中近東

2019年5月20日 (月)

所を選ばない「IS」

 エジプトの首都カイロ近郊で19日、観光バスを狙ったとみられる爆発があり、BBCなどによると少なくとも17人が負傷したと伝えられる。ISを名乗るメンバーの犯行と見られている。

 アフガニスタン、パキスタン、スリランカなど各方面からISの活動が伝えられ、地域ごとに独自の「州」を作ったり、生死不明だった宗教指導者バグダディーの生存も明言する。

 ISすなわちイスラミック・ステートは、アメリカとその連合国の猛攻により、シリア・イラクに存在できず消滅したことになっているので、「ISを名乗るメンバー」などと注釈をつけている。

 アラブ語でどう表現するかは知らないが、英語でいう「ステート」は、必ずしも国民国家を指すとは限らない。共通の宗教・民族の集団があれば特定の場所に定住しなくとも「ステート」は成立する。

 原理主義的なムスリムにとって唯一無二の権威は「神」だけで、大統領や組織化された国家ではない。だから、自爆テロに国民国家的な指揮・指導の必要はなく、宗教指導者が示す宗教指針さえあればいいのだ。

 単一民族で、特別の教義を持たない多神教の日本は、明治維新で廃藩置県を経て欧米並みの国民国家とすることに、ほとんと抵抗がなかった。万世一系とされる天皇の存在が、国民国家成立にプラスしたとも思われる。

 それだけに、ISの存在を過去のものとしてしまいがちだが、なかなかそんなものではない。

 

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2019年4月10日 (水)

自衛隊エジプト派遣

引用2

【カイロ時事】エジプト東部シナイ半島北部にある検問所近くで9日、自爆テロが起き、警官や市民3人を含む計7人が死亡、少なくとも26人が負傷した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行を主張した。

 シナイ半島では北部を中心に、IS傘下の武装勢力の活動が活発で、治安部隊などを狙ったテロがたびたび起きている。シナイ半島でエジプト軍とイスラエル軍の停戦維持を監視する「多国籍軍・監視団(MFO)」司令部には、今月19日から陸上自衛官2人が派遣される予定。【時事通信社】

 

Tbsニュース2/10)政府は今回、隊員の安全は確保できると判断したことから、近く、派遣する方針を正式に決定することが分かりました。実現すれば、安保関連法で可能となった国連主導以外の治安維持活動などに参加する「国際連携平和安全活動」で初のケースとなります。

 本塾がかねてより指摘している通り、シナイ半島は決して安定などしていない。むしろ火薬庫といっていいエリアだ。イスラエル北部のゴラン高原は、米・トランプ大統領が国連決議に反してイスラエルの肩をもって支配地拡大を目指し、イランをバックにつけた軍事組織ヒズボラと一触即発状態にある。

 シナイ半島の多国籍監視団(MFO)は、かつてイスラエルとエジプトが戦い、半島のエジプト帰属を確認することで平和条約が結ばれた。以来、ムスリム・スンニ派の大国である同国とサウジアラビアは、国家権力に批判的なIS攻撃でイスラエルと同盟国であるかのような関係になっている。

 従って、本来なら上記監視団などは役割を終えて、すでに撤退していていい存在だ。それなのに、ISを名乗る自爆テロなどが北部で頻発する。もともと、イスラム原理主義穏健派のイスラム同胞団がイスラエル・ゴザ地区支援の根拠としていた地域である。選挙で政権を得た同胞団だか、たちまち国軍のクーデターで今の軍事政権になった。

 軍事政権は、同胞団をテロ組織に指定した。日本政府の「隊員の安全は確保できる」という判断と、タイミングを失している多国籍軍参加の理由は何だろう。

 強行採決した安保法案の実績づくりと、イスラエルは支援したいが、世界中に広がる米軍撤退もしたいトランプから、ノーベル賞ではないが電話による要請があったのかも知れない。

 

 

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2019年3月27日 (水)

アメリカの賢いポチ

 トランプ米大統領がイスラエルのゴラン高原の主権を承認したことで、国連で米国が孤立している。26日に開かれた安全保障理事会では、理事国の大多数がイスラエルによるゴラン高原占領を国際法違反だと主張し、米国のイスラエル主権承認を批判した。


 トランプの頼みを受けて、ノーベル平和賞の立派な推薦状を出したということが暴露され、アメリカのポチぶりに世界を苦笑させた安倍首相だが、外交政策では、そうとばかり言えないことがこのところ起きている。


