« 天変地異とカルト | トップページ | 朴槿恵追及デモ »

2016年11月25日 (金)

答えが出ない天皇退位

 政府は24日、天皇譲位への対応などを検討する安倍首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の第4回会合=ヒヤリング(14日開催)の議事録を首相官邸のホームページで公表した。

 選定された「有識者」の先生は16人いるが、安倍首相好みの右翼雑誌常連執筆者もちゃんと顔をそろえている。今月6日の記事、「追悼・三笠宮殿下」の中で、「渡部昇一・八木秀次・桜井よしこなど」と指摘しておいたが、そのうち渡部・桜井の2人がこの第4回の会議で意見陳述をしている。

 その両氏の意見の核心部分を公表された議事録から抜粋しておこう。

■渡部 昇一 
「十分お休みになってもお祈りすれば十分です」とおっしゃる方がいればよかったわけです。おっしゃる方がいないから、今、天皇陛下は皇室典範の違反を犯そうとしていらっしゃいます。だから、それはそうさせてはいけません。皇室典範を変えてはいけないし、臨時措置法などというインチキなも
のを作ってはいけません。どうしてもこれはしかるべき人が説得すべきです。

■桜井よし子
戦後作られました現行憲法とその価値観の下で、祭祀は皇室の私的行為と位置づけられました。皇室本来の最も重要なお役割であり、日本文明の粋である祭祀をこのように過小評価し続けて今日に至ったことは、戦後日本の大いなる間違いであると私はここで強調したいと思います。

 いずれも祭祀(祈り)が天皇のつとめで、体力を消耗する視察や災害慰問などを割愛すればいいという意見だ。立場は全く違うが、塾頭の考えは渡部氏のほうがやや近い。政治のやまと言葉は「まつりごと」で、魏志倭人伝による卑弥呼の役割も霊験を示すことのできる巫女的な存在だ。

 何を祈るかといえば、国土安寧・五穀豊穣だろう。誰のためには、黎民(おおみたから)のため、誰に向けては、先祖や八百万(やおろず)の神ということになる。これは古記録を見ればわかる。ただ一部右翼が言う神だけに限らない。

 飛鳥時代に仏像を拝み奈良時代には国費で大仏を建立した。それを無理やり分けたのは明治維新である。

 ご両人に抜けているのは、今上天皇の被災者慰問や、戦没者慰霊は、祈りの一部分として密接不可分なものというお気持ちが斟酌できていないことである。

 桜井氏は、現憲法は押しつけだから認めないという発想だろう。しかし今上天皇は、敗戦を疎開先で迎え、天皇の地位が続くのか廃絶するのかの瀬戸際を知っている。それが、新憲法で「象徴」という地位を国民の総意のもとで継続できるようになったのだ。

 天皇は、憲法第99条で憲法尊重擁護が義務付けられているというより、新憲法の申し子といってもいい存在だ。始めて与えられた「象徴」をこのさきどう引き継いでいくか、それでいっぱいだろう。

 憲法20条では、国およびその機関に対し宗教的活動を禁止している。桜井氏が伝統的な神式にそった祭祀を憲法に明文化したいというのなら、それこそ「間違い」。私的だからこそ、時代の変化を取り込むことにより伝統が長く受けつがれていくのである。

 まだ先が長いが、安倍流の’私的諮問委員会’も今回は人選が粗雑で、答えが出たとしても失敗作になるだろう。

|

« 天変地異とカルト | トップページ | 朴槿恵追及デモ »

憲法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/468248/68580722

この記事へのトラックバック一覧です: 答えが出ない天皇退位:

« 天変地異とカルト | トップページ | 朴槿恵追及デモ »