中近東

2018年10月24日 (水)

身代金、建前と本音

シリア入国後に行方不明になり、解放情報が伝えられたフリージャーナリストの安田純平さんについて、時事通信は、在英のシリア人権監視団が23日、解放に際し「多額の身代金が支払われた」と主張していると伝えた。

信ぴょう性は不明としながらも、人権監視団のアブドルラフマン代表が「身代金は日本ではなく、カタールが支払った。記者の生存や解放に尽力したという姿勢を国際的にアピールするためだ」との見方を付け足している。

さらに、実際の引き渡しは4日ほど前にシリア領内でトルコの仲介により、トルコと関係の深い非シリア人武装組織に引き渡されたという。

日本政府は、テロリストに身代金を払わないというのが公式の立場で、菅官房長官がTV画面でこのコメントを何度も繰り返している。

時事通信の報道が真実であるとすれば、日本外交もなかなかやるなといった感じになる。北朝鮮関連の対応とは雲泥の差だ。つまり本音と建て前を使い分ける老練さを手にしており、先週書いた「幼稚はやめました」に近づいたと考えていいのだろう。

前述の報道に出てくる国名で注目しなければならないのが、カタールとトルコだ。

カタールはペルシャ湾岸の小国だが独立国としての気位が高く、アラブ情報の発信元として権威のある通信社・アルジャジーラが本拠を置く。日本は、石油の輸入・真珠の栽培などを通じて友好関係が続いている国だ。

また、トルコの日本に対する印象は、1890年(明治23年)のトルコ軍艦の遭難を和歌山・串本の住民が身を挺して救援した縁がいまだに忘れられていないという親密さに支えられている。

その両国は、シリア情勢がイスラエルとのからみでイランを支持しているとアメリカ(トランプ)側から見られ、敵対関係にある。シーア派と戦争も辞さないサウジは、カタールと断交状態だ。日本もそれに同調するよう持ち掛けられているが、安易にそれに乗るようなことはしていない。

多分、異なる名目で日本から両国に資金提供を約束し、またはその増額を持ち掛けていたしとても不思議はない。「テロリストに身代金を支払うことはない」――これも見識でり、そこは、あ・うんの呼吸である。

2014年起きた後藤健二氏人質事件と大きく違うのは、政府がトルコに仲介を依存すると条件交渉になるとして、もっぱらヨルダンに救出の本拠を置いたことだ。この時は「建前」が優先して、救出に全力を尽くしたとはいい難い結果を生んだ。

国民の生命を守るのが国の役割という安倍首相の口ぐせにいつわりがないとすれば、無事救出が「本音」の部分になる。

内政ではあまり使ってほしくないが、外交では本音と建て前の微妙なバランスの中で使い分ける、つまり忖度が必要である。優秀といわれる外務官僚には無理な注文かもしれないが、本音の文書は破棄し、建前の文書だけに改ざんすることではないことだけはお断りしておく。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年10月22日 (月)

サウジの説明でウソ拡大

毎日新聞(10/22)は共同電でこう伝える。

(前略)高官の説明によると、サウジ当局はカショギ氏にサウジ帰国を説得するため治安・情報当局者15人をトルコのイスタンブールに派遣。ムハンマド皇太子の側近で情報当局高官のアハメド・アシリ氏がチームを編成した。

郊外の隠れ家にカショギ氏を拘束して説得し、応じなければ解放する計画だったという。だが総領事館を訪れたカショギ氏が説得に応じず大声を上げたため、パニックに陥った当局者らが黙らせようと絞め技のように首を抱え、口を覆ったところ、死亡してしまったという。

当局者らは隠蔽を図るため、遺体をじゅうたんで包んで車で運び出し、地元協力者に渡して遺棄させた。また当局者の一人がカショギ氏の服や時計を身に着けて総領事館を出て偽装工作。上層部には、虚偽の報告をしていたとしている。トルコ治安当局がメディアにリークした事件当時の現場の音声記録では、サウジ側がカショギ氏を拷問し、遺体もばらばらにしたとされる。(共同)

昨日までは「殴り合い」ではなかったのか。説得して応じなければ解放する計画になぜ15人も工作員を派遣したのか。死体を地元協力者に渡して処理させたのであれば、トルコ官憲は当然地元協力者の氏名を明らかにするよう要求する。日本でいえば死体遺棄罪容疑だ。