 経済問題で、アメリカのTPP脱退に関わらず、そのまま既定方針をつらぬき、中国の一帯一路政策に理解を示したり、地球温暖化に関する地球温暖化に対するパリ協定支持をを堅持するなど、やや独自路線を模索しているな、という感じはしていた。


 ところが、紛争含みの国際紛争にかかわる問題で、冒頭のように国連の立場を明確に支持した。このところ、核関連のイラン制裁に加わらなかったり、イスラエルの大使館移転をイスラムの聖地でもあるエルサレムに移転することに同調しなかったりなど、トランプが支持母体として特に重視するユダヤ人対策では、国連決議やEUの動向をを優先させ、明らかにアメリカと対立する姿勢を示している。


 今回のゴラン高原問題では、性格上解釈で妥協する余地がなく、トランプの反感を買う危険さえ踏み込んだ判断をしている。あらかじめ了解を取ってあるとか、何かの裏取引に利用しているとまでは考えたくないが、世界で紛争の種をまくようなアメリカの政策に、ノーを突き付けるのは当然だ。


 ポチはポチでも、賢いポチもある。それならば本塾として反対する理由はない。


 

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2018年10月24日 (水)

身代金、建前と本音

シリア入国後に行方不明になり、解放情報が伝えられたフリージャーナリストの安田純平さんについて、時事通信は、在英のシリア人権監視団が23日、解放に際し「多額の身代金が支払われた」と主張していると伝えた。

信ぴょう性は不明としながらも、人権監視団のアブドルラフマン代表が「身代金は日本ではなく、カタールが支払った。記者の生存や解放に尽力したという姿勢を国際的にアピールするためだ」との見方を付け足している。

さらに、実際の引き渡しは4日ほど前にシリア領内でトルコの仲介により、トルコと関係の深い非シリア人武装組織に引き渡されたという。

日本政府は、テロリストに身代金を払わないというのが公式の立場で、菅官房長官がTV画面でこのコメントを何度も繰り返している。

時事通信の報道が真実であるとすれば、日本外交もなかなかやるなといった感じになる。北朝鮮関連の対応とは雲泥の差だ。つまり本音と建て前を使い分ける老練さを手にしており、先週書いた「幼稚はやめました」に近づいたと考えていいのだろう。

前述の報道に出てくる国名で注目しなければならないのが、カタールとトルコだ。

カタールはペルシャ湾岸の小国だが独立国としての気位が高く、アラブ情報の発信元として権威のある通信社・アルジャジーラが本拠を置く。日本は、石油の輸入・真珠の栽培などを通じて友好関係が続いている国だ。

また、トルコの日本に対する印象は、1890年(明治23年)のトルコ軍艦の遭難を和歌山・串本の住民が身を挺して救援した縁がいまだに忘れられていないという親密さに支えられている。

その両国は、シリア情勢がイスラエルとのからみでイランを支持しているとアメリカ(トランプ)側から見られ、敵対関係にある。シーア派と戦争も辞さないサウジは、カタールと断交状態だ。日本もそれに同調するよう持ち掛けられているが、安易にそれに乗るようなことはしていない。

多分、異なる名目で日本から両国に資金提供を約束し、またはその増額を持ち掛けていたしとても不思議はない。「テロリストに身代金を支払うことはない」――これも見識でり、そこは、あ・うんの呼吸である。

2014年起きた後藤健二氏人質事件と大きく違うのは、政府がトルコに仲介を依存すると条件交渉になるとして、もっぱらヨルダンに救出の本拠を置いたことだ。この時は「建前」が優先して、救出に全力を尽くしたとはいい難い結果を生んだ。

国民の生命を守るのが国の役割という安倍首相の口ぐせにいつわりがないとすれば、無事救出が「本音」の部分になる。

内政ではあまり使ってほしくないが、外交では本音と建て前の微妙なバランスの中で使い分ける、つまり忖度が必要である。優秀といわれる外務官僚には無理な注文かもしれないが、本音の文書は破棄し、建前の文書だけに改ざんすることではないことだけはお断りしておく。

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2018年10月22日 (月)

サウジの説明でウソ拡大

毎日新聞(10/22)は共同電でこう伝える。

(前略)高官の説明によると、サウジ当局はカショギ氏にサウジ帰国を説得するため治安・情報当局者15人をトルコのイスタンブールに派遣。ムハンマド皇太子の側近で情報当局高官のアハメド・アシリ氏がチームを編成した。

郊外の隠れ家にカショギ氏を拘束して説得し、応じなければ解放する計画だったという。だが総領事館を訪れたカショギ氏が説得に応じず大声を上げたため、パニックに陥った当局者らが黙らせようと絞め技のように首を抱え、口を覆ったところ、死亡してしまったという。

