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2018年8月 9日 (木)

泥田の霜柱

今日の東京の表通りは勿論上野の広小路浅草の駒形通りを始めとして到処西洋まがいの建築物とペンキ塗りの看板痩せ衰えた並樹さては処嫌わず無遠慮に突立っている電信柱とまた目まぐるしい電線の編目のために、いうまでもなく静寂の美を保っていた江戸市街の整頓を失い、しかもなおいまだ音律的なる活動の美を有する西洋市街の列に加わる事も出来ない。(『荷風随筆集(上)』岩波文庫、日和下駄より)

 小池都政で、日本橋の上にかかった首都高を付け替えたり、電線の地中化を進める計画だという。それより、都心全体が無秩序な高層化で、泥田の霜柱のようになってしまったことが問題だ。

こんな景観にどんな予算をつぎ込んでも元へ戻すことは不可能である。もはや「廃都」にするしかない。

 都心には、8階建てという高度制限があった。浅草の十二階が、関東大震災で八階以上が崩れたとか、皇居を見下ろすような高さはだめ、というのは俗説かも知れない。しかし、最低限の景観はこれで保たれた。

 この制限をはずしたのは、経済活性化という政治的理由からである。そして、東京一極集中と地価の高騰という副産物も生んでいる。

 『日和下駄』は大正三年(1914)から約1年あまりの間に書かれた。

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コメント

>この制限をはずしたのは、経済活性化という政治的理由

そうだったんですか?
わたしは「建物は高い方が地震に強い、という調査・研究結果から制限が外された」と聞かされていたので、そうだとばかり思っていました

投稿: 玉井人ひろた | 2018年8月 9日 (木) 17時28分

制限がはずされたのは東日本大震災より前で、都心の大建築の多くは鉄筋鉄骨の耐用年数60年を越えるものが多く、立て替えて耐震の新基準に合うようにするという需要がありました。その際、高層化し、床面積が増やせれば改造費捻出にも好都合です。
地震強度のことはよく知りませんが、地震波がビルの持つ固有の波動に合ってしまうと階によっては、倒壊以上の被害が出るとも言われています。

投稿: ましま | 2018年8月 9日 (木) 18時38分

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