東アジア共同体

2017年2月21日 (火)

金正男は二重スパイ?

殺された金正男は「キム・チョル」という偽造パスポートを所持していたしいう。駐マレーシアの北朝鮮大使は、会見で「キム・チョル」の遺体引き渡しをマレーシア当局に要求した。正男とは何の関係もないという立場だ。外交官ビザだったという説もある。

 

マレーシア当局は、遺体の家族からDNAデータの提供があるまでどこへも引き渡せなとする。まあそうだろう。刑事事件の殺人がからめば、身元確定のため当然の措置だ。

 

直近の地元紙ニュースでは、正男の長男が遺体引き取りのため、マカオからクアラルンプールに到着したそうだ。それならば、北朝鮮の主張が一挙に崩れると報ずる日本のメディアもあるが、北は「そんなのはどこの馬の骨かわからない、金正日の子というなら北が提供するもの以外は信用できない」というだろう。

 

一番の不思議は正男がどうして危険極まりない所へのこのこ出かけて行ったか、また、中国などは、然るべき警護をしなかったか、ということだ。それは、彼が二重スパイで、両国に極秘情報をマレーシアを舞台に提供していたからではないか。

 

今回も、トランプの米大統領就任などで国際情勢が揺れ動く中、北にとって重要な中国情報を提供したかもしれない。中国もあらかじめ承知の上のことだ。だから、こんな重要人物を暗殺するなど、馬鹿なことはしないはずだ、という油断があったのではないか。

 

映像が多く、真相が少しずつ明らかになるので世界のメディアにとってはおいしいネタだ。正恩はそこまで読んでいなかっただろう。ただ、今後同国内で粛清・暗殺などより陰惨な事件が相次ぐことだけは言えそうだ。

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2017年2月18日 (土)

正男暗殺に中国沈黙

以下、産経新聞電子版引用である。

【北京=西見由章】北朝鮮の金正男氏殺害事件をめぐり、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は17日付の論評で「中国側はなにも情報を発信せず、沈黙する傍観者になっている」と当局を批判した。

 事件をめぐって韓国当局やメディアの情報が世界の世論を主導しているのに対して、中国当局が沈黙を守り報道も規制していることへの不満があるとみられる。官製メディアが地方政府ではなく、政権自体をやり玉に挙げて“反旗”を翻すのは極めて異例だ。

環球時報は、党宣伝部の指導下にあると思われるが、人民日報よりやや過激な表現をする。世界の情報合戦に乗り遅れることは同紙の存廃にかかわることで、世界的関心事に、すました顔でいることが我慢できないのだろう。

 

ということは、この事実が中国にとって相当重大な責任問題に発展しかねないということではなかろうか。これまでの既存メディアが、政治情勢については予測の範囲を越す激動にゆれ動く、中国もそこから免れな得ない運命にあるのかもしれない。

【追記】1/19

環球時報の反応がポストセブンの報道で下記サイトに出ました。

https://news.nifty.com/topics/postseven/170219155832/

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2017年2月16日 (木)

金正男暗殺雑感

 クアラルンプールで暗殺された北朝鮮・金正恩の兄正男に関する続報はまだまだ続く。犯人らしき2人目の女が逮捕されたそうだ。いずれにしてもこの種の事件は、これからもなかなか真相が明らかにならないだろう。

 当塾では、去年9/1010/2213/3と3回、北朝鮮抜きの6か国協議というのが必要ではないかと書いてみた。核実験やミサイル発射などもはや日常化した北の行動に、国連が何度決議相や声明を出そうがカエルの面に小便、なんの効き目もないからだ。

 単なる威嚇や、国内向けパフォーマンスであれば、無視すればいいのだが、どこかの国は、それを緊張とか脅威と言ってやはり国政に利用しようと意図する。かつて、北の動きに対し、日米中韓それに北を含めた6か国で北の非核化を協議する場があった。

 現在、それを復活させようと思っても、北が加わるはずがない。それならば、かつてあった東アジア非核地帯構想のようなことを、北抜きで話し合ったらどうか、というものである。

