中近東

2019年7月11日 (木)

「イラン戦争」の後方支援

 8日に書いた「外交に無縁な選挙戦」で、「参院選の各党の議論や政策を見ていて気付くことは、外交問題に一切触れていないことである。他の各国の例から見ても、やや不思議な感がする。」と書いた。

 またまた訂正!<(_ _)>。自民党は、公約集の最初の項目にあげていたのだ。

 当時、NHKのネットによる要約で見てもそのように見えないし、それに対する野党の鋭い対案や反論も、公開討論などで表面化しなかったので誤解していた。

 自民の外交政策の重点は、安保連携深化においており、共産党の「廃棄」をのぞけば、他党は辺野古埋め立て反対などを言うだけで、基本的な外交姿勢の議論にはなっていない。

 この点、駐米イギリス大使がトランプ大統領を公電に「無能」と表現したことで辞任に追い込まれたことや、EU脱退が政治選択の中心になっているような欧州諸国と様相を異にする。

 アメリカは、イラン沖の航行安全を目指す各国による「有志連合」による軍事制圧を目指している。イラク戦争突入の時と同じ構図だ。もちろんそうなれば日本に強圧がかかるだろう。

 その時、易々として自衛隊による「後方支援」などに応ずるのだろうか。国民の声が反映されず、安倍ペースに持っていかれる可能性が大である。

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2019年7月 9日 (火)

イラン情勢「目には目を」

 イランは、2015年の核合意でウランの濃縮度を3.67%以下と定められていたが、アメリカがその合意を一方的に破棄、経済制裁を始めた。そのため、ホルムズ海峡などで武力行使寸前の異常な緊張が高まっている。

 イランも濃縮度の上限を無視した行動開始を宣言、互いに譲る気配はない。お互いに戦争は好むところでないとするがトランプは、イラク戦争時の強硬派を幹部に据えている。イランの革命防衛隊も宗教指導者を守る臨戦態勢のもとにある。

 イランが強くなることに危機感を抱いているのがイスラエルで、トランプの支持基盤・ユダヤ系アメリカ人の存在もある。

 こう見ると仕掛けているのはアメリカで、イランは守勢に立たされているように見えるがイランの闘志もなかなかのものである。

 その根底にあるのは、「目には目を、歯には歯を」というハンムラビ法典に書かれた因果応報の精神である。旧約聖書を信奉する民族に共通する。

 ユダヤ、イスラム、アングロサクソン(プロテスタント・原理主義)がそれにあたる。つまり、アメリカ、イスラエル、イランはそんな関係になってしまう。

 「和をもって貴し」の日本人には、ちょっとなじめない世界だ。

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2019年6月14日 (金)

ホルムズ海峡とトンキン湾

 昨夕から今朝にかけ「ホルムズ海峡」題した本塾の過去記事に、6件のアクセスがあった。今回、同海峡で日本がかかわる2隻のタンカーが何ものからかの攻撃を受け、火災被害を受けたということに対し、何か書こうと思ったが、誰が仕掛けたのか、目的は何かについて皆目わからない。

【ワシントン共同】ポンペオ米国務長官は13日、国務省で記者会見し、イラン沖のホルムズ海峡付近で起きた日本などのタンカー2隻への攻撃について「イランに責任がある」と名指しで非難した。さらに安倍晋三首相のテヘラン訪問中にタンカーが攻撃されたことに触れ、最高指導者ハメネイ師が「安倍首相の外交努力を拒否し、日本のタンカーを攻撃することで日本を侮辱した」と批判した。

 イラン政府は13日、タンカー攻撃への関与を否定したが、トランプ政権が早くもイランの関与を断定したことで、緊張緩和に向けた動きが失速する恐れがある。

 そこに出てきたのが、上の記事である。ホルムズ海峡の制海権を握っているのは、周辺国ではなく、アメリカ海軍である。被害を受けた船舶の乗組員をいち早く救助したのが、米軍艦であることを見ても明白だ。米艦は、タンカーが被爆する前から同じ海域にいたとすれば、ミサイルの軌道を把握していたとしてもおかしくない。

