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2015年9月15日 (火)

豪華なチラシ

 何となく本棚を見ていたら『今昔秀歌百撰』という買った覚えのない本があった。パラッと開いたページの最後に撰者、(稲田朋美)とある。「ええっ?」と思って目次をみると、知らない多くの名のうち知っている名は、山谷えり子、岡崎久彦、平沼赳夫、小堀桂一郎の5名だつた。

 そうそうたる顔ぶれで安倍晋三が入っていないのが不思議、といったところだ。本全体が「歴史的假名遣」と「正字」で覆われている。こういった本の撰者に選ばれた精神的構造を知る上で、「編輯者」の序と「後書」が雄弁に物語る。

 昭和二十年八月十五日の無條件降伏とそれに續く異國軍隊の占領といふ未曾有の事態において、國語表記の改革が吉田内閣の布告によつておこなはれた。言ふまでもなく、間接統治といふ隠れ蓑を着た米軍占領司令部GHQの意圖がはたらいて居た。

 やはり、GHQ憎し、戦後レジームの脱却で貫かれている本だ。和歌を通じて日本人の魂を問うという内容だが、そこに、どうしてGHQを持ってこなければならないのか。戦前生まれの塾頭が見ても、上記の引用文の中に、言ふまでもなく→謂ふまでもなく、隠れ蓑→隠蓑としなければならない間違いがあり、戦前の表記に忠実とは言い難いのである。

 そもそも、仮名遣いの変更は、マッカーサーのいない塾頭小学生時代にもあったし、常用漢字の変更など、マッカーサーが去った後、国語審議会の手でもたびたび行われた。

 塾頭は江戸時代の古文書に挑戦したことがあるが、略字、当て字、仮名などの自由奔放さは、日本古来の伝統などに捕らわれていない。そもそもひらがなは、平安時代の女性が中国伝来の漢字をもとに作ったものだし、カタカナも庶民の発明だ。

 さかんに日本固有の文化を主張する人は、どう早く見積もっても教育勅語以降の文化しか見ていない。その骨格をなす儒教精神も中国伝来のもので、固有文化と言えるのは日本で縄文土器ぐらいしかないのだ。

 彼ら彼女らがいう日本の伝統文化とは、それほど厚みがなく粗雑なものだということである。そこからの脱却を推進する人は、いつどこから出てくるのだろう。それが待ち遠しい。最後に一言付け加えると、この本はハードカバーの立派なものだが、すべてが「献呈用」、217ページもある定価がない豪華なチラシだったのである。

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コメント

明治の文豪「夏目漱石」の本を読むと、今で言う「当て字」がほとんどですよね。

あれを見ると学校の漢字テストは笑っちゃいます。

だいたい、アメリカの漢字表記の「亜米利加」などは(中国人が)音読みを当てただけですからね

投稿: 玉井人ひろた | 2015年9月16日 (水) 19時53分

そうでしたか。夏目漱石、気が付かなかった。何十年ぶりかで読み返してみます。

楽しみが増えちゃった(笑)。

投稿: ましま | 2015年9月16日 (水) 20時40分

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