 「無意味だ」とはわかっていてもこの地域の恒久的平和構築を話し合うということになれば、南北のあり方も議題となり、北は実効の伴わない経済制裁などよりも焦ってくるだろう。

 前掲の記述のひとつ「北・抜き陰謀論」をリンクしておくが、単なるパフォーマンスであればいいけど、最近の報道によると正恩の健康状態や日常生活にやや正常を欠くものがあるという。

 となると、「誰が誰を」と特定していないが、非常手段として「暗殺」という陰謀が働いてきてもおかしくない、と書いた。その時と今は何が違うかと言えば、トランプが米大統領になり、政策が目まぐるしく変わることである。

 正恩は正男の利用価値の変化を警戒したのかもしれない。

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2017年1月27日 (金)

『帝国の慰安婦』裁判

韓国の世宗(セジョン)大学・朴裕河(パクユハ)教授は、『帝国の慰安婦』の著者として有名である。日韓の間で解決の糸口が見えないような中で、彼女の綿密な調査と問題点を絞り込む努力が高く評価され、邦訳のある日本をはじめ、東亜日報等韓国マスコミでも注目されていた。

 

しかし、元慰安婦の名誉を傷つけたとして、名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴され、25日にウル東部地裁では無罪の判決が言い渡された。判事は世論を無視できず、今の雰囲気では有罪だろう」(日韓関係専門家)との見方が強かったが、塾頭も、対馬の盗難仏像関連裁判のように、司法の独立が懸念される日本も顔負けするほど危なっかしい決定をすると感じていた。

 

最高裁でひっくり返されるかもしれないが、とにかく名判決だ。塾頭の考えとすっかりと言っていいほど似通っているからだ。韓国を代表する通信社聯合通信が短い文章で判決全体のニューワンスを要領よく伝えている。

「被告の見解に関する判断は学問の場や社会の場で専門家や市民が相互検証しながら論駁する過程で行われなければならない」として、「慰安婦の真実を明らかにし、(結論に)到達できる十分な能力がある」と述べた。

 地裁は検察が名誉を毀損する表現だと主張した35カ所中、「朝鮮人の慰安婦の中、自発的な意思があった慰安婦がいた」「(旧)日本軍は公式的には誘拐や強制連行により慰安婦にしてはいなかった」などとした5カ所は事実の摘示であり、30カ所は意見表明だと指摘した。

 この5か所のうち、著書にある「元慰安婦は根本的に『売春』のくくりにいた女性たち」「朝鮮人慰安婦は日本軍と同志的関係にあった」とある点が、名誉棄損だとされる。

 あくまでも一般論として述べており、被告人など個人の事情に触れたものではない。したがって「事実の適示」であり原告の名誉棄損に当たらない、という考え方を判決はとっている。

 残りの30カ所は「慰安婦の証言などを資料として引用した上で分析や評価をしたもので、具体的な事実関係を示したと見るのは難しい」、すなわち著者の「意見」と判断してもいいが、これも原告について言っていないとしている(毎日新聞)。

塾頭もかつてフィリピンかボルネオの密林で敗戦を迎え、ばらばらになって逃げる途中、一兵士が慰安婦と出会い食料を分け合ったり、ワニのいる川を背負って渡ったりして海岸にたどり着き、帰国後は結婚するに至った、という創作を見たことがある。

韓国でも年長者ほど、銅像をところかまわず世界中に設置しまくるなどの傾向を批判的に見る人の割合が多くなる傾向だという。発言しにくいことだが、性奴隷状態は一般的な実態でなかったということを知っているからだろう。

このような判決で、感情論から、もっと現実に即した史実に対する知識を深めようとする傾向が出てくれば、落ち着くところへ落ち着くはずだ。日本は言うべきことは言わなくてはならないが、報復などを考えるべきではない。

いちいち反応して、韓国の感情論をかきたてるより、黙って泰然と構えているのが最善だ。韓国民は国際的評価を気にする点で人後に落ちないはずである。

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2016年12月 9日 (金)

