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2016年7月18日 (月)

ジャーナリストのサラリーマン化

 都知事選が中盤にさしかかり、メディアが情勢を伝え始めた。それによると、小池、鳥越、増田の順で3候補が団子状態ということらしい。塾頭が都知事選を記事にした時、宇都宮候補が立候補を取り下げたばかりだったがその中で「選挙民の選択肢が減り残念だ」と書いた。

 鳥越自身がいうように、ジャーナリストという「アウトサイダー」から「インサイダー」に身を置きかえることになる。鳥越は塾頭より若いが、戦争や戦後をしっかり把握しており考えが塾頭に最も近い。しかし、都知事になるということは、彼のセンスや発想が生かし切れず、当選しても選挙民の期待を空転させることにならないかを心配した。

 鳥越氏がサラリーマン化するとは言わないが、地方行政トップとしての制約がある。そういった点をどう乗り越えるか、また活かせるかについて、宇都宮氏としっかり議論してほしかった。それも鳥越氏立候補の目的にかなうことだったはずだ。

 本塾は、直近の出来事で「仏・ニース事件、本当にテロか?」と「天皇退位問題の危険なリーク」の2件を取り上げた。しかし、いずれも事件の本質や事実の掘り下げに迫る態度がいまだに見られず、ジャーナリズムよいずこへ……の状態が続いている。

 本題に直接関係するわけではないが、中国の南シナ海関連ニュースや世界で頻発するテロなどのニュースに対して、発生した正確な背景や歴史的な流れの上での解説が省略され、誤解は誤解のまま誤った即断のもとに置かれていることが多いように思える。

 そのため、国民は理解を欠いたまま刹那的な判断に依存せざるを得ず、それが、トランプ現象や英国国民投票、世界の右傾化を促進しているのではなかろうか。電子メディアの発展もその一端を支えている。

 世界中で起きているテロをどう見るか。なにか、各国政府の反応は、「断固非難し、各国との協調でこれに対抗する」などというのが紋切り型で、「ISへの空爆強化」程度しか対抗手段が見られない。

 西欧文明とそれに牙をむけたテロはそもそもどこから始まったか、それを見ないで国境に壁を作っても何の対策にもならないことがだんだんはっきりしてきた。対立は、英仏など西欧列強が第一次大戦前にアフリカ・アラブ・アジアに繰り広げた帝国主義的植民地競争に端を発する。

 第一次世界大戦の結果、敗れたオスマン帝国はイスラム圏で中東を中心に膨大な領地を有していたが、英・仏・露3国の秘密協定(サイクス・ピコ協定)で住民にかかわりなく山分けのような形で引いた国境線が、その後の紛争のもととなった。パレスチナやイスラエルの独立をイギリスが重複して約束するなどもその大きな要因だ。

 しかし、第2次大戦後までアメリカの顔は見えなかったのが、急に紛争の主役を演ずるようになったのは何故か。それは、世界最大の石油資源の利権獲得と、アメリカの政治に圧倒的な影響力を持つユダヤ人の母国・イスラエルをイスラム勢力から守るためである。

 イスラエルにとって脅威になるイスラム国は、アメリカにとって敵になった。最初はホメイニ革命でアメリカ大使館が占拠されたイラン、ウサマビンラディンをかくまったアフガン、そういった中で力を蓄え、独裁者といわれるフセインが支配するイラク、そして、イスラエルにとって脅威となるヒズボラの根拠シリアなど、場所と相手を変えて次々に軍事力投入や介入を繰り返した。

 そして今でも、IS空爆の主役のように振舞っている。しかし、アメリカは見えないような形で、中東紛争の主役から手を引きつつある。IS自身、テロのターゲットをどこに向けるのか、明らかに戸惑っている。

 テロ撲滅に国内治安強化は当然である。一方、ISを壊滅してもテロが無くなるわけではない。今こそ中東問題の根源に立ち返り、和平のあるべき姿やイスラムとの共存について、ジャーナリストは世論を喚起すべきではないか。

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