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2015年9月

2015年9月30日 (水)

転んでもただで起きない

『今昔物語』塾頭流直訳

信濃守藤原陳忠御坂峠転落事故

 今は昔、信濃守藤原陳忠という人があった。任国での任期が終わったので上京の途中、御坂峠にさしかかった。荷物をのせた馬、お供の乗る馬数知れず続く中で、信濃守の乗った馬が架け橋の端にある板を後ろ足で踏み折り、守は乗ったままさかさまに転落した。

 底は測りきれないほど深く、守の生還は期待すべくもなかった。(中略)そのうち、大勢の人によって籠を下し吊り上げられるのが見えた。見ると守は片手で縄を掴み片手には3房程の平茸をしっかり持っている。

 橋の上まで上げ、座ったところで郎党どもと共に喜び合った。そして「そもそもこれは何の平茸にございましょうか」聞くと、守の答えるには「落ちていく中で馬は先に底へ落ちていき、我も驚いて落ちていく途中木の枝の茂っているところがあった。その枝を掴んでなお落ちると下に大きな木の枝があり、それを踏んで大きな枝の股に取りついた。

 それを抱きかかえていると枝に平茸が多く生えているではないか。見捨てるには惜しい。手当たり次第にとって、まずかごに入れたのだ。まだ残っていないかと見るとまだまだある。

 これをとらないのは「大損だ」という気持ちでいっぱいだと守が言った。郎党共は「ご損などとおっしゃる時ではないでしょう」と大笑いになった。すると守、「馬鹿をいうではない。お前たちだって宝の山の前で、それをむざむざ見捨てて帰ったらどういう心地がするか考えろ。受領(任国に赴任している国守)は”倒ル所ニ土ヲ掴メ”というではないか」といった。

 そこで、送ってきた守の代理を務める現地代表の御目代、心の中では憎々しい奴だと思いながらも「まさにその通りですね」などといって一緒に笑った。

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2015年9月29日 (火)

石油半値時代が来るか?

 よくうかがう「つぶやき古道(コミチ)」さまのブログで、福島県では配達を頼んだ灯油が1リッター当たりの78円、去年同時期に比べ3割引きになると書いてありました。前回、前々回と、中東や石油のことを書いているので、続きです。

 まず、今日のニュースから。毎日新聞 2015年09月29日 東京朝刊

 【カイロ秋山信一】サウジアラビア西部のイスラム教の聖地メッカ郊外で750人以上の巡礼者が圧死した事故に関連し、同国の最高イスラム法官(大ムフティ)を務めるアブドルアジズ師は、「起きたことは人間が制御できる範囲を超えていた。運命や死は避けられないものだ」と述べた。国営サウジ通信が報じた。

 「人の運命は、すべて唯一の神・アッラーの思召し」というイスラム教宗教指導者らしい解釈だが、これはひどい。出身国別で最大の死者を出したイランの最高指導者・ハメネイ師は、治安・安全の義務を負うサウジ政府の責任はまぬがれない、と激しく抗議しています。

 スンニ派・シーア派とイスラム教国の間では激しく対立する両国ですが、サウジ政府はメッカ巡礼信者に限り受け入れを続けてきました。前々回の記事でも、サウジ王家の世代交代や王子の婦女暴行容疑なども加わり、権威失墜は免れないようだと書きました。

 そこに、原油の下落です。前回は、産油量トップだった同国がアメリカに抜かれる話をしました。イラン・アメリカの対立解消によるイラン原油の市場復活、中国など中進国の経済停滞、シェールオイルの増産その他、専門家はいろいろ言いますが、かつてOPECを主導したサウジの価格影響力失墜が大きいのではないかと思います。

 原油は、去年8月の100ドル弱から現在40ドルを割るようになりました。日本のガソリンは24日現在135.2円になっているようです。これには原油関税のほかガソリン税、それらにかぶせて消費税という酷税がかかっているので、急に半値にはならないでしょうが、灯油なら見込めるかも知れません。

 ハウス栽培の野菜とか、電力その他あらゆる産業にも影響します。インフレ目標とかアベノミクスにどう影響するのでしょうか。産油コストがかからない中東では、かつて2ドル原油という時代もありました。やはり些細なことでも中東情勢は目を離せません。

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2015年9月28日 (月)

アメリカ石油生産トップに返り咲き

 「ホルムズ海峡の機雷による封鎖」とか「わが国存亡の危機」という安倍語録は、何度も取り上げている。それには直接関連がないが、昨日、毎日新聞に「産油量、アメリカが世界一に」という記事がでた。

 そこでほかの資料でも確かめようと調べたが、元となったBPの調査が1日当たり生産能力の比較で、必ずしも「実績でサウジアラビアを逆転した」とはいえるかどうか微妙ところのようだ。原油価格は低落したものの、シェールガス採掘を止められない事情があるらしい。