韓国の不思議②

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友による国政介入事件を巡り、韓国国会は9日午後、朴氏の弾劾訴追案を審議し、賛成多数で可決した。当塾では先月から、27日の「朴槿恵追及デモ」、12月3日の「北・抜き6か国協議の時期」、そして、5日の「韓国の不思議」など数回にわたって韓国の動乱、といっていい事態についてエントリーを重ねてきた(リンクは文末参照)。

 前回も書いたように、韓国の政治、司法そして韓国の社会がこの決議でどう推移するのか、日本のマスコミやテレビのワイドショウの解説では、さっぱりその先が読めない。現在の韓国の近代化、経済発展の基礎を築いたのは、朴槿恵大統領の父親・朴正煕大統領である、がそれと今回の槿恵大統領糾弾とどう関連するのか、しないのか、そのあたりもよくわからない。

 そこで、日本在留が長く国際的な学才・韓国人学者から見るとどうなるか、鄭大均著『韓国のナショナリズム』岩波現代文庫で、その片りんをうかがうことにした。

 朝鮮におけるナショナリズムの動きは、日本統治によって挫折を余儀なくされる。したがってナショナリズムが本当に実現したのは解放後ということになるが、国家への帰属意識がエリート層のみならず庶民層にまで共有されるようになった時期ということになると、それはさらに下って六〇年代といこうということになるだろう。六〇年代とは、朴正煕(1917~79年)が軍事クーデターを通して政権を奪取し、そのリフォーム・ナショナリズムが国のかたちを変えた時期である。

(中略)リフォーム・ナショナリズムは日本の明治維新やトルコのケマル・パシャ革命がそうであったように、名目的には独立国家であっても、実質的には国内的な混乱や国際的な脅威にさらされている「半独立国家」を舞台とする「上からの革命」(エレン・ケイ・トリムバーガー)であり、その担い手となったのは軍部や官僚出身者たちであった。

 ところが、今日の韓国人、とりわけ知識人たちの朴正煕に対する評判は芳しいものではない。朴正煕やその時代には「軍事政権」や「独裁政治」という烙印が押され、それは否定的な過去として語られることが多いのである。だが朴正煕やその政権によって提示された「民族」や「近代化」のビジョンは、韓国のかたちや韓国人の集団アイデンティティのかたちをかなり根本的に変革する力となったのであり、それは今日の韓国人の自尊心の源泉となるものである。

 韓国のジャーナリスト・趙甲済の言葉を借りるなら、朴正煕とは「今もも生きている現在の歴史」であり、その功罪の両面を含めて、今日生きているすべての韓国人は朴正煕の時代に韓国にもたらされた革命の産物であるといってよい。

 不幸なことに、解放後の韓国においては、執権者がかわるたびに前任者の業績や価値観が否定されるという反動の連鎖が見て取れる。朴正煕自身が前任者のそれを「李朝社会の悪遺産」とか「民族愛の欠如」として否定したように、その後にあらわれる新しい主人公たちも親世代の否定をその出発点としているのである、

 以上、長い引用となってしまったが、これが父・朴正煕以来の伝統になってしまったのだろうか。歴史の積み重ねにより、このような「伝統?」がいずれ克服されるだろうことを、隣国国民のひとりとして願っている。

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2016年12月 5日 (月)

韓国の不思議

 題名は「韓国」だが「朝鮮」に置き換えてもいい。ヨーロッパでは、イタリアの国民投票で現首相が敗北しオーストリアは極右政党が敗北した。まだこの先いろいろな動きがあるだろうが、EUの根幹を揺るがすようなことはないだろうと見る。

 韓国は朴槿恵大統領の先の展望が読めないが、今までの所、塾頭の古びた知識では、解きほぐせないことが次々におこる。

 前に書いたことがあるが、小学生時代、塾頭には同級生に金・李・朴の3人の朝鮮人級友がいた。その3つの姓は韓国でのベストスリーである。それに今回悪名を高めた大統領のお友達崔氏を加えるとほぼ半数がこの4姓で占められる。

