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2016年7月 6日 (水)

なぜ安倍ではいけないか

 「お国のために尊い命を捧げた軍人に尊崇の念を……」、これが首相靖国神社参拝の常套句である。最近は忘れられているが、中国・韓国、特に中国が参拝を問題化する前から、日本国内で賛否の議論があった。従って、外国がそれを言うのは内政干渉である。現にアメリカは何も言っていない。

 問題は、A級戦犯合祀と、憲法20条の[国の宗教活動の禁止]との関連である。軍事裁判を「国内法上の犯罪者とはしない」という国会決議をもって、犯罪者ではなくなったという、首相参拝支持者の意見があるが、当時、塾頭も「もっともだ」と思っていた。

 戦争に直接責任のあるA級戦犯の主な容疑者は、講和条約前にすでに刑死か病死している。ことの発端はB、C級戦犯だ。上官の命令で捕虜を殺害したなどの罪で服罪し、恩給が受けられないなどのケースがあって、講和条約締結のあと判決を解除したものだ。

 安倍首相は第2次首相就任に当たり、それまでの首相参拝と全く異なる強い意志で参拝を強行した。さきの戦争についての責任を肯定的にとらえ、戦後レジーム、つまり憲法は押しつけ、極東裁判は違法という「日本会議」流の発想のもとに動いているからである。

 戦没者慰霊セレモニーなどほかにいくらでも方法があるし、天皇もそれならば参加できる。塾頭の身内にも戦死者があり、遺族の心のうちを知っている。「お国のために尊い命を捧げた」などとは思っていない。

 「無謀な戦争を起こした政治家や軍部に殺された」と思っている。また、戦後得られた自由・民主主義を育て戦後復興に献身できたのも尊い犠牲者あってのことであり、戦後レジームなどと英語で言われる筋合いはない。戦中戦後を知っている者にとって、脱却するなどもってのほか、人格まで否定されているような気がする。

 もちろん、塾頭と同年代以上で、安倍首相と同じような考えを持つ人はいる。全員がそうかどうかわからないが、そういった人は戦争指導者かその縁者に違いない。

 GHQから、明治憲法に沿った時代錯誤の憲法草案を否定され、結果的にGHQから示されたものに近い案を国会に出さざるを得なかった担当大臣・松本烝治国務相などが、抵抗の及ばなかったことに涙した話は、そのとおりだろう。

 安倍首相の祖父・岸信介は、満州経営を経て東条内閣の閣僚をしていた。終戦時まで革新官僚と言われながら閣僚まで進んだ実績を否定してしまったら、自らの人格まで否定されるような気がすることもわかる。しかし、戦争の前からすべてを体験しているので、何も知らない安倍首相などとは違う。もし存命していれば叱られるようなことも多いのに違いない。

 戦争指導者は、戦犯でなくても軍部、政治、教育、果ては各地方にいた警防団や各所翼賛団体ににまで及ぶ。しかし、そのすべてが敗戦を否定し、GHQを敵視しているわけではない。ただし、公職追放者として指名された人とか、農地解放で土地を取り上げられた大地主の中には、恨み骨髄という人がいるだろうことは想像がつく。

 また、右翼雑誌に毎号顔を出す著名学者も、さすがは歴史家である。「こういう史実がある、考え方、解釈がある」と言っているだけで、すべてが虚構というわけではない。しかし、戦後マルクス主義者や進歩的文化人など言われる人の一部に、歴史の歪曲や、プロパガンダに類する論調が幅を利かせ、日教組や学生などに影響を及ぼした。それに対する反動が起きたということは、言えるだろう。

 安倍首相ではいけないのは、近現代史、ことに明治から昭和前半にかけての歴史認識が希薄であるにもかかわらず、戦前の国家主義的態勢復活を思わせる自民改憲案を持ち出そうとしていることである。

 その重大性は、最近、自民党内や右派的マスコミでさえ、警戒の目を向けるようになった。反面、公明党を含め各党の改憲姿勢には開きがあり、自民党案の実現性は低いという楽観論も流れ始めている。

