中近東

2019年10月20日 (日)

パクスアメリカーナの終焉

日仏、イラン金融支援

イラン、サウジに接近

 上が今日の毎日新聞1面トップ記事見出し、下が同紙国際面トップ記事の見出しである。

 世界の軍事・経済を一手に支配してきたアメリカが、ついにここまで落ち込み、だれも予想しなかったような大転換が今始まろうとしていることを示す記事だ。

 パクスアメリカカーナはいつからか、を特定するのは困難であるが、中東関連に限れば1947年に米系メジャーズの合弁会社アラムコのサウジ進出と1954年イラン進出以来、つまり第2次大戦を経て世界の石油資源独占体制を確立した時期に重なる。

 本塾もたびたび触れてきた。イランはホメイニ革命があり、米大使館を長期間学生に占拠されるという屈辱を受けて以来、不倶戴天の敵である。

 イラクとは、反イランで一時同盟関係にあったが湾岸戦争以来、イラクを壊滅に追い込み、ISがイラク・シリアの混乱に乗じて勢力を持つとこの対策のため、引くに引けなくなった。

 この間隙をついて、イランの革命防衛隊が着実に勢力を伸ばし、核開発能力を有していることも、イスラエルにとってもっとも警戒すべき相手国になった。

 米欧とイランの6か国で核兵器抑止の条約があったのを、トランプが一方的に破棄、厳しい経済制裁とペルシャ湾で軍事力展開をする目的で同志国を募るなど、一触即発の状態であった。

 その中での、日仏のイラン金融支援は、アメリカの政策に真っ向から対立し、イランを力づける。

 もう一つの記事、サウジはイスラム教聖地メッカ・メジナを領土内に置き、つねにイスラム・スンニ派の盟主として振るまってきた。

 それに異を唱えるのがシーア派のイランである。この両派の対立に妥協の道はない。つねに戦争の危機をはらんでおり、イエメンでは両派の武力抗争のさなかにある。

 アメリカは、それを利用して旧来から密接な同盟国であるサウジに肩入れし、イランをけん制してきた。

 その、イランがとサウジと接近というのは、両国ともアメリカの力を見くびった、あるいはアメリカから得るものは何もない、ということが露見し始めたということか。

 日本も、いろいろ考えなくてはならない時期に来ている。

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2019年10月12日 (土)

手におえないトルコ

 3回前に米軍のシリア撤退で、アメリカや日本に「そうするとトルコがシリアでIE壊滅で活躍したクルド族がトルコの攻撃を受け、せっかく取り戻したこの地域の和平が台無しになる」、という反対論があることを紹介した。

 塾頭は、トルコ国内のクルド族の独立志向をけん制する必要があるにしろ、弱体とはいえアサド政権下にあるれっきとした国家である。そう露骨なことはするまい、と思っていた。

 ところがトルコは、それを待っていたかのように国境を侵し、米軍去った後のクルドを攻めて死傷者まで出している。

 この攻撃を協議するため国連安保理は、臨時の会合を開いた。

 トルコの軍事作戦を懸念する点では一致したが軍事作戦中止については温度差が浮き彫りになった。

 会合を招集した英国やフランスなどはトルコを強く非難した。ヨーロッパ6か国代表は、地域の安定を脅かすトルコに軍事作戦の停止を求めて声明を発表。

 トルコの軍事作戦は、トランプ大統領の黙認や同意の結果だとの非難を意識してか、米国もトルコの軍事作戦を支持しないとの立場を示した。

 こういった、国連や各国の反応の鈍さは、わかっていたものの「やっぱり」である。本塾は、昔から親交のある日本が間に立てないのかといった書き方をしたが、取り消す。

 日本に、トルコを相手にするような能力はない。かつてのオスマン帝国は、アラブから地中海を取り巻くような巨大イスラムの盟主であった。黒海ではロシア艦隊と覇権を争い、近くはキプロスの半分を勢力圏に置いてギリシャと対峙し、一方でNATO加盟国になるなど、日本の手におえるような相手ではない。

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2019年10月 9日 (水)

米軍シリア撤退反対社説(毎日)

 日本のオピニオンリーダーとしては、なんとも不可解な社説である。多くの情報を整理・分析してその中からより正確な真相に迫り、読者にアピールするのが社説の役割だ。

 毎日の今日の第一社説のタイトルは、「米軍のシリア撤収方針 地域の危険招く無責任さ」である。

 要旨は、アメリカのIS掃討作戦でシリアのクルド族が地上軍として加わり、壊滅状態に追い込んだのに、米軍が撤退すると、国内にクルド族をかかえ、その独立志向(または自治権拡大)になやむトルコから越境攻撃され、米国の盟友が危機に陥る、というものである。