 こういった姓(本貫)の記録は朝鮮では命より大切なもので、最近まで同じ本貫同士の結婚は認められなかった。最も多い金氏は、さらにいくつかの本貫に分かれる。元・大統領の金大中氏や、有名な作家・金達寿氏は、その中でも最大の「金海・金氏」である。

 金海は釜山空港の近くで金氏の先祖・首露王が亀旨の峰に天下った金の卵から生まれたとされる。そして、倭人が根拠を置いた場所もここである。また、新羅の伝説上の初代王・赫居世が慶州で勢力を持つ朴姓の創始者であり、司馬遼太郎は、『韓のくに紀行』で倭人だったという説を紹介している。

 両氏とも慶尚南・北道が拠点で古代の駕洛国から出ている。洛東江に沿って釜山から大邱のあたりまで、倭人が多く住んでいた地帯である。これを言うと、日韓併合を正当化しようとする「日韓同祖論」だと非難され、長い間タブー扱いだった。

 しかし、韓国の地元における伝承、日韓や中国の古文献・埋蔵物その他から見て、倭人が住んでいたことは疑いようがない。そして、日韓双方の交流・往来には特段の障壁がなかった。同祖論を言うなら弥生時代の担い手として大陸から多くの文化を招来し、有史の時代に入ってからもさまざまな技術を持った人がやってきて、大阪・京都周辺に住みつき、そして混血した。

 その人数は韓国の倭人をはるかに超えるものがあったはずだ。しかし、本貫の制度は日本に根付かなかった。韓国では、一族のうち誰かが出世したり金持ちになったりすると親兄弟はもとより、親戚縁者・友人など、普段は疎遠にしているものでも一斉にその成功者のおこぼれに与ろうとする。

 また、それに冷たくするようでは、成功者は強い非難を受ける。本貫制度からきているのかどうかわからないが、身内意識が非常に強いのだ。日本以外でも韓国コロニーのあるところでは、それが強く表れる。時には戦闘的でさえある。

 選挙でも、同じ本貫の候補者がいればそこに票を集めるという。朴氏は漢国で8.5%いるのに、大統領支持率は4%とか5%しかないという。これは、おこぼれも出せなくなった同族には用がないということなのだろうか。

 韓国を旅行で回ったことは1度しかないが、その程度ではどうもよくわからないことが多い。

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2016年12月 3日 (土)

「北・抜き6か国協議」の時期

 北朝鮮に対するより徹底した国連安保理の制裁決議がまとまり、北朝鮮経済の後ろ盾である中国を含め、全会一致で採択された。これに関連して、朝日・毎日の2紙が社説を掲げている。朝日の記事でその内容を示すと次のようだ。

 北朝鮮の最大の外貨収入源とみられる石炭の輸出を約6割減らすよう、上限を設けたことが最大の特徴だ。

 銅やニッケル、銀などの輸出は全面的に禁じられるほか、北朝鮮が労働者を派遣してアフリカ諸国などで作らせている銅像を建立する取引も認めない。

 この制裁が実行されれば、北朝鮮の総外貨収入は4割近く減り、核・ミサイル開発のペースは抑えられるとされる。

 これを見て思い出すのは、大東亜戦争開始前のABCD(アメリカ・イギリス・中国・オランダ)包囲網による鉱物資源を主にした対日経済封鎖である。これで日本は干上がり、戦争遂行能力がなくなるが、短期戦なら神国・日本に勝機もある、といって突っ込んだのがさきの戦争である。

 両紙の論調に多少のニューワンスの差はあるが、中国による「抜け道」を許さないこと、日米韓の連携を強化することなどで、制裁効果で金正恩を追い詰めるという点では一致している。国連と日本外交の基本姿勢をなぞっただけで、マスコミの洞察がこんなことでいいのかという気がする。

 韓国は今、大統領弾劾で空前の混乱に陥っている。韓国民は、この決議にどういう思いを持つだろうか。制裁強化で同じ民族が飢えたり、争ったり、正恩の独裁強化による内乱やクーデターが起きたりすることを望んでいるだろうか。