 それならば、どこから発射されたか即座にわかるはずだが、「イランに責任がある」という言い回しは、その原因を指摘する意味にも取れ、米国側を含めて発射元を特定したとは言いきれない表現になっている。

 イランの軍隊は、「革命防衛軍」でホメイニ革命以来、宗教指導者・ハメネイ師の指揮下にある。アメリカの経済制裁で石油の輸出が減退し、危機的な状況にある時期に同海峡通過を不安定にすることを指示するとは考えられないし、「日本を侮辱する」理由もメリットもない。

 アメリカがそんなに愚かだとは思いたくないが、ベトナム戦争突入の口実づくりにした「トンキン湾事件」のことを思い出さずにはいられない。

 

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2019年6月 1日 (土)

八百万神・日本

 八百万神(やおろずのかみ)は、日本の神の数である。天体から山や海、動植物から路傍の石にまで、すべての存在に神が宿すと考える。

 それでは多すぎるとして、江戸時代に編み出したのが「七福神」だ。次に並べてみる。(『神社から読み解く信仰の日本史』参照)

  1. 恵比寿(日本土着)
  2. 大黒天(ヒンズー教由来)
  3. 弁財天(ヒンズー教由来)
  4. 毘沙門天(仏教由来)
  5. 布袋(仏教由来)
  6. 福禄寿(道教由来)
  7. 寿老人(道教由来)

 キリスト教・ユダヤ教・イスラム教などの一神教は、すべての存在を創造したのが唯一の「神」であって、複数の存在は許されない。根本は旧約聖書に置いている。その一神教同士の戦争は歴史上絶えることがなく、今でも続いている。

 本来一神教から見て、多神教徒は背教として抹消されなくてはならない存在である。手の施しようのない中東の一神教同士の争いに、八百万の神が存在する国から安倍首相が仲介を買って出るなどはということは、歓迎と困惑相なかばするのではないか。

 

 

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2019年5月29日 (水)

仲介は「イラン」(前回の続き)

【カイロ時事】イランのメディアによると、イラン外務省報道官は28日、安倍晋三首相が6月中旬ごろで調整している同国訪問について、「実現すれば両国関係の転換点になる」と述べた。安倍氏は米国とイランの緊張悪化を受けて仲介役を演じたい考えだが、同報道官は日本など友好国の意見に耳を傾ける方針は強調しつつも、「現状は仲介を受け入れる段階ではない」と強調した。 【時事通信社】

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2019年5月28日 (火)

首相のイラン行きトランプが賛成

 3回前は、イラン・アメリカと安倍外交の幼稚さ、頼りなさから、複雑な中東も問題に手を突っ込んでやけどをしないのか、という危惧の念を記事にした。ところが、トランプはあれほどイランに露骨な敵意というか、むしろ戦意といってもいいほどのブラフをかけているさ中、安倍のイラン行きに対して、不快感どころか首相のイラン訪問を期待するとまで言い始めた。

 俗に「よくいうよ」の変身ぶりである。以下、毎日新聞(5/28・東京)の引用である。

(前略)歴代米政権の中でも突出した親イスラエル政策をとるトランプ政権が、イラン敵視の姿勢を先鋭化させてきた。オバマ前大統領のレガシー(政治遺産)を否定する思惑もあり、昨年5月にイラン核合意からの離脱を表明した。

 ただ、トランプ氏は「戦争は望まない」のが本音だ。経済制裁や軍事的圧力を通じ、イランを再び交渉のテーブルにつかせることを目標としている。イランの体制転換を公言するボルトン氏ら強硬派と一線を画し、最近は好戦的なボルトン氏の言動にいら立っていると伝えられる。

 核合意からの離脱を自ら宣言した以上、トランプ氏は他の核合意参加国(英仏独中露)への仲介は頼みにくいのが実情だ。日本を介せば、自身の立場を傷つけることなく、打開策が見いだせるとの期待があるとみられる。【鈴木一生、ワシントン高本耕太】