ウソを重ねれば深みにはまちどり。わかりきっていることなのに、相手がかつてイスラム教最大の帝国を築き、サウジもその支配下に置いたオスマントルコであれば、そう簡単に許してもらえないよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年10月16日 (火)

中東の混とん状態

日本経済新聞10/16

【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアの記者がトルコのサウジ総領事館で行方不明になっていた事件で、複数の米メディアは15日(日本時間16日未明)、サウジ政府が従来の立場を覆し、館内での殺人があったことを認める検討をしていると報じた。

(中略)CNNテレビによると、サウジは政府批判を繰り返していたジャマル・カショギ記者を本国に連れ戻す目的でおこなわれた尋問中に、同氏が死亡したことを認める準備をしている。作戦は許可なく不透明な形で実行され、作戦にかかわった者に責任があると結論づける可能性があるという。一方、状況は流動的で、変化する可能性があるとも指摘した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)も同日、サウジが政府の直接の責任を否定する形で、総領事館内の殺害を認める声明を出すことを検討していると報じた。発表時期は未定で、声明を出すかどうかの決断も下していないという。(後略)

この話、一度記事にしようと思ったがあまり非常識すぎる話なので続報を待った。どうやら本当らしい。サウジ政府の責任にしない意向というが、こんな無茶なことを指示できるのは実権を握ってやりたい放題のことをしているムハンマド皇太子しかない。

世界の石油を支配したアメリカとサウジの蜜月時代も、トランプ大統領でさえついていけない皇太子の傍若無人ぶりで断ち切れることになるだろう。

サウジは国内にメッカ・メジナのイスラム教聖地があるため、国や宗派の別なくイスラム教徒の任務とされる聖地巡礼に便宜をはかり、9割を占めるスンニ派の盟主の地位も維持してきた。

様相が変わってきたのは、やはり大国であるシーア派のイランと激しく対立するようになったことである。イエメンの内戦に空爆で介入したり、同盟関係にあったシーア派の多いカタールと国交断絶するなど、イラン敵視を鮮明にした。

これは、シリアでIS掃討に加わって勢力を増してきたイランがイスラエルを脅かすことを心配しているイスラエルべったりのトランプにとっても朗報である。新鋭戦闘機などの大量武器輸出も視野に入れてきた。

ところが事件が起きたのが、やはりイスラム大国のトルコである。トルコはNATO加盟国でありヨーロッパに近い。サウジの挙動を容認できるはずがない。もう一つの大国、エジプトもシナイ半島の国内問題で手いっぱいだろう。

こうなると国連に頼るしかないが、今の安保理にその能力があるとは思えない。泥沼は果てしなく続くのか。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年5月17日 (木)

国連でアメリカ孤立

(2018/5/15・日本経済新聞)

【ニューヨーク=高橋里奈】国連安全保障理事会は14日、イスラエルの米大使館のエルサレム移転に抗議するデモ隊とイスラエル軍の衝突を受け、15日午前(日本時間同日深夜)に緊急会合を開くことを決めた。安保理の非常任理事国であるクウェートがアラブ諸国を代表して議長国のポーランドに要請。クウェートは衝突で50人以上のパレスチナ人が死亡したとして、中東和平問題を緊急に話し合う必要があると判断した。

パレスチナのマンスール国連大使は14日、「(デモ隊に武力を行使した)イスラエル軍の行為を最も強い言葉で非難する」と記者団に語り、「米国が違法に、挑発的に、単独で大使館を移転したことと同時に虐殺が起きた」として米国を非難した。

マンスール氏はパレスチナ市民に対するイスラエル軍の暴力は「国際法違反だ」と国連本部で訴え、「イスラエルが即座に虐殺を停止し、責任者を正義の場に引き出すことを望む」と強調した。(後略)

2日前のニュースだが“エエッ”と思ったので、今後の成り行きを見ながら国連での成り行きを注目したい。

かつて、パレスチナ市民にとって頼りにしていたのは大国であるエジプトやサウジであった。しかし何度にも及んだ中東戦争で力の差を見せつけられ、もっぱらなだめ役に回ってしまった。

