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2016年9月 7日 (水)

生前「退位」でなく「交代」

 天皇生前退位問題は、オリンピック報道や首脳外交などで一時なりを潜めていたが、このところ、有識者会議発足時期や議論の方向性などをめぐって、官房長官や自民党幹事長の女性天皇容認論など、マスコミの記事が俄然増えてきた。

 前々回、「靖国神社のないアメリカ」を取り上げたが、その中で、天皇陛下は昔から「国」の象徴であった。総理大臣や防衛相などの参拝では、代役にならない。今の政治家は勘違いしているようだ。と書いた。

 そこで「象徴天皇」について各新聞がどう考えているかを社説などで当たってみると、各紙とも、天皇発言は非常に重大な問題提起であり、退位は法的にさまさまな困難を伴うため、問題点の整理が必要だという点では一致している。

 ただし、「象徴のありかたを国民的に議論」するという趣旨のことを何社かが書いているが、これはマスコミの重大な勘違いである。憲法をよく読んでいただきたい。

第一条 {天皇の地位・国民主権}天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

 「日本国民の総意に基く」のは「象徴」という「地位」だけであって、その中味ではない。第三条以降に国事行為が定められ、それについては、内閣や国会の助言・承認に基いて行うべきことが定められているが、これは「地位」ではなくそれに付随した「行為」である。

 だから、「象徴にふさわしい行動、在り方」はどうあるべきか、というのは、あくまでも天皇自身の内面の問題で、「象徴はこうあるべし」まで決めてしまうと、憲法第四条で禁じられている「国政に関する権能」を持たせかねない危険が生ずる。

 たとえば、東洋平和の実現を目指すこが日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるとしてしまえば、戦前と同じことになる。時の政府は「愛国行進曲」の歌詞そのものを国民的アイデンティティにしようとして大キャンペーンを張りそれなりに成功した。

(愛国行進歌詞・昭和12年8月)
1番
見よ東海の空明けて
旭日高く輝けば
天地の正気(せいき)潑溂と
希望は踊る大八洲(おおやしま)
おお晴朗の朝雲に
聳ゆる富士の姿こそ
金甌(きんおう)無欠揺るぎなき
わが日本(にっぽん)の誇りなれ

2番
起て一系の大君(おおきみ)を
光と永久(とわ)に頂きて
臣民我等皆共に
御稜威(みいつ)に副(そ)はむ大使命
往け八紘(はっこう)を宇(いえ)となし
四海の人を導きて
正しき平和打ち立てむ
理想は花と咲き薫る

3番(略)
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 そういった意味で天皇発言も、地位と仕事をごっちゃにしてしまったきらいがある。その区別を厳然とする、そこから問題点整理を始めなくてはならない。天皇自身は言っていないが、国民の総意として成り立つ「地位」を、個人の「退位」に置き換えることはできない。

 マスコミも「生前退位」でなく「生前交代」とすべきだ。しかし「交代」では軽々し過ぎて、右翼諸君は到底納得しまい。それならばオリンピック陸上で見事な成果を上げた「バトンタッチ」ではどうか(笑)。

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憲法」カテゴリの記事

コメント

この日本国憲法の1条も、極東委員会の「主権在民の明記が無い」という激しい指摘に、必死にアメリカ政府とGHQと日本政府は修正に追われての結果の産物であることが、記録によって判明していますね。

最初の日本政府の草案は「主権」のところが「崇高」だったようですね。

投稿: 玉井人ひろた | 2016年9月 7日 (水) 19時00分

「崇高」でなくて一番ほっとしたのは昭和天皇ではないでしょうか。松本特命大臣もそれこそ全身全霊を尽くしたわけで、保守政治家としては立派だったと思います。

投稿: ましま | 2016年9月 7日 (水) 19時57分

二つ目のコメントの「至高」が正しいものです。失礼しました。

いずれにしても、この1条が「主権在民」の条項であること、知らない人は多いでしょうね。

投稿: 玉井人ひろた | 2016年9月 8日 (木) 08時07分

この愛国行進曲の2番目の歌詞の最後の
「理想は花と咲き薫る」という意味が、
この政権与党にしてみれば、「女性が輝く仕事や職種をピンクカラージョブなどと称したところで、戦前の日本が仕出かした大日本帝国軍性奴隷問題の前科をごまかそうとする魂胆」こそが見え見えのボロを、稲田朋美防衛大臣からして、自ら白状しているものであることは、中国外務省ではありませんが、「安倍総理は嘘つきだ」というのを逆手に取れば、「このような嘘つきに他ならない安倍総理にしがみついているだけの性奴隷に過ぎないのをごまかそうとしているに決まっているのだからな」ということくらいのことは、もうアメリカにせよ、ロシアに限らず、国際社会全体からして、もうバレバレのことであり、お見通しのことであるとしか言い様がないのですが?

ドイツのメルケル首相にしてみれば、ロシアのプーチン大統領がモスクワで軍事パレードをやっている陰で、そっと静かに、旧ソ連軍兵士の追悼墓地に行ったのと、ドイツのガウク大統領がフランスのオランド大統領と共に、ナチスドイツの侵略により被害を受けたフランスの村に共に訪問したのと同じ意味を持っていることは、アメリカのケリー国務長官とヘーゲル国防長官が、靖国神社の前を、そっと静かに通り過ぎてから、千鳥ヶ淵墓苑で献花し追悼してくれたことが、オバマ大統領による広島訪問に繋がったことであることにこそ、誇りを持って、これを逆手に取れば、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席に置かれましては、この靖国神社につきましては、複雑な感情を抱きながらも、そっと静かに通り過ぎてから、千鳥ヶ淵墓苑に揃って追悼して頂きます様、どうぞよろしくお願い申し上げます。ということで働きかけて行きたいところですね。

韓国の朴クネ大統領にしてみれば、これと同じことをするならば、天皇陛下が韓国訪問して貰うならば、是非とも、天皇陛下と共に、大日本帝国軍性奴隷問題の前科による被害者の皆様に直接お会いし、傾聴して頂くのと同じ意味を持つものであることは国際社会全体の常識として当たり前のことですよね。

投稿: asa | 2016年9月 8日 (木) 09時50分

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