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2016年10月11日 (火)

色あせた「核戦略批判」

 本棚を整理していたら、茶色に変色し、閉じが利かずにバラバラになる頁がある豊田利幸著『新・核戦略批判』という書が見つかった。「まえがき」にこうある。
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 拙著『核戦略批判』(岩波新書、一九六五年)が世に出てからすでに二〇年近い歳月が流れた。そこで予見した核兵器体系の技術的進展および核戦略の変貌は、不幸にして、いまや現実のものとなりつつある。

 旧著で私が最大の力点をおいたのは、核抑止論に内在する矛盾の摘出とその批判であった。その後、核抑止論の虚構についてすぐれた労作があらわれ、国の内外を問わず心ある人々の間では、核抑止論はほとんどその支持を失ったように思われる。しかし、現在でも核抑止論の信奉者の数は無視できないし、核保有国およびそれに追随する国家の為政者たちの大部分は、依然としてこの誤った教義に固執している。彼らは現実主義の名のもとで、それを克服する道を模索かる努力を放棄し、状況追随の論理に身をゆだねている。それゆえ、問題の核心は、いかにして核軍縮を実現するか、というすぐれて政治的な構想に移ってきたと考えられる。(後略)
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 この引用部分は、、そのまま現在に当てはまっていることにまず驚いた。著者の最初の指摘からすでに半世紀以上たっており、世論はむしろ後退しているとさえ思える。そして、最終章「核戦略と日本の軍事的状況」で、日本の軍備増強がもたらすものとしてこう指摘している。

今なお多くの日本人が信奉している「核抑止論」、あるいは「核の傘」の考え方は、当のアメリカ自身によって、すでに一〇年以上も前にすてさられていることは明白である。

 アメリカの今の考え方は、普天間基地の辺野古移転と同じように、「貴重な同盟国がそこまで言うのにのに”違う”などとは言えないだろ」という気分がうかがえる。

 まさか、のトランプが大統領になったらどうなるのか、想像もつかない。

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反戦・軍縮」カテゴリの記事

コメント

まさかのトランプ大統領ですが、いよいよ現実味が出てきましたよ。
何しろ、マスコミがこぞって史上最低の泥仕合だと言っているのですから情けない。
そもそも大本命のクリントンの失速こそが物事の本質で、
穴馬の泡沫候補のトランプに追いつかれて、仕方なく汚い罵倒合戦に自ら乗り出した。
日本では大相撲の白鳳が少し体を入れ替えただけでも、横綱として恥ずかしいとバッシングされているが、
アメリカ人にはこの大相撲の精神が少しも無いのでしょうか。実に不思議だ。
大手のメディアは誰も取り上げないが、
罵倒合戦の真っ最中にクリントンの眉間にハエが止まっていたとSNSでは大騒ぎ。誰も食わない犬のくそ状態なのですが、
クリントンの体調に致命的な問題があるのかも知れません。

投稿: 宗純 | 2016年10月11日 (火) 11時09分

政府や右翼の核抑止論(核の傘)が根本的に間違っているのは事実ですが、

今までの左翼とか護憲派の行っていた核抑止論批判も実は五十歩百歩の代物で、根本的に誤っていた。平和ボケの極みのような勘違いなのです。
日本国の場合には、右翼も左翼も仲よく同じで、アメリカ人の善意を丸ごと信用しているのです。
核の先制使用がアメリカの核戦略の基本である事実を失念していて、
『核の報復』だけを論議しているのです。
核の先制使用ですが、これは1960年代に流行っていた西部劇の世界と同じ論理で、相手が銃を抜くよりも0・1秒でも早く抜いて、殺した方が勝ち。そして勝ったものが正義とのトンデモナイものです。

投稿: 宗純 | 2016年10月11日 (火) 11時21分

オバマ米大統領が「核先制不使用」の宣言を含めた核軍縮策を検討していると、米紙ワシントン・ポストが2016年7月12日に報じた。

ところがいつしか撤回したようで、安倍首相など同盟国の反対に配慮したとのこと。

これも全く上の本文と同じ流れで、アメリカのタカ派の威力は健在です。「能あるタカは爪を隠す」わけですが、早打ちは核ではなく、発射基地爆破か発射時のMDによる撃墜であればお見事。

アメリカならできるしオバマならそうするでしょう。

投稿: ましま | 2016年10月11日 (火) 15時05分

世は伊弉諾景気のころ、こういう著書が出されていたんですね。
流石に核物質を専門とする方という感じですが、当時の人の関心はどうだったのでしょうか?