当局者らは隠蔽を図るため、遺体をじゅうたんで包んで車で運び出し、地元協力者に渡して遺棄させた。また当局者の一人がカショギ氏の服や時計を身に着けて総領事館を出て偽装工作。上層部には、虚偽の報告をしていたとしている。トルコ治安当局がメディアにリークした事件当時の現場の音声記録では、サウジ側がカショギ氏を拷問し、遺体もばらばらにしたとされる。(共同)

昨日までは「殴り合い」ではなかったのか。説得して応じなければ解放する計画になぜ15人も工作員を派遣したのか。死体を地元協力者に渡して処理させたのであれば、トルコ官憲は当然地元協力者の氏名を明らかにするよう要求する。日本でいえば死体遺棄罪容疑だ。

ウソを重ねれば深みにはまちどり。わかりきっていることなのに、相手がかつてイスラム教最大の帝国を築き、サウジもその支配下に置いたオスマントルコであれば、そう簡単に許してもらえないよ。

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2018年10月16日 (火)

中東の混とん状態

日本経済新聞10/16

【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアの記者がトルコのサウジ総領事館で行方不明になっていた事件で、複数の米メディアは15日(日本時間16日未明)、サウジ政府が従来の立場を覆し、館内での殺人があったことを認める検討をしていると報じた。

(中略)CNNテレビによると、サウジは政府批判を繰り返していたジャマル・カショギ記者を本国に連れ戻す目的でおこなわれた尋問中に、同氏が死亡したことを認める準備をしている。作戦は許可なく不透明な形で実行され、作戦にかかわった者に責任があると結論づける可能性があるという。一方、状況は流動的で、変化する可能性があるとも指摘した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)も同日、サウジが政府の直接の責任を否定する形で、総領事館内の殺害を認める声明を出すことを検討していると報じた。発表時期は未定で、声明を出すかどうかの決断も下していないという。(後略)

この話、一度記事にしようと思ったがあまり非常識すぎる話なので続報を待った。どうやら本当らしい。サウジ政府の責任にしない意向というが、こんな無茶なことを指示できるのは実権を握ってやりたい放題のことをしているムハンマド皇太子しかない。

世界の石油を支配したアメリカとサウジの蜜月時代も、トランプ大統領でさえついていけない皇太子の傍若無人ぶりで断ち切れることになるだろう。

サウジは国内にメッカ・メジナのイスラム教聖地があるため、国や宗派の別なくイスラム教徒の任務とされる聖地巡礼に便宜をはかり、9割を占めるスンニ派の盟主の地位も維持してきた。

様相が変わってきたのは、やはり大国であるシーア派のイランと激しく対立するようになったことである。イエメンの内戦に空爆で介入したり、同盟関係にあったシーア派の多いカタールと国交断絶するなど、イラン敵視を鮮明にした。

これは、シリアでIS掃討に加わって勢力を増してきたイランがイスラエルを脅かすことを心配しているイスラエルべったりのトランプにとっても朗報である。新鋭戦闘機などの大量武器輸出も視野に入れてきた。

ところが事件が起きたのが、やはりイスラム大国のトルコである。トルコはNATO加盟国でありヨーロッパに近い。サウジの挙動を容認できるはずがない。もう一つの大国、エジプトもシナイ半島の国内問題で手いっぱいだろう。

こうなると国連に頼るしかないが、今の安保理にその能力があるとは思えない。泥沼は果てしなく続くのか。

 

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2018年5月17日 (木)

国連でアメリカ孤立

(2018/5/15・日本経済新聞)

【ニューヨーク=高橋里奈】国連安全保障理事会は14日、イスラエルの米大使館のエルサレム移転に抗議するデモ隊とイスラエル軍の衝突を受け、15日午前(日本時間同日深夜)に緊急会合を開くことを決めた。安保理の非常任理事国であるクウェートがアラブ諸国を代表して議長国のポーランドに要請。クウェートは衝突で50人以上のパレスチナ人が死亡したとして、中東和平問題を緊急に話し合う必要があると判断した。

パレスチナのマンスール国連大使は14日、「(デモ隊に武力を行使した)イスラエル軍の行為を最も強い言葉で非難する」と記者団に語り、「米国が違法に、挑発的に、単独で大使館を移転したことと同時に虐殺が起きた」として米国を非難した。

マンスール氏はパレスチナ市民に対するイスラエル軍の暴力は「国際法違反だ」と国連本部で訴え、「イスラエルが即座に虐殺を停止し、責任者を正義の場に引き出すことを望む」と強調した。(後略)

