鳩山首相追放の裏に
週刊朝日4月8日号に、自民党から民主党主体の政権を実現させ、最初の総理大臣となった鳩山由紀夫氏が、記事を寄せている。氏は沖縄基地問題の公約が果せないということで降板し、最後は追われる形で民主党を去った。
まず、記事の要約から見ていただきたい。
民主党と維新の党が合流し民進党が結党された。元首相の鳩山由紀夫氏は、国民に温かいメッセージを出せる党になって欲しいとエールを送る。
* * *
普天間移設問題については、私は非常に責任を感じています。結果的には「最低でも県外」と公約しながら断念せざるを得なかったからです。しかし、辺野古に新基地は造らせないという現在の「オール沖縄」の意志を、呼び起こすきっかけになったと思っています。安倍首相は「辺野古が唯一の解決策」と言ってはばかりませんが、これは明らかに間違っています。民進党は、民よりも進むんでしょうから(笑)、沖縄の民意に沿った回答を出して政府と対峙していただきたい。
しかも、私に県外移設を断念するよう迫った外務省の文書が捏造(ねつぞう)された可能性も出てきました。米軍ヘリ部隊の訓練場である沖縄本島中北部と、拠点となる基地との距離が65カイリ(約120キロ)以内でなければならないとする内容でした。いまになって在日米軍司令部は「海兵隊にそのような基準はない」と明らかにした。私を説得した論拠ももはやなくなったわけです。
これは、大変な証言だ。外務省官僚がねつ造した文書で時の総理大臣をだまして国交を変えさせ、はては総理大臣を政界から実質追放することに手を貸したのだ。外務省官僚の最高ポストは事務次官ではなく、その後に就任するアメリカ大使だといわれている。
そのため、アメリカの意を迎えるためには何でもするという風土があるとすれば、到底独立国とは言えない。鳩山首相は「学べば学ぶにつけ」という言葉を残し、公約を撤回して職を辞した。その後、民主党の後を受けた民進党も、辺野古移転反対を鮮明にしないまま推移している。
首相辞任前後には、周囲の空気が読めず、突拍子な意見を言いだしてアメリカとの協調に失敗したというような意味から、政界はもとより、マスコミからも「宇宙人」というようなあだ名で呼ばれた。首相最初の渡米で、日米関係の重要性と共に、米中間の架け橋になりたいというようなことも言っている。
鳩山氏は、有名な保守政治家の一郎氏を祖父に持つが政治理念の「友愛」が理念として受け継がれている。これを仲良しクラブ、お友達外交程度にしか理解していない向きが多かったのだ。
これは、欧州共同体のもととなり、さらにさかのぼればフランス革命の精神にまでさかのぼる。クーデンホーフ=カレルギーの友愛思想がもとで、歴史的・政治的理念として確立されたものだ。単なる思い付きではない。
中国、南北朝鮮、そして日本は遠くない将来、「東アジア共同体」として世界平和の一角を安定させるべきだという考え方も、当塾の発想に一致した。従ってこの地域の記述のために「東アジア共同体」のカテゴリを設けたぐらいだ。
また、この時期、岡田克也外相も北朝鮮・韓国・日本の核開発競争とは全く逆の非核兵器地帯構想を持っていた。アメリカが、この地域の平和安定・非核化を進展させることに反対するはずはない。
ただ、EC、EUのように通貨統一に進む可能性については、基軸通貨ドルに対抗するユーローに続くものが出現するとなると、アメリカは何としてもこれを阻止する必要があるだろう。外務官僚はアメリカが鳩山に警戒心を抱かせるように仕向けるのは簡単だ。鳩山は続けてこのように発言する。
小沢(一郎)さんのときとかトップに立つ人間が危うくなったとき、みんなで助け合おうとしない。次は俺だ、としか考えない。私欲にかまけて行動し、互助精神と人間味に欠けるのは民主党のカルチャーだった。そういうところが、国民から嫌われたのではないでしょうか。(民主党創設者の)私は民進党の結党大会に呼ばれていませんが、松野(頼久)君はよく訪ねてきてくれます。
政調会長に就く山尾志桜里さんは清新なイメージで、大変期待しています。山尾さんを前面に出して、国民に温かいメッセージを出せるような政党になってほしいと願っています。
上述のような、役人がニセ情報で国交を左右し、首相を交代させるなどの由々しい問題があったとすれば、国会で追及できるのは共産党が社民党しかない。またマスコミも、○○大に××高校から何人誰が合格したなどという大特集の影にかくれるように、週刊誌の片隅の記事ですませていいものだろうか。
鳩山氏には、民主党創設者としての愛着はあるだろう。しかし、政治家の評価は、結果が第一である。沖縄基地問題にしろ、原発ゼロ指向にしろ民主党の政策の誤りはまず反省、転換から始めなくてはならないのだ。
その上で生まれ変わって民意を問う。それでなければ、山尾志桜里さんでイメージアップを図る程度では、到底自民党を上回る政党支持率を回復することができないだろう。
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