憲法

2020年3月 9日 (月)

ついに出ました「戒厳令」

 3月5日の「安倍首相のいそばが回れ」で、内閣の緊急事態法案上程の動きに「戒厳令」という言葉を使い、さらに前々回、マスコミの突っ込みがなまぬるいことから「緊急事態宣言と戒厳令」と題名に戒厳令を入れて、その危険性を強調した。

 今の人は「戒厳令」ではピンとこないのかな、とも思ったが、9日の毎日新聞夕刊に載ったほぼ一面全部を使った「特集ワイド」で、ようやく出てきた。

 大見出しは、どさくさ紛れに「改憲実験」?、とある。ブッシュ大統領による戒厳令の例を引いたあと、こう続ける。

戒厳令とは非常事態に際して憲法を停止し、国民の権利を制限して議会の力を弱め、政府に絶大な権限を与えるものだ。日本でもこれを想起させる動きが一部で顕在化している。(後略)

 現行日本国憲法にはこう書いてある。

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その権利は国民がこれを享受する。(中略)われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 ということは、緊急事態法案は、書き方によって憲法が禁止している法令を作ろうとしていることになる。

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2020年3月 5日 (木)

安倍首相の急がば回れ

 新型コロナウイルスの感染がさらに拡大した場合に備え「緊急事態宣言」を可能にする法案の早期の成立を目指すことに安倍内閣は懸命になっている。

 与野党の党首会談を通じて早期成立を目指しているが、野党側にさしたる抵抗はない。

 安倍首相の下心が別のところにある、という論調は全く見えてこない。現行憲法を変えたいという安倍首相の執念を軽く見ているからだ。

 大日本帝国憲法には「戒厳令」の規定があった。内乱・戦争・天災等国家的な危機が発生した場合、既存の法令にとらわれず緊急事態に当たっていいとする、特殊な国家権力である。

 これは、軍隊の最高指揮者指定とともに、憲法に明記されることが外国の例でも多く見られる。

 大日本帝国憲法第十四条では「天皇ハ戒厳ヲ宣告ス」とだけ記されており、二二六事件では、これが発動された。

 緊急事態には軍隊を使えるというのが、いわば常識になっている。日本には、軍隊がないのでそんな条項はない。自然災害など緊急事態への自衛隊出動は、自治体の長の権限として要請される。

 「緊急事態宣言」という言葉が法律にでてきたのは、平成24年の民主党政権時代で、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」という時限立法に始まる。

 しかしその前、同年4月に自民党の日本国憲法改正草案に「国家緊急事態宣言」という言葉が使われていたのだ。

 そこでは、9条の自衛軍創設に合わせ、98条・99条にこの改正案の骨格をなす条文が位置づけがされていた。

 その宣言がなされる条件として、

・外部からの武力攻撃

・内乱等による社会秩序の混乱

・地震等による大規模な自然災害

・その他の法律で定める緊急事態

そして緊急事態宣言がなされた場合、次の段階へと向かう。

・内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定する事が出来る

・何人も公の機関の指示に従わなければならない

・衆議院は解散されない 

・議員の任期及び選挙期日の特例を持たせることが出来る

 などを明記している。

 安倍首相は、コロナウイルス対策として、現有の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」ではあきたらず、コロナウイルス対策に便乗して、緊急事態宣言の強化を先取りし、9条改正への地ならしをしておこうという魂胆であるとしか思えない。

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2019年11月20日 (水)

トランプ流は憲法違反

【ワシントン時事】ポンペオ米国務長官は18日、米政権の従来の方針を転換し、イスラエルが占領するヨルダン川西岸のユダヤ人入植地は「国際法に違反していない」という認識を示した。

 入植活動容認につながるだけでなく、イスラエルのネタニヤフ首相が打ち出した西岸の一部併合を後押しする可能性も指摘される。パレスチナ側は米政権への批判を強めており、トランプ大統領が目指す中東和平の仲介は現実味を失っている。(時事ドット・コム後略)

 今日の新聞で一斉に報じられている内容だが、「国際法に違反」云々の言葉がでてくる。本塾でも度々触れているが、国内法と違って、違反したから警察沙汰になるという性格のものではない。早く言えば国際ルールを無視するので信用されなくなる、ということに尽きる。

