経済・政治・国際

2017年2月20日 (月)

トランプ発言は国家犯罪

AFP=時事】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がフロリダ(Florida)州で18日に開いた集会で、実際には起きていないのにスウェーデンでテロ攻撃があったかのようにとれる発言を行い、ソーシャルメディアで嘲笑の的になっている。トランプ政権の関係者からは実在しない虐殺や攻撃に言及した発言が相次ぎ、失態をさらしている。

トランプ氏は支持者を前に行った演説で「ドイツで起きていることを、スウェーデンで昨晩起きたことを見てほしい。スウェーデンでもだ。信じられるだろうか。スウェーデンは(移民や難民を)多数受け入れている。これまで考えもしなかった問題を抱え込んでしまった」と語った。

 

スウェーデン政府は、この発言が何をさすのか説明を求めている。ソーシャルメディアからでさえ嘲笑を受けているような嘘を公然と、しかもアメリカ大統領の立場でまきちらす。

 

金正男事件も、国際常識をぶち破るような前代未聞の国際犯罪だが、世界トップの大国大統領が、このような虚言を広言し、政治を左右させようとするのは、明らかな国家犯罪ではないか。

 

マスコミ、識者、司法、国際機関などなどは、ただ彼を冷笑するだけでなく、正面から「大統領のデマゴーグは、市民を愚弄するもので犯罪行為である」と告発し、お灸をすえるべきではないか。あまりにも目に余る。

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2017年2月13日 (月)

安倍首相ご満悦

 世界中に注目された日米首脳会談が終わった。有力各国が安倍首相に対して示した反応は、トランプ大統領の言動に唯一渋い顔をしない日本のトップが会談、というものだった。

 たしかに映像で見ると、これまでにない安倍首相の喜色満面笑顔と、トランプの表情の堅さ、それを握手の仕方やゴルフの効果などをあげて、言葉で「成功」というぎこちなさが、いやというほど目立った。

  トランプは、7カ国の入国禁止大統領令が司法当局から違法とされ、控訴審でも破れた。最高裁に持ち出しても、「自分が正しい」という無茶は通らないということがだんだんはっきりしてきた。

  就任早々の命令が窮地に立っていたのである。外交でも日本・中国などへの選挙前の強気発言は雲散霧消、公約違反続出といわれても仕方がない状況になりつつある。

  そこへ訪れたのが安倍首相。オバマ時代と中身が同じ言質を得ただけで安倍外交の勝利という顔ができる。一方、トランプも異例の過剰接待で首脳会談の方にメディアの目を向けさせた。入国禁止問題に煙幕を張ってアジアの安定を誇示する機会を作ったのである。

  ただ、安倍首相として、貸しを作ったことにはならない。なぜならば、日本の大新聞が社説の見出しにさえ使う「暴走」政治は変わりようがないからだ。米国民のトランプ人気はそこに根ざしている。同様に安倍内閣支持率もピークを迎えたあと、低下に向かうことになるだろう。

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2017年2月 8日 (水)

都議選の震度は?

産経新聞によると、自民党の二階俊博幹事長と日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)が6日夜、東京都内のホテルで初めて会談した。もともと維新の党是であった都構想や、2025年万博の大阪誘致などに関して話し合ったものと見られる。


 二階氏は、これまで維新について特段の関心を持っていなかったようだ。一方、橋下氏が去ってからの維新は、政策、指導者ともに求心力を欠き、自民党にすり寄って存在感を保つしかなくなったと見られる。公明党が自民党の思うままに動かせなくなったということも、にらんでいるのだろう。


 維新の現状はどうやら、かつての「みんなの党」の衰退と二重写しになってきた。渡辺喜美が旗揚げしたころは、与党と第一野党の間に立つ第三極としての役割を果たそうとした。もっと古いことをいうと、のちに自民党を脱退した新党さきがけや日本新党など新党ブームが続き、非自民の細川内閣にまで発展したことがあるが、そんな勢いは今やない。

 

新党を構成する議員は大きく分けて2通りある。特に保守系議員に多いが、議員になりたいが世襲議員のような地盤がなく、自民党の公認も得られない。タレント、弁護士、学者などの経歴さえあれば、新党の看板を背負うことで当選の可能性があるということが動機なのだ。

 

もう一つは、大所帯の政党に属していながら波に乗れず、執行部とケンカ別れして新党に鞍替えするケースだ。このような政治権力目当ての寄り合い所帯では、政権が遠ざかるにつれて衰退の一途をたどるしかない。

