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2015年12月22日 (火)

一極主義・二極主義・多極主義

 このところ「反知性主義」を連続して取り上げてきた。アメリカ共和党のトランプ大統領候補の主張を「トランプ現象」としてエントリーしたのがきっかけだ。言葉として 「積極的平和主義」のように、何にでも「主義」をつけるのを好まない塾頭だが、世界的な風潮として議論されるべきであろう。

 それと同時に、アメリカの一極支配「ユニラテラリズム」という言葉は、ここ2~3年で急速に影をひそめた。それに代わって登場したのが「多極主義」である。ロシアは外交方針として公的にそれを掲げており、中国も同調する。

 ドイツのメルケル首相は、西側にありながらウクライナ問題などでロシアとの間に立ち、「多極主義」を目指しているかのように見える。アメリカのキューバ承認や、イランとの和解、シリアなどの対IS連合への妥協など、共和党の反対はあるものの、その線上にあると考えても良い。

 ところが、ここへきてやや気がかりなことがある。それは、ロシア・プーチン大統領の多国主義がこのところニ国主義に転換したのではないか、という見方である。一部の人の考えるような国際共産主義復活はあり得ないし、プーチンもそんなことは考えているしは思えない。

 オバマと違ってプーチンは国内で圧倒的な国民の支持を受けている。それは、諜報機関出身の彼が持つ、強靭な精神的肉体的力量という個人的な魅力と、権力機構を知り尽くした周到かつ慎重な政治工作が成功しているからだろう。

 その勢いをこれからも維持し、対抗勢力に隙を与えないようにするためにどうしても必要なことは、国民の間に潜在する大ロシア(帝国)、大ソ連への民族的ノスタルジアを無視しないことである。これまでは、経済復興がそれを押さえてきたが、原油価格の暴落もあり、この先のかじ取りが難しくなった。

 しかし、このところ、ウクライナ東部にロシア軍が存在することを一部認めたり、シリア・アサド政権へのテコ入れ、NATO加盟国であるトルコへの強硬姿勢など、プーチンは多極主義ではなく、アメリカに対抗できる二極主義を目指しているのではないかとの見方が出てきた。

 大ロシアへの郷愁とは、世界に繋がる海への出口を確保しておくということであろう。日露戦争でロシアが艦隊の基地としたのは、バルチック艦隊の北欧バルト海と日本海に面したウラジオストックである。黒海での基地クリミアはもともとロシア領であったが、ソ連から離脱したウクライナに所属、基地は同国から租借している形であった。

 そのクリミア半島が、ウクライナから独立し、ロシアがいち早く編入しを決めため、かろうじて維持できたのが今回の紛争の起点であった。そこから地中海に出るには、トルコのイスタンブールの狭い海峡を抜けるしかない。

 ウクライナが反ロシアでNATOに加盟してクリミアの租借を破棄したり、すでにNATO加盟国であるトルコが出口をふさいだら、南への通路が閉ざされる。これは、大ロシアにとって悪夢であった。そこで重要になってくるのが、シリアのアサド政権のもとで確保されている地中海岸のロシア海軍基地だ。

 地中海、中東、アフリカ方面に開かれた窓が無くなるということは、プーチンを支えてきた国民の人気と信頼を、ソ連解体に劣らない勢いで失墜させることになるだろう。プーチンのシリアの反体制派、ISへの空爆作戦や、トルコへの強硬姿勢は、まさにこの一点にしぼられるのではないか。

 塾頭は、プーチンが二極主義に転換したのではなく、多極主義をどうやって実現させるかというプログラムを、着実に進めようとしている姿ではないかと見ている。よくても悪くても諜報機関出身の手腕は、ここで試されることになる。

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コメント

ロシアに限らず、国連常任理事国というのは基本として自国中心という信念が非常に強く、それを隠すかのように多極性外交をしてるという気がします

日本政府というより、日本国民にそういう多重・多面外交を理解するようになるには少し時間がかかるのかもしれません。

投稿: 玉井人ひろた | 2015年12月22日 (火) 11時58分

自国中心というのは、ロシア・アメリカともに国民の中に根強いようです。

「宗教は阿片」といっていたソ連ですが、今はロシア正教が政治的にも強く、その点はアメリカの宗教が雑多かつ勢力伯仲、そこにイスラム排斥がからんできた。

国連常任理事国は世界の安全に大きな責任を負っており、それが果たせずに70年もその地位を死守しているというのは異常ですね。

日本の「積極的平和主義」。日本人に通じないのが世界に通じるわけがありません。

投稿: ましま | 2015年12月22日 (火) 13時12分

現在のアメリカの宗教事情ですが、ワシントンポスト紙(WP)によると、
なんと、米大統領選挙と宗教、米宗教界は一調査で伝統的プロテスタント13,9%、と少数派。
生まれ変わりの宗教右派(原理主義)evangelica(福音主義)が28,6%、で最大勢力。共和党支持者に限れば4割が宗教右派のファンダメンタリスト(原理主義)なのですから怖ろしい。
二番手がカトリック24,5%で、これはヒスパニックの人口増と関係しているが、これも宗教右派の危機感に火をつけた。
本来のファンダメンタリストですが、そもそも現世には未練がなくあの世に関心があり、政治には無関心であり投票率が低かったが、草の根保守の茶会運動でこの動きに変化が出る。積極的に選挙に介入してくる。
福音主義(宗教右派)の活発な政治活動ですが、共和党でトルンプがリードの中で、
原理主義(福音主義)がクルーズ上院議員の支援強化で動いているとWP紙が報じています。

テッド・クルーズ上院議員はオバマケア(医療保険制度改革法)の成立を阻止するために、ほぼ無人の上院本会議場で演説開始、そのまま翌日の昼まで21時間以上演説を続ける議事妨害で注目され、
ニューズウィーク日本版には『共和党の破壊神テッド・クルーズって?』というタイトルの記事が掲載されてた極右というか、狂信者。
クルーズに比べれば暴言のトランプ氏が穏健保守に見える。

投稿: 宗純 | 2015年12月22日 (火) 15時37分

宗教は詳しくないのですが、アメリカはそこにユダヤ教もかぶさり、単純に政治の方向を見定めにくくしています。

ロシアは、チェチェンのイスラム系がおとなしくしている限り、安泰のようですがISとのかかわりはやはり気になるでしょうね。

投稿: ましま | 2015年12月22日 (火) 18時22分

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