 そういったルール作りに尽力したのは、アメリカのウイルソン大統領とルーズベルト大統領であった。そして、その破壊に血道をあげているのがトランプ大統領ということになる。韓国の文大統領もその点ではひけをとらない。

 日本は、日韓併合のあと第一次大戦終結までは、国際法を尊重する模範的な国だった。

 日本へ国際法を最初にもたらしたのは、幕府の命でオランダに6年の留学した経験を持つ榎本武揚である。帰国後、海軍を率いて最後まで官軍に抵抗、北海道五稜郭にこもったが、勝利する見込みがなく降伏を申し出た。

 この際、『万国海律全書』が戦火にあって失われることは、国家的損失となるといって官軍に渡している。当時の国際法解説書である。この義挙に官軍も答え、最後の宴会のための酒食を贈るなど平和裡の開城となった。

 明治の元勲・黒田清隆は榎本の学識の高さに敬意を持っていた。榎本や大鳥圭介らが賊軍首脳として逮捕された後、死刑にする動きもあったが、助命嘆願のため頭を丸めて奔走し、釈放が実現する。

 その後榎本は外務卿をはじめ各大臣を歴任、大鳥は朝鮮公使として明治政府を助ける。

 明治新政府は、日本が国際法を守る近代国家であることを海外に示すことが急務になっている。日米修好条約には治外法権などの不平等があったのを、日清戦争をわずか半月後に控えた1994年7月16日に、日英通商航海条約調印を機に解消させることに成功した。

 それを台なしにしたのが、満州事変と第2次大戦ということなる。そして戦後を迎える。

 安倍首相流にいえば、日本国憲法はアメリカに押しつけられたことになっているが、全体を通読すると、アメリカなど戦勝国が中心となってまとめた国連憲章の影響を強く感ずる。

 憲法の前文は、「諸国民の協和」に始まり、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ことを宣言、「われは、平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」とつなぎ、最後は「われわれは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」でしめくくっている。

 ここで、国際法の普遍的価値を確認し、それに従う義務まで明文化している。

 つまり、国際法無視は日本では憲法違反になる。この憲法を厳守することで、日本の平和が担保され、国際的地位を高く保つことが可能になっていることを自覚しなければならない。

 戦中を除き、日本は国際法尊重の優等生であったのだ。世界はそれを認めている。

 

 

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2019年10月23日 (水)

遠のいた竹島問題+即位行事

 前回、尖閣問題で中国と話し合うチャンスをさぐれという文を書いた。領土問題ではあと竹島と北方領土がある。

 韓国が戦後になって李承晩ラインを引いたことにより、島根県の竹島は韓国が実効支配、そのまま続いている。

 この場合も、明治以前は所属がはっきりしていなかったことや、日本が武力を行使して取り返すということもできないため、占有実績を認めざるを得ない。そのかわりに、日本の入会権も確立するというような解決方法を考えたことがある。

 しかし、それはなくなった。徴用工問題、慰安婦問題など話しあって何かを決めても、後であっささりほごにされるような国とは、まともな交渉ができない。

 文政権に大きな転換がなければ、動こうにも動けないという大問題の解決の方が先になった。

 その韓国からも天皇即位祝賀行事に親日家で知られる李洛淵(イナギョン)首相が参加した。

 191の国・機関が参列したということは、世界のほとんどの国が参加したと言っても過言ではない。

 世界は、天皇が平和憲法を国民統合の象徴とする存在であり続けようとしていることと、即位礼がその確認の場になることも知っている。

 その中で日本共産党が欠席し社民党も4議員のうち3人が欠席した。その感覚の鈍さは、これまた世界級である。

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2019年10月21日 (月)

世界の常識と逆の韓国憲法

 徴用工問題に関連して『[新版]世界憲法集、第2版』岩波文庫、より収録。

【スイス連邦憲法】
第193条 全面改正⓸国際法の強硬規範は、侵害してはならない。
第194条 部分改正⓶部分改正は、事項の統一性を保持しなければならず、国際法の強硬規範を侵害してはならない。