 どうやら、この話はトランプ来日前から日米外交筋できていた話のようだ。白い八の字髭のボルトン氏は、ブッシュのイラク侵攻を日本に支持を迫ったあの顔だ。その彼が、トランプの強硬姿勢を支えるため途中から起用された。

 本塾は、カテゴリーに「中近東」や「石油エネルギー」を設けているように、イランはパーレビ―王朝の時代からホメイニ革命、テヘラン米大使館の学生占拠、オイル・ショック、そして戦争と逐一観察を続けてきた経験が根にある。

 そのような歴史の中から、トランプが取ろうとしているハチャメチャ行動を説明することはできない。たしかに、日本は仲介を買って出る位置にはいる。そのこと自体は賛成なのだが、これをアメリカべったりの安倍政権ではなく、野党第一党の立憲民主あたりが、自民に対抗する外交政策として掲げる器用さがあって然るべきだったといえよう。

 

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2019年5月25日 (土)

イラン対アメリカに安倍外交

 今日の毎日新聞が次のように伝える。

  1. 2015年にイランの核開発を制限するため、同国と主要6カ国(米英仏独露中)が結んだ。米国は昨年5月に離脱を表明。経済制裁を再発動したうえ、今月に入ってイラン周辺への空母や戦略爆撃機の派遣を決めている。
  2. 首相は今月16日、急きょ来日したイランのザリフ外相と会談し、中東情勢に懸念を示すとともに、核合意の履行継続を求めた。
  3. 安倍晋三首相は来月12~14日の日程でイランを訪問する検討に入った。
  4. 首相は昨24日、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と会談。上記日程は通告済み。27日に予定しているトランプ米大統領との首脳会談を踏まえ、最終的に判断。
  5. イランは核合意履行の一部停止を宣言。ホルムズ海峡付近で米国の同盟国・サウジアラビアのタンカーが受けた「破壊工作」についてイラン側の関与が疑われるなど、軍事的な緊張が高まっている。 

 メディアは、今日夕方羽田に到着するトランプ大統領を追って、宮中晩さん会や相撲見物などの報道を集中させる間に大変なことが決まる。その間(もう決っているかもしれない)、首相のイラン行きの可否や対イランへの姿勢などに対する水面下のすり合わせがあるのだろうか。

 中東和平・イスラエルとの角逐、サウジ等スンニ派各国との断交その他、イランは世界の国際問題を左右しかねない火種の中に置かれている。拉致さえ言っていればよかった、北朝鮮とは違う。首相が飛んで火に入る夏の虫にならなければいいのだが。

 イランから見る過去の日本については、5月8日付「北との首相対話」、5月9日付「イランで得点を(再掲)」参照。

 

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2019年5月20日 (月)

所を選ばない「IS」

 エジプトの首都カイロ近郊で19日、観光バスを狙ったとみられる爆発があり、BBCなどによると少なくとも17人が負傷したと伝えられる。ISを名乗るメンバーの犯行と見られている。

 アフガニスタン、パキスタン、スリランカなど各方面からISの活動が伝えられ、地域ごとに独自の「州」を作ったり、生死不明だった宗教指導者バグダディーの生存も明言する。

 ISすなわちイスラミック・ステートは、アメリカとその連合国の猛攻により、シリア・イラクに存在できず消滅したことになっているので、「ISを名乗るメンバー」などと注釈をつけている。

 アラブ語でどう表現するかは知らないが、英語でいう「ステート」は、必ずしも国民国家を指すとは限らない。共通の宗教・民族の集団があれば特定の場所に定住しなくとも「ステート」は成立する。

 原理主義的なムスリムにとって唯一無二の権威は「神」だけで、大統領や組織化された国家ではない。だから、自爆テロに国民国家的な指揮・指導の必要はなく、宗教指導者が示す宗教指針さえあればいいのだ。

 単一民族で、特別の教義を持たない多神教の日本は、明治維新で廃藩置県を経て欧米並みの国民国家とすることに、ほとんと抵抗がなかった。万世一系とされる天皇の存在が、国民国家成立にプラスしたとも思われる。

 それだけに、ISの存在を過去のものとしてしまいがちだが、なかなかそんなものではない。

 

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2019年4月10日 (水)

