安保

2018年3月31日 (土)

基地問題は政府の怠慢

沖縄県は30日、在日米軍の法的地位を定めた地位協定と、ドイツ・イタリアでの米駐留軍の地位を比較調査、これをネット上で公表した。

この内容について同県基地対策課は、毎日新聞の取材に対し「同じく第2次大戦の敗戦国である両国と比べても、日本政府は米政府に改定を強く求めていない。現状を全国の人に知ってもらい、世論を喚起したい」とコメントしている。

他国地位協定調査・抜粋

日米地位協定は、昭和35年(1960年)に日米間で締結されて以来、現在まで一度も 改定されていない。この間、米軍人等による様々な事件・事故、米軍基地に起因する 騒音問題や環境問題等が発生している。

沖縄県では、昭和47年の本土復帰から平成2912月末までに、米軍人等による刑法犯が5,967件、航空機関連の事故が738件発生しているほか、騒音問題では、嘉手納飛 行場及び普天間飛行場の周辺住民が、国に対し、夜間・早朝の飛行差し止めや損害賠 償を求める訴訟を幾度も提起するなど、日常的な航空機騒音に悩まされている。また、 米軍基地の返還跡地から環境基準値を超える有害物質が発見されるなどの環境問題も 発生している。

沖縄県は平成29年9月に、平成12年に実施した見直しに関する要請以降の 状況の変化を踏まえ、見直し事項を新たに追加し、日米両政府に要請を行った。平成 30年2月には、公明党も日米地位協定検討ワーキングチームを党内に設置している。

これまで日米両政府は、「環境補足協定」や「軍属に関する補足協定」を締結しているものの、その実効性は十分とは言い難い状況であり、依然として、多くの基地問 題が発生する都度、運用改善により対応している。

調査対象国としては、日本と同じように大規模な米軍の駐留があること、地位協定 の改定や新たな協定の締結の実績があること、米軍機による事故や訓練に関する諸問 題について日本と同じような事例を有する、などの観点からドイツ、イタリアの2カ 国を選定した。

【ドイツの基本原則】

ドイツ側は、改定交渉に当たり、以下の3点を基本原則にしたとされている。

ⅰ 相互性の原則 ドイツに駐留する同盟軍の地位を、他の同盟国内に駐留するドイツ連邦 軍と同等のものにすること。 ⅱ 内部的平等性の原則 ドイツに駐留する同盟軍の権利が、ドイツ連邦軍の国内における地位を 超えるものではないこと。したがって、同盟軍も、ドイツ連邦軍と同様に ドイツの法に拘束されるべきこと。 ⅲ 外部的平等性の原則 ドイツ国内における同盟軍の地位が、他のNATO諸国における地位に準じ たものであるか、または同じものであること。

【国内法の適用】ドイツ○・イタリア○・日本×

日本は「一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限 り接受国の法令は適用されず、このことは、日本に駐留する米軍についても同様」 との立場を取り、日米地位協定にも一部の法令を除き日本の国内法を適用する条 文がないことから、在日米軍には日本の国内法は原則として適用されていない。 ドイツでは、ボン補足協定第53条に派遣国軍隊の施設区域の使用に対してドイ ツ法令を適用することが明記されているほか、第45条に施設外演習や訓練に対し て、第46条に空域演習に対して、それぞれドイツ法令を適用することが明記され ている。 イタリアでは、モデル実務取極第17条において、米軍の訓練行動等に対して、 非軍事的事項及び軍事的事項に関するイタリア法規であって特定分野について有 効であるものについて順守義務が明記されている。

【立入権】ドイツ○・イタリア○・日本×

日米地位協定第3条第1項では「合衆国は、施設及び区域において、それらの 設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を取ることができる。」と 明記されており、日本側による施設・区域内への立入り権は明記されていない。 ドイツでは、ボン補足協定の署名議定書において、ドイツ連邦、州、地方自治 体の立入り権が明記されているほか、緊急の場合や危険が差し迫っている場合に は、事前通告なしの立入りも認められている(第53条について4②a)。 イタリアでは、モデル実務取極第6条において、基地はイタリアの司令部の下 に置かれ、イタリアの司令官は基地の全ての区域にいかなる制約を設けずに自由 に立ち入ることができることが明記されている