 北が、核開発やミサイル発射にこだわるのは、一にも二にも南北統一に優位、少なくとも対等以上の地位を占めたいからだ。北に混乱が起きてプラスになる国はどこにもない。難民の大量発生や内乱状態発生は、中・韓にとって直接的なクライシスになる。

 治安維持出動は、即内政干渉となり、中・韓の対立を生む。そして中東で見るような果てしない抗争にならない保証はない。本塾では、10月22日に「北・抜き陰謀論」を書き、同様な趣旨からこの際、北抜きでも6か国協議をすべきだと書いた。

 しかし、この素人考えは誰からも支持されていない。(;ω;)

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2016年11月27日 (日)

朴槿恵追及デモ

 27日の韓国大統領辞任要求デモは5回目である。回を重ねるにつれて参加者が多くなり、主催者推計150万人、警察推計で27万人に達した。日本の警察は、デモを反権力的行動と見がちで過小評価するが、5倍半も違う。

 日本でも安保闘争で17万人から33万人までいろいろな数字があるが、27万人は、人口比から見ても安保闘争の方が完全に負けている。検察は朴槿恵大統領が共犯の可能性が高いと言っているが、証明できていない。

 この段階で韓国民の「怒り」の境地になれないのが塾頭だ。それは、彼女の父・朴 正煕(パク・チョンヒ)大統領時代のある体験も作用している。それはこんなことだ。

 当時の勤務先に韓国の新聞記者が取材したいと言ってやってきた。担当者の手がふさがっていたので、初対面の記者を応接に入れ話を聞いた。

 なんでも、同国でこの頃始めて日刊の経済専門紙ができたばかりで、はじめて特派員として着任したが、取材の要領も目下勉強中とのこと。実直そうな人で、「新政権ができて、韓国の経済の現況についてどう思うか」と遠慮がちに切り出した。

 日頃勉強していない話だ。とっさに、当時日本の新聞によく出ていた「妓生(キーセン)外交」の話を持ち出した。本当は失礼な話なのだがほかに知識がないのでやむを得ない。

 それは、日韓基本条約による援助がまだ効果を発揮できず、韓国では外国人に対し、伝統的な慰安婦であるをキーセンによる接待だけが盛んで、そこからなかなか抜け切れない、という観察である。

 その後、「漢江(ハンガン)の奇跡」と言われる成長を遂げ、今日の韓国の経済的地位を築き上げた大統領だ。新聞記者は申し訳なさそうな顔をしたが、「そのうちよくなりますよ」という双方の結論で彼は帰って行った。

 しかし、大統領夫妻は暗殺者の凶弾に倒れた。また、日本の陸軍士官学校出の大統領を快く思わなかった人も少なくない。朴槿恵大統領は、そんな過去を背負った人だ。デモの中心をなす若者は、どこまでそんな知識があるのだろう。
 

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2016年11月22日 (火)

足るを知る

  禍莫大於不知足――「禍(わざわ)いは、足(た)るを知らざるより大なる莫(な)く」と読む。中国の古典『老子』の中の一節である。西欧では、16日の記事「かけつけ警護、やっと社説に」で、クラウゼビッツの「戦争論」がナポレオンの時代から、戦争の実態・本質をついた名著として読み継がれているということを書いた。

 ところが中国では、何と紀元前5~6世紀頃に現代でも通用する兵書を孫子が書いており、上の老子も戦国春秋時代を背景に、鋭い観察眼で戦争の実態を明らかにする戦争論というべき文章を残している。江戸時代の武士は論語など「四書五経」を教養の糧とした。

 しかし、現代では軍事をつかさどる政治家には全く通用しない。これは、日本の安倍首相や稲田朋美防衛相もさることながら、中国の習金平主席でさえ心得ているかどうかはなはだ心もとないと言わざるを得ない。老子については、4年前に本塾で「老子の訓え」を書いているので、参考までにリンクしておく。

 冒頭の文意は、既に足りているのにそれを知らず、欲張って身の丈以上のことを成し遂げようとすると必ず失敗するということである。囲碁の金言「むさぼるなかれ」と同じ意味だ。同文の前後を含め、金谷治『老子』講談社学術文庫では、こう解説する。