自衛隊エジプト派遣

引用2

【カイロ時事】エジプト東部シナイ半島北部にある検問所近くで9日、自爆テロが起き、警官や市民3人を含む計7人が死亡、少なくとも26人が負傷した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行を主張した。

 シナイ半島では北部を中心に、IS傘下の武装勢力の活動が活発で、治安部隊などを狙ったテロがたびたび起きている。シナイ半島でエジプト軍とイスラエル軍の停戦維持を監視する「多国籍軍・監視団(MFO)」司令部には、今月19日から陸上自衛官2人が派遣される予定。【時事通信社】

 

Tbsニュース2/10)政府は今回、隊員の安全は確保できると判断したことから、近く、派遣する方針を正式に決定することが分かりました。実現すれば、安保関連法で可能となった国連主導以外の治安維持活動などに参加する「国際連携平和安全活動」で初のケースとなります。

 本塾がかねてより指摘している通り、シナイ半島は決して安定などしていない。むしろ火薬庫といっていいエリアだ。イスラエル北部のゴラン高原は、米・トランプ大統領が国連決議に反してイスラエルの肩をもって支配地拡大を目指し、イランをバックにつけた軍事組織ヒズボラと一触即発状態にある。

 シナイ半島の多国籍監視団(MFO)は、かつてイスラエルとエジプトが戦い、半島のエジプト帰属を確認することで平和条約が結ばれた。以来、ムスリム・スンニ派の大国である同国とサウジアラビアは、国家権力に批判的なIS攻撃でイスラエルと同盟国であるかのような関係になっている。

 従って、本来なら上記監視団などは役割を終えて、すでに撤退していていい存在だ。それなのに、ISを名乗る自爆テロなどが北部で頻発する。もともと、イスラム原理主義穏健派のイスラム同胞団がイスラエル・ゴザ地区支援の根拠としていた地域である。選挙で政権を得た同胞団だか、たちまち国軍のクーデターで今の軍事政権になった。

 軍事政権は、同胞団をテロ組織に指定した。日本政府の「隊員の安全は確保できる」という判断と、タイミングを失している多国籍軍参加の理由は何だろう。

 強行採決した安保法案の実績づくりと、イスラエルは支援したいが、世界中に広がる米軍撤退もしたいトランプから、ノーベル賞ではないが電話による要請があったのかも知れない。

 

 

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2019年3月27日 (水)

アメリカの賢いポチ

 トランプ米大統領がイスラエルのゴラン高原の主権を承認したことで、国連で米国が孤立している。26日に開かれた安全保障理事会では、理事国の大多数がイスラエルによるゴラン高原占領を国際法違反だと主張し、米国のイスラエル主権承認を批判した。


 トランプの頼みを受けて、ノーベル平和賞の立派な推薦状を出したということが暴露され、アメリカのポチぶりに世界を苦笑させた安倍首相だが、外交政策では、そうとばかり言えないことがこのところ起きている。


 経済問題で、アメリカのTPP脱退に関わらず、そのまま既定方針をつらぬき、中国の一帯一路政策に理解を示したり、地球温暖化に関する地球温暖化に対するパリ協定支持をを堅持するなど、やや独自路線を模索しているな、という感じはしていた。


 ところが、紛争含みの国際紛争にかかわる問題で、冒頭のように国連の立場を明確に支持した。このところ、核関連のイラン制裁に加わらなかったり、イスラエルの大使館移転をイスラムの聖地でもあるエルサレムに移転することに同調しなかったりなど、トランプが支持母体として特に重視するユダヤ人対策では、国連決議やEUの動向をを優先させ、明らかにアメリカと対立する姿勢を示している。


 今回のゴラン高原問題では、性格上解釈で妥協する余地がなく、トランプの反感を買う危険さえ踏み込んだ判断をしている。あらかじめ了解を取ってあるとか、何かの裏取引に利用しているとまでは考えたくないが、世界で紛争の種をまくようなアメリカの政策に、ノーを突き付けるのは当然だ。


 ポチはポチでも、賢いポチもある。それならば本塾として反対する理由はない。


 

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