 そうなると、逆転が既定事実になるかも知れない。石油史に携わったことのある塾頭にとって、この状況変化は印象深いものがある。わが国では、かつて新潟県、秋田県、北海道に産油地があった。その国産原油と輸入原油の比率が逆転したのは、大正12年(1923) のことである。

 その輸入原油は、ほとんどがアメリカからで、太平洋戦争前の昭和14年(1939)では、81%がアメリカ産、残りは蘭領インドシナ(インドネシア)などだった。それが途絶えるのは、昭和16年8月1日のアメリカ、イギリス、オランダによる石油の全面禁輸である。

 この時、陸軍が11月1日開戦を想定してまとめた「国力判断」は次のようなものであった。

輸入が途絶し貯油で一切の需要を賄うとすれば、平時下でさえ2年後の貯油量は航空揮発油約90万Kℓ、重油230万Kℓとなり、「此の量は大国と万一事を構えた場合にはわずかに1年間の作戦所要量を充たすものにすぎぬ、否、重油に至っては持久戦状態に於いては1年分だが決戦需要に対しては半年分に過ぎぬ、言い変えれば2年後には最早強国に対して我国は自己の地位を力」がない、という状態であった。(岡田菊三郎「開戦前の物的国力と対米英戦争決意」、『日本石油百年史』所載)

 そこで、開戦後いち早く空てい部隊による落下傘部隊の攻撃などで、南方原油の産地帯を押さえたわけだが、開戦の翌年、アメリカは「石油タンカーを最優先攻撃目標とせよ」との命令を下した。つまり、兵站攻撃を重視したのである。

 その、重要なルートになるのが、南シナ海である。日本は南沙諸島を日本領である台湾省に所属させ領土としたが、今中国が同じ様なことをしている。「古くから固有の領土」と言っている中国だが、さすが日本領だった台湾省のことは持ち出せないだろう。

 当時の日本に南進論はあっても、南シナ海に基地まで作る準備や余裕はなかった。敗戦の原因は、原爆やソ連参戦ではなく、精神論だけで科学的判断が下せなかった軍部の責任である。開戦の段階で充分予測できたことなのに、見通しもなく突っ込んでしまったからだ。

 そして戦後、アメリカは、昭和23年(1948)まで、世界原油生産量の59%を占めていたが、1955年には44%にまで低下し、遂に需要の10.4%は輸入に頼らなければならなくなった。日本の輸入も大幅に中東にシフトする。

 このところ、アメリカの原油生産量のランキングは、サウジやロシアに追い抜かれ、3位まで低下していたのである。それが自給も可能で、輸出解禁の話もチラホラするようになつた。

 集団的自衛権の滑稽なたとえ話ではなく、今ほど、政治家に大局的判断が求められる時期はない。石油からの連想ゲームで、こんな話になってしまった。

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2015年9月26日 (土)

日本と中東の関係

 安倍首相のいう「世界環境の変化」は、尖閣や南シナ海への中国への脅威をいうらしい。さらに北朝鮮のミサイルや核開発を取り上げる。これらは、安保条約の極東の範囲に入るので、それ以外にも自衛隊を出せるよう、ホルムズ海峡の機雷除去などを盛んに例示した。

 多分湾岸戦争後の掃海艇派遣の事例が頭にあったのだろう。中東が今どういう情勢にあって、仮にホルムズ海峡に機雷がまかれるようなことがあれば紅海やインド洋にもまかれ、日本どころか世界を巻き込んだとんでもないことになる、というようなことを書いたことがある。

 いつだったかな、と思って調べたら6月19日の「集団的自衛権想定、あり得ない」だった。その頃はイエメンでイスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」が勢力を拡大し首都を占拠、ハディ大統領がサウジに逃亡するなど緊迫した状況があった。

 サウジは、シーア派の本拠イランの介入を恐れ、政府側に軍事援助や空爆でテコ入れするという展開だ。機雷をまく戦争があるとすればこんな時しか考えられない。そうなればたしかにオイルショックい以来のことになるが、「危急存亡の危機」を感じたのはトイレットペーパ買い出しに走ったおぱちゃんぐらい。自衛隊が出ていく幕ではない。

 そのハディ大統領は、状況の好転を見極め、この22日に帰国したようだ。イラン、サウジ戦争にはならなかったのだ。今、両国の戦争を密かに望んでいるところがある。それは、「イスラム国」だという。中東特派員・荒木基が『イスラム世界と「イスラム国」の真実』でそう書いている。

 両国にとってイエメンが「密接な関係にある国」だったとしても、両国共通の敵である「イスラム国」の思惑にはまるような愚を犯すはずがない。アメリカはイランと不倶戴天の関係にあったが、最近はオバマ政権との関係が目覚ましくといっていいほど好転している。

 シーア派とスンニ派というイスラム教の対立は、局外にいるものから見て分からない点が多い。石油開発や供給で消費国と親密な関係を築いてきたスンニ派のサウジに比べ、ホメイニ革命や核開発で妥協をこばんできたイランの方がどうしても強硬派に見えてしまう。

