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2017年1月 3日 (火)

「獣の道」

 去年の最後に、不安な今年の世界の要素として、「テロ」→「イスラム」→「悪」という短絡思想を掲げておいた。もうひとつの短絡思想は、安倍首相がよく使う「共通の価値観」である。昔の「自由陣営」「共産陣営」の対立を念頭に置いて、「民主主義」→「自由主義」→「議会主義」を共通の価値観と表現したものであろう。

 ところが、この3つはそれぞれ異なる概念で、史上深刻な対立を生みながら17~18世紀頃、すでにルソーやヘーゲルなど、西欧の哲学者や思想家たちが論じてきたことである。

 北朝鮮の正式国名は、「朝鮮民主主義人民共和国」である。「民主主義」は飾りにつけているのではない。自由がないにしろ、為政者を人民投票で選び各段階の議事を経て決定していくという手続きは民主主義に沿っている。自由主義でないから民主主義でない、という理屈は成り立たない。

 民主主義は、多数を以て勝者とする。したがって少数者にとっては、自由が奪われる結果を生み、自由主義は侵される。だから、民主主義は時として独裁者の恰好な道具とされることもある。そのためのテクニックが情報操作・宣伝・教育であり、ヒトラーもその顕著な例にあげられる。

 中国では、人民や軍は党の指導を受ける対象であり、マスコミも党宣伝部が指導する。また北朝鮮のテレビ映像が日本でもよく流れるが、国民向け宣伝に向けた努力は涙ぐましいと言っていい程だ。

 そういった矛盾を解決する方法として、議会主義がとり上げられるわけだが、これも日本の現状をから見て、三者一体の価値観を構成するには程遠い。それについて、一時ヒトラーを支えたことのある法学者・カール・シュミットは、1988年に公刊された『現代議会主義の精神的状況』
(樋口陽一訳・岩波文庫)の中で議会主義の陥穽を次のように指摘している。

 やや難解だが、内閣支持率を高めながら、民主主義の破壊に余念のない安倍政治(「獣の道」)への危険信号として、年頭に打ち上げておきたい。

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 公開性と討論というこれらの二つの原理のうえに、立憲主義的思考と議会主義が、きわめて首尾一貫した包括的な一つの体系をなして基礎づけられている。それらは、一つの全時代の正義感情にとって、本質的で不可欠的なものと見られていた。公開性と討論によって保障される均衡が本来的に実現すべきはずのものは、まさに真理と正義それ自体にほかならなかった。公開性と討論によってのみ単に事実上のものである力と権力――自由主義法治国家にとって、それはそれ自体として悪であり、ロックが言ったように「獣の道」(way of beasts)である――が克服され、法のみが力を手にするのだと考えられていた。「力(forse)にかわる討論(discussion)」。これこそ、かような思考様式を特に特徴づけることばである。
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コメント

12月末も、大晦日になっても大きな地震で終わりました。
なんだか、不安な今年です

投稿: 玉井人ひろた | 2017年1月 3日 (火) 21時55分

前は中規模の地震があると、「これでいくらか圧力が解消された」とほっとするところがあったのですが、熊本など見ていると「常識はあてにならない」になってしまいました。

投稿: ましま | 2017年1月 4日 (水) 08時59分

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