なぜこういう差がついたのか。比較条件は違うが韓国・フィリピンその他各国についても知りたいところだ。

 

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2018年2月25日 (日)

完全になめられている

またしても合意違反だ。米軍普天間飛行場を離陸した米海軍ヘリコプターMH60が23日、隣接する普天間第二小学校の上空を飛行した。

 昨年12月に防衛省と在日米軍は宜野湾市内の学校施設上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことで合意したはずだ。

しかし1月18日に普天間所属の海兵隊ヘリ3機が同校上空を飛行し、今回さらに飛行した。合意など「あってなきがごとし」ではないか。

日米合意は昨年12月13日に同校で起きた普天間所属のCH53E大型輸送ヘリによる重さ7・7キロの窓落下事故を受けて取り決められた。その6日前には同型機のプラスチックの円筒部品が保育園の屋上で見つかっている。

ヘリが学校上空を飛ぶようでは、児童が安心して校内で過ごすことができない。だからこそ日米での合意が結ばれたのではないか。

在日米軍は1月の飛行については航跡データなどを根拠に学校上空の飛行を否定している。しかし今回は飛行の事実を認め、日本側に遺憾の意を伝えている。

2件とも防衛省が監視員とカメラで学校上空の飛行を確認しており、飛行の事実は揺るがない。

今回のヘリは嘉手納基地に暫定配備されている外来機の可能性がある。暫定配備の部隊に日米合意の指示が伝わっていないとすれば、米軍の指揮系統が機能しなかったということである。合意が形骸化しており、組織の劣化は明らかだ。言語道断だ。(琉球新報2/25社説より)

今回の飛来は前回と違って米軍も認めている。上空飛来は、他基地所属のヘリで禁止を知らなかったせい、と言い訳をしている。軽く見られているというか、言葉は悪いが完全になめられているのである。

その理由は、ネットウヨなどが同校に対して、そんな場所に建てるから悪いとか非国民といった中傷を殺到させたり、政府自民党内に琉球新報・沖縄タイムスを偏向紙と決めつける動きがあることも関係なしとはいえない。

普天間は米海兵隊所属である。他国に敵前上陸などをして、その地域を制圧させることが目的の部隊である。平和憲法を持つ日本に基地を置く理由はない。仮にそのような行動をするとすれば日本に対し事前協議が必要だが、中東への派遣は「インド洋部隊への所属変更」ということでスルーさせた。

尖閣列島が中国に占領されたら、それを奪回するためなどとする者もいるが、それは一義的に自衛隊の任務となる。アメリカに日本国土防衛の義務はあるが、無人島に海兵隊を出すかどうかはアメリカが決めること、断られればそれまでである。強いて言えば抑止力的存在だ。

朝鮮半島でドンバチ始まり海兵隊が日本から出撃すれば、北朝鮮にとって日本は敵国になり、ミサイル・核攻撃の対象になってしまう。また、米軍にとっても近すぎて危険という考え方がある。

昔に比べ、大幅に機動性を増した米軍にとって日本に大量の海兵隊を置いておく理由はない。そのためハワイとか米本土に移動させる計画があったが、日本の経費負担や「おもいやり予算」がついて、本土に置くより経費削減ができ、日本政府もそれを望んでいない、と言われてきた。

中国や北朝鮮の動きの中で、日米韓の連携が強化されることが重要課題であることは言うまでもない。その中で東アジアの安定に最大の責任を持たなければならないのは、日本であるが、日本政府は沖縄をはじめ占領下の態勢から一歩でも抜け出そうという気概を持たない。

日本がなめられているのは、そんなところにある。

ネットウヨさんに奮起を促したい(笑)

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2017年12月20日 (水)

イージス・アショア賛成

  本塾はこれまで、外国基地を攻撃する巡航ミサイルやそのための新鋭戦闘機を自衛隊が持つことに反対してきた。どう言い訳をしたところで「専守防衛」の自衛隊が「専守」でなくなり憲法違反になってしまうからだ。

領土・領海内をねらったミサイルを撃破するためのMD(ミサイル・デフェンス)計画なら外国まで行って行使するわけではないのでOK、という立場である。今回、政府は19日の閣議で、海上自衛隊のイージス艦に搭載している迎撃ミサイルを陸上に配備する「イージス・アショア」2基の導入を決定した。