 しかし、イスラム教の教義の上では、シーア派がコーランなどを柔軟解釈する余地をもたせているのに対し、スンニ派は原理主義的な厳格さを追求するという点があるようだ。大体、コーランは、アラビア語以外で理解したり解釈したりできないことになっているから、当たっていないかもしれない。

 そのスンニ派の極限にいるのが、イラクとシリアで支配地をひろげているIS(イスラム国)なのである。これは、アルカイダなどのテロリスト集団と違い、ウンマ(アラビアから地中海北岸などを覆い尽くしたイスラム共同体)を目指しており全く異質のものと言っていい。

 ここから見ると、イランは背教者であるから、当然妥協の余地がなく戦う相手である。また、ムハマンド死後、イスラム全盛時代に存在した指導者カリフ制度を復活、国王制や大統領の存在を否定することから、同じスンニ派であってもサウジなど王制国は空爆に参加する。

 しかし、宗派の違うイランと共同作戦をとることはない。こういった複雑さの中で、アメリカは、イラク侵攻後、民主的?選挙で樹立した政権が、独裁者・サダム・フセインからイラクで多数を占めるシーア派になってしまったため、ひ弱な雇い兵の多い政権を支えざるを得なくなった。

 もう、何がどうなっているのかわからない。行き場を失った何十万の人が避難民としてヨーロッパを目指す。この人達は何派なんだろう。イスラム教徒であることは間違いないが、いわゆる「世俗派」になるのだろうか。

 そこに飛び込んできたのが、メッカ大巡礼事故の悲報である。今日報道されたところによると、群衆が押しつぶされ、少なくとも717人が死亡、863人が負傷したという。また、今月11日には巨大クレーンが倒壊し、モスク(イスラム礼拝所)が破壊されて100人以上が死亡する事故が起きたほか、今年に入りホテル火災が起きるなど、事故が相次いでいる。

 メッカでの類似の事故は珍しくないのだが、メッカ、メジナの聖地をかかえ、イスラム教徒の保護者、スンニ派の盟主を任ずるサウド王家は、1月23日に90歳になったアブドラ国王を失っており、その権威は、原油価格の低落同様急速に失墜する可能性がある。その結果、ムスリムの9割を占めるスンニ派のセンターとしての求心力を持つ国が見当たらなくなる。

 もしそうなると、イスラム教はIS国、イラン、避難民やチュニジアやエジプトなどの世俗派復権を目指す3勢力の主導権争いになるのではないかという気がする。これは塾頭の独断だが、安倍首相はそういった中東やイスラムのことをどれだけわかっているのだろか。

 ブッシュの始めた「テロとの戦い」の頃から大きく様変わりしている。アメリカは、手に負えなくなった中東から手を引きたがっているのだ。極東や太平洋に目を移す、というのは敗北を覆い隠す口実に過ぎない。

 しかもこの先、中東では何が起こるかわからない。中東やイスラムに目をそむけアメリカに追随し、その肩代わりに手を貸すようでは、日本を存亡の危機に追い込むことにさえなりかねないのだ。安倍首相が唯一当面したのが、ISの日本人人質殺害事件だ。

 この非道な結果を招いてしまった失敗を繰り返さないためにも、IS処刑担当者のメッセージを最後に掲げておこう。

 日本政府よ、貴様らはバカな悪魔の同盟国と同じように、我々が、アッラーの寵愛を、権威も力も持つイスラム・カリフ国であることがまだわからんようだ。我々は貴様らの血に飢えている。

 安倍、勝ち目のない戦争に参加するという貴様の無謀な決断で、このナイフはケンジを殺すだけでなく、貴様らを見つけ次第、どこでも殺戮をする。日本の悪夢のはじまりだ。(前掲書)

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2015年9月24日 (木)

リットン報告公開、読売なら?

 「侵略戦争の定義はない」などとうそぶく首相をいただく我が国だ。中国大陸で戦火を拡大させ、抜け出せなくなって大戦に突っ込むきっかけとなった満州事変。その引き金を引いたのは、柳条湖事件で自作自演の謀略を働いた日本の関東軍であることは、今や疑いのない史実として定着している。

 当時、その第一報を報じた「東京日日新聞(現・毎日新聞)」は、奉天発至急報で次のように伝える(1931/9/19)。

18日午後10時半、北大営の西北において暴戻な支那兵が満鉄線を爆破し、わが守備兵を襲撃したので、わが守備隊は時を移さずこれに応戦し、大砲をもって北大営の支那兵を襲撃し北大営の一部を占領した。

 中国は、これを不法として9月21国際連盟に提訴。翌年3月1日には、日本の肝いりで満州国が建国。1933年2月24日、国際連盟が派遣したリットン調査団が報告書を出し、満州国の不承認決議を採択した。同時に日本の松岡洋介代表が連盟脱退の意志を表明して退場する。以上は、どの歴史書にも出てくることである。