サウジは、石油価格の低迷でアメリカの厄介になるような始末で、怨敵シーア派イランを牽制するため、アメリカのすることに口出しできない。

そんなところへ小国クエートが名乗り出るとは思わなかった。湾岸戦争の際は、イラクの侵略を先陣を切って反撃、力で追い返してくれたのがアメリカだ。その恩義を忘れているわけではあるまい。

多くあるイスラム教国の中で、あえて国連提訴を買って出た真相は不明だ。しかしこのことは、中東からISを放逐したからそれで終わりでないことを示している。必ず第2、第3のISが現れ、各地のテロが途切れなく続くことを示唆しているのではないか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年5月 7日 (月)

レバノン選挙に注目

連休明けは国内外共にビッグニュース山盛り……、と予測していた。しかし今日は明けたばかり、スポーツ・芸能のほかは話題にとぼしく、おまけに新聞休刊日である。ブログのネタはどうしてもネットに頼ることになる。そこで見つけたのがこのニュース。レバノンの議会選挙だ。

【ベイルート時事】レバノンで6日、国民議会(一院制、定数128)選挙が9年ぶりに行われた。レバノンはサウジアラビアとイランの「代理戦争」の舞台で、互いが支援勢力をてこ入れする中、イランが後ろ盾のイスラム教シーア派組織ヒズボラが躍進するかどうかに関心が集まっている。

 即日開票され、早ければ7日に大勢が判明する見通し。多くの宗教・宗派が共存する「モザイク国家」のレバノンでは権力均衡を図るため、議席配分はイスラム教徒64、キリスト教徒64などとあらかじめ決められている。

 首相はサウジが支援するイスラム教スンニ派から選ぶのが慣例で、ハリリ首相が続投する公算が大きい。ただ、有権者には汚職や既存政治への不満も強く、事前の予想ではハリリ氏陣営は議席を減らし、ヒズボラが勢力を伸ばす可能性が高いとみられている。

IS掃討で中東から戦火が遠のいたかの感があるものの、トランプ米大統領のイスラエルびいきはヨーロッパ諸国から見ても突出している。ムスリムの猛反発するエルサレムへの大使館移転声明に始まり、ホメイニ革命以来の宿敵イランが、シリアでIS掃討作戦で勢力を伸ばし、イスラエルへの直接脅威になると見なすようになった。

イランの核開発疑惑は、北朝鮮ほど進んでいないものの、米英仏独中露6か国協議で凍結させた。アメリカは、これが守られていないとして、経済制裁強化に熱心だが、他の各国は同調していない。ただ、イスラエルだけはアメリカの主張を受け、施設への直接空爆までほのめかしている。イスラエルは隠れた核保有国だが、これは不問にするという不公正さもまかり通っている。

もう一つ、サウジで皇太子が実権を握ってからの変化である。シーア派との抗争で国交断絶とか戦争への加担など、イランを脅威の対称とするようになった。膨大な石油収入に支えられ、これまでのイスラムの盟主というおおらかさがなくなった。

レバノンは、イスラエルの北、地中海に接する小国で、これまでも同国にシーア派の反イスラエル勢力、ヒズボラがゴラン高原ににらみを利かしていた。しかし紛争は南部のゴザ地区の方が多く、これにはエジプト・シナイ半島からスンニ派原理主義組織・ムスリム同胞団が潜入しパレスチナ人を支援していた。それがエジプトのクーデターにより、現・シシ政権が弾圧してから小康を得ている。

そのような時、レバノンで9年ぶりの国政選挙である。イラン系が議席をのばすことになれば新たな火種になりかねない。まず、イスラエルの自制が第一。そして大国が、中東から手を引き住民の協議にゆだねる以外に、和平を招く途はないのではないか。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年4月13日 (金)

シリア化学兵器使用、真相は

シリアでアサド政権が反政府勢力に化学兵器を使ったとする映像がテレビに流れる。子供の頭に水を掛けて洗い流したり、おびえてふるえているような画面だ。主に反体制派地域で救助活動を行うシリア民間防衛隊(ホワイトヘルメッツ)などは塩素ガス弾が使われた疑いがあり、49人が死亡したと発表したという裏付けにしたものだろう。

トランプ氏がシリア情勢で重大な決断を下すと表明した48時間の期限はとっくに過ぎた。続けて「ロシアよ、準備しておけ。新型で賢いミサイルが飛んでくるぞ」(時事)とツイッターで言い直し、背後にいるとしているロシアを牽制した。北朝鮮へのブラフとそっくりだ。