防衛省は北朝鮮の核・ミサイル開発の進展に対応するため「最速のスケジュールでの導入」を強調しているが、配備まで6年程度かかる見込みだ。北朝鮮情勢がどう動くかは見通せず、2000億円以上の巨額の予算に見合う効果が得られるかは未知数だ。

導入のための予算が問題になっているが、「丁寧」に「真摯」に検討した上、有効との判断ならば推進すべきだと思う。

もちろん、そんな必要がないようにする外交力があれば最高だが、相手が相手だけに遠慮している場合ではない。アメリカとは、技術的に共同開発している部分もあり、100%お仕着せではない。精度もより高まる期待が持てる。

高い、といっても毎年アメリカに支払う「思いやり予算」に、普天間基地維持費などをちょっと付け足しただけで足りる額だ。アメリカにオンブでダッコはもうやめようではないか。

【毎日新聞12/20東京・朝刊】

(前略)「弾道ミサイル攻撃から常時・持続的に我が国を防護でき、防御範囲や能力も高まる」。小野寺五典防衛相は19日の記者会見で、イージス・アショア導入の意義を強調した。

 日本海で弾道ミサイルに対応しているイージス艦を南西諸島などに振り向けることも可能になり、「効果的に日本を防衛できる」と訴えた。

 イージス・アショアは陸上自衛隊が運用主体となり、2023年度の配備を目指す。イージス艦搭載の迎撃ミサイル「SM3」を配備する海自、地上配備型ミサイル「パトリオット」(PAC3)を運用する航空自衛隊とともに、陸海空の自衛隊が統合して弾道ミサイル防衛(BMD)を担う体制ができる。

 イージス・アショアには、日米が共同開発している新型の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を搭載する。SM3より射程が倍程度に伸び、半径数百キロ以上が防護可能だとされる。有力候補地の新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市)に配備すれば、日本全土をほぼカバーできる。

ただ、北朝鮮はミサイル発射技術を急速に進展させている。イージス・アショアはイージス艦の役割を代替するのが主眼で、弾道ミサイルにSM3とPAC3の2段構えで備える構図に変化はない。北朝鮮がミサイルの多弾頭化や同時発射能力を向上させた場合、迎撃には限界があるのが実情だ。

 レーダーの種類が決まっていないなど、現時点で導入費の総額も明らかになっていない。防衛省は2基で2000億円程度との概算を示しているが、1発数十億円とされるSM3ブロック2Aの購入費などを含めると概算を上回る可能性が高い。【秋山信一】

 

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2017年12月13日 (水)

危険な米軍基地

 13日午前10時10分頃、沖縄県宜野湾市の普天間第二小学校関係者から、「飛行機からと思われる落下物がある」と110番があった。

 県警宜野湾署員が駆けつけたところ、校庭に約90センチ四方の金属製の窓枠とみられる物が落ちていた。沖縄防衛局によると、米海兵隊から「大型輸送ヘリコプターCH53の窓枠のような物が落ちた」と連絡があったという。

 同署などによると当時、校庭では体育の授業が行われていた。窓枠のような物が落ちた際、風圧で飛び散った小石が4年生児童の手に当たったといい、同署が落下時の状況などを調べている。

 同校は米軍普天間飛行場に隣接。同市では7日にも同校から東に約1キロ離れた緑ヶ丘保育園の屋根にCH53の部品が落下する事故が起きているが、この部品について米軍側は、「飛行中の普天間飛行場のヘリから落下した物ではない」と否定している。(1213 1242分 読売新聞電子版)

直ちに会見した菅官房長官は、さすがに「だから早く辺野古移転を……」とは言わなかった。市長や県知事はいち早く現場に駆けつけている。民家のそばに基地を設ければ米軍基地に限らず、どこであろうとも同じ危険をもたらす。

日本防衛のためやむを得ない措置であれば、基地の存在も甘んじて我慢する必要がある。しかし、米軍は「配属変更のための移動」と称して中東方面に向かい、戦争にも参加する。米軍は「槍」、自衛隊は「楯」と役割分担する話がまとまれば、憲法のしばりがない米軍による近隣への先制攻撃もできる。