 帰国した松岡への日本国民の歓迎の嵐は、「以後の松岡の人生をかえていく」とさえ指摘(中村隆英『昭和史Ⅰ』)されている。それでは、柳条湖の陰謀を、国民は一切知らされていなかったのだろうか。

 ところが、リットン報告における同事件の解析結果は、日本国内の雑誌に全文が発表されていた。雑誌『中央公論』が邦訳し、別冊付録として刊行していたのがそれである。マスコミはもちろん、オピニオンリーダーとされる知識人は、当然これを知る立場にあった。(文末に一部抜粋)

 しかし、威勢のいいことを言っていれば売れ行きが伸びる大新聞は、真実を書くことを自己規制してしまていたのである。今ほどの自由はないにしても、アメリカとの戦争にならないようブレーキをかけることは、けっして不可能ではなかったはずだ。

 今回、議決されたばかりの安保法制化は、松岡を港で迎えた群衆の何十倍もの人々が街頭に出て反対した。また、中央紙の半分と大多数の地方紙は反対を支持する論陣を張った。前回との違いは、政府与党が前のめりの反面、大半の国民が冷静でまっとうな反応を示していることである。

 法案の行使や、9条をその方向で改憲させないようにするためには、さらに公権力監視を投票行動で示す必要がある。そのためのマスコミの責任は極めて重い。

 リットン報告を別冊付録で刊行した『中央公論』。その雑誌社は経営不振を受けて、今は読売新聞の傘下に入っている。本紙の政府ベッタリ報道はともかく、かつてのレベルの高い総合雑誌の権威がどこまで維持できるかどうか、はなはだ疑問に感じるのである。

 9月十八日午後十時ヨリ十時半ノ間ニ、鉄道線路上若クハ其附近ニ於テ爆発アリシハ疑ナキモ鉄道ニ対スル損傷ハ若シアリトスルモ事実長春ヨリノ南行列車ノ定刻到着ヲ妨ケサリシモノニテ其レノミニテハ軍事行動ヲ正当トスルモノニ非ス。同夜ニ於ケル叙上日本軍ノ軍事行動ハ正当ナル自衛手段ト認ムルコトヲ得ス。[中央公論別冊付録「リットン報告書」第四章]

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2015年9月22日 (火)

歴史認識、「顔」論

 中国や韓国は日本に向けて「正しい歴史認識を」という。あるいは、日本の中でも「安倍首相には歴史認識がない」などと批判する声もある。顔のない人間はあり得ない。安倍首相には、「戦後レジーム脱却」とか「美しい日本を取り返す」という「顔」=歴史認識があるのである。

 顔には美醜のほか、多くの人が安心して話せる顔と人を寄せ付けない顔がある。後者の顔は、往々にして歴史修正主義、または独善主義の顔と言ってもいい。一国の指導者には、本来あってはならぬ顔だ。

 安倍首相は、戦後70年の首相談話で信じられないような厚化粧で素顔を隠した。それならば、朴槿恵大統領や中国各機関がいう自国の歴史認識が美しい顔なのかというと、どちらを見てもまったく通用しない、偏狭な顔だといっもいい。

 それでは、アメリカはどうか。日本の敗戦が確実になってから、原爆を2度も投下した人道上の罪は、日本人のB級戦犯より重いが、いまだに頬かぶりしたまま。ロシアも国際法を無視して千島を侵略占領したり、捕虜を酷使したりしたが、謝ったりはしない。

 そこまでいうと、「そうだそうだ!」という右翼の声が聞こえる。しかしその中には「日本が戦争に負けた」という歴史認識が完全に抜け落ちている。何度も言ってるが「勝てば官軍」、それが正義の基準になってしまうのが現実なのだ。

 だからこそ、安倍首相は集団的自衛権を利用して強くなりたい、見せたい、抑止力を高めたいと念願する。しかし、戦後アメリカもロシアも、集団的自衛権を使って一度も戦争に勝ったことはない。ベトナムもイラクもアフガンも、結果から見ると明らかに負けである。

 安倍首相の周辺は、そのあたりの歴史認識すら避けて通ろうとする。これからの日本国民は、どういう顔を世界に向けて行けばいいのか。

 第1次、第2次大戦、冷戦、そしてテロとの戦い、中東情勢の変化、世界の多極化――。オバマ大統領もイラン、キューバで大きく舵を切った。この歴史環境の変化を直視すれば、答えは決まっている。日本国憲法9条の顔しかない。

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2015年9月20日 (日)

雌日芝(メヒシバ)

Dscf2445 幅員4mそこそこの道路は人が通るすき間も狭い。そこへネットの内側から雑草がはみ出してくる。雨の日には傘をさしても、車が来ると道ばたに寄るためズボンや裾が汚れる。

 いつも、公道にはみ出した雑草は接道する地主が刈り込んでおいてほしいと苦々しく思う。その代表格がメヒシバ、雑草の女王ともいわれる。誰もが知っている草だが正しい名をどれくらいの人が知っているだろうか。