 さきの戦争は、アメリカの態度に問題があったにしろ、「まさか」というところへ「あれよあれよ」という間に突っ込んでしまったのだ。イギリスの国民投票でも良識派は、EU離脱という選択はあり得ないと楽観していたのではないか。ヒトラーがかつて民主主義の名のもとで、全権委任法という憲法無視の法律を作り、第2次大戦の愚を犯したことを忘れてはならない。

 戦中日本では、政党が「自発的に」解散し「大政翼賛会」を作った。議員3分の2のねらいと似通っている。危機はそこまで来ている。冒頭に掲げた靖国参拝の安倍常套句は、戦前の5・15、2・26といったクーデター計画やテロで死んだ実行犯に対して、国粋主義者が使ってもおかしくないことばである。

 今、安倍ではいけないのである。

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コメント

仰るとおりです。
問題は此の認識をしない日本人が多いことです。
歴史を知っている人は、保守と思われていても、案外近い認識をしていると思います。そして若者は自身の問題ととらえるのか、結構近い認識を感じます。

その間のいわゆる壮年層でしょうか。歴史も知らないし、戦争を考えたこともない、そして自分は戦争に行かないと思っている。特に男性が危ない。
そんなイメージがします。

投稿: 飯大蔵 | 2016年7月 6日 (水) 22時32分

飯大蔵 さま
 コメントありがとうございました。

参院選投票日を目前にして、一生懸命書きました。今朝起きてすぐ、最後の部分を改めて書き足しました。

というのは、自民圧勝の予想を既定事実とし、気休めの楽観論があることです。悲観しすぎるのは、もっと悪いですが。

投稿: ましま | 2016年7月 7日 (木) 07時54分

極東裁判がなぜ茶番かというとフェアじゃないからです。
アメリカ側の戦争犯罪は不問、無差別空襲も原爆も不問、それまでの国際法になかった"平和に対する罪"を作って法の不訴求の原則を無視。
茶番の法廷が持ち出したA級・B級・C級の戦犯区分も茶番。
A級ばかり論じられるけどA級の死刑は7人なのに対し、B級・C級は1000人も処刑されてるのですよ。その中には明白な冤罪も数知れず。
そもそも戦争責任て何ですか?開戦の責任なら当時の政治家にある。敗戦責任ならもちろん軍部です。
でも戦争は国家の政治行為のひとつですから、戦争そのものは罪でも違法でもありません(今でも)。
要するに負けたからこうもしつこく責められるのです。もっと言えばあの戦争で日本があまりにも抵抗したからあまりにも壮絶に戦ったから白人たちの心胆を寒からしめたのです。
こんな大変な民族は二度と自分たちに刃向かわないよう背骨を抜いておこう、こう考えた結果が神道指令であり天皇の人間宣言であり憲法九条でした。
軍備丸投げ+米軍駐留の"憲法九条体制"で浮いた予算を経済に投下できたおかげで高度成長できたのが病み付きとなって、それまで非武装中立を主張していた朝日新聞まで米軍駐留という麻薬が手放せなくなった。しかし麻薬が切れたらどうなります?トランプになったら切れますよ。ヒラリーになっても少し猶予はありますがいずれは切れます。
その時自国で国防体制ができてなければ支那の軍門に下らざるを得ません。それでもいいのですか?塾頭の家の隣近所に支那人が住み着いて町を歩けば支那語ばかり聞こえる、駅でもスーパーでも支那語がメインで日本語は下に小さく書かれている世界。
戦後レジームを破壊しなければこうなる、今はギリギリのとこまで来ているのですよ。
今、安倍でなくてはいけないのですよ。

投稿: ミスター珍 | 2016年7月 7日 (木) 21時08分

TB有難うございました。
強く共感し、参院選投票日を前に是非多くの方に共有したいただきたいと思い、勝手ながら「護憲+」ブログでも部分転載し紹介させていただきました。
(事後承諾で申し訳有りません。不都合がありましたらご連絡ください。)

投稿: 笹井明子 | 2016年7月 7日 (木) 22時34分

このヒトラー総統が、全権委任法により無効としたワイマール憲法を、今度は、日本国憲法に置き換えれば、今度はドイツと共に、この安倍首相による、憲法9条を亡き者にしてでも、戦前の日本を取り戻そうなどという幼稚な野望を、打ち砕くことで、これに対する全人類からのご褒美として、この憲法9条にノーb3得る平和賞のお墨付きを賜るということを、今度の参議院議員総選挙での、有権者としての投票行動そのものに対する具体的目標と致しましょうか?