 さらに、IS戦闘員が復活したり、米軍の後ろ盾を失ったクルド人勢力が、ロシアやイランの支援があるアサド政権に接近、反米勢力を拡大させることになりかねない、という理由を挙げる。

 同じ新聞の国際面トップに、ワシントン特派員から送られた、米軍撤収、共和からも批判 シリア北部「クルドへの裏切り」、と題する記事がある。

 米国民や野党が、トランプ大統領の人気取りのために、これまで払った犠牲や戦費を台無しにしかねないような撤退に反対するのはわかる。

 撤退には、周到な環境整備や関係各国との合意を作っておくことも当然なことで、アメリカ国民が、傀儡政権のためにシリアやアフガン、イランからの早期撤退に反対しているわけではない。むしろ逆であろう。

 毎日社説は、ワシントン発の記事をもとに作ったのではないと思うが、「仮にこうなればこう」という話をつけたしただけ。

 クルド族が住む地域は、イラン・シリア・イラク・トルコ等にまたがっており、独立国を持たない最大の民族とされてきた。差別・貧困・弾圧などから解放されるため、自治権拡大への念願が強く所属国との抗争が続いていた。

 中東問題は、かつてはイギリス・フランスが手を汚し、そして現代はアメリカが取って代わっている。複雑化している中東諸情勢の中で、問題解決のカギを握るイラン・トルコは、日本は歴史的に友好関係にある。

 中東和平構築のために何ができるか、日本政府がアメリカのポチから脱却できる最大のチャンスであるというような社説であってほしかった。

 

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2019年9月28日 (土)

深夜のマラソン

 陸上の世界選手権第1日がカタールの首都・ドーハで行われ、異例の深夜帯にスタートした女子マラソンは谷本観月(24=天満屋)が2時間3909秒で日本人最高の7位でフィニッシュ。日本女子では2大会ぶりの入賞を果たした。

 日本時間では、ゴールが今日28日の朝、8時過ぎで現地は深夜の2時台となる。カタールはペルシャ湾のサウジ側沿岸にある面積が秋田県程度の王国である。

 ドーハには、中東の有力通信社として世界から認められているアルジャジーラも存在する。隣接するバーレーン島の王国とともに昔から交易で栄え、石油の利益で国家基盤が支えられている。

 イランとサウジアラビア、そしてアメリカの介入で揺れ動き、戦争の危機が伝えられる昨今、そのようなことになれば国の存亡にかかわるのが両国だ。

 ホルムズ海峡が封鎖されれば、最大の影響を受ける国となる。にもかかわらず、アメリカが呼び掛けるペルシャ湾有志連合に加わる候補国として、名が上がってこない。

 というのは、王族がスンニ派であっても、国民や出稼労働者にイランの奉ずるシーア派が多く、両派に一方的な加担をすると国が持たなくなるのだ。

 昼間は40度を超す酷熱、マラソンが行われた深夜でも30度という気象条件ながら、世界選手権スポーツ大会を開催するのは、東京オリンピックの前哨戦という位置づけもさることながら、スポーツの意味する国際平和をアピールするという気持ちが伝わってくるのである。

 

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2019年9月24日 (火)

サウジ攻撃はイラン?

 ニュースチェックは日課である。今日は、下記の「時事ドットコム」全文を拝借して、見出しのつけ方によって意味が大きく違ってくることと、国際問題や戦争にもかかわってくる問題になることを指摘しておきたい。

【時事ドットコム】
■見出し
英仏独首脳「イランに責任」=サウジ石油施設攻撃で声明
■本文
【ニューヨーク時事】ジョンソン英首相とマクロン仏大統領、メルケル独首相は23日、共同声明を発表し、サウジアラビアの石油関連施設への攻撃に関し「イランが責任を負うのは明白だ。他に妥当な説明はない」と主張した。また、対話に応じ、挑発行為は控えるようイランに求めた。

声明は攻撃を「最も強い言葉」で非難し、イランに核合意を再び完全履行するよう促した。また「ミサイル計画などを含む地域の安全保障問題や核計画の長期的な枠組みに関する交渉をイランが受け入れる時が来た」と述べ、交渉に応じるよう呼び掛けた。