 

そんな中で新党創設の新型が現れそうだ。小池都政方式である。政治家希望者が整理しきれないほど集まり、7月の都議選では 厳正な試験を通り抜けたメンバーの中から60人ほどを「都民ファーストの会」の名で都議候補に立てるようだ。維新は、いまや有力な候補者の不足に悩むなど落ちぶれてしまった。

 

小池新党と同数前後の候補を予定している自民党とは、正面衝突になる。公明党は、伝統的に都議選に党の命運をかけ、全員当選を目指す。その公明党は自民都連と決別し、小池新党の与党としてのぞむことを決めている。自民党は都政への支配力を失い、民進党も共産党に及ばない状態のままだろう。

 

これが、地殻変動を起こし国政に少なからず影響してくることはさけられない。自信をつけた公明党は、より安倍路線に批判を強め末端の意向に沿わない法案には自主投票という手で抵抗する。

 

また、4野党連携は目途が立たず失敗し、共産党をのぞく3党が新党を結成する。自民党内も激動する世界の政治情勢に定見を持っていない外交姿勢や、陳腐なアベノミクスに批判が出て動揺が表面化するだろう。新年度に向けた塾頭の密かな期待である。

 

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2017年1月31日 (火)

トランプが破綻する日②

 このところ、明けても暮れてもトランプ、トランプ――。前回と同じ書き出しとは情けない。しかし「世界が破綻する日」でないことは、ひたすら信じている塾頭である。

 

トランプは、中東・アフリカ7か国からの入国を一時禁止した。イラン・イラク・シリア・イエメン・ソマリア・スーダン・リビアである。この7か国出身者がアメリカで大規模テロを起こしたなどは聞いたことがない。

 

強いて一致点を求めるとイランを除いて国内治安が定着せず反米過激派がいるということか。イランはイスラエルと妥協しないそれなりの強国だということと、米国大使館占拠事件以来の宿敵である。

 

9.11事件の首魁とされたウサマビンラディンは、サウジアラビア人でかくまわれていた場所はパキスタン国内であるがいずれも7か国に入っていない。そのほかのメンバーもUAE、エジプト、レバノン出身なのに7か国からは外されている。

 

 なぜか、タリバンの抵抗で米軍が撤兵できないでいるアフガンも入っていない。7か国に入っていないことを不満に思っている国は、北朝鮮か?。あれほどICBMで脅かしても歯牙にもかけない。いや、正恩は「脅しが利いているから入れられない」というかもしれないが……。

 

大統領令がそれほどいい加減な思い付きで、実行する上でも一部修正を施さなければならないというお粗末さだ。ヨーロッパでも、英・独の政界をはじめ公然と反対・疑問の声が上がっている。

 

これに対して、安倍首相は30日の参院予算委員会で7か国の入国規制措置について「米国政府の考え方を示したもので、コメントする立場にない」というお粗末答弁。追及する民進党は「思考停止」だと追及するが、質問をする前に反対の声明を出したということも聞いていない。

 

楽天の三木谷社長が「米国で起こっていることは寂しすぎる。特定の宗教、特定の国だけを差別的に一律排他することがあって良いのか? 許されないと思う」とツイッターで批判。その他の大手商社なども軒並み疑問視している。

 

 トランプ離れは、日本でも政界抜きで進んでいるようだ。

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2017年1月29日 (日)

トランプが破綻する日

このところ、明けても暮れてもトランプ、トランプ。ポピュリズムという言葉も聞きあきた。彼の思考原理はそんな系統だった単純化したものではない。思いつきで支離滅裂と言ってもよさそうだ。

 

ヒトラーでさえナチスを率いる彼の論理があった。地球温暖化の理由が、人類の発する排気ガスのみでないにしろ、プラス効果になっていることは科学的に証明され、世界中がそれを認めて防止に向けて協定を結んでいる。それを無視し破棄しようするのだ。

 

人種差別の禁止、信仰の自由、拷問の禁止なども人類の長い歴史の中で幾多の危険を乗り越えて手に入れた貴重な財産だ。それをそのまま政策化しないにしても発想は生かして人気のかてにしようというのがトランプ流だ。

 

一時流行した唯物史観とか、発展段階説などは、最近あまり聞かれなくなった。しかし、それが生まれた哲学的、論理学的背景や人類の進化発展を否定するわけにはいかない。もちろん一歩前進二歩後退という現象はあるが、得られた経験や知識をないがしろにして歴史を逆流させるほど人類はおろかではない。

