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2015年9月24日 (木)

リットン報告公開、読売なら?

 「侵略戦争の定義はない」などとうそぶく首相をいただく我が国だ。中国大陸で戦火を拡大させ、抜け出せなくなって大戦に突っ込むきっかけとなった満州事変。その引き金を引いたのは、柳条湖事件で自作自演の謀略を働いた日本の関東軍であることは、今や疑いのない史実として定着している。

 当時、その第一報を報じた「東京日日新聞(現・毎日新聞)」は、奉天発至急報で次のように伝える(1931/9/19)。

18日午後10時半、北大営の西北において暴戻な支那兵が満鉄線を爆破し、わが守備兵を襲撃したので、わが守備隊は時を移さずこれに応戦し、大砲をもって北大営の支那兵を襲撃し北大営の一部を占領した。

 中国は、これを不法として9月21国際連盟に提訴。翌年3月1日には、日本の肝いりで満州国が建国。1933年2月24日、国際連盟が派遣したリットン調査団が報告書を出し、満州国の不承認決議を採択した。同時に日本の松岡洋介代表が連盟脱退の意志を表明して退場する。以上は、どの歴史書にも出てくることである。

 帰国した松岡への日本国民の歓迎の嵐は、「以後の松岡の人生をかえていく」とさえ指摘(中村隆英『昭和史Ⅰ』)されている。それでは、柳条湖の陰謀を、国民は一切知らされていなかったのだろうか。

 ところが、リットン報告における同事件の解析結果は、日本国内の雑誌に全文が発表されていた。雑誌『中央公論』が邦訳し、別冊付録として刊行していたのがそれである。マスコミはもちろん、オピニオンリーダーとされる知識人は、当然これを知る立場にあった。(文末に一部抜粋)

 しかし、威勢のいいことを言っていれば売れ行きが伸びる大新聞は、真実を書くことを自己規制してしまていたのである。今ほどの自由はないにしても、アメリカとの戦争にならないようブレーキをかけることは、けっして不可能ではなかったはずだ。

 今回、議決されたばかりの安保法制化は、松岡を港で迎えた群衆の何十倍もの人々が街頭に出て反対した。また、中央紙の半分と大多数の地方紙は反対を支持する論陣を張った。前回との違いは、政府与党が前のめりの反面、大半の国民が冷静でまっとうな反応を示していることである。

 法案の行使や、9条をその方向で改憲させないようにするためには、さらに公権力監視を投票行動で示す必要がある。そのためのマスコミの責任は極めて重い。

 リットン報告を別冊付録で刊行した『中央公論』。その雑誌社は経営不振を受けて、今は読売新聞の傘下に入っている。本紙の政府ベッタリ報道はともかく、かつてのレベルの高い総合雑誌の権威がどこまで維持できるかどうか、はなはだ疑問に感じるのである。

 9月十八日午後十時ヨリ十時半ノ間ニ、鉄道線路上若クハ其附近ニ於テ爆発アリシハ疑ナキモ鉄道ニ対スル損傷ハ若シアリトスルモ事実長春ヨリノ南行列車ノ定刻到着ヲ妨ケサリシモノニテ其レノミニテハ軍事行動ヲ正当トスルモノニ非ス。同夜ニ於ケル叙上日本軍ノ軍事行動ハ正当ナル自衛手段ト認ムルコトヲ得ス。[中央公論別冊付録「リットン報告書」第四章]

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コメント

柳条湖事件は、広東軍の犯行であることは間違いないのですが、かなり多くの矛盾点が明らかになってきて、広東軍だけの犯行じゃない可能性も指摘されていますね。

投稿: 玉井人ひろた | 2015年9月24日 (木) 19時39分

仕掛けに携わった黒幕は中央・現地を含め複数いるようです。あらかじめそれ用の大砲を配備したりしているようです。

投稿: ましま | 2015年9月24日 (木) 20時19分

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