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2016年1月14日 (木)

韓国・中国&言論と法

 韓国の世宗大教授・朴裕河女史の著書『帝国の慰安婦』が、元慰安婦などから計2億7000万ウオン(約2650万円)の名誉棄損を理由とする損害賠償訴訟を受け、13日に9000万ウオンの賠償支払いを命ずる判決が地裁から出された。

 書籍の中に、慰安婦と日本軍が「同志的関係にあった」としている記述が、判決理由になっているという。裁判の内容はよくわからないが、一般的に言えば、その表現が慰安婦全体にとって虚偽であったとは言えないように思う。

 過去に一度触れたが、フィリピンかボルネオの前線で終戦となり、部隊がばらばらになった敗残日本兵が、一人の慰安婦とジャングルで出会い、逃避行を続ける連載小説をかつて読んだことがある。

 かき集めた食料を鉄兜を鍋にして女性が調理し、毒蛇のいるジャングルを何日も彷徨し、ワニのいる川を女性を背負って渡り、体力の限界を感じた頃、青い海と砂浜が目に飛び込んだ。そして、帰国への望みがかなえられると、互いに涙し抱き合って喜んだ、というような内容だ。

 塾頭に軍隊経験はないが、この小説には感激した。「姓奴隷」的存在がなかったとは言わないがそれが全部のような表現は、日本の男性が侮辱されているようで納得ができない。朴女史は控訴するそうだが、そのような著書が名誉棄損になるようでは、韓国の裁判所のレベルが疑われても仕方がない。

 女史に有利な証言は減っていくだろうが、まだ皆無ではない。どうか、逆転勝訴してもらいたいものだ。日韓が角を突き合わせていればいいと言う時代は、もう卒業してほしい。こういった美談もあるのだ。
 
 片や中国である。14日付毎日新聞・コラム「木語」に金子編集委員が面白いことを書いている。「強力機関」という言葉がある。これは、中国は共産党・中央宣伝部のもとにある権威あるメディア「環球時報」でも使う、れっきとした中国語だそうである。

 香港にある銅鑼湾書店関係者の何人かが集団失踪したという事件があり、香港では中国当局による拉致と見て、10日には6000人のデモにまで発展した。ところが、その環球時報社説に「強力機関は法律を忌避できる」、だから香港住民の失踪事件はなにも関係ない――、といったことが載った。

 これは、法的に言論の自由があっても、「特高のやることだから仕方ないでしょう」という戦時の日本に似ている。つまり、基本的人権は無視できる公権力の存在を、自らさらしているわけで、近代民主主義国家、法治国家であることを否定しているようなものだ。

 さすが中国事情に詳しい金子編集委員も、これには驚いている。そして、党中央宣伝部の劉雲山党中央政治局常務委員と習金平主席の間に権力闘争があり、習政権の足元を揺さぶろうとする故意の曝露ではないか、という観測までしている。

 中国の剛腕ぶりの反面には、こういった弱点もあるのだ。

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コメント

世宗大教授で従軍慰安婦問題に関する研究者の朴裕河(パク・ユハ)の『帝国の慰安婦』が名誉毀損したという民事訴訟の判決ですが、
これよりも問題なのは名誉棄損での刑事訴追で、1月20日には初公判が開かれる。
今回の民事訴訟の賠償金の結果ですが、影響が出ることが今から心配されます。
『帝国の慰安婦』ですが、何十万人もの慰安婦の中には貧困から自ら体を売ったとか日本軍に協力した女性もいたことが記述されているのですが、これはあまりにも当然な話で、全員が同じ条件ではないのです。
朴裕河世宗大教授は以前から慰安婦支援団体といざこざがあり、これが民事と刑事の裁判につながったようですが、
韓国の民主主義のレベルはまだまだ日本のような先進国とは言えないでしょう。
まあしかしドイツなど欧州諸国でもナチスに関しては同じ状態で、たとえ学術研究でも政府が決めた『定説』に異議を唱えれば即逮捕拘留されるのですから、在宅起訴の韓国の方がいくらかはましです。

投稿: 宗純 | 2016年1月15日 (金) 14時07分

宗純さま
コメントありがとうございました。

足りない部分を調べていただいてありがとうございました。

ナチス研究は、しっかりやらないと再発する恐れもでてきます。弾圧は逆効果にならないのでしょうか。

その意味では、『わが闘争』解禁は当然だと思います。

投稿: ましま | 2016年1月15日 (金) 14時44分

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