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2018年6月10日 (日)

南北朝鮮の対日観

膨大な史料分析をもとに書かれた小倉紀蔵『朝鮮思想全史』ちくま新書、という本がある。米朝首脳会談を直前に控え、日本の対応をどうするかについて、参考になると思う記述がすくなくない。その一部を引用する。

朝鮮民主主義共和国という国家の思想の中核は、反帝国主義、反封建主義、反事大主義である。この思想は徹底しており、明確であり、揺るぎない。この国家自ら「唯一思想体系」といっているのだから、この国家においては多様な思想が許されてはいない。(中略)具体的な名称はチュチェ思想であるがその中味は右にあげたものである。

同書によると、北朝鮮の1992年4月の憲法改正で「マルクス・レーニン主義がこの国の指導理念である」という文言が消えている。指導理念はチュチェ思想に一本化された。

チュチェ思想は思想の回路が複雑ではあるが、結局は人民大衆が個となって自分独自の思考をうち立てることを遮断する。自主性・創造性・意識性を司っているのは「首領」ということになる。

マルクス・レーニン主義は捨てたものの、人民共和国という国名は残している。日本にあった帝国主義はどう形を変えても最大の敵であるが、日本の人民は区別して敵としないという思想・理念に変わりはない。この意見は、日中友好時代の周恩来と似ており、金日成以来の世襲首領が採用する可能性が高い。以下、続けて前掲書を引用する。

ちなみに韓国は共産主義的な階級史観を採らないので、中国や北朝鮮のような二分論はない。そのかわり韓国では、ごく一部の「良心的日本人」とそれ以外の外国人という道徳主義的な二分論を採る。「良心的日本人」とは、歴史に対して反省し、韓国の歴史観と同じか酷似した歴史観を持つ日本人のことをいう。

従軍慰安婦像など排他意識旺盛な上、自国の歴史を顧みようとしない韓国人から、「良心的」とは言われたくない。その点、「情」ではなく「理」を武器にしようという北朝鮮の方が近づきやすいのではないか、そんな意見が、TVのワイドニュース・ウオッチャーなどからも出るようになった。

しかし、日本には残念ながらそれを取り仕切れるような政治家が見あたらない。

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