 

そう古くはないアメリカの歴史でもそうだ。出身地の違う多くの人々が集まって国(州)とし、そのまま合衆国として実力世界一の座を勝ちえたのだ。モンロー主義という時代はあったが、ヨーロッパなどの干渉を拒否する政策で、排他的、攻撃的なトランプ流とは角度が違う。

 

各国は今のところ決定的な対立を避け、様子をうかがっているように見える。一番同調が得られやすいと思われたイギリスでさえ、対ロシア政策など簡単に歩調を合わせることができない問題が多い。

 

一時的なフィーバーの時期が過ぎれば、経済は逆効果が表面化し、支持者の期待を裏切って物価高におそわれたり、安全保障は、より多くの「敵」をつくることになり、軍事費が増大する。また、イスラム教原理主義やアラブ強硬派などによるテロにより多くの口実を与える。かつて大使館爆破事件など多発したことがあるので鎖国しても防ぎようがない。

 

こうして、アメリカの国内からまず弾劾の声がたかまるのではないか。塾頭はそんな気がしてならない。

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2017年1月21日 (土)

トランプ&安倍演説

ひとことでいって、双方ともこれまでの発言を控えめに反復しただけで新味がなく、取り上げることをやめようかと思った。ニューヨーク株式もより悪い発言もなかったので微騰に終わった。ただ、外交政策では日米間に思惑の違いがそのまま残されている感じだ。

 

日米安保とかTPPなどだが、日本政府に危機感のようなものは感じられない。それに比べると、これまでトランプが公言しているアメリカの外交政策は、かなりドラスチックである。

 

メキシコの国境の壁はともかくとして、ロシアとの関係改善、それに伴うシリア政権強化、イラン敵視、ユダヤ人幹部の起用強化に伴うイスラエル支持、それに対するムスリムの反発などがあり、中東和平は見通せなくなった。

 

ヨーロッパでは、英国のEC脱退を支持し、NATO離れもありそうだ。中国とは、台湾重視や貿易政策で溝が深まる可能性がある。北朝鮮に対しては、ICBM防護システム強化政策が伝えられ、日本に協力要請があると期待する向きもあるかもしれない。だが、米本土に向けた弾道は、ロシア上空に近いのでロシアと協力する方が合理的だ。

 

国連はどうするのだろう。聞こえてこないが、世界最高の負担金を減らせとは言わないのだろうか?。

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2017年1月15日 (日)

《危》、天皇はずし

 大統領大荒れの韓国とアメリカ、日本の首相は兆単位のおみやげをぶら下げて外遊三昧。そんな中で気が付かないような危険極まりない「天皇はずし」が進んでいる。天皇の退位に関する「有識者会議」なるものがあって近く結論を出すという。

 安倍首相は「有識者会議」を多用する。「安倍首相の独断ではないよ」という煙幕を張る道具で結論は最初から決まっている。想像通り、現・天皇一代に限った特別立法で対処し、皇室典範は附則でそれを認める、というようなことだ。

 それも、平成30年を区切りとし、2019年元旦から新元号にする。それが、天皇や皇太子の意向であるのかどうかもわからない。皇室に関する重要事項は皇族代表2名を含む「皇室会議」の議を経ることが法律で決まっており、有識者会議などとは権威が違う。

 ここでは、皇室会議を開催せず、退位問題に皇族を参画させないという意見が出ているとされる。天皇は内閣の助言に基づき、自分自身に関する法案を、何の相談もないままサインだけさせられる。その理由が、憲法に「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とあるから、国権の最高機関である国会が決めることで、それ以外の意見は不要、というものだ。

 皇族の意見、天皇の意向は斟酌されない。かつて前例を見ない不遜・不敬な扱いで、人権無視の極みである。国賊と言っていいほどのレベルである。さきの戦争でも、開戦・終戦の際、それぞれ複数回の御前会議が開かれた。

 旧憲法下では国の意志を決める最高機関である。しかし憲法の趣旨に従い、天皇の積極的発言を控えていた。開戦前は「戦争やむなし」の機運が支配していたが、昭和天皇の意向は「反対」だった。その気持ちは明治天皇の御製で示された。