 この前半の「」内の声明文の主張は各マスコミで一致している。その点、時事の見出しや、本文全体も客観性があり、正鵠を得ていると思われる。

 これに対してAFPは、「サウジ攻撃はイランが実施 仏独英首脳が一致、対話呼び掛け」という見出しだ。国内のマスコミも、見出しのつけ方では双方に分かれている。

 「実施」と「責任」では全く違った意味になる。「イランが攻撃を実施」ならば、即、開戦の口実となり、米国人の犠牲者でも出れば、米国会による宣戦布告決議もあり得る。

 しかし、犯行宣言を繰り返しているイエメンのフーシー派が仮に噛んでいるとすれば、背後で支援をしているイランにも「責任がある」という表現となり、イランも特にそれに反対する理由がない。

 つまり、英・独・仏の声明はアメリカの肩を持つことではなく、国連総会を前に話し合い解決へ持ち込むため、目を見張るような仕掛け花火を打ち上げたということである。

 各紙の見出しにとらわれないよう、注意が必要だ。

 

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2019年9月17日 (火)

トランプ商法

 14日、サウジアラビア東部にある石油施設2カ所が攻撃を受け、黒鉛を上げて炎上する画像がテレビで放映された。攻撃したのは、ドーロン、無人機、巡行ミサイルなど報道によりまちまちで、飛んできた方向も北西方向イランからというが、アメリカは断定を避けており、イラン側も攻撃はしていないという。イエメンのフーシー派は盛んに犯行声明を出すが、目の敵であるはずのアメリカやサウジはそれを否定している。

 最強の軍事力を展開している地帯で、それがわからないはずはない。なんとも奇妙な話である。アメリカがイランと戦争を望むのであれば、イランの犯行と断定すればいいのに、トランプはハメネイ師と話し合いもあるといい始め、イラン側は強くこれを拒否する。

 どうやら、緊張を極限まで高めておいて、話し合いという、北朝鮮でとってきたやり方と似ている。そうすると、アメリカ側の自作自演が疑われるのだが、それでは、塾頭の好まない「陰謀論」になってしまう。

 この地帯には、設備で働く人のため、高層アパート群も立ち並ぶが、居住者はインド人など外国出稼ぎ労働者が住んでおり、メーターの監視などで1日を過ごす仕事を軽蔑するべトウインのサウジ人はいない。

 従ってあまり被害者意識はなく、原油の高騰というプラス面に目が向く。危機意識は金になるのだ。

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2019年7月31日 (水)

続・先の見えぬ中東情勢

 中東で「戦争」といえばイスラム教徒とイスラエル、またはアメリカとの戦争が頭に浮かぶ。しかし、本来の意味での国家間の戦争は、1973年、エジプトが前戦争での失地回復のため、シリアとともにイスラエルに先制攻撃をかけた、第四次中東戦争以来起きていない。

 アメリカの場合、イラクが石油鉱脈をめぐり、ペルシャ湾岸の隣国クエートに侵攻したことを不法であるとし、国連決議を得て多国籍軍を組織、反撃を開始したのが、唯一「戦争」らしい行動だ。

 それ以外は、いわゆる「テロとの戦い」や「ならずもの国家」に対する、国内紛争をよりどころとする介入戦争であるが、宣戦布告に必要な下院の承認を得て戦争をすることは、民主党が過半数を制したため困難になっている。

 そういった意味から考えると「好戦国アメリカ」が最も望むのは、アメリカがテロ組織に指定したイラン革命防衛隊との不測の衝突である。さらに「有志国」が加われば、国連安保理の決議や上院決議がなくとも、実質的な「戦争」に入れる。

 イスラエルをする支持するトランプ大統領が何を考えているかだ。

 

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2019年7月29日 (月)

先の見えぬ中東情勢

 アメリカは、イランに核武装をさせない目的で、これまであった米英独仏ロ中6か国の協定をより厳格化すべきだとして単独破棄、経済制裁でイランを締め上げている。

 イランは協定を守っていたが、原油輸出などが打撃を受け、音を上げている。これが現実にペルシャ湾で様々な衝突を引き起こし、戦争前夜のような事態を起こしている。

 アメリカは、中東関係のトラブルにこれまで多用してきた「同志国」方式で各国に軍隊派遣を呼び掛けているが、日本はイランとの友好関係を裏切る気はなく、イラク戦争でこれに乗ってしまったイギリスをはじめ、欧州各国もアメリカの誘いに応ずる国はなさそうだ。

 イスラエルには、ISなどイスラムスンニ派のテロ組織にかわる最大の脅威が、イスラムシーア派の大国・イランに代わったという認識がある。その思いを同じにしているのが、支持者に多くのユダヤ・ロビーを抱えるトランプ大統領だ。そういった解説が、マスコミにも多く出るようになった。

