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2016年1月27日 (水)

中東はイランが主役に?

 去年から今年にかけての中東の現象は、塾頭の数十年にわたる常識をひっくり返してしまった。過去、中東の主人公はエジプトでありサウジアラビアであった。イスラム全盛時代の中心地であるイラクは、アメリカの侵攻で壊滅したが、いずれもイスラム教徒の9割を占めるというスンニ派の支配地だった。

 サウジは、イスラム教徒にとって巡礼に特別の意味を持つメッカ・メジナの聖地を領内にかかえ、全イスラム教徒の保護者という立場でシーア派巡礼者も受入れる穏健かつ権威ある王国であった。また、世界最大の石油埋蔵量を誇り、アメリカの独占石油資本と密接な関係を結び、OPOECの盟主として原油価格をほしいままに操った。

 Dscf2709_2冒頭に書いた激変のもとはふたつある。今、世界の金融を揺り動かしている原油安とISの出現がどうしてもからんでくる。写真はNNNからのものだが、遂にここまできたか、の感を深くした。キリスト教とイスラム教の握手をイラン大統領が演じてみせたのだ。

 中東紛争のもともとの震源地はイスラエル・パレスチナ問題だ。かつて中東の多くを植民地化していた英仏もさることながら、国民に有力なユダヤ人を抱えるアメリカは、イスラエル寄りにならざるを得なかった。

 ホメイニ革命で、大使館を占拠されたことのあるアメリカは特にイランに反感を持ち、ここが核兵器を持つことが、イスラエルを脅かす最大の脅威になるとした。だから、北朝鮮をほっておいてもこっちの方を優先させ、6か国協同してほぼ核兵器開発阻止に成功した。

 これにより、もともとイランよりのシーア派人口が多いイラクとシリアでは、スンニ派であるISを、ロシアが後ろ盾になっているアサド政権とアメリカが支援するイラク現政権が挟撃し、これにイランが主導的役割を加担する形勢となった。

 ISにとって、支配地を失うということは、過激思想としてアルカイダとともにテロを競い合うという形は残っても、世界から若者を集めて支配地拡大を計るというスタイルは後退することになる。そこで微妙になるのがイスラエルにとって本当の脅威はどこなのか、ということである。

 まず、シーア派を代表するイランとスンニ派の本山を自認するサウジの間で起こった切迫した対立である。穏健なサウジ国王は代が替り、副皇太子が国防相をにぎると、ペルシャ湾をはさんだ両国の間には硝煙の匂いが立ち始めた。

 イエメンで両国が支援する軍事組織の対立があり、去年はサウジ軍が相手組織を空爆までした。また、サウジがシーア派宗教指導者処刑し、イランの同国大使館が焼打ちにあって、国交断絶に至るということにもなった。

 コーランを忠実に守るということでは両者に違いがない。むしろ、イスラム教の純粋性が抜き差しならぬ宗派対立を生んでいるように見える。前にも書いたことだが、コーランをはじめイスラム教はアラビア語でそれを唱え、理解しなければならない。したがって塾頭如きがその教義に立ち入ったり比較したりすることは不可能だ。「どっちが世俗的か――」、これにも答えが出せない。

 唯一の違いは、イランには選挙で選ばれた大統領がいるが、宗教指導者の上に立つことができない。これに比べるとスンニ派各国は、王制または共和国だが国を動かすのは、共和国では軍を握った独裁者が多かった。

 ところが、信者はスンニ派の方が古典的教義を重視し、シーア派は、宗教指導者の現代的解釈に従うという傾向が強いように塾頭には感じられる。その点、スンニ派国の王様や独裁者は、教義尊重をうたいながら、国際間や、国民の間の世俗的要求に妥協することで、国権の維持を図ったのではないか。

 OPECが石油を武器に使っていた頃、プリンスオイルとかプリンスマネーという言葉が横行したことがある。産油国の王族(一夫多妻制なので王子の数は極めて多い)は、原油を現物支給される。国で原油輸出を禁止しても、王子からは闇ルートで買い手に引き合いがあるのだ。

 また、イスラエルと対決する過激派には王子マネーが最近まで流れていたようだ。イスラム教には、富める者が貧者に喜捨する義務がありそれを怠ると背教となる。スンニ派国家は、教義は別として、国を保つためにはエジプトのようにイスラエルと国交を結んだり、アメリカと友好関係を保つことも、政権を維持するためには必要なことだった。

 そういう報道は表向き無いが、アメリカは、王子マネーなどでイラクなどのスンニ派過激組織が駆逐できないことに業を煮やし、イランを立てる方に宗旨替えをしたのではなかろうか。ISは、そもそも神ではない王とか国家の権威を認めていない(そのISが「国」を称するのは矛盾だが世俗的な国家と区別している)。

 原始的な教義をかかげるISに魅力を感じ、スンニ派の若者が兵士として加わるケースが多いことも欧米としては懸念材料だろう。ユダヤ教徒と同列に置かれる異教徒・カトリック法王と握手するイスラム教シーア派の代表が、画期的な光景に写るのは、その故でもある。

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