 よもの海
 みなはらからと思ふ世に
 など波風のたちさわぐらむ

 終戦の時の御前会議は、敗戦を意味するポツダム宣言受諾派と徹底抗戦派が同数となり、天皇の裁定を求められる中で、終戦を決めたのは昭和天皇の決断だった。

 新憲法第一章は「天皇」である。それにかかわる重要事項の変更について、国会だけで決めるという。それも紛糾回避のため、特別立法とし、皇室典範は附則改訂で済ますという姑息な手段を考えている。

 そうまでして安倍首相の思うままに政治を操ろうとする。また、過半数を握っているから当然だと思っている。首相は、自らを「立法府の長」と言い間違えた。

 自民党総裁だからという錯覚からか、あるいは本気でそう思っているのかも知れない。憲法改正に向けたトレーニングだとすればあまりにも危険だ。これに対して民進党も不感症的対応しかできない。議論を避ける情けない日本になったものだ。

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2017年1月 9日 (月)

新時代、国連は不要?

 一昨年が戦後70年だった。去年は日米開戦75年。安倍首相がハワイに出向いた。それで、時代の区切りをつけたつもりになっている。マスコミもそういう観点で大きく報道していた。

 折から、アメリカのトランプ大統領の出現やヨーロッパ政界の地殻変動気運もあって、時代の劇的変化の始まりとする論調が巾を利かす。これを、前回の「超楽観年頭所感」として取り上げ、果たしてそのような即断をしていいのかどうか、疑問を呈した。

 終戦の年は、8月15日をはさんで6月26日に「国連憲章」がサンフランシスコで調印され、10月24日に発効したが、「それから70年」という報道は大きく取り上げられなかった。同様に、国連憲章そのものもこれまで広く知られているとは言い難い。

 前回の記事の付録として、以下にその「前文」を記録する。

     ----------------------
われら連合国の人民は、
われらの一生のうち二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、
基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上を促進すること、
並びに、このために、
寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、
国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、
共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、
すべての人民の経済的及び経済的発展を促進するために国際機関を用いることを決意して、
これらめ目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。
よって、われらの各自の政府は、サンフランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機関を設ける。
     ----------------------

 気が付かれた方も多いと思うが、「日本国憲法」の前文とどことなく似ているのである。最初に出てくる「戦争」という文字は、以後憲章全文を通じて一切出てこない。第一次大戦後に制定された不戦条約が生きているという前提に立つからである。

 その後の戦争は、もっぱら自衛という名目をつけて行われた。これは、機会を見て別にとり上げたいが、「日本国憲法」はアメリカから押し付けられたというより、このできたばかりの国連憲章を下敷きにしていると見る方が当を得ている。

 現在、加盟国は193か国に達する。安保理を中心とする国連改革などの要請は強い。しかし、常任理事国5か国の拒否権で機能不全と言われた時代も、変化のきざしがある。加盟国が地球規模に達したため、総会の3分の2以上という数の前には大国も抵抗しがたくなっているのだ。

 安保理以外の貢献も無視できないだろう。仮にトランプ新米大統領が「新時代になったから国連は不要」などとコモン・ディーセンシー(市民の良識)に逆らう発言をすれば、世界の笑いものになり、そこでアメリカも終わりであろう。

 アメリカが主導して作られた前文の否定は、即国連の否定につながるからだ。

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2017年1月 7日 (土)

超楽観年頭所感

 活字離れというが、塾頭は毎朝新聞を見るのを楽しみにしている。正月休み中は、今年の予測、抱負とか希望的観測といった「おめでたい」記事が通例となる。ところが今年は違う。まず「トランプ」の名が大津波のように紙面を覆う。

 同時にヨーロッパ、アジアでも何十年来経験したことの無い「大変化」がありそうだと不安をあおり、お屠蘇気分もすっ飛んでしまう勢いだ。

 その原因は、世界を覆う「反・グローバリズム=孤立主義」「ポピュリズム=衆愚政治、大衆迎合主義」「右傾化」などであり、それを動かしているのはマスコミを凌駕したSNSなど、無責任な過激情報だとする。

 これは、マスコミ媒体の「敗北宣言」である。そういった意味で、当初ブログに殺到した匿名、無責任、過激発言を旨とする「ネット・ウヨ」は、同じネット論陣でもブログから離れてしまったようだ。それを嘆くべきか喜ぶべきかは別として、一条の希望の光がないわけではない。

 戦後、民主主義・議会主義・自由主義、言論・討議の在り方を勉強する中で、中庸とコモン・センスが重要な位置を占めることを知った。「コモン・センス」は和製英語っぽいが、「コモン・ディーセンシー(市民の良識)の勝利」と呼ばれている状況が去年の暮れにあったのだ。