安倍一強の下でなければ、こんな機会に日米安保や憲法論議をし、最善の道をさぐることがあってもいいのだが――。

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2017年12月 6日 (水)

敵基地攻撃能力と9条

  政府は2018年度予算案に、日本がミサイル攻撃を受ける前に、敵基地を破壊することを可能とする関連装備自衛隊が持てるようにする検討を始めた、と各紙が伝える。どういうことか、その中味を知っておこう。

まず、二つのミサイルの名から始まる。ノルウェーなどが開発したJSMと米国製のJASSMである。仮にジスムとジャズムとしておく。ジスムの射程は短く数百キロ、ジャズムは900キロ以上ある。

いずれも空対地ミサイルで、今、自衛隊の主力戦闘機であるF15は、航続距離が4600キロあり、大陸近くまでの往復は簡単である。攻撃ミサイルはジスムでいい。しかし、大陸近くまで行くと相手のレーダーに捕捉される。

そこで、最新鋭でレーダーをくぐり抜けられる最新鋭のF35Aステルス戦闘機を本年度中に配備することになっているが、これは航続距離2200キロしかないのでジャズムがいいということになる。

そういったことを来年度予算で検討しよう、ということなのである。どう理屈をつけようが、敵がミサイルを発射する前、弾道計算もできないうちに発射基地を破壊すれば、先制攻撃の以外のなにものでもなくなる。

その基地要員に死者を出す可能性も高く、相手に戦争突入の口実を与えることになって憲法9条は全く役に立たたず、空念仏になってしまう。また、日米安保による集団的自衛権の前提も怪しくなり、アメリカが守ってくれる保証もない。

ミサイル攻撃に対する自衛は必要であるが、相手国領土内の基地先制攻撃はできない。あくまでも日本領土・領海を守るためのミサイル防衛システム(MD)の精度を高めることが主眼となる。

相手の攻撃を受けて撃ち漏らし、被害がでても報復攻撃はできない。戦争の歴史は、いつでも自衛、邦人保護、報復攻撃が名目になっていることを知らなければならない。

報復攻撃にかわって何ができるかの検討は必要だが、日本は外国と海を隔てていることにより、9条を有効に働かせやすい。この優位性を保つことで、もっとも確実な安全保障が得られているのである。

敵基地攻撃能力保持は、どう解釈してもはっきり憲法違反である。

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2017年11月16日 (木)

「日米同盟」というお化け

14日付で「押しつけ憲法&押しつけ兵器」という記事を書いた。GHQの押しつけだから自前の憲法に変えるという執念を持つ安倍首相が、「北朝鮮が脅威ならアメリカかの兵器をもっと買え」とトランプ大統領に押しつけられたことには、まんざらでもない顔、と皮肉った。

15日の毎日夕刊に「熱血!与良政談」という与良正男専門編集委員のコラムがある。この中で「防衛装備品」の購入は、「実際には武器、兵器なのに装備品と言い換えるのはごまかし」という意見を紹介している。

トランプが英語でなんと言ったか知らないが、塾頭はそんなことを意識せずに最初から「兵器」と書いた。もう一つの言い換えの例として「日米同盟」を紹介している。かつて、同盟といえば、通常、日独伊三国同盟のように軍事同盟を指していた。

だから、安保反対闘争で攻撃する方が「日米同盟」といったのに対し、政府側は「同盟」ではなく経済条項も含む平和条約だと抗弁したものだ。それがいつの間にか政府側が好んで日米同盟というようになり、逆転してしまった。つまり軍事同盟的性格を強調し始めたということだ。

そのあたりを、同じコラムで与良氏はくわしく解説している。以下引用させていただく。

今、当たり前のように使われている言葉に「日米同盟」がある。

だが、これが始めて公式文書で用いられたのは1981年、当時の鈴木善幸首相とレーガン米大統領との会談後、発表された共同声明だった。野党は「軍事同盟の意味ではないか」「集団的自衛権の行使につながる」等々と反発して国会は紛糾した。

