獣医学部と牛の”ゲップ”
安倍総理大臣は24日の講演で、国家戦略特区での獣医学部の新設について、獣医師会からの要望を踏まえ1校だけに限定して特区を認めたことが国民の疑念を招く一因となったとして、獣医学部の新設をさらに認める方向で検討を進める考えを示しました。
これに関連して、菅官房長官は(26日)午前の記者会見で「国家戦略特区諮問会議の民間議員は一貫して『広く門戸を開くべき』との立場で、今後もさらなる新設に向けて改革を続行していく意向を示している。国家戦略特区に限定しているのはそこで成果を挙げて全国展開したいという思いの中で行っている」と述べました。【26日NHK電子版】
官房長官は、「全国で45%近くの私立大学が定員割れする中、獣医科大学全体の応募倍率は15倍ある」とも言っているが、こんな悪評判が立った加計学園新設の今治の大学を志望する学生などいるだろうか。
文科省が「岩盤」となった理由とはかけ離れた、首相苦し紛れの思い付きだろう。獣医科大学を新設しなくても役に立つ立派な研究は進んでいる。連想で思い出したのが、北海道大学大学院農学研究院家畜栄養研究室の関係した牛のゲップの研究である。
これもコピペさせていただく。
畜産分野で古くから続いてきた抗生物質の乱用は、それをとりまく環境下で抗生物質耐性菌を生み出し、人間の医療にも悪影響をもたらす可能性が指摘されるようになりました。そのため抗生物質をこのまま使い続けていくかどうか、世界的に見直しされつつあります。EUでは2006年から成長促進目的の抗生物質の使用は撤廃になりました。日本でも、食の安全・安心の意識の高まりもあり、同様な論議がおこりましたが、食品安全委員会からの答申によると、「リスクは無視できる程度」となっています(2006年9月)。その一方で、より安心な天然物質への期待は根強く、欧州を中心に多くの研究者がまさに血まなこで、有用な物質を探し続けています。
抗生物質を使わなくなったらどうなるのでしょう?農家はこれまでよりも多くのえさを必要とするでしょう。牛肉の値段は上がるでしょう。牛の病気発生率も少しあがるでしょう。結果的に肥育期間は長くなるので、それだけ牛のげっぷ(メタンが主成分)は多く放出されます。ご存知のようにメタンは地球温暖化の要因でもあるので、私たちにも被害がおよびます(注2)。日本は牛の数が少ない(440万頭)ので、牛が出すメタンは総温暖化ガス(CO2換算)の0.5%程度ですが、ニュージーランドのような畜産立国では30~40%にもなります。安全な天然抗菌物質で、病気を予防でき肥育が促進されれば、農家も消費者もうれしいはずです。さらにメタンも減らすことができれば、こんなに喜ばしいことはありません。この一石二鳥をもくろんだのが今回のプロジェクトです。
(注1)牛が食べたえさはルーメン微生物によって低級脂肪酸に転換され、それを牛が主なエネルギー源として吸収しています。低級脂肪酸の中でもえさのエネルギー転換効率の最も高いプロピオン酸という低級脂肪酸を沢山つくるような微生物相であることが肥育促進の鍵です。またルーメンでは微生物発酵の産物としてメタンガスができます。メタンは「げっぷ」で外にでていくので、えさエネルギーの損失です。したがってメタンは減らしたほうがえさの有効利用につながります。
(注2)メタンを出す牛が悪者のように聞こえますが、一番の悪者は人間です。爆発的に増加し、節制なく資源を消費する一方で、自ら食するために増やしてきた牛でさえもコントロールしようとしています。実に、牛や羊といったメタンを出す反芻家畜は世界に30億頭にまで増えています(人間の数の半分です)。温暖化緩和は人間のためというより、地球上の全生命のために真剣に考えるべき問題です。
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コメント
飼い犬はペットフードと環境で長生きするようになり、それで獣医もふやす必要、などと人間ほど勝手な動物はなさそうです。
投稿: ましま | 2017年6月27日 (火) 21時04分
TB有難うございました。
反芻動物の牛にとうもろこしの様な物を食べさせるようになってから、
牛は常に体調不良で、抗生物質を常用することになったのだそうですね。
牛に本来の餌である草を食べさせていたら、牛にとっても、抗生物質をとらずに済んで良いのに、
アメリカに確立されているとうもろこし中心の農業政策の所為で、
牛を苦しめるとうもろこしを、無理やり食べさせ続けねばならず、
牛も人も苦労させられる事になっているらしいです。
「雑食動物のジレンマ」を読んで、
牛は特に「かわいそう」と思いました。
投稿: 和久希世 | 2017年6月27日 (火) 20時40分