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2015年11月 5日 (木)

3例目?謎の墜落

 TBS系のJNNが、エジプトの新聞報道として 「エジプト・シナイ半島で墜落したロシアの航空機のブラックボックスを解析した結果、機内で異常が発生し、機体後方の右側部分の壁面が破損したことがわかった」と伝えた。また、アメリカのCNNなども、今日詳報を伝えているがNHKにはない。

 操縦者と何の連絡も取れず原因解明が進まないマレーシア航空機の前2例に次ぐ3例目になるのだろうか。分析には、エジプトやロシア、フランスなどの専門家が参加している。またさらに、こうした解析結果は、ミサイルによって撃墜したとするイスラム国(IS)の主張を否定しているとしている。

 塾頭は、これまでブラックボックスとフライトレコーダーがあれば大抵のことがわかるとのだ、と思っていた。この前のドイツ機の墜落でも、一時は謎に満ちていたが、自殺願望の副機長が機長を締め出したようなとんでもない事件であるという推定が、フライトレコーダーなどで可能になった。

 以上の3件はそれぞれ状況は違うが、操縦者の声がとれていないということに加え、いずれも世界的に耳目を集めている紛争地の上空ということである。最初のマレーシア航空も、現在注目を集めている南沙諸島の手前で大方向転換をしている。2回目はウクライナ東部上空だった。

 今回のシナイ半島での事故は、ロシア、エジプト両政府ともシナイ半島の不安定には無関係であるような態度をとっているが、それは願望であってそうでないかも知れない。5日のAFP=時事によると、英首相官邸は、「調査が進行中の間は、ロシア機の墜落原因を断定はできない」とした上で、「だが、より多くの情報が明らかになるにつれ、同機は爆発装置により墜落したのかもしれないとの懸念を抱くようになった」と声明を出した。

 塾頭は、アフガン、イラク、シリアの次に火がつくとすればシナイ半島だと懸念している。IS(バグダディの率いる)の犯行にしては多くの疑問が残るが、シナイ半島が中東の次の火薬庫にならない保証はない。

 エジプトはアフリカの国である。その一方、スエズ運河を隔ててシナイ半島が横たわり、東側はイスラエルと国境を接する。ここでかつて何度も戦争があった。イスラム教徒とユダヤ教徒の衝突だ。だが、大昔、双方が経典とする旧約聖書にシナイ山でモーセとイスラエル人は神から十戒を授かったとするゆかりの地でもある。

 かつては戦争もしたイスラエルだが、その後和解、承認をしている。そんなことから、エジプトがサウジアラビアと並ぶ中東のイスラム大国であり、軍事的にも抜きんじているが、他のイスラム諸国の評判は決してよくない。国内では1981年に大統領・サダトが暗殺され、2011年のジャスミン革命の連鎖でムバラクも辞任に追い込まれた。

 こうして独裁者統治の時代は終わり、選挙で政治家を選ぶようになったが、その結果国民の支持が多いムスリム同胞団系のムハマンド・ムルシーが選ばれた。ところがわずか1年余後の2013年7月に軍部クーデターで倒され、ムスリム同胞団はテロ組織にされてしまった。
 
 ムスリム同胞団は「穏健派イスラム原理主義」と称され、パレスチナで医療・教育・食料援助で活躍し、エジプトでも貧困層への無料奉仕を通じて底辺からの支持は高い。彼らがシナイ半島を本拠としてガザ地区を支援していたが、軍部の弾圧を受けたとすれば、一部がアルカイダやIS系の過激派に走ったかも知れない。

 軍部には、世俗派市民の支持があるというが、このまま落ち着くのか、混乱の拡大をねらって戦争拡大に持ち込みたい勢力が、シナイ半島に火をつけようとするのか、ここしばらく目が離せない。

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コメント

もし、ミサイルや自爆テロだったとして、その実行したところが問題なんでしょうね。
ISなら良いでしょうが、国家間問題になるとその両国間での駆け引きは我々には想像がつかないことですし、その交渉は両国ともに隠したいはずですから、隠蔽されていくんでしょうね