 塾頭も「ひめしば」だったかなあ程度のいいかげんさだったが、調べると「メヒシバ」漢字で雌日芝と書く。これより茎が固く穂のやや短いのを雄日芝といい、幼い頃の記憶では相撲取り草といった。

 穂の下あたりに結び目をつくり、ふたりで茎を引っ張り合って穂がもげた方が負けである。そんな遊び、今でもあるのだろうか。なおも調べると、いずれもイネ科で、種は一株7、8万から15万個もできるという。

 よほど暇な人が数えたのかというと、そうではなく何個かを数えて重さをはかり、全体の重さがその何倍かで計算する。日本には弥生時代からあるというから、昨近の渡来種とはわけが違う。卑弥呼以来ずーと親しんできた?純国産だ。

 大賀ハスのように何千年後になっても発芽するという気の長さはなく、2、3年でその能力を失う。そのかわり翌年一気に発芽せず、気候の推移を見はかりながら時期を選んで発芽するという賢さがある。

 植物にはC₃植物とC₄植物があり、95%はC₃植物でしめられる。メヒシバは少ない方のC₄植物に属しており、C₄植物は晴天の日の昼間の強い太陽光をすべて使って光合成を進める。つまり効率よく二酸化炭素を体内に取り込む能力があるのだ。

 なんと、太陽光発電と同様、地球温暖化防止に貢献するかけがいのない植物なのだ。「苦々しい」では失礼にあたる。人間の勝手だが、道路は避けてありとあらゆるところで繁茂してほしい。(『雑草のはなし』中公新書、ほかを参照)

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2015年9月19日 (土)

安倍首相殿

■お祖父さまの真似をするなら、ここで辞めるんですがね。

■「いまひとつすっきりしない」、そうでしょう長い目で見ると、負けですものね。

■改憲は遠のき、安保法案はがんじがらめ。アメリカのエールはお義理。

■アベのミクス、頑張ってください。気が進まない――。そう言わずに。

■何なら池田さん……じゃない、岸田さんにバトンタッチしたら――。

■おかげで参院選の楽しみが増えました。

                  (塾頭)

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2015年9月18日 (金)

決議無効訴訟、できないのか

 きのうのエントリーは「委員会採決は無効だね」である。その中であの議場の混乱を演出した議員の所属、氏名などを追及し、一部始終をマスコミが検証するように書いた。今朝の新聞を大急ぎでさらって見ると、朝日・毎日は塾頭が抱いた疑念を裏付けようないくつかの情報が載っていた。

 結論から言うと、自民党が野党の議事妨害と見せるための演出が準備されていたということになりそうだ。すっかり政府の機関紙と化した読売は詳細に触れず、産経は「まるで騎馬戦」と模様を報じたが、議長席を最初にガードしたのが自民党議員で、あとから飛びついたのが民主党員であることをはからずも証明した。

 議場で議長の声はだれにも聞こえない。だから議長席近くにいる自民党員の合図で議員は立ったり座ったりするだけだ。議事録がないこともはっきりした。「起立多数、よって本案は可決されました」などとの発言もあるはずだが、議長は議場が見えないのにそれを言ったのか?。

 民主党の福山理事によると、議事内容を確かめに行こうとしたらそれも遮られたというが、正常な議事運営やルールを破って神聖な議会、つまり国民最高の権利を破壊した。このまま進めば法治国家ではなくなる。国民は重大な権利を侵されることになる。

 委員会決議があったとする虚偽を証明する証拠は、いくらでも出揃うし、ルール無視も目に余る。決議無効の仮処分訴訟申請というのは出来ないのだろうか?。

【追記】動きがあります。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/shivarei/20150928-00049934/

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2015年9月17日 (木)

委員会採決は無効だね

 参議院の安保関連法制化の特別委員会、昨日からほぼ徹夜で、今日(17日)で審議打ち切りを打ち切ることについて与野党の攻防があった。NHKが午前・午後、委員会室を中心に中継報道したのは、まあ功績である。

 その詳細は、いろいろの形でマスコミに載ると思うので省略するが、塾頭の見た最後の最後の「強行」採決の場面の印象だけは、書いておく必要があると感じた。

 午前中に理事会を開く場所を理事会室から委員会室に突然変更したことに野党が抗議、その後鴻池委員長が委員会開催を宣言すると、すかさず野党が不信任案を提出した。

 委員長は、不信任案が出たので、後を佐藤理事(自民党ひげの隊長)に委任するといってそのまま席を立った。野党はこれもルールに反するといって猛反発したが、結局午後、不信任案の討議に入る。

 結果は少数否決で、鴻池委員長が再び席についた。その瞬間、大勢の議員が委員長に突進して幾重にも覆いかぶさる。塾頭はこれはほとんどが野党議員かと思ったら、どうやらそうではないらしい。

 委員長の近くにいる議員がさかんに与党席の委員に立ち上がるよう手振りをする。これを2度3度と繰り返す。あっけにとられた委員は立ち上がり、まばらな拍手をしたりする。

 NHKのアナウンサーや記者も「何か聞こえましたか」「いや何も聞こえません」と言っている。塾頭には、全く委員長の姿も見えず声も聞こえない。自民党は当然議決があったとするだろう。