 世界じゅうに道理が行われて平和であるときは、早馬は追いやられて畑の耕作に使われるが、世界じゅうに道理がなくなって乱れたときには、軍馬の活動が都の近くでも起こるようになる。

 戦争のもとはといえば、それは諸侯たちの私的な欲望だ。欲望をたくましくするのが、最大の罪悪であり、満足を知らないのが最大の災禍であり、物をむさぼりつづけるのが、最もいたましい罪過(あやまち)である。だから、満足を知るというその満足こそは、永遠に変わらない誠の満足なのだ。

 日本は日清戦争に勝ち、日露戦争に勝った。両戦争とも「自衛のため」という理屈は、苦しいながらも立たないわけでもない。しかし、第一次大戦で敵ではない中国の山東半島のドイツ租借地を攻撃、青島を占領して日本の利権獲得を目指す「対華21カ条要求」を中国につきつけた。

 それでは足りず、満州で鉄道爆破という自作自演のもと満州事変を起こして傀儡政権・満州国を作り、事実上日本の版図にしてしまった。その結果が第2次大戦の敗北につながっていく。まさに「足るを知らなかった」のである。

 ソ連は、アフガニスタンで手痛い失敗をし、崩壊に導かれた。アメリカは、オバマになってそれに気が付き始めているが、トランプに変るとどうなるか。日本はとっくに「足るを知る」境地になくてはならないが、大国主義で中国と張り合って真の満足から遠ざかり、痛ましい罪過の繰り返しになるこ知らないでいる人が多すぎる。

 どうだろう。中国古典に親しみのある日中韓で、「老子研究会」でも開催したら――。
 

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2016年11月20日 (日)

本当はこわい韓国の危機

 韓国朴槿恵大統領糾弾の空前規模のデモが繰り返される。韓国情報は、いやに微細にわたる面と、なにか空を掴むような的の見えない面と両方ある。塾頭が危惧する面は、南北の偶発的衝突である。

 中国関連では、今にも尖閣諸島に中国が攻めてきて占領、その矛先は次に沖縄に向けてくる、といった言説をなす「かくれ右翼」が日本に蔓延している。大坂の機動隊員が「土人とかシナ人」という暴言をはいたのは、裏に日本の安全を確保するのに反対するのは「日本人ではない」という隠された意図がある。おそらく、上司などの言葉の受け売りだろう。

 しかし、韓国については、心の底に「ざまー見ろ」といった嫌韓感情を満足させるものがいても、あまり戦争をイメージする人はいない。しかし、北にとってなにか仕掛けようとするなら、このような韓国の混乱状態は千載一遇のチャンスである。

 核実験やミサイル発射など、アメリカの権威をからかっているだけで、本当はそんなに危険ではない。北対韓国・アメリカは、休戦協定はあっても、法的に戦争状態が続いているのだ。

 北の一部跳ね上がり分子がことを起こそうとすれば簡単だ。それこそ、韓国に潜り込ませた工作員に仕事をさせ、それできっかけを作ればいい。しかしそんなことになりそうにもないことは、北が、事件発覚後砲兵部隊の演習を一度金正恩視察が視察したという程度で、それがオープンであるだけにかえって常態どおりだと言える。

 そして最大のポイントは、韓国の軍部が朴大統領を支持し、野党や国民のペースに乗らないということだ。従って在韓米軍に変化がなく、その抑止力が利いているということになる。

 日本にとって何が危険かというと、北がことを起こせば当然地上軍の戦闘になる。ソウルが火の海になる可能性も高い。アメリカが韓国支援を決意すれば、当然在日米軍海兵隊参戦を考える。

 日本が協議を受けるとすれば、賛成せざるを得ない。そこで在日米軍・抑止力論が正当化され、日米居留民救出や難民輸送に自衛隊との共同作戦が組まれ、安倍安保法制のもと、一挙に憲法を無視した戦乱に巻き込まれることになる。

 それが、最大の危険なのだ。そういった危険を冒して戦争に関与し平和を取り戻しても、その先、朝鮮民族から感謝されることは金輪際ないといっていいだろう。

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