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2015年10月 1日 (木)

買ってしまった『正論』

 先月29日の記事「アメリカ石油生産トップに返り咲き」で、日本の「敗戦の原因は、原爆やソ連参戦ではなく、精神論だけで科学的判断が下せなかったを軍部の責任である。開戦の段階で充分予測できたことなのに、見通しもなく突っ込んでしまったからだ」と、石油輸入ゼロのもとでの無謀な戦争だつたことを書いた。

 そしたら、今朝の新聞の広告欄で、雑誌『正論』――大東亜戦争は無謀ではなかった、とあるのを見つけた。「おもしろそう!」。ほかにも保守系雑誌御常連”西”トリオ(中西輝政・西尾幹二・西部邁)そろい踏みで、安倍首相談話の内幕をつく記事もある。

 塾頭の本棚には中西、西部の2~30年前の単行本があるが、たしか「歴史修正主義」などという言葉がはやり出したころ買ったものだ。その後はとんと御無沙汰しており、ご高説は拝聴していなかった。それもあって、つい駅の本屋まで行って780円を払う破目になった。

 早速、「無謀ではなかった」論の石油関連部分を紹介する。まず、題字脇にはゴシックでこう書いてある。

 開戦決定は、合理的な計算と判断に基づいていた――。
 戦後に消し去られた「真実」を解き明かす

 その内容は、開戦直前の昭和16年11月15日に大本営政府連絡会議で決定された「対米英蘭蒋戦争終結に関する腹案」に依っており、著者である林千勝氏は「科学的で合理的な戦争戦略」と形容している。

 研究リーダーは秋丸次朗陸軍中佐で、秋丸機関とも呼ばれ、石油に関する部分は、同機関の報告書「独逸経済交戦力調査」から抜粋している。以下それを引用する。

「(前略)持たざる国が最後の勝利を得る為には(中略)不足する生産力素材の確保を目指す」こと、「軍事行動によって占領した敵国領土の生産力をも利用し得る」こと、そして「長期化されれば、同盟国、友邦、更には占領地を打って一丸とする広域経済圏の確立も次第に可能となり、この広域経済圏の生産力が対長期戦の経済抗戦力として利用され得る」ことを明示します。日本にとり広域経済圏は大東亜共栄圏です。

 実際、蘭領東印度の獲得で石油は当初計画をはるかに上回る量を数年に亘り確保できました。だから連合艦隊は大海原を大いに動けたのです。以上は秋丸機関の報告書「独逸経済交戦力調査」(昭和十六年七月)に明記されています。

 戦争が起きた後のことを、起きる前の報告書に明記されている、というのはナンセンスで編集上の手違いかも知れない。事実は、翌年度が10,524千bℓが南方から送られ予想を上回ったが、19年度は半減、20年度はゼロになった。

 連合艦隊が大いに動けなくなり、輸送路の制海権・制空権が奪われ、船の多くが撃沈されたためだ。つまり、上記の報告自体、タラ、レバの多い希望的観測で、科学的でも合理的でもないお粗末な図上作戦であったことが、史実で証明されている。「消し去られた真実」とは、有力学者も参加していたということらしいが、本質的な問題ではない。

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コメント

開戦の時、山本五十六は「日本は1年間ならアメリカと戦えます(それ以上は無理)」ということを総理大臣に回答していたことは史実として知られるようになりました。

これは裏を返せば、1年を越す戦争では勝ち目がないことを軍上層部や閣僚は知っていたことになります。

それでも、やめられなかったのは戦争と言うものの特性なんだと思います。そして、戦闘を煽り立てる世論誘導があったことだと思います。

投稿: 玉井人ひろた | 2015年10月 1日 (木) 21時22分

玉井人ひろた さま
開戦、小3の時の体験です。「勝てるの?」という質問に両親は押し黙ったままでした。町は静まり返っていました。

学校の先生も慎重でしたが、そのうち「日本は神国」「過去負けたことは1度もない」「神風が吹く」などというようになりました。

私の幼い印象では、浮かれていたのは南京陥落、紀元2600年(昭和15)の頃までで、現在のような世論調査をしたら、ハワイ・マレー沖大勝を知るまでは賛成反対5分5分か反対の方がやや多かったかもしれません。

投稿: ましま | 2015年10月 2日 (金) 06時53分

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