 委員長に殺到しかぶさった議員は誰々なのか、議事録はとれているのか、といったことはマスコミでよく検証してほしい。テレビで見ている限りでは、承認の議決があったとは到底言えない。

 強行採決はこれまで何度も見たが、これほどひどいのは見たことがない。安倍内閣にとっては、成功どころか大失敗だったのではないか。本会議で、欠席棄権する与党議員が出てきても不思議ではない光景だ。

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2015年9月15日 (火)

豪華なチラシ

 何となく本棚を見ていたら『今昔秀歌百撰』という買った覚えのない本があった。パラッと開いたページの最後に撰者、(稲田朋美)とある。「ええっ?」と思って目次をみると、知らない多くの名のうち知っている名は、山谷えり子、岡崎久彦、平沼赳夫、小堀桂一郎の5名だつた。

 そうそうたる顔ぶれで安倍晋三が入っていないのが不思議、といったところだ。本全体が「歴史的假名遣」と「正字」で覆われている。こういった本の撰者に選ばれた精神的構造を知る上で、「編輯者」の序と「後書」が雄弁に物語る。

 昭和二十年八月十五日の無條件降伏とそれに續く異國軍隊の占領といふ未曾有の事態において、國語表記の改革が吉田内閣の布告によつておこなはれた。言ふまでもなく、間接統治といふ隠れ蓑を着た米軍占領司令部GHQの意圖がはたらいて居た。

 やはり、GHQ憎し、戦後レジームの脱却で貫かれている本だ。和歌を通じて日本人の魂を問うという内容だが、そこに、どうしてGHQを持ってこなければならないのか。戦前生まれの塾頭が見ても、上記の引用文の中に、言ふまでもなく→謂ふまでもなく、隠れ蓑→隠蓑としなければならない間違いがあり、戦前の表記に忠実とは言い難いのである。

 そもそも、仮名遣いの変更は、マッカーサーのいない塾頭小学生時代にもあったし、常用漢字の変更など、マッカーサーが去った後、国語審議会の手でもたびたび行われた。

 塾頭は江戸時代の古文書に挑戦したことがあるが、略字、当て字、仮名などの自由奔放さは、日本古来の伝統などに捕らわれていない。そもそもひらがなは、平安時代の女性が中国伝来の漢字をもとに作ったものだし、カタカナも庶民の発明だ。

 さかんに日本固有の文化を主張する人は、どう早く見積もっても教育勅語以降の文化しか見ていない。その骨格をなす儒教精神も中国伝来のもので、固有文化と言えるのは日本で縄文土器ぐらいしかないのだ。

 彼ら彼女らがいう日本の伝統文化とは、それほど厚みがなく粗雑なものだということである。そこからの脱却を推進する人は、いつどこから出てくるのだろう。それが待ち遠しい。最後に一言付け加えると、この本はハードカバーの立派なものだが、すべてが「献呈用」、217ページもある定価がない豪華なチラシだったのである。

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内閣支持率乱高下

  前々回の記事で、時事通信の調査によると内閣支持率は今月も下がり続け38.5%と最低を更新したことを書いた。「日頃当塾では、支持率調査に一喜一憂しない主義」と但し書きをつけての上だが、先月の産経調査では「V字型回復」としたことから、その方向性により、安保法制の国会議決に影響を与えるのでメモしておくべきだと思った。

 そこへ14日19時、NHKが劇的な再逆転の数字を出した。参院の審議が終わるまでに、他の調査が出てくる可能性が低いタイミングだ。ほぼ同時に発表された朝日新聞調査も、下にメモしておく。

 各調査の食い違いは、今後大きく報じられることになるだろうが、結論は「一喜一憂するに値しない、信頼できない」という当塾の答えが当たっていそうだ。

 NHKの世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月より6ポイント上がって43%、「支持しない」と答えた人は、7ポイント下がって39%でした。

 朝日新聞社が12、13両日に行った内閣支持率は36%(8月22、23両日の前回調査は38%)、不支持率は42%(同41%)で、第2次安倍内閣発足以降、支持率は最低となった。

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2015年9月13日 (日)

正当防衛と自衛権

 「急迫不正の侵害に対して……」。そう、安保法制化の国会討論などによく出てくる言葉です。これは、もともと刑法第36条(正当防衛)にあり、それが、国の「自衛権」に援用されているわけです。その条項の全文はこうなっています。

(正当防衛)
第三十六条   急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
 この条文でもわかるように「正当防衛」は、「正義防衛」ではありません。法制化賛成の皆さんは、よく「国際法にも認められた、自衛権・集団的自衛権」などと言いますが、これも条文を示しておきましょう。