 世界のイスラム教徒は、スンニ派が圧倒的多数である。イスラエルと境界を争うパレスチナ人を支援するアフリカ・アラブの大国・エジプトやサウジアラビアなどが加わり、中東戦争は、スンニ派がイスラエルと戦うという構図だった。

 テロは、スンニ派原理主義者によるものだが、スンニ派を代表する大国は、サウジ王国とエジプト・軍部独裁政権である。スンニ派は、ムハンマドの言葉を最も厳格・忠実に解釈するためコーランはアラビア語で唱え、これを理解するにはアラブ人である必要があるとしている。

 ユダヤ教は、旧約聖書を共有する経典の民であるから、税金を納めれば同居や結婚は認めるという定めがあるが、ムスリム否定は絶対に許されない。

 スンニ派大国は、これまでの経験もあり、勝てない戦争に手出しすることはないだろう。テロ組織ではない主権国家である。このさき、交渉で住み分けを模索することになる。

 一方のシーア派は、ムハンマドの発言を忠実に伝えてきたとするカリフ(宗教指導者)の血統を重視する。コーランは同じだから教義に大きな違いはないが、イランは、ペルシャ語の国でアラブには入らないし、王や軍部が支配する国ではなくホメイニを継ぐ宗教指導者が支配する国であり、落としどころがわからない。

 この先中東情勢がどう動いていくのか、見当がつけにくくなった。これまでの紛争多発は、イスラム教徒内の勢力争い、アメリカ等大国の介入などが戦争の発端となった。イラク政府にはアメリカ、シリア・アサド政権にはロシアがそれぞれバックについている。

 しかし米ロとも、本音は早期撤退だ。そのすきを狙っているのがイラン革命防衛隊ということで国軍ではなく対応しにくい。

 この先、中東各国や世界のイスラム勢力の動きを、注意深く見ておかなくてはならない。

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2019年7月11日 (木)

「イラン戦争」の後方支援

 8日に書いた「外交に無縁な選挙戦」で、「参院選の各党の議論や政策を見ていて気付くことは、外交問題に一切触れていないことである。他の各国の例から見ても、やや不思議な感がする。」と書いた。

 またまた訂正!<(_ _)>。自民党は、公約集の最初の項目にあげていたのだ。

 当時、NHKのネットによる要約で見てもそのように見えないし、それに対する野党の鋭い対案や反論も、公開討論などで表面化しなかったので誤解していた。

 自民の外交政策の重点は、安保連携深化においており、共産党の「廃棄」をのぞけば、他党は辺野古埋め立て反対などを言うだけで、基本的な外交姿勢の議論にはなっていない。

 この点、駐米イギリス大使がトランプ大統領を公電に「無能」と表現したことで辞任に追い込まれたことや、EU脱退が政治選択の中心になっているような欧州諸国と様相を異にする。

 アメリカは、イラン沖の航行安全を目指す各国による「有志連合」による軍事制圧を目指している。イラク戦争突入の時と同じ構図だ。もちろんそうなれば日本に強圧がかかるだろう。

 その時、易々として自衛隊による「後方支援」などに応ずるのだろうか。国民の声が反映されず、安倍ペースに持っていかれる可能性が大である。

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2019年7月 9日 (火)

イラン情勢「目には目を」

 イランは、2015年の核合意でウランの濃縮度を3.67%以下と定められていたが、アメリカがその合意を一方的に破棄、経済制裁を始めた。そのため、ホルムズ海峡などで武力行使寸前の異常な緊張が高まっている。

 イランも濃縮度の上限を無視した行動開始を宣言、互いに譲る気配はない。お互いに戦争は好むところでないとするがトランプは、イラク戦争時の強硬派を幹部に据えている。イランの革命防衛隊も宗教指導者を守る臨戦態勢のもとにある。

 イランが強くなることに危機感を抱いているのがイスラエルで、トランプの支持基盤・ユダヤ系アメリカ人の存在もある。

 こう見ると仕掛けているのはアメリカで、イランは守勢に立たされているように見えるがイランの闘志もなかなかのものである。

 その根底にあるのは、「目には目を、歯には歯を」というハンムラビ法典に書かれた因果応報の精神である。旧約聖書を信奉する民族に共通する。

 ユダヤ、イスラム、アングロサクソン(プロテスタント・原理主義)がそれにあたる。つまり、アメリカ、イスラエル、イランはそんな関係になってしまう。

 「和をもって貴し」の日本人には、ちょっとなじめない世界だ。

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