【フランス憲法】第54条[違憲の国際協約と憲法の改正] 憲法院が、共和国大統領、首相、いずれか一方の議員の議長または60名の元老院議員の提訴に基づき、国際協約が憲法に反する条項を含むと宣言した場合には、当該国際協約を批准あるいは承認する許可は、憲法を改正した後でなければなしえない。
第55条[条約の法律に対する優位] 正規に批准もしくは承認された協定は、相手国による当該協定もしくは条約の適用を条件に、公布と同時に法律に優位する効力をもつ。

【大韓民国憲法】
附則 第5条[憲法施行当時の法令および条約の効力] この憲法施行当時の法令および条約は、この憲法に違背しない限り、その効力を持続する。

  先輩国の国際法優位が常識となり、日本の憲法では、「国際法規の遵守」と規定するだけですが、韓国憲法は国内法優先のように見えます。

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2019年7月22日 (月)

参院選結果、まあまあだな

 参院選の結果が出た。以下主要政党別議席数の増減である。(yomiurionline)

    (新議席)(公示前)(増減)
   自民    113   123      -10
   公明    28   25   +3
  立民     32   24   +8
  国民     21   23    -2
  共産     13   14    -1
  維新     16   13   +3
  社民     2     2    0

 マスコミの評価は、「自公勝利改選過半数、改憲勢力3分の2届かず」(毎日見出し)である。

 反戦塾の評価は違う。戦後しばらくの間、政治姿勢として「保守反動」という言葉があったが最近は聞かない。今使うとすれば、歴史修正主義者が多い安倍首相周辺の一派をいうのだろう。

 公明党は、立党時から「中道」が党是で、「保守反動」とは距離を置く。自民党の改憲案に同調するどころか、反対しないと党が持たないだろう。わずかであるが3増は大きい。その破壊力は、自民の10減、立民の8増とともに、維新の3増を消して余りある。

 塾頭としては、まあまあの結果である。

   

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2019年6月22日 (土)

戦争と武力行使の差

 今朝のNHKニュースが報ずる。

(前略)トランプ大統領は21日、ツイッターで、イランがアメリカの大型の無人偵察機を撃墜したことの報復として、20日夜に3か所への攻撃を実際に予定していたと明らかにしました。

そして「何人が死ぬかと聞いたら、軍の高官からは150人との回答があったので空爆が始まる10分前にやめさせた。無人偵察機の撃墜とは釣り合いがとれないからだ」と投稿し、150人が死亡する可能性があると聞いて、攻撃のわずか10分前に中止を指示したと明らかにしました。(後略)

 トランプは「戦争をする気はない」とその前に言ったばかりだ。われわれの目から見ると、世界最大の指導力を持つ国の大統領が、どうしてそうころころ変わるのか不思議に見える。

 戦死者の数でやるかやらないかの判断をする。まるで不動産屋のマンション建設の判断入居希望者の予測次第で決めるのと同じじゃないか、と思うのだ。

 しかし、日本の戦前を見るとよくわかる。満州事変も支那事変もそれぞれ鉄道爆破とか末端による偶発的な発砲事件などに対する日本人保護や駐留軍自衛を掲げ、反抗組織の掃討を口実に戦火を拡大させて、建前上は「戦争」でなかったのだ。

 トランプの戦争には反対するが、現地の派遣米軍の軍事行動・武力行使を、必要に応じ立案、実行したり撤回するというのは、日常の作戦計画のひとつで、軍隊の最高指揮官として当然のこと、と言えばその通りだ。宣戦布告と違って議会の承認はいらない。

 つまり、イランの革命防衛隊をテロリスト集団として戦争を仕掛ける準備はできたが、国際的に認められるに至らず、「戦争」と「武力行使」を分けて考えているのだろう。トランプにとっては、イランが挑発に乗って戦争になった方がいいのかも知れないが、イランはその手に乗ってこない。