本塾がロシアの肩を持つ理由は全くない。ただ、マティス米国務長官は「まだ情報を分析中」と消極的なことや、EUもアメリカ側につきながらいまひとつ懐疑的なことから、湾岸戦争の時、アメリカがクエート駐在大使の娘をイラク侵攻による犠牲者に仕立てた映像で世界を欺いた事件を思い出す。

陰謀論嫌いの塾頭が、あえてそれを持ち出す最大の理由は、アサド政権が国民である反対勢力に化学兵器を使えばますます政権への反感を高めるだけで、メリットがないし、ロシアも国際世論を敵に回すような危険を冒してまでアサド政権の行動を容認するわけがないとと思うからである。

ベッドの上にあたかも安置されたような弾頭の写真も不自然だし、シェルターに避難した大勢の市民が死亡したというのも理屈に合わない。ロシアが開発した猛毒の薬品におそわれたはずの在英二重スパイのロシア人も回復・存命している。ロシア人外交官を大量追放したのは、何だったのだろうか。

ヨーロッパも冷戦復活指向派と、慎重派がせめぎ合っているように見える。トランプの人騒がせ外交に世界が振り回されないようになる日は、いつの日かやってくるだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年1月29日 (月)

タリバン・テロ

最近、大規模な爆弾テロのニュースが少なくなってきたように思える。殊にヨーロッパなどで猛威を振るった「ISが犯行声明」というケースは、IS殲滅報道を裏付けるように減ってきた。たまに出てくるが、シリア・イラクに本拠を置いた本体からの指示でなく、離れたところの「自称」ISだろう。

そこへ、かつてテロ発祥の本場のようにいわれていたアフガニスタンで、同国のタリバンが犯行声明を出すテロのニュースが飛び込んできた。

【カブール=共同】アフガニスタンの首都カブールで二十七日、爆弾を積んだ救急車を使った自爆テロがあり、保健省によると少なくとも九十五人が死亡、百六十三人が負傷した。反政府武装勢力タリバンが犯行声明を出した。在アフガン日本大使館によると、日本人が巻き込まれたとの情報はない。昨年五月以来、アフガンでは最悪のテロ被害となった。

爆発があったのは政府施設や各国大使館、病院が立ち並ぶ中心部で、検問所が多数設置され、治安当局が厳重に警戒していた。内務省などによると、検問所は許可を得た車両だけが通過できるが、救急車は搬送中を装い、最初の検問所を通過。二つ目の検問所で警察官に身分証の提示などを求められた際に自爆した。(後略)

カブールでは昨年五月に大規模な爆弾テロがあり、百五十人以上が死亡している。今月二十日には地元系の高級ホテル「インターコンチネンタルホテル」が武装集団に襲撃され、十八人が死亡、やはりタリバンが犯行声明を出している。

タリバンといえば、ニューヨーク・ワシントンなどへの同時多発テロを企画したとして、追いかけていたウサマビンラディンを、当時アフガン政権を支配していたタリバンがかくまって引き渡しを拒否したため、米軍を中心とする多国籍軍の攻撃を受けてタリバン政権は壊滅させられた。

その後、別の政権にとって変わったが、バシュトン人を中心とするタリバンの勢力は根強く一掃にはほど遠い現状だ。厳格なイスラム原理主義を信奉し、ウサマビンラディンは、ここを根城に国外の同志を集めてアルカイダを組織したとされる。

××のアルカイダと称する組織が各地でテロを指導したが、ウサマビンラディンが米軍に殺されたあとカリスマ性が薄れたのか、次第にそれがISに取って代わった。

回りくどくなったが、タリバンはアメリカにとってどうしても復活させたくない目の敵である。アフガン戦争で大きな犠牲を払ったこともあり、現政権に取って代わることは絶対に許せない。

そのために、現政権への莫大な援助資金を出しており、日本はこれに次ぐ資金提供国だ。タリバンはISのようにテロを輸出するというようなことは聞いたことがない。あくまでも地元に根ざした行動のように見える。

大公使館の多い地域でのテロとなっているが、あくまでも現政権に対する攻撃でその転覆を目指しているのだろう。しかし、支援国への激しい抗議がないとは言えない。日本政府はどれだけこれを意識しているか、このニューからは見えてこない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月22日 (金)

日本もトランプ離れ?