第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

 このように、いずれも暴力行為や戦争が「正義」であるとは書いてありません。それらは基本的に「悪」なのです。それが「悪」とならない例外が規定してあるだけなのです。同じ「権利」でも言論や投票のように積極的に使わなければならない権利ではなく、使わない方がいい権利なのです。

 「国際環境の変化にともない、国民の安全と平和を守る」というのも、安保法制化や集団的自衛権行使の口実にされています。国際環境の変化というのは何を指すのでしょうか。中国が尖閣諸島の領有権を主張しているのは今に始まったことではないし、国力が増したり軍事費が増えたことを言うのでしょうか。

 それならば、使わない方がいい権利を使わないで済む方向に持っていく努力がまず必要になります。それをしないで、アメリカを頼りにした抑止力を増強するのだと言います。塾頭も必ずしも日米安保体制の強化に反対ではありません。守る備えも気概もなければ、近隣国はかえって不安に感ずるものです。

 ただ、中国や北朝鮮が憲法9条を持つ日本の国土を侵攻したりミサイル攻撃ををしてくることはありません。なぜならば、国際世論を敵に回し莫大な犠牲を払ってまでそれをするメリットがないからです。しかし、日本はそのあり得ないことをかつてやってしまったのです。

 そうなったいきさつは本塾でもたびたび取り上げてきました。軍部や一部右翼の跳ね上がりが相手弱しと見て挑発したのが始まりです。それが途中でやめられなくなり、太平洋戦争へなだれ込んだのです。

 つまり、相手弱しと見られない、その程度の自衛力があればいいのです。中国の方が上回ったとしてもまだ世界屈指の防衛予算があります。 ただ気をつけなければならないのは、アメリカには「正義のための戦争」という発想が根強くあることです。これは、全部とは言いませんが一神教キリスト教の「善」である神に対し、対抗軸に「悪魔」を置いてこれと戦う信者としての義務があるとしいう信念です。

 似たようなことで「自由と民主主義を根付かせる」というのもあります。人類普遍の価値観と言いますが、イスラム圏の国や社会主義国の中には、それが混乱のもとで、お節介をしないでほしいと思っている国、民族も存在します。

 さらに、アメリカには一極主義(ユニラテラリズム)、つまり世界の警察官しいう自負と気概がありました。オバマ大統領は、すこしづつそれを修正ていますが、国内には保守派を中心に根強いものがあります。アメリカには憲法9条がなく「正義」の戦争はあります。集団的自衛権は諸刃の剣にあえて近づこうという暴挙です。

 アメリカは、これまでの中東への介入戦争の戦費負担や兵員の犠牲・損傷など後始末に悩んでいます。この肩代わりをしましょう、お手伝いします、という奇特な国があれば、むげに断るわけにもいかないでしょう。

 アメリカがテロの報復を理由に戦争を始めれば、日本がこれに巻き込まれる可能性は極端に増す、これが集団的自衛権を含む安保法制化の危険性です。アメリカにならって、敵を作り悪魔を作る、これにより憲法9条は形骸化に一直線です。

 「法の安定性は考えなくてもいい」、これが首相側近の本音だったのです。中国の勃興、ドイツのEUにおける主導的活動、核軍縮などに力をますアジェンダ―諸国など、世界は一極主義から多極主義へ向かおうとしています。世界環境の変化とはこれを言うのではないでしょうか。

 憲法9条が力を発揮する時代が漸く来たのです。自国の安全はもとより、シリアの問題、ウクライナの問題でも解決の手がかりを提案できる実績があるのです。それを台なしにしようとする法案を阻止するのは、これ以上ない愛国的な行動ではないでしょうか。

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2015年9月11日 (金)

反戦塾乗15/9/11

■鬼怒川氾濫は徳川家康のせい?

 テレビでは、レーダーマップの筋状に伸びた雨雲を繰り返し写し、そのせいだとしています。何十年に一度というのも聞き飽きたきがします。天邪鬼の塾頭は、徳川家康のせい、という仮説を立てて見ました。

 家康が江戸に開府した頃は、江戸城から下町、房総台地に至るまで一面の低湿地帯で、河川の氾濫は日常的で珍しくありませんでした。主な水源地は谷川岳などの水を集める利根川です。

 その利根川の水が江戸に向かわないよう流れの向きをどんどん東へ移し替えました。そして、ついに渡良瀬川(今の江戸川)につなぎました。渡良瀬川は水はけが悪くなったせいか、その上流で氾濫を繰り返します。

 今でも合流点近くに渡良瀬川大遊水地があります。それだけではすまず、千葉県をまたいでついに鬼怒川まで持っていきました。かつては鬼怒川下流で銚子の海に注いでいた川筋は、「新利根川」となったのです。

 いまの江戸川も新しい名で、かつては「大日川」「利根川」と称していたこともあります。くわしい事情は知りませんが、鬼怒川の水位が異常に上がったというのは、下流で大量の水を呑みきれなかったことにも原因があるかも知れませんね。

 そのあと報道された宮城県渋井川の堤防決壊も、合流地点のやや上のようで、気になる共通点です。【追記】その後続々と被害の拡大が報じられ、この記事がやや軽率であるような感じがしてきました。

 天災より人災の要素を追求したがった、ということであって、被災者の方や亡くなった方には、心からのお見舞いとお悔やみを申し上げます。

■国勢調査でマイナンバー制の予行演習?