 そんな使い分けができるのか。わが憲法の9条、章の見出しには「戦争放棄」としか書いてないが、大丈夫。「武力による威嚇又は武力行使」も戦争と同列に置いている。これがあれば、首相案のように自衛隊の存在を9条2項に入れてみたりしても、第一項がある限り海外における米軍との共同作戦が不可能であることがよりはっきりする。

第九条 [戦争の放棄、戦力の不保持・交戦権の否認]日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 自衛隊を憲法に明記し、先島諸島に駐留する自衛隊を増強しても、尖閣列島に上陸を試みようとする中国軍を実力で排除できない。憲法を厳格に解釈すると「国際紛争を解決する手段」とし武力行使はできないことになっている。竹島も北方領土も同様である。漁業権の調整や鉱物資源共同開発などで妥結点を探す交渉に入れるような雰囲気作りをする。それを日本国憲法は求めているのだ。

 ただし、ミサイル防衛システムの充実や領空・領海への侵入監視活動は、自衛のための重要な任務であるというのが、塾頭の考えである。

 

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2019年6月 2日 (日)

こどもにつたえる日本国憲法

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日本国憲法は、人類の歴史からの

私たちへの贈り物であり、

しかも最高傑作だと私は信じています。

日本国憲法の力で、

世界中の問題を解決することができれば、

私たちは人類の歴史に、

まことに大きな贈り物をすることになるのではないでしょうか。

(写真の図書の文末より)

 

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2019年5月 3日 (金)

憲法を使う心

 憲法記念日とは変な日だ。祝日法によると、憲法記念日は、「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。」ためとなっている。

 しかるに、今日新聞に載った各党の談話を見ると、自民は改憲一色、公明が評価・礼賛と加憲。立憲が危機的状況の強調だけ。共産・社民は、それに護憲を加える。国民民主は、政府を非難するものの国民投票法にもふれる。維新の会、希望の党は独自の改定案。

 「お祝いの日」からは遠ざかってしまったようだ。

 日本は、憲政始まって以来130年、敗戦で現憲法に全面改定した以外は、一度も中身を変えていない。

 これに比べて韓国は、70年間に6回の大改定を含め9次にわたる憲法改正をしている。現大統領が12代目だから、その都度変更しているようにも見える。日本と違って、改定しやすい条文なのかと思ったが、発議や国民投票など条件は、日本とほぼ同じであった。

 改定は、大統領独裁を制限する中身が多かったようだが、前大統領が罪人になったり自殺したりする頻度も高く、大統領の地位低下は座視できないところまで来ているのではないか。その分だけ議会の権力が目立つようになり、政党間の権力競争も激しくなる。

 行政・立法・司法の三権分立も憲法上他の先進国と同じだ。しかし、こうころころ憲法が変わると、どうしても憲法の重みが軽くなり、立法が強くなる。その分、司法・行政に立法への「忖度」が働くのではないか。文大統領を見ているとそんな気がする。

 議会が力を持つことは、一見民主主義が進むように見える。ところが、選挙民が人の吟味をおこたり、慣習化した投票行動をくり返すようになると弊害が表面化する。

 最近の、韓国政府の日本に対する理不尽な態度も、そんなところからきているような気がする。

 

 

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2019年1月31日 (木)

首相の屁理屈

昨日の国会本会議で、首相は憲法改正をめぐる施政方針に関して次のように見解を述べた。憲法9条への自衛隊明記は「国民のために命を賭して任務を遂行する隊員の正当性を明文化することは国防の根幹に関わる」という理由だ。

1年前も同じよな発言をしている。本塾は自衛隊が敵国を仮想した「軍」という殺人組織を想定し、他の条文から切り離すことが目的だと見ている。命がけの任務なら警察・消防でも同じではないか。現にこれまでに殉職した人数は自衛隊の比ではないだろう。何度も指摘してきたことだ。

どうしても憲法に入れたいのなら、66条の文民統制の「文民」は日本語にないシビリアンの和訳をGHQから押し付けられたものだから、「自衛隊員は……」にでも改めればいい。

素人考えかも知れない。しかし野党は予算委員会などで、こういった素人でもわかる理屈で首相を追いつめることがどうしてできないのか不思議だ。国防・自衛を担保するのは、現行憲法の存在そのものだ。

 

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