尖閣有事
尖閣有事を考えなくてすむことならそれに越したことはない。中国が南シナ海で無人島嶼に滑走路を作ったり、リグを設置して資源開発行為を続けているのに対して、尖閣ではそこまでやろうという気配は今のところないようだ。
日本が現在実効支配していることと、日清戦争以前から日本人による開発や占有が認められ、実効支配に至った経緯や、中国文献を含めた物的証拠も多いことから、国際世論を敵に回す無茶を避けようとしているようにも見える。
さらに、アメリカの抑止力が働いていると解釈する向きもあろうが、衝突が絶対ないとは言いきれない。党軍部内の独走、漁船衝突事故のような民間による工作、その他偶発事故の危険性はいつでもあり得る。
我が国の領土である限り、国民はこれを死守する決意が必要だ。もし上陸・占領などの行為をしてくるようなら、自衛隊は、阻止のため相応の反撃を加えなければならない。米軍は支援はするだろうが米軍人の血を流すようなことはしない。日本国土を守るのは一義的に自衛隊の任務だからだ。
これがエスカレートすると、沖縄からのミサイル発射に至るかもしれない。中国側がこれに対応して米軍基地やその家族も住む沖縄の攻撃に出れば、ここで初めて「集団的自衛権(今回議論された海外の行使とはちがう)」が発動され、日米合同して防衛に当たることになる。
日本は、攻撃されると同時に、国連安保理にこれを提訴する。安保理では常任理事国の中国がいるから、拒否権で決議を葬ることができる。しかし、ロシアはどうでるかわからず、中国が孤立する可能性もある。これには、国連憲章の背景のもとで生まれた、日本国憲法9条の存在が大きくものをいう。
はっきりしていることは、台湾や国内問題で手いっぱいな中国や、世界の警察官で戦費をはじめその後遺症に悩むアメリカが、さらなる人的・経済的犠牲を覚悟でそのような危険に踏み込むメリットはないのだ。日本が共産主義の防波堤などと信じている向きは、アメリカより日本の方に多いのではないか。
外交官出身の田中均氏は、「尖閣問題には解がない」と言っているが、現役時代の経験からきているのだろう。尖閣の「籍」は日本に置くにしても、軍事目的に使わず、鉱業権・漁業権その他経済上のメリットを共有し合うという、現実的な解決方法がないなどと、誰が決めつけられるだろうか。領土問題でそのような解決方法が現にあるのだ。
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コメント
理想主義も限度がありますよ。
世界から核兵器がなくなるとか、
中国と話せばわかるとか、
おめでたいとしか言いようがありません。
お花畑ですね
投稿: makoto | 2015年10月15日 (木) 16時42分
makoto さま
現在、国連加盟国のすべてが、思惑や程度の差こそあれ、国連改革の必要性を考えています。そのもっとも大きな部分が常任理事国制度です。
東西冷戦の時代から大きく変わっています。加盟国の数が大きく増えたことで常任理事国以外の提案が賛成国の圧倒的多数で可決されるようになったからです。
たとえば今シリアでロシアがクラスター爆弾を使ったとして非難されていますが、これはニュージーランドなどの提案で100か国以上の賛成を得て禁止条約が可決され、すでに発効しています。
アメリカ・ロシアなどは批准していませんがアメリカは使用を自制するなど、5大国世専横がだんだん難しくなってきています。
現実主義もいいですが、こういった水面下の動きにも注意を払ってください。
投稿: ましま | 2015年10月14日 (水) 18時49分
>これには、国連憲章の背景のもとで生まれた、日本国憲法9条の存在が大きくものをいう。
全然言わないし。
まったく言わない。
これっぽっちも言わない。
中国からしたら、日本が9条持ってるの嬉しくてしょうがないでしょうよ。
ましまさんは、国連のことが好きらしくてしょっちゅう書いているけど、常任理事国すべてが核保有国であり、アメリカ、中国、ロシアと侵略国が3か国もある国連に何を期待できる?
国連なんか偽善の塊でしょうyが。
投稿: makoto | 2015年10月14日 (水) 16時22分
鹿児島空港で日航機と小型機、あわや衝突というニュースがありましたが、小型機が管制の指示を誤認だそうです。
物のはずみというの、結構怖いですよね。
投稿: ましま | 2015年10月12日 (月) 20時25分
専門家の話ですと、中国が漁船や海洋警察が境界線でウロウロしていますが、けっして中国海軍がおおっぴらに干渉してこないのは「戦争絶対回避」という、越えてはならない一線を理解しているからだと言います。
それは、海上保安庁しか対応しない日本政府も同じ考えだからと聞きます。
以外に、われわれが思うより外交ルートでは日中間の関係は悪くないのかもしれない気がしてきませんか?
投稿: 玉井人ひろた | 2015年10月12日 (月) 19時41分