 安保法制化議論の目くらましでしょうか。沖縄で政府と県知事が会談、辺野古沖調査を中断したり再開をちらつかせたり、消費税率10%移行にマイナンバー制を利用したポイント還元などを話題にしたり、なにか、政府はさかんに新味を見せようとしているように見えます。

 そこへ、塾頭宅に総務省統計局から市町村などを通じて”国勢調査のインターネット回答の案内”というチラシが配られてきました。見るとすでにIDからパスワードまで割り振られています。

 そして、設定したパスワードは忘れないでください、などとも書いてあります。銀行のATMの暗証番号に始まり、これまでに名前以外の記号が自然増殖し、書きだしたらA4の裏表を使う程になってしまいました。

 麻生財務大臣は、消費税の軽減措置を「面倒くさい」と言ったようですが、いくら毎日パソコンを使っていても「こっちの方がよほど面倒くさい」。確定申告でもそうですが、役人の手が省けるなら、協力者にそれなりのインセンティブがあってしかるべきでしょう。

 それでなくても、マイナンバー制は感じよくないです。

■内閣支持率、やはり下降線

 時事通信調査では、4~7日に実施した9月の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比1.2ポイント減の38.5%。政権復帰後、初めて4割を切った前月を下回り、最低を更新したとあります。不支持率は同0.4ポイント増の41.3%になったと報じました。

 日頃当塾では、支持率調査に一喜一憂しない主義ですが、安倍首相談話が発表されたころの某社の調査が前月を上回ったことで「V字型回復」とはしゃいでいたことを思い出しました。そこで、これからの方向を占う上て重要かなという意味で、メモしておくことにします。

 
 

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2015年9月 9日 (水)

法的安定性、戦前は?

 礒崎陽輔首相補佐官が、ある集会で「法的安定性は関係ない」と発言し、国会の参考人に呼ばれたことは、本塾7月31日付で書いています。そこでも言いましたが、この言葉を最初に聞いた時、すぐピンとはきませんでした。

 国会議員も、エリート官僚出身者か弁護士など法律専門家の経験がある人以外は、多分同じだったのではないかと思います。しかし、塾頭は「これは大変なことを言っているのではないか」と思うようになりました。

 磯崎補佐官は、国会で発言を取り消し陳謝しましたが、それ以上追及されることもなく、補佐官を更迭されたり、議員を辞職したりすることもないままです。この発言は「早く質問しろよ」の野次や、うっかり発言とは違います。東大法学部出身で自治省に任官し、著書もある同氏の「確信犯的」発言で、安倍首相の真意を別な表現を用いて説明したつもりなのかも知れません。

 戦前、日本が軍国主義に走り、軍部が超法規的行動を繰り返したのは、まさにこの「法的安定性」を欠いた状況を利用したとしか思えないのです。当塾ではこれまでも個々の事例として取り上げてきましたが、「法的安定性」でくくったことはありませんでした。

 その最大のものは「統帥権」問題です。まず、「日本帝国憲法」を見ておきましょう。

第一章 天皇
第五条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ
第十一条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第十二条  天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム

第六章 会計
第六十四条 国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ

 以上の各条項のうち天皇と議会にそれぞれ権能があるように読めるところがあります。これらは、まさに「法的安定性」に問題があったのではないでしょうか。以下、『日本近代史小辞典』角川書店から抜粋します。

(前略)このため軍の編成をめぐり内閣と対立するケースが起り、たとえば、一九三〇年(昭和五)ロンドン海軍軍縮条約批准をめぐって統帥権干犯問題をひき起こし、これをきっかけに軍部や右翼はファシズムの道を切り開いた。

 次に掲げるものは「陣中要務令」といって、1924年(大正13)8月に出されたものです。これは、軍隊独自で軍人向けに出されたもので、法律に準ずる政令に当たります。

 その中には、戦では何が起こるかわからない、命令通りにできないときは「独断専行」でチャンスを失ってはならない(下記三)とあり、四では、典則は臨機応変に運用し、七は、遅疑逡巡するより、たとえ方法を誤まっても断行して軍隊を危機におとさないようにせよ、とあります。

 なんと、法を安定させてはならない、という法なのです。以下、資料として関連項目の原文(当用漢字使用)を載せておきましょう。

 三 命令ノ実施ニハ独断ヲ要スル場合尠ナカラス蓋シ兵戦ノ事タルソノ変遷測リ難ク命令ノ指示情況ノ変化ニ伴ハサルコトアリ此ノ如キ場合ニ於テハ受令者自ラ其目的ヲ達し得ヘキ方法ヲ採リ独断専行以テ機会ニ投セラル可カラス然レトモ独断専行ハ応変ノ