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2017年1月27日 (金)

『帝国の慰安婦』裁判

韓国の世宗(セジョン)大学・朴裕河(パクユハ)教授は、『帝国の慰安婦』の著者として有名である。日韓の間で解決の糸口が見えないような中で、彼女の綿密な調査と問題点を絞り込む努力が高く評価され、邦訳のある日本をはじめ、東亜日報等韓国マスコミでも注目されていた。

 

しかし、元慰安婦の名誉を傷つけたとして、名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴され、25日にウル東部地裁では無罪の判決が言い渡された。判事は世論を無視できず、今の雰囲気では有罪だろう」(日韓関係専門家)との見方が強かったが、塾頭も、対馬の盗難仏像関連裁判のように、司法の独立が懸念される日本も顔負けするほど危なっかしい決定をすると感じていた。

 

最高裁でひっくり返されるかもしれないが、とにかく名判決だ。塾頭の考えとすっかりと言っていいほど似通っているからだ。韓国を代表する通信社聯合通信が短い文章で判決全体のニューワンスを要領よく伝えている。

「被告の見解に関する判断は学問の場や社会の場で専門家や市民が相互検証しながら論駁する過程で行われなければならない」として、「慰安婦の真実を明らかにし、(結論に)到達できる十分な能力がある」と述べた。

 地裁は検察が名誉を毀損する表現だと主張した35カ所中、「朝鮮人の慰安婦の中、自発的な意思があった慰安婦がいた」「(旧)日本軍は公式的には誘拐や強制連行により慰安婦にしてはいなかった」などとした5カ所は事実の摘示であり、30カ所は意見表明だと指摘した。

 この5か所のうち、著書にある「元慰安婦は根本的に『売春』のくくりにいた女性たち」「朝鮮人慰安婦は日本軍と同志的関係にあった」とある点が、名誉棄損だとされる。

 あくまでも一般論として述べており、被告人など個人の事情に触れたものではない。したがって「事実の適示」であり原告の名誉棄損に当たらない、という考え方を判決はとっている。

 残りの30カ所は「慰安婦の証言などを資料として引用した上で分析や評価をしたもので、具体的な事実関係を示したと見るのは難しい」、すなわち著者の「意見」と判断してもいいが、これも原告について言っていないとしている(毎日新聞)。

塾頭もかつてフィリピンかボルネオの密林で敗戦を迎え、ばらばらになって逃げる途中、一兵士が慰安婦と出会い食料を分け合ったり、ワニのいる川を背負って渡ったりして海岸にたどり着き、帰国後は結婚するに至った、という創作を見たことがある。

韓国でも年長者ほど、銅像をところかまわず世界中に設置しまくるなどの傾向を批判的に見る人の割合が多くなる傾向だという。発言しにくいことだが、性奴隷状態は一般的な実態でなかったということを知っているからだろう。

このような判決で、感情論から、もっと現実に即した史実に対する知識を深めようとする傾向が出てくれば、落ち着くところへ落ち着くはずだ。日本は言うべきことは言わなくてはならないが、報復などを考えるべきではない。

いちいち反応して、韓国の感情論をかきたてるより、黙って泰然と構えているのが最善だ。韓国民は国際的評価を気にする点で人後に落ちないはずである。

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