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2015年11月17日 (火)

ISはニセ・イスラムか

 フランスのテロ事件で2回連続の記事を書いた。塾頭は、これまでISの動きに対して、アルカイダなど個人商店的過激派ではなく、国境を意識せずイスラム最盛期再現を狙う異質の存在であると見る。その点でウサマビンラディンの主導したアルカイダと同列に置いたり、パレスチナ問題から生ずる抗争などと混同してはならないと思っていた。

 TVでは、どこの局か確かめなかったが、今はやりの「わかり易い」ニュース解説をしていた。パネルのシールを次々はがして見せるあのやりかたで、「アルカイダとISは仲が悪かったが共闘するようになりました」などとやっている。十字軍と名指しされている欧米諸国ならともかく、日本国内で一把ひとからげでそういった見方が定着しては困るのだ。

 ISの原理主義は徹底したものだ。7世紀、ムハンマドが神の啓示を受けて伝えたコーランに忠実であることを基本とする。ムハンマドの伝道を間違いなく伝えていくと称する「カリフ」4代が続く中で、アラビア半島全部にアフリカ地中海岸、ヨーロッパの一部まで、ジハード(聖戦)によりイスラムのウンマ(共同体)とした。

 地域があまりにも広大になったため、改宗しないキリスト教徒やユダヤ教徒は、一神教の同じ神を信じる者として、税金をとって存在を認めた。したがって、ジハードが裕福と平和をもたらすイスラム全盛時代だったのである。

 その伝統は厳しく受けつがれた。「目には目を」でわかるように法の支配が優先され、生活を支配した。「豚を食べてはいけない」などもその一環である。しかし、地域が広大になればその解釈も柔軟にしなければらない。

 ところが、他の文化・文明・宗教が変化発展する中で、とても通用しないことをISの一部で言い始めたのだ。たとえば、「ムハマンドは奴隷の娘を妻の一員に加えた。だから、捕虜の女を兵士の妻にすることは正しい」などのことである。それが、自称カリフのバグダディーから出た言葉とは到底信じられない。カリフには、神の言葉を時代に沿った解釈で指導しなければならない任務があるはずだ。

 シナイ半島におけるロシア機撃墜にも、犯行声明が出た。イスラム教徒も乗っているかもしれない民間航空機をジハードの対象にするなど、本当のカリフならあり得ないはずだ。しかし、これはISシナイ州という分派から出たものであれば、ISの不統一を示すことになる。

 今回のフランスの無差別テロも、声明でフランス州を名乗っている。フランスにはそういったISが有効支配する地域や集団があるわけがなく、ウソッパチが証明されたようなものだ。状況は、間違いなくIS本体が関与していることを示している。多くの推戴を受け、適正にコーランを解釈運用する信頼されたカリフはいないということだ。

 無差別テロは、多数のムスリムにとって夢を実現する方途ではなく、全く逆を行くものとしか思えない。イスラム国以外に、ムスリムの理想を再現できる本物のカリフは出現する可能性はあるのだろうかか。その答えは、”インシャアッラー”~もしも神がそのようにお望みになれば~と言うしかない。

 インシャアッラーは、ムスリムの日常会話によく出てくる。例えば翌日再会する約束をしても、こういう答えが返ってくる。さきほど「法の支配」と言ったが、日本人の几帳面さからすると、なんともいいかげんで頼りない反応に聞こえる。

 日本人にとってもう一つのこわもての国、中国にも似た慣用語がある。「没法子(メイファーズ)」という。この言葉 は、「すべてを尽くしてもうやることはない。後は天に任せるだけだ」と解釈される。日本でも昔「ケ・セラセラ」という言葉がはやった。

 もとはアメリカ映画の主題曲で、「♪ケセラセラ、なるようになるさ、あとのことなどわからない」というような歌詞であった。スペイン語だというが、その点はあやしい。何が言いたいかというと、どこの国であろうと民族であろうと、庶民は支配者が言う突っ張った融通の利かない気分を好まない、ということだ。

 イスラム統一の夢は尊重されるべきだが、ISのような他人迷惑をものともせずでは、今どき通用しない。ムスリムの殆どはそう思っているはずだ。

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