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2015年9月26日 (土)

日本と中東の関係

 安倍首相のいう「世界環境の変化」は、尖閣や南シナ海への中国への脅威をいうらしい。さらに北朝鮮のミサイルや核開発を取り上げる。これらは、安保条約の極東の範囲に入るので、それ以外にも自衛隊を出せるよう、ホルムズ海峡の機雷除去などを盛んに例示した。

 多分湾岸戦争後の掃海艇派遣の事例が頭にあったのだろう。中東が今どういう情勢にあって、仮にホルムズ海峡に機雷がまかれるようなことがあれば紅海やインド洋にもまかれ、日本どころか世界を巻き込んだとんでもないことになる、というようなことを書いたことがある。

 いつだったかな、と思って調べたら6月19日の「集団的自衛権想定、あり得ない」だった。その頃はイエメンでイスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」が勢力を拡大し首都を占拠、ハディ大統領がサウジに逃亡するなど緊迫した状況があった。

 サウジは、シーア派の本拠イランの介入を恐れ、政府側に軍事援助や空爆でテコ入れするという展開だ。機雷をまく戦争があるとすればこんな時しか考えられない。そうなればたしかにオイルショックい以来のことになるが、「危急存亡の危機」を感じたのはトイレットペーパ買い出しに走ったおぱちゃんぐらい。自衛隊が出ていく幕ではない。

 そのハディ大統領は、状況の好転を見極め、この22日に帰国したようだ。イラン、サウジ戦争にはならなかったのだ。今、両国の戦争を密かに望んでいるところがある。それは、「イスラム国」だという。中東特派員・荒木基が『イスラム世界と「イスラム国」の真実』でそう書いている。

 両国にとってイエメンが「密接な関係にある国」だったとしても、両国共通の敵である「イスラム国」の思惑にはまるような愚を犯すはずがない。アメリカはイランと不倶戴天の関係にあったが、最近はオバマ政権との関係が目覚ましくといっていいほど好転している。

 シーア派とスンニ派というイスラム教の対立は、局外にいるものから見て分からない点が多い。石油開発や供給で消費国と親密な関係を築いてきたスンニ派のサウジに比べ、ホメイニ革命や核開発で妥協をこばんできたイランの方がどうしても強硬派に見えてしまう。

 しかし、イスラム教の教義の上では、シーア派がコーランなどを柔軟解釈する余地をもたせているのに対し、スンニ派は原理主義的な厳格さを追求するという点があるようだ。大体、コーランは、アラビア語以外で理解したり解釈したりできないことになっているから、当たっていないかもしれない。

 そのスンニ派の極限にいるのが、イラクとシリアで支配地をひろげているIS(イスラム国)なのである。これは、アルカイダなどのテロリスト集団と違い、ウンマ(アラビアから地中海北岸などを覆い尽くしたイスラム共同体)を目指しており全く異質のものと言っていい。

 ここから見ると、イランは背教者であるから、当然妥協の余地がなく戦う相手である。また、ムハマンド死後、イスラム全盛時代に存在した指導者カリフ制度を復活、国王制や大統領の存在を否定することから、同じスンニ派であってもサウジなど王制国は空爆に参加する。

 しかし、宗派の違うイランと共同作戦をとることはない。こういった複雑さの中で、アメリカは、イラク侵攻後、民主的?選挙で樹立した政権が、独裁者・サダム・フセインからイラクで多数を占めるシーア派になってしまったため、ひ弱な雇い兵の多い政権を支えざるを得なくなった。

 もう、何がどうなっているのかわからない。行き場を失った何十万の人が避難民としてヨーロッパを目指す。この人達は何派なんだろう。イスラム教徒であることは間違いないが、いわゆる「世俗派」になるのだろうか。

 そこに飛び込んできたのが、メッカ大巡礼事故の悲報である。今日報道されたところによると、群衆が押しつぶされ、少なくとも717人が死亡、863人が負傷したという。また、今月11日には巨大クレーンが倒壊し、モスク(イスラム礼拝所)が破壊されて100人以上が死亡する事故が起きたほか、今年に入りホテル火災が起きるなど、事故が相次いでいる。

 メッカでの類似の事故は珍しくないのだが、メッカ、メジナの聖地をかかえ、イスラム教徒の保護者、スンニ派の盟主を任ずるサウド王家は、1月23日に90歳になったアブドラ国王を失っており、その権威は、原油価格の低落同様急速に失墜する可能性がある。その結果、ムスリムの9割を占めるスンニ派のセンターとしての求心力を持つ国が見当たらなくなる。

 もしそうなると、イスラム教はIS国、イラン、避難民やチュニジアやエジプトなどの世俗派復権を目指す3勢力の主導権争いになるのではないかという気がする。これは塾頭の独断だが、安倍首相はそういった中東やイスラムのことをどれだけわかっているのだろか。

 ブッシュの始めた「テロとの戦い」の頃から大きく様変わりしている。アメリカは、手に負えなくなった中東から手を引きたがっているのだ。極東や太平洋に目を移す、というのは敗北を覆い隠す口実に過ぎない。

 しかもこの先、中東では何が起こるかわからない。中東やイスラムに目をそむけアメリカに追随し、その肩代わりに手を貸すようでは、日本を存亡の危機に追い込むことにさえなりかねないのだ。安倍首相が唯一当面したのが、ISの日本人人質殺害事件だ。

 この非道な結果を招いてしまった失敗を繰り返さないためにも、IS処刑担当者のメッセージを最後に掲げておこう。

 日本政府よ、貴様らはバカな悪魔の同盟国と同じように、我々が、アッラーの寵愛を、権威も力も持つイスラム・カリフ国であることがまだわからんようだ。我々は貴様らの血に飢えている。

 安倍、勝ち目のない戦争に参加するという貴様の無謀な決断で、このナイフはケンジを殺すだけでなく、貴様らを見つけ次第、どこでも殺戮をする。日本の悪夢のはじまりだ。(前掲書)

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