投稿: asa | 2016年7月 8日 (金) 00時02分

ミスター珍 さま
 <極東裁判が茶番>右の方からよくでる珍(あなたのことではありません)論ですが、あたりまえじゃあありませんか。戦争勝者が敗者をさばく軍事裁判で、公正・公平な裁判などというのは聞いたことがありません。

 もしかして戦争のことをよくご存知ないのでしょうか。極東裁判は停戦条件として連合国が提示し、日本もそれに同意、受諾した上で開かれたものです。戦勝国は白旗を認める上でいろいろな条件を出してきます。

 昔は、①敵の大将の首をとる、②領地を広げる、③賠償金や宝物をとる、④奴隷男女を連行するなどいろいろありましたが、すべての報復・懲罰の権利が戦勝国の方にありました。それがないと、国民や命をかけた兵士が納得しません。

 人類の発展にともない、それらはだんだんなくなりました。報復が報復補を呼ぶという連鎖も考えられるようになりました。第一次大戦ではドイツが二度と立ち上がれないよう、膨大な賠償金を課して結局第二次大戦を招いた原因になっています。

 軍事法廷は、報復色をうすめる手段でしょう。日本は、その結果を受け入れました。それがなければ戦争し直しになりますね。しかし、ブッシュ政権下のイラクのフセイン処刑は、明白に失敗しています。

<戦争は国家の政治行為のひとつですから、戦争そのものは罪でも違法でもありません(今でも)>この発言は、クラウゼヴィッツの戦争論が出所ですね。1820年前後の話で、ナポレオンが云々される時代です。

 これは、非戦条約が結ばれたころから色あせたものになりました。ただ、今でも軍隊の存在を合理化したり戦争を正当化するために使う人がいますが、正当な「権利」という解釈に耳を貸す人はほとんどいないでしょう。

 中国の拡張主義を防ぐ上で日米安保が有効なことは否定しません。しかし、自国を守るのは日本自身であり、アメリカをたよりにしたりあてにしていては、珍さんの心配大いにあり、です。地球の裏側まで自衛隊を派遣し、アメリカと共に戦争に加わらなくても、自衛隊にしっかりと専守防衛の能力をつけ、近隣諸国との摩擦をなくするような政策をとった方がアメリカも歓迎すると思いますよ。

投稿: ましま | 2016年7月 8日 (金) 10時41分

笹井明子 さま

転載していただくこと、感謝しています。今朝ほどのワイドニュースで、某地方紙が「今度の選挙で3分の2の意味を知っていますか」という世論調査をしたら80何%の人が「知らない」と答えたということでした。

今時の進学率の高さは、何を物語るのでしょうかね?

投稿: ましま | 2016年7月 8日 (金) 10時49分

asa さま

安倍自民圧勝なら、ノーベル賞絶望ですね。

投稿: ましま | 2016年7月 8日 (金) 10時54分

本当は、石原慎太郎氏、青山繁晴氏、稲田朋美さん、櫻井よしこさんあたりに首相をしてもらいたいけど、まあ無理だろうから、無難な安倍さんでいいんじゃないかな。

少しでも日本を愛するのなら、決して、共産主義者の共産党、その片棒を担ぐ民進党なんかに票を投じてはならない。

投稿: makoto | 2016年7月 8日 (金) 19時59分

makotoさまが候補ならなら一票入れます!。

投稿: ましま | 2016年7月 8日 (金) 20時17分

くだらん

投稿: makoto | 2016年7月 8日 (金) 20時20分

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