やっと「同盟」の言葉を使うチャンスが来たと周到に準備していた外務省は軍事面も含まれると認めたが、鈴木首相はこれを否定したことから、余計話はこじれた。

「何て無意味な論戦をしていたものか」と思う人も多いだろうが、こうした論議の歴史を重ねて今の「日米同盟」という言葉があることは知っておく必要がある。

いつしか「装備品」が堂々と「武器」に変わる。(安倍首相が口を滑らした・塾頭注)「わが軍」になる。それを誰も疑問に感じない。そんな時が来るかも知れない。忘れてはいけないのはそこだ。

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2017年10月 8日 (日)

鳩山由紀夫氏・カムバック

今日の毎日新聞に立憲民主党の公約要旨が掲載され、普天間から辺野古への米軍基地移設の見直しが取り上げられていることがわかった。前回の補足としようと思ったが、与党との対立軸として重要であるにもかかわらず、電波媒体をはじめ新聞の扱いも全く目立たないので別立てとした。

5 立憲主義を回復させる

(前略)
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古移設について再検証し、県民の理解を得られる道をゼロベースで見直す。
(後略)

「すくなくとも県外へ」と公約し、「宇宙人」などと揶揄されて旧・民主党代表、首相を追われ、議員も辞した鳩山由紀夫氏は70歳になる。政治への関心は衰えていないし外交関係での活動もすくなくない。立憲民主党がなんらかの形で迎え入れてもいいのではないか。

アメリカも、海兵隊を沖縄に置いておく積極的な理由が、その当時と変らないとは考えられない。北朝鮮からミサイル攻撃の目標として脅迫される材料に使われるだけだ。

安保条約の有効期限は10年で、申し出がない限り自動更新となっている。憲法に有効期限はないが、改正したがっている人が多い。それなのに冷戦時代の安保が57年間手つかずというのは、どう見てもおかしいのではないか。

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2017年8月 8日 (火)

安倍流「専守防衛」

政府は陸海空3自衛隊の一体的運用を進めるため、中期的な目標を定めた「統合運用計画」を来年にも新たに策定する。背景には、中国の海洋進出や北朝鮮の弾道ミサイル開発、同盟国への軍事的負担増を求める米トランプ政権の誕生など安全保障環境の大きな変化がある。

具体的には、島しょ防衛で「日本版海兵隊」として陸自に「水陸機動団」が創設されることなどが念頭にある。ミサイル防衛でも、海自が運用しているイージス艦の迎撃ミサイルシステムを地上に配置する「イージス・アショア」が検討されている。いずれも従来の陸海空の枠組みを超えた運用が要求される。

これまで、こういった計画は単年度ごとに策定されていたようだが、中期的な方針がなかったことの方が不思議だ。かつては、共産国の侵入に備える米軍の枠組みの補完的役割を担っていればいいという判断で、その延長線上にあったのか。

安倍晋三首相は6日、広島市内で記者会見し、2020年代半ばまでの10年程度の防衛力のあり方を定めた「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を見直す考えを表明した。

首相は会見で「中期防は来年度で期限を迎える。今から次の計画について検討を進めることが必要だ」としている。大綱見直しに伴う検討課題として、ミサイル防衛や南西地域の防衛に加え、サイバー攻撃への防衛についても触れた。

一方で敵基地攻撃能力については「常に現実を踏まえながらさまざまな検討を行っていくべきだ」と前置きしたうえで、「現時点において、保有に向けた具体的な検討を行う予定はない。専守防衛の考え方についてはいささかも変更はない」と述べた。

以上は、7日付毎日新聞朝刊(東京)で報道されているが、「敵基地攻撃能力」を「専守防衛」の文脈の中で語るという、彼独特のレトリックがここにもある。専守防衛は敵の基地を攻撃しない前提で、自衛隊の存在を合憲とする考え方だが、概念としての矛盾は一向に気にしない。

「日本版海兵隊」も使われる場所によって立派な「敵基地攻撃能力」になるのだが、集団的自衛権行使や新安保法制の存在が煙幕の役割を果たし、専守防衛が有名無実化してしまうことが首相のねらいなのだろうか。

自衛隊現地の日報に「戦闘」と書かれていたことを、最初はないとか破棄されたといい、存在が証明されると、あたかも用語の間違いであるかのような説明で押し通そうとする。現場の自衛隊員は見聞したり体験したことを生で報告する義務がある。