2日前のニュースだが“エエッ”と思ったので、今後の成り行きを見ながら国連での成り行きを注目したい。

かつて、パレスチナ市民にとって頼りにしていたのは大国であるエジプトやサウジであった。しかし何度にも及んだ中東戦争で力の差を見せつけられ、もっぱらなだめ役に回ってしまった。

サウジは、石油価格の低迷でアメリカの厄介になるような始末で、怨敵シーア派イランを牽制するため、アメリカのすることに口出しできない。

そんなところへ小国クエートが名乗り出るとは思わなかった。湾岸戦争の際は、イラクの侵略を先陣を切って反撃、力で追い返してくれたのがアメリカだ。その恩義を忘れているわけではあるまい。

多くあるイスラム教国の中で、あえて国連提訴を買って出た真相は不明だ。しかしこのことは、中東からISを放逐したからそれで終わりでないことを示している。必ず第2、第3のISが現れ、各地のテロが途切れなく続くことを示唆しているのではないか。

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2018年5月 7日 (月)

レバノン選挙に注目

連休明けは国内外共にビッグニュース山盛り……、と予測していた。しかし今日は明けたばかり、スポーツ・芸能のほかは話題にとぼしく、おまけに新聞休刊日である。ブログのネタはどうしてもネットに頼ることになる。そこで見つけたのがこのニュース。レバノンの議会選挙だ。

【ベイルート時事】レバノンで6日、国民議会(一院制、定数128)選挙が9年ぶりに行われた。レバノンはサウジアラビアとイランの「代理戦争」の舞台で、互いが支援勢力をてこ入れする中、イランが後ろ盾のイスラム教シーア派組織ヒズボラが躍進するかどうかに関心が集まっている。

 即日開票され、早ければ7日に大勢が判明する見通し。多くの宗教・宗派が共存する「モザイク国家」のレバノンでは権力均衡を図るため、議席配分はイスラム教徒64、キリスト教徒64などとあらかじめ決められている。

 首相はサウジが支援するイスラム教スンニ派から選ぶのが慣例で、ハリリ首相が続投する公算が大きい。ただ、有権者には汚職や既存政治への不満も強く、事前の予想ではハリリ氏陣営は議席を減らし、ヒズボラが勢力を伸ばす可能性が高いとみられている。

IS掃討で中東から戦火が遠のいたかの感があるものの、トランプ米大統領のイスラエルびいきはヨーロッパ諸国から見ても突出している。ムスリムの猛反発するエルサレムへの大使館移転声明に始まり、ホメイニ革命以来の宿敵イランが、シリアでIS掃討作戦で勢力を伸ばし、イスラエルへの直接脅威になると見なすようになった。

イランの核開発疑惑は、北朝鮮ほど進んでいないものの、米英仏独中露6か国協議で凍結させた。アメリカは、これが守られていないとして、経済制裁強化に熱心だが、他の各国は同調していない。ただ、イスラエルだけはアメリカの主張を受け、施設への直接空爆までほのめかしている。イスラエルは隠れた核保有国だが、これは不問にするという不公正さもまかり通っている。

もう一つ、サウジで皇太子が実権を握ってからの変化である。シーア派との抗争で国交断絶とか戦争への加担など、イランを脅威の対称とするようになった。膨大な石油収入に支えられ、これまでのイスラムの盟主というおおらかさがなくなった。

レバノンは、イスラエルの北、地中海に接する小国で、これまでも同国にシーア派の反イスラエル勢力、ヒズボラがゴラン高原ににらみを利かしていた。しかし紛争は南部のゴザ地区の方が多く、これにはエジプト・シナイ半島からスンニ派原理主義組織・ムスリム同胞団が潜入しパレスチナ人を支援していた。それがエジプトのクーデターにより、現・シシ政権が弾圧してから小康を得ている。

そのような時、レバノンで9年ぶりの国政選挙である。イラン系が議席をのばすことになれば新たな火種になりかねない。まず、イスラエルの自制が第一。そして大国が、中東から手を引き住民の協議にゆだねる以外に、和平を招く途はないのではないか。

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2018年4月13日 (金)

シリア化学兵器使用、真相は

シリアでアサド政権が反政府勢力に化学兵器を使ったとする映像がテレビに流れる。子供の頭に水を掛けて洗い流したり、おびえてふるえているような画面だ。主に反体制派地域で救助活動を行うシリア民間防衛隊(ホワイトヘルメッツ)などは塩素ガス弾が使われた疑いがあり、49人が死亡したと発表したという裏付けにしたものだろう。