投稿: 玉井人ひろた | 2015年11月 7日 (土) 08時20分

IS国は「カリフ制」をとってます。カリフにはコーランの解釈を忠実伝える役目があります。

コーランでは人を焼き殺してはならぬというくだりがあると聞きます。ジハードの対照でない、イスラム教徒も乗っているかもしれない民間機を撃墜することも教義に反するように思えます。

もしテロだったとすれば、自称ISかニセカリフかのいずれかでしょうね。

投稿: ましま | 2015年11月 7日 (土) 08時56分

イギリスのキャメロン首相がロシア機墜落についてISIS(イスラム国)のテロを示唆したことで、ロシア側に対して『証拠の提示が一切無い』ことや、担当の専門部局ではなく一足飛びに政権トップの発表だったことを怒っていますね。
英米関係から、アメリカのオバマはキャメロンを支持するかのような発言をしている。
テロ説を補強するかのような、空中爆発による墜落との情報も流れているが、・・・
イスラエルによる撃墜説を誰もいうものがない不思議。
テロ説ですが、日本のヤクザが機内のトイレで誤って手榴弾の安全ピンを抜き爆発させるおバカ事故があったが、旅客機の安全には問題ない。
SOSが出せないほどの爆発には大量の火薬が必要であり、テロリストがこっそり持ち込めるのはかなり困難ですよ。
対空ミサイルのほうがロシア機墜落のこんどの場合、ぴったりです。
マスコミは墜落機の軌跡を報道しているが、まっすぐ進めばイスラエル上空に向かう不思議な航路をとっています。
ロシア機ですが、間違えてイスラエルに近づき過ぎたのでしょう。

投稿: 宗純 | 2015年11月 7日 (土) 09時29分

宗純 さま

爆弾を持ち込むとすれば空港係員にかくれISがまぎれているとか、袖の下を使う(これは常態のようです)とかで段ボール1箱程度の荷物を通すことは可能のようです。

イスラエルのミサイルの可能性既ありますが、同時にエジプトもシナイ半島に大軍を送り込みたい、という理由で事を起こすメリットはあります。停戦協定違反になるので今はできません。

投稿: ましま | 2015年11月 7日 (土) 10時47分

イギリスのデイリーメールが、シナイ半島におけるロシア機墜落の2か月前の8月23日、
ロンドンから189人の乗客を乗せて飛来した英国の旅客機がシャルムエルシェイクに着陸する際、エジプト軍のミサイルで撃墜されそうになる事故があったと報じていると、ロシアのスプートニクが報じる。
デイリーメールによれば、パイロットはコースを変更し、ミサイルを左に避けた。このとき、ミサイルと機体の距離はわずか300mほどだった。
乗員5人のみがこの件を関知していた。のち、ミサイルはエジプト軍が演習の際に発射したものと判明。乗客らにはあえてこのことは知らされなかった。パニックを防ぐためだ。
英運輸省もこの情報が事実であることを確認している。

昨日の毎日新聞夕刊のミニコラム近事片々ですが、
『「爆弾」発言は英米から。「慎重に」と苦言を呈したのはロシア。どうもいつもと役回りが違うような……』
と皮肉っているが、まったく同感です。
今回ですが、何時もと明らかに様子が違っている。

投稿: 宗純 | 2015年11月 8日 (日) 10時45分

事故第1報でまずエジプトを疑いました。IS国テロ説は次の次、特にカリフからの指令とは思えません。

選挙をすれば、イスラム同胞団派が勝ってしまう。エジプト軍部としては、何としてでも同胞団を悪者にして世俗派を増やしたい。

ロシアが爆破説に向かい始めたので、もう否定は無理でしょう。そうするとムスリム同胞団犯人説をとって軍事展開の口実となり、イスラエル国境付近の緊張が一気に高まります。

どのみち大国の中東介入が、悲劇の連鎖を生んでいるようです。

投稿: ましま | 2015年11月 8日 (日) 11時27分

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