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2016年12月 9日 (金)

韓国の不思議②

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友による国政介入事件を巡り、韓国国会は9日午後、朴氏の弾劾訴追案を審議し、賛成多数で可決した。当塾では先月から、27日の「朴槿恵追及デモ」、12月3日の「北・抜き6か国協議の時期」、そして、5日の「韓国の不思議」など数回にわたって韓国の動乱、といっていい事態についてエントリーを重ねてきた(リンクは文末参照)。

 前回も書いたように、韓国の政治、司法そして韓国の社会がこの決議でどう推移するのか、日本のマスコミやテレビのワイドショウの解説では、さっぱりその先が読めない。現在の韓国の近代化、経済発展の基礎を築いたのは、朴槿恵大統領の父親・朴正煕大統領である、がそれと今回の槿恵大統領糾弾とどう関連するのか、しないのか、そのあたりもよくわからない。

 そこで、日本在留が長く国際的な学才・韓国人学者から見るとどうなるか、鄭大均著『韓国のナショナリズム』岩波現代文庫で、その片りんをうかがうことにした。

 朝鮮におけるナショナリズムの動きは、日本統治によって挫折を余儀なくされる。したがってナショナリズムが本当に実現したのは解放後ということになるが、国家への帰属意識がエリート層のみならず庶民層にまで共有されるようになった時期ということになると、それはさらに下って六〇年代といこうということになるだろう。六〇年代とは、朴正煕(1917~79年)が軍事クーデターを通して政権を奪取し、そのリフォーム・ナショナリズムが国のかたちを変えた時期である。

(中略)リフォーム・ナショナリズムは日本の明治維新やトルコのケマル・パシャ革命がそうであったように、名目的には独立国家であっても、実質的には国内的な混乱や国際的な脅威にさらされている「半独立国家」を舞台とする「上からの革命」(エレン・ケイ・トリムバーガー)であり、その担い手となったのは軍部や官僚出身者たちであった。

 ところが、今日の韓国人、とりわけ知識人たちの朴正煕に対する評判は芳しいものではない。朴正煕やその時代には「軍事政権」や「独裁政治」という烙印が押され、それは否定的な過去として語られることが多いのである。だが朴正煕やその政権によって提示された「民族」や「近代化」のビジョンは、韓国のかたちや韓国人の集団アイデンティティのかたちをかなり根本的に変革する力となったのであり、それは今日の韓国人の自尊心の源泉となるものである。

 韓国のジャーナリスト・趙甲済の言葉を借りるなら、朴正煕とは「今もも生きている現在の歴史」であり、その功罪の両面を含めて、今日生きているすべての韓国人は朴正煕の時代に韓国にもたらされた革命の産物であるといってよい。

 不幸なことに、解放後の韓国においては、執権者がかわるたびに前任者の業績や価値観が否定されるという反動の連鎖が見て取れる。朴正煕自身が前任者のそれを「李朝社会の悪遺産」とか「民族愛の欠如」として否定したように、その後にあらわれる新しい主人公たちも親世代の否定をその出発点としているのである、

 以上、長い引用となってしまったが、これが父・朴正煕以来の伝統になってしまったのだろうか。歴史の積み重ねにより、このような「伝統?」がいずれ克服されるだろうことを、隣国国民のひとりとして願っている。

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