 それは、オーストリアの大統領選である。難民の排斥を訴えた極右政党の候補が46%、EUを堅持し、従来続けてきた安定への努力を訴えたファン・デア・ベレン氏の得票率は53%(いずれも出口調査)で、ヨーロッパにおける右翼大躍進の流れを僅差で破ったのだ。

 これから、フランスの大統領選があるが、極右である国民戦線のマリーヌ・ル・ペンが女性候補として浮上してきた。仮に彼女が当選すればEU瓦解に拍車をかけることになる。大戦後、ヨーロッパに恒久平和をもたらすため、叡智を集めてスタートしたのが欧州共同体だ。

 これが、国家本位のトランプ流に傾けば、これまでの努力が水泡に帰すことになる。オーストリアは小国ながら、欧州での戦争と平和に大きく影響してきた国だ。同国のコモン・ディーセンシーは、共同体の発起人であるフランスはもとより、その他の国々に波及するはずだ。安倍首相のいう「戦後レジームの脱却」などとは比較にならない重みがある。

 もちろん、トランプのように大方の予想が覆るということはあり得る。しかし、トランプ自身、大統領就任後は、コモン・ディーセンシーから大きく離れた政策はとり得ないだろう。それがなければ、与党や議会の混乱はもとより、暴動を警戒しなければならなくなる。

 そうすると、混迷を極める東アジア情勢も、ナショナリズム依存体質から脱却し、軌道修正を迫られるのではないか。塾頭の超楽観年頭所感である。

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2017年1月 3日 (火)

「獣の道」

 去年の最後に、不安な今年の世界の要素として、「テロ」→「イスラム」→「悪」という短絡思想を掲げておいた。もうひとつの短絡思想は、安倍首相がよく使う「共通の価値観」である。昔の「自由陣営」「共産陣営」の対立を念頭に置いて、「民主主義」→「自由主義」→「議会主義」を共通の価値観と表現したものであろう。

 ところが、この3つはそれぞれ異なる概念で、史上深刻な対立を生みながら17~18世紀頃、すでにルソーやヘーゲルなど、西欧の哲学者や思想家たちが論じてきたことである。

 北朝鮮の正式国名は、「朝鮮民主主義人民共和国」である。「民主主義」は飾りにつけているのではない。自由がないにしろ、為政者を人民投票で選び各段階の議事を経て決定していくという手続きは民主主義に沿っている。自由主義でないから民主主義でない、という理屈は成り立たない。

 民主主義は、多数を以て勝者とする。したがって少数者にとっては、自由が奪われる結果を生み、自由主義は侵される。だから、民主主義は時として独裁者の恰好な道具とされることもある。そのためのテクニックが情報操作・宣伝・教育であり、ヒトラーもその顕著な例にあげられる。

 中国では、人民や軍は党の指導を受ける対象であり、マスコミも党宣伝部が指導する。また北朝鮮のテレビ映像が日本でもよく流れるが、国民向け宣伝に向けた努力は涙ぐましいと言っていい程だ。

 そういった矛盾を解決する方法として、議会主義がとり上げられるわけだが、これも日本の現状をから見て、三者一体の価値観を構成するには程遠い。それについて、一時ヒトラーを支えたことのある法学者・カール・シュミットは、1988年に公刊された『現代議会主義の精神的状況』
(樋口陽一訳・岩波文庫)の中で議会主義の陥穽を次のように指摘している。

 やや難解だが、内閣支持率を高めながら、民主主義の破壊に余念のない安倍政治(「獣の道」)への危険信号として、年頭に打ち上げておきたい。

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 公開性と討論というこれらの二つの原理のうえに、立憲主義的思考と議会主義が、きわめて首尾一貫した包括的な一つの体系をなして基礎づけられている。それらは、一つの全時代の正義感情にとって、本質的で不可欠的なものと見られていた。公開性と討論によって保障される均衡が本来的に実現すべきはずのものは、まさに真理と正義それ自体にほかならなかった。公開性と討論によってのみ単に事実上のものである力と権力――自由主義法治国家にとって、それはそれ自体として悪であり、ロックが言ったように「獣の道」(way of beasts)である――が克服され、法のみが力を手にするのだと考えられていた。「力(forse)にかわる討論(discussion)」。これこそ、かような思考様式を特に特徴づけることばである。
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