭和戦後史>である。

 なぜそんな本を思い出したかというと、オバマ話し合い路線にもかかわらずイランのウラン濃縮作業が進み、核拡散防止で交渉してきた常任理事国とドイツの6カ国のうち、イランに同情的であったロシアまでイラン制裁に傾き始めたという最近の情勢である。これが約60年前、石油資源国有化でイランが世界から孤立した姿にそっくりなのだ。

 長年イランの石油利権で独占的利益を上げてきたのはイギリスの企業で、英国は国有化に激怒した。軍事力行使に限りなく近い恫喝で、イランの石油を引き取る消費国はなく、イランの石油タンクは満杯となる一方経済制裁で国民生活は苦境に立たされた。

 そんなとき、極秘の使命を帯びて日本にやってきたのが前出のホスロプシャヒ氏で、この密会がきっかけとなり、世界を驚嘆させた日本の出光興産・日章丸による抜け駆け輸入が実現する。日章丸が日本を離れる時には、船長などごくわずかが知るだけで、船員や家族も行き先を知らされていなかった。

 船長なども、途中英海軍に拿捕される覚悟はしていたが、まさか撃沈したり命を取ることまではしないだろうという、不安に満ちたものだった。また、航行中疑念や追尾をさけるため、無線発信をおさえ、やむを得ない連絡には暗号を使うなどスリリングなものだった。

 その経過の詳細はとても紹介しきれないが、日章丸は昭和28年5月10日、製品を満載して川崎に入港、荷揚げを開始した。そして2度目の航海につき、船が目的地アバダンに近づいた時の模様を前掲書が次のように伝えている。

 日章丸がルーカ・チャネルをさかのぼりはじめねと、大きな白いシーツを旗になぞらえて打ち振るもの、口笛と喚声と拍手がイラン側の河岸にこだまし、アバダン製油所が近くになるにつれ、小蒸気船がなん隻も日章丸にまつわるように集まってきて、盛んに汽笛、サイレンを鳴らす。

 石油桟橋には軍楽隊の出迎え、空からは超低空で飛ぶ小型機より、赤い花、黄色い花がばらまかれる。ゲート付近には鈴なりの人、人――。上陸した乗組員には「日本人、英雄」「ジャポン、イデミツ」の声が高まった。さながら日章丸は、経済苦境にあえぐイランにとっての救世主の雄々しい姿だった。

 この間、日本の外交にとってどんな難問が降りかかってくるかも知れない。各国ともそれぞれ国益にどう影響するか固唾をのんで見守るしかない。日本はようやく独立を果たしたばかり、朝鮮戦争はまだ後始末がのこっており、冷戦のまっただ中にある。

 イランの密使・ホスロプシャヒ氏はアメリカ経由でやってきた。CIAや日本の外務省はこのことを承知しているはずだ。欧米各国は、当時残っている各地の石油利権や財産権を侵害されることに反対である。しかしアメリカは、イランが共産化することをより恐れており、また、中東など利権獲得に遅れをとっている地域で、平等な機会が与えられることに反対する理由はなかった。

 だからといって、国が英国の反感を買うようなことはできない。こんなことで日本におはちがまわってきたのではないか。もちろん日本政府も同様である。日章丸帰着の頃イギリスのエリザベス女王の戴冠式があり、皇太子(今上天皇)が天皇の名代として参列する、戦後初の晴ればれしい外交舞台が待ってる。

 当然、政府内でイラン油輸入に賛否両論があったが、外務省の空気は「イランと英国の抗争に、なにも我が国の民間が行う合法的な行為をやめさせることはない」という、内心はイラン油輸入を応援する考えだった。ただ、外交上は、英国の意図に反しないよう巧妙な慎重さを演じていた。

 その後、イランにクーデターが起き、アメリカの支援するパーレビー王朝となるが、次ぎにホメイニ革命が起き、アメリカ・イランの決定的対立の根源であるアメリカ大使館占拠事件などが起きる。もともとこの地域は、イギリスとロシアが領域を2分しあうなど、他の中東地域同様に欧米やロシアに対する不信感が根強い。

 日本は、アフガンなどと同様、イランを孤立から救いイラン国民と協力態勢がとれる唯一の国といっていい。イランは、核開発問題でIAEA(国際原子力機関)に協力する姿勢も見せている。12月に同機関事務局長に就任したばかりの天野之弥氏が、核拡散防止と核平和利用の両面からどういう展開を見せるか。

 期待された鳩山外交は「政治とカネ」などの陰にかくれ、遅々として進まない。父方、母方両お爺さん時代に負けない自主的で性根のすわった外交を駆使し、内閣の得点をあげてみたらどうか。 

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2019年4月17日 (水)

入札と国防

 海上保安庁の巡視船などに使う燃料の一般競争入札をめぐっては、NHKの取材で、おととしまでの2年間、非公開の予定価格と全く同じ金額で落札される100%落札が、相次いでいたことが分かり、海上保安庁が内部調査したところ、入札の参加業者が、非公開の予定価格を事前に把握できたとみられることが明らかになりました。

NHKが報道している。

 昔のある話を思い出した。当事者は海上保安庁でなく北海道の航空自衛隊である。取引に関係していた人の告白をまた聞きしたもので、真偽のほどはわからない。

 北海道では、領空・領海侵犯で緊急発進が増え、一時的に燃料在庫が不安になることがある。一般競争入札では極端な安値を示してくる業者もあるが、このような時、追加注文をしても即応できないことが多い。北海道に製油所を持つ大手2社ならば数時間以内に補給してもらえる。納入業者を特定したいのは国の安全に支障を来たさないようにするためだ。ルールはルールとして守りたいが、臨機応変の措置も認めてほしい。

というものである。

 

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