トランプ氏がシリア情勢で重大な決断を下すと表明した48時間の期限はとっくに過ぎた。続けて「ロシアよ、準備しておけ。新型で賢いミサイルが飛んでくるぞ」(時事)とツイッターで言い直し、背後にいるとしているロシアを牽制した。北朝鮮へのブラフとそっくりだ。

本塾がロシアの肩を持つ理由は全くない。ただ、マティス米国務長官は「まだ情報を分析中」と消極的なことや、EUもアメリカ側につきながらいまひとつ懐疑的なことから、湾岸戦争の時、アメリカがクエート駐在大使の娘をイラク侵攻による犠牲者に仕立てた映像で世界を欺いた事件を思い出す。

陰謀論嫌いの塾頭が、あえてそれを持ち出す最大の理由は、アサド政権が国民である反対勢力に化学兵器を使えばますます政権への反感を高めるだけで、メリットがないし、ロシアも国際世論を敵に回すような危険を冒してまでアサド政権の行動を容認するわけがないとと思うからである。

ベッドの上にあたかも安置されたような弾頭の写真も不自然だし、シェルターに避難した大勢の市民が死亡したというのも理屈に合わない。ロシアが開発した猛毒の薬品におそわれたはずの在英二重スパイのロシア人も回復・存命している。ロシア人外交官を大量追放したのは、何だったのだろうか。

ヨーロッパも冷戦復活指向派と、慎重派がせめぎ合っているように見える。トランプの人騒がせ外交に世界が振り回されないようになる日は、いつの日かやってくるだろう。

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2018年1月29日 (月)

タリバン・テロ

最近、大規模な爆弾テロのニュースが少なくなってきたように思える。殊にヨーロッパなどで猛威を振るった「ISが犯行声明」というケースは、IS殲滅報道を裏付けるように減ってきた。たまに出てくるが、シリア・イラクに本拠を置いた本体からの指示でなく、離れたところの「自称」ISだろう。

そこへ、かつてテロ発祥の本場のようにいわれていたアフガニスタンで、同国のタリバンが犯行声明を出すテロのニュースが飛び込んできた。

【カブール=共同】アフガニスタンの首都カブールで二十七日、爆弾を積んだ救急車を使った自爆テロがあり、保健省によると少なくとも九十五人が死亡、百六十三人が負傷した。反政府武装勢力タリバンが犯行声明を出した。在アフガン日本大使館によると、日本人が巻き込まれたとの情報はない。昨年五月以来、アフガンでは最悪のテロ被害となった。

爆発があったのは政府施設や各国大使館、病院が立ち並ぶ中心部で、検問所が多数設置され、治安当局が厳重に警戒していた。内務省などによると、検問所は許可を得た車両だけが通過できるが、救急車は搬送中を装い、最初の検問所を通過。二つ目の検問所で警察官に身分証の提示などを求められた際に自爆した。(後略)

カブールでは昨年五月に大規模な爆弾テロがあり、百五十人以上が死亡している。今月二十日には地元系の高級ホテル「インターコンチネンタルホテル」が武装集団に襲撃され、十八人が死亡、やはりタリバンが犯行声明を出している。

タリバンといえば、ニューヨーク・ワシントンなどへの同時多発テロを企画したとして、追いかけていたウサマビンラディンを、当時アフガン政権を支配していたタリバンがかくまって引き渡しを拒否したため、米軍を中心とする多国籍軍の攻撃を受けてタリバン政権は壊滅させられた。

その後、別の政権にとって変わったが、バシュトン人を中心とするタリバンの勢力は根強く一掃にはほど遠い現状だ。厳格なイスラム原理主義を信奉し、ウサマビンラディンは、ここを根城に国外の同志を集めてアルカイダを組織したとされる。

××のアルカイダと称する組織が各地でテロを指導したが、ウサマビンラディンが米軍に殺されたあとカリスマ性が薄れたのか、次第にそれがISに取って代わった。

回りくどくなったが、タリバンはアメリカにとってどうしても復活させたくない目の敵である。アフガン戦争で大きな犠牲を払ったこともあり、現政権に取って代わることは絶対に許せない。

そのために、現政権への莫大な援助資金を出しており、日本はこれに次ぐ資金提供国だ。タリバンはISのようにテロを輸出するというようなことは聞いたことがない。あくまでも地元に根ざした行動のように見える。

大公使館の多い地域でのテロとなっているが、あくまでも現政権に対する攻撃でその転覆を目指しているのだろう。しかし、支援国への激しい抗議がないとは言えない。日本政府はどれだけこれを意識しているか、このニューからは見えてこない。

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