すくなくとも、私の周りに核の傘を放す大人は居なかったと記憶しています

投稿: 玉井人ひろた | 2016年10月12日 (水) 08時06分

誤変換でした「放す」ではなく「話す」でございました。失礼しました

投稿: 玉井人ひろた | 2016年10月12日 (水) 08時07分

またまたHN玉井人ひろた的な、
知的最下層民相手の低級な邪悪な印象操作を繰り返しているのですが、
本当の科学的事実を、いくら指摘しても少しも懲りていないところは呆れかえる。
もし誤変換程度でも失礼なら、今までの自分の愚かで邪悪な行いなら恥ずかしすぎて憤死していますよ。

当時は相互確証破壊(核の傘)の生みの親であるマクナマラが自分の間違いを認めて大騒ぎになっていたのですが、
一番の問題点は、相互確証破壊なるものが、アメリカの核戦略の中ではメインではなくて、実は二ページ目の話であり、
最初の1ページ目には核の先制使用がある事実に気が付かなかったということなのですが、
この小悪党の場合には、相変わらずその事実を無視して、人々を間違いに誘導しているのですから腹が立つ。
どこまで、世の中の常識や知性を馬鹿にすれば気が済むのだろうか。

投稿: 宗純 | 2016年10月12日 (水) 09時08分

玉井人ひろた さま
私も覚えていませんが、先制攻撃なども話題になったという記憶はありません。

ただエネルギー関連企業にいたため、原発建設には、主に左翼陣営から科学的に危険視する論文がよく出ていたことを覚えています。

投稿: ましま | 2016年10月12日 (水) 09時13分

「世界終末時計」によれば、世界の終わりまで残り3分なのですが、
3分しか人類滅亡までの余裕がない原因は、世界最大の核大国であるアメリカが先制使用を公言していて、いつでも核を使う用意をしていることに尽きるでしょう。

ビキニ水爆などで盛り上がった反核運動が分裂した原因が、『いかなる国の核兵器にも反対する』に対してソ連は防衛用で同列に論じるのは間違いだと共産党が強硬に反対して、
『いかなる国の核兵器にも反対』の社会党系が原水協を脱退した。
普通の社会常識なら、誰が考えて例外なく、共産党の言い分は無茶苦茶であり、社会党の方が圧倒的に正しい。
特に、このような一般市民向けの社会運動のスローガンとして分かりやすい単純な社会党と、
色々と条件を付けてモゴモゴ言い訳がましい共産党では優劣は明らか。
ところが、原水協に残った共産党の方が多数派で、脱退した社会党系は少数派。当時の社共の力関係とか世間の常識とは正反対になる。(当時は今とは違い左翼陣営の社会党の力は圧倒的。共産党は劣勢)
この理由は極簡単で、実は『アメリカの核の先制使用』とのピースを一枚加えるだけで全ての謎が氷解する。
実は社会党は単に愚かだった(知らなかった)だけで、一見すると間違った自分勝手の暴論に思える共産党の主張の方が正しいと、関係する有識者たちは知っていたのですよ。
だから大部分は、社会党系ではなくて共産党系の主導する原水協に残ったのです。
ただ、この話、何とも成り行きが不思議なのですよ。
実は共産党ですが、ズバリ『核の先制使用のアメリカの戦略』を説明すれば誰もが納得させることが出来たが、あえて何も言わなかった。
たぶんこの話はタブーだったのです。

投稿: 宗純 | 2016年10月12日 (水) 14時06分

理由は2つあると思います。1つは別々に大会を開いて外国代表団が多く来るのは共産党支配の国だった。
2つは、人民の代表である共産党のリーダーが好戦的で信用できない資本主義国家に対抗するためという信仰があったことではないでしょうか。

投稿: ましま | 2016年10月12日 (水) 17時11分

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