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2019年12月13日 (金)

寺田寅彦85年前の慧眼

 文化が進むに従って個人が社会を作り、職業の分化が起こって来ると事情は未開時代と全然変わって来る。(中略)

 村の貯水池や共同水車小屋が破壊されれば、多数の村民は同時にその損害の余響を受けるであろう。(中略)

 各種の動力を運ぶ電線やパイプが縦横に交差し、いろいろな交通網がすきまもなく張り渡されているありさまは高等動物の神経や血管と同様である。その神経や血管の一か所に故障が起こればその影響はたちまち全体に波及するであろう。

 今度の暴風で畿内地方の電信が不通になったために、どれだけの不都合が全国に波及したかを考えてみればこのことは了解されるであろう。

 これほどだいじな神経や血管であるから天然の設計に成る動物体内ではこれらの器官が実に巧妙な仕掛けで注意深く保護されているのであるが、一国の神経であり血管である送電線は野天に吹き曝しで風や雪がちょっとばかりつよく触れればすぐに切断するのである。市民の栄養を供給する水道はちょっとした地震で断絶するのである。

 もっとも、送電線にしても工学者の計算によって相当な風圧を考慮し若干の安全係数をかけて設計してあるはずであるが、変化の激しい風圧を静力学的に考え、しかもロビンソン風速計で測った平均風速だけを目安にして勘定したりするようなアカデミックな方法によっって作ったものでは、弛張のはげしい風の息の偽週期的衝撃に堪えないのはむしろ当然のことであろう。(中略)

 それがいっこうにできていないのはどういうわけであるか。(中略)我が国の地震学者や気象学者は従来かかる国難を予想してしばしば当局と国民とに警告を与えたはずであるが、当局は目前の政務に追われ、国民はその日の生活にせわしくて、そうした忠言に耳をかす暇がなかっったように見える。誠に遺憾なことである。

 要所以外は省略したが、それでも非常に長い引用になってしまった。

 ここまで、読んでいただけた方は、今年またはここ数年のことだと思うだろう。

 なんと85年も前、昭和9(1934)に『寺田寅彦全集』などで発表されたものだ。それを再構成したものが『天災と国防』と題した講談社学術文庫、にあり、そこから引用した。

 電力会社、政府、地方自治体等の無為無策は、そんな昔から、すでに見透かされていたことを知らなかった。

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