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2019年10月13日 (日)

虫の居所

 「C(シー)エレガンス」。この言葉を知らない人はこれから先、時代に取り残される。

 塾頭も目にしたことはあるのだろうが、物理学・科学・生物学・医学の中に学術用語と共に出てくると何のことかわからずに読み飛ばしてしまう。

 必要かつ大切な知識を、さりげなく補ってくれるのが新聞の一面下段のコラム欄である。毎日なら「余禄」、朝日は「青鉛筆」などと題している。

 そこで今日の「余禄」が、C(シー)エレガンスをわかりやすく取り上げ、問題提起の材料に使っている。それを要約してみよう。

 C(シー)エレガンスは体長1ミリの線虫の一種で、その泳ぐ優雅な姿から「エレガンス」の名が付いたという。

 分子生物学の泰斗、シドニー・ブレンナー博士は1963年、生物の発生過程を調べるため、この線虫を使うことを提案した。どの細胞がどう分裂するか、どの神経がどんな行動を担うのかを20年かけて調べて、精密な生命地図を作ったのだ。

 高等生物だが構造がシンプル。体が透明で観察しやすい。飼育が簡単なうえ、生きたまま凍結保存できる。謎の多い生命現象への答えが、この「生きた試験管」から次々と生まれた。

 オワンクラゲから発光物質を見つけた下村脩(おさむ)さんのノーベル賞にも、このCエレガンスが貢献した。

 来年には、この線虫の鋭い嗅覚を利用したがん検診が日本で始まる。がんの有無が、ステージ0でも高精度で分かるという。がん特有の尿のにおいを好み、近寄ってくるのだ。

 尿は1滴を提供するだけで済み、9800円で15種類のがんを一度に調べられるという。

 塾頭は、大腸がん摘出手術を経験しているが、血便検査で陽性なのに、がんの発見が遅れたこともあって内視鏡やCTの検査を何度も受けている。

 この先、医療費や検査費用の軽減と相まって早期発見による長寿化が進み、これまでにない社会現象を生みそうだ。

 虫の居所を気にしなくてはならない新時代が到来したのだ。

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