 安倍ちゃん本当?――信じられない。国連安全保障理事会は18日、パレスチナ問題を巡る公開会合を開き、エルサレムをイスラエルの首都と正式認定したトランプ米政権を批判し、認定の撤回を求めた決議案を否決した。15理事国のうち議長国日本を含む14カ国が賛成したが、常任理事国の米国が拒否権を行使した。

トランプが大使館移転などを例の調子でひけらかした直後、菅官房長官が日本は、トランプ発表のように大使館を移転しない、と即座に記者会見で答えたことを塾頭は評価したが、マスコミは「アメリカの首都決定に対する態度があいまい」などとしていた。

エルサレムは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教それぞれの聖地が存在する。そこをイスラエルが占領し、うち続く紛争の原点になっていた。エルサレムを国際的な監視の元で安定させることでパレスチナに平和を構築することは、オバマ政権の努力もあっていい方向に向かっていた。

トランプがこれを一挙に崩そうとした背景は、ほとんどが国内問題だがここでは触れない。安保理決議はアメリカの拒否権で葬り去られたが、同じ決議を全加盟国が参加する国連総会にかけることになっている。ここでは、拒否権が利かない。しかし強制権も無いのでアメリカは従う義務がない

 総会決議が確実化する中で、トランプは「賛成投票を投じた国をすべて調査、アメリカが10億ドルを超えるような援助資金を提供しているような国が賛成したら、その額をすべて引き揚げる」と脅迫している。

 安保理で見せた『良識』をひっくり返すことは、安倍ちゃんといえどもできないだろう。「日本は変わったんだ」と思いたい。またアメリカの援助を受けているイスラム国家が賛成から反対に鞍替えすることも考えられない。

 イスラム圏にとっては、どんな経済制裁を受けようと核武装を一切放棄する気のない北朝鮮以上の覚悟があるはずだ。

 残るのは、アメリカが北朝鮮以上に孤立し、トランプが大恥をかくだけである。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月 7日 (木)

中東に移ったトランプラッパ

10日前に「中東情勢の様変わり」と題してこう書いた・

今月下旬に入って21日そして前回と、中東で地殻変動が起きていることを書いた。イスラエルと中東諸国の間で、第一次中東戦争が始まってから来年で70年、アラブ対イスラエルそしてユダヤ対イスラムの対立の構図が、すっかり様相を変えたように見える。

その理由は、ISがイラク・シリアで拠点を失ったこと、ロシアがイラン、トルコなどと組んでシリアを中心に各勢力協議の上和平ブロック構築に乗り出したこと、パレスチナ・イスラエル間は、パレスチナ側での内部対立も解け、小康状態が続いていることがある。

また、イスラエルの膨張に歯止めをかける最大の勢力サウジが、国王から皇太子に実権が移行し、これまでにない変貌を遂げようとしていること、そしてエジプトもシナイ半島での大規模テロ対策で手一杯なことなどで、アメリカが下手な手出しをして泥沼戦争にはまる余地はないと観察した。

それが、トランプ大統領のイスラエル大使館エルサレム移転発言で、消えかかった火に油を注ぐようなことをしでかした。アメリカは、米議会がイスラエル寄りの決議をしても、90年代から首都の問題は最終的地位を当事者の協議によって決める、という案で収まっている。

トランプによる変身は、氏の娘婿でユダヤ教徒のジャレッド・クシュナー氏(大統領上級顧問)の影響などとも言われるが、どうもこのトランプ・ラッパにも、うさんくさい政略宣伝のにおいがする。

アジア歴訪では具体的成果を見せられず、ロシア疑惑でも窮地に立たされている。おりしも、ドーピング疑惑の影響により、ロシアが冬季オリンピックから締め出されるというニュースが突如クローズアップされた。

塾頭は、イスラエル首都の問題も一連の「ラッパ」に過ぎないと見ている。株価は暴落したが、市場筋も長続きしないという観測だ。戦争や平和をおもちゃ代わりに使ってほしくない。

ただ、安倍首相が「日本大使館の移転計画はない」としたことは、ポチにしては珍しく、評価しておかなければならない。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年11月27日 (月)