「日報」はあくまでも正しいのである。これを政治が忖度したり改変するとなにが起きるか、過去の日本の戦争史を列挙するまでもあるまい。破滅に向かう道程以外のなにものでもない。

加計にしろ森友にしろ首相が「一点の曇りもない」などと、りっぱな言辞を使って弁明すればするほど、白々しく感じるようになった。首相の信頼がすでに地に落ちていることが、世論調査にも現れている。

首相は3日、小野寺五典防衛相に大綱の見直し検討を指示していたが、この3月、敵基地攻撃能力の保有検討を政府に求める提言を策定した自民党安全保障調査会は、当時、党政調会長代理だった小野寺氏が中心的に関わった経緯を忘れてはならない。

新方針策定そのものは当然で、塾頭も賛成である。ただし首相のレトリックの裏に何があるのか、しっかり見極める必要がある。

 

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2017年7月30日 (日)

北の新ミサイルは危険

北朝鮮の火星14号はアメリカ本土に届くICBMだと騒いでいるが、本当に危険なのは日本でないか。これまで日本などに向けられる中距離ミサイルは、要所に配備されたP3C(パトリオット)が落下し始めた所をとらえて迎撃、不特定多数を同時に発射されるとうち漏らしも考えられるが、撃墜の確度は高まっているとされた。

さらに、イージス艦によるBMDシステムは、飛翔途中の弾道をとらえて撃破するものだが日米間の共同開発が進んでおり、韓国は中国の強い反対にもかかわらず、サードシステム配備を米韓共同で進めている。いずれにしてもアメリカの監視体制の助けが必要だ。

発射直後はスピードが遅く、撃破しやすいが、先制攻撃と紙一重で日本は憲法上の疑義を生じる。本当に日本をねらっているのかの確証を得ることは、事実上不可能だからだ。いずれにしてもミサイル防衛は、ほとんどがアメリカ頼みということになる。

報道されているように、このところの北朝鮮の発射実験は高度3000キロ以上という超高空に打ち上げる「ロフテッド軌道」で、いずれも日本の排他的経済水域にボカボカ落下している。やがてイカ釣り漁の最盛期になると出漁を見合わせなくてはならなくなる。

遠距離をほぼ水平に飛ぶ弾道ではなく、いん石のように垂直に落ちてくる感じだ。アメリカまで飛んでいくコースとは違う。アメリカなら打ち落とせても、日本を目標にしたら防ぎようがないのではないか。

これまで説明されてきたMDシステムでは、安心できないものが出現した感じだ。さらにアメリカのトランプ政権が、日本優先で物事を進めるとは考えられない。下手にことを構えられると日本が犠牲になる公算が大きくなる。

安倍政権が外交で得点を重ねているというが、対・北朝鮮や中国では何の効果も上げていない。稲田防衛相辞任・外相兼任という弱体内閣ではとうていこの危機を処理できそうにもない。この点からも一刻も早い政権交代が必要だ。

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2017年3月 8日 (水)

軍事研究とミサイル防衛

タイトルの二つはこれまでも当塾で何度か取り上げているが、本日付け毎日新聞は、軍事研究に対する学術会議の姿勢の推移をトップに掲げ、昨7日の北朝鮮間ミサイル4発発射に関連した対応などを、各面に展開している。

 

トップ記事は、学術会議が1950年と67年の2回、「絶対」という文言で軍事研究に「従わない」「行わない」という声明を出しいること。それを、今回もそれを継承するとともに、民生技術へのメリットなどを含め、各大学が判断すべきことだとし、そのためのガイドラインづくりが必要、という案を総会に提示する見込みだと報じた。

 

この結論と、北朝鮮などからの日本国向けの弾道ミサイル防衛は当然なされてしかるべきだというのは、塾頭の考えと一致する。ただし、集団的自衛権優先、9条改正を至上命令とする安倍首相下では危なくてしょうがない。

 

発射が見込まれる敵基地への攻撃もそうだ。これが可能かどうかについて、「自衛の範囲」などとの見解が自民党筋に出回っているようだが、そんなことを触れて回るのは愚の骨頂。

 

「その能力がある」ということを、敵方に知られているだけで十分なのだ。日本自ら国土防衛に強い決意があることを知ってもらえば、それが最大の抑止力になる。核でも日米同盟でもない。憲法9条である。

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