中東情勢の様変わり

  今月下旬に入って21日そして前回と、中東で地殻変動が起きていることを書いた。イスラエルと中東諸国の間で、第一次中東戦争が始まってから来年で70年、アラブ対イスラエルそしてユダヤ対イスラムの対立の構図が、すっかり様相を変えたように見える。

イスラエルにとっての強敵は、パレスチナ解放同盟を支える隣の大国・エジプトであった。同じスンニ派の盟主・サウジアラビアは取り巻くイスラム国に石油資金で支えた。

4次にわたる中東戦争の結果は、エジプトがイスラエルに歯がたたないことを知って妥協の道をさぐり、変わって先頭に立ったのがイラクとシリアのバース党政権である。しかし、イラクはアメリカの侵攻で、シリアは反政府組織の武力反乱により牙を抜かれてしまった。

そしてISの勃興、世界を震撼させたテロリズムは、やがて世界を敵にまわした結果壊滅へ。ロシアのシリア介入と平定に向かった動きは、前述の通りだが、イスラエル建国に反抗するパレスチナ人に、イスラム・スンニ派の周辺諸国が加担して起きた当初の中東紛争の影は、も早見えにくくなった。

シリアの平定にロシアが成功すれば、シーア派・イランの立場が強くなる。塾頭は、ユダヤ対イスラム・スンニ派の戦いが、スンニ派対シーア派の対立激化に取って代わるのではないかという予想をしてみたのが前回である。

また、サウジでは皇太子への権力移行で、長年続いてきた王族路線が劇的に変化する兆しがあり、先が読めなくなったことも書いた。最大の経済的利害関係を持つのがアメリカである。トランプ政治の動きも不透明さに輪を掛けている。

エジプトの近況については、触れてこなかった、というより複雑過ぎて書けなかったのだ。そこに起きたのが24日のシナイ半島北部に起きた死傷者400数十人という同国最大のテロ事件である。

イスラム神秘主義信者の多いモスクが標的となり、犯人は武装軍団でISの旗を持っていたという。シナイ半島にはISに忠誠を誓った分派が存在するとされ、これまでも度々テロ実行宣言をしていた。

シリア・イラクから逃れてきたIS残党、或いはシナイ半島で元々勢力を持っていたムスリム同胞団が変貌したものとする見解があるが、塾頭はいずれも的はずれではないかと思う。そういう分子がいたとしてもテロ犯の主流とは思えない。

ISが本拠としていたシリア・イラクからは、いくつかの国を経由しないと入り込めない。また、IS残党がわざわざシナイ半島に来てテロを起こす理由にもとぼしい。

ムスリム同胞団も、スンニ派でイスラム原理主義をかざすが、もともとエジプトに基盤をおく「穏健派」とされていた。シナイ半島から隣接するガザ地区のムスリムを救援するため、地下道を通して食料や医療品の人道支援を続けたといわれ、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人からも厚く信頼されている。

エジプトでは、ジャスミン革命からの連鎖により独裁を続けたムバラク大統領が失脚した。そのあと行われた選挙で、ムスリム同胞団の広い支援を受けたムルシー政権が誕生した。ところが1年後には軍部のクーデターにより早くも倒壊、ムスリム同胞団も非合法化された。

その同胞団は、シナイ半島に逃げ込んだとされている。この度の組織的なテロを起こしたのは誰か、報道からは正体が分からない。エジプトのクーデターを起こしたのは、軍部とともに「世俗派」が加わったともされる。

テロ実行犯は、イスラム過激派ではなく、現在の権力を力で倒そうとする軍内部の反対派がそれを利用して引き起こしているのではないかとにらんでいる。

なぜならば、発生した地域が現軍事政権の強い地盤であることに加え、同国の収入を大きく支えているピラミッドなどへの外国人観光客が治安悪化のため激減、政権基盤を揺るがしかねない実情が生じている。いずれにしても情報が少ないので分からないことだらけだ。

こうして見ると、イスラム教最大勢力のスンニ派を率いる大国、エジプト、サウジともにまとまらない勢力となった。中東のイスラエル対アラブの対立が、イスラムの中のスンニ派対シーア派の衝突になるという見方もあるが、このままロシアのペースが効を奏し、長い紛争疲れからゆるい共存関係を探る時代になるのではないか――

これが塾頭の希望的楽観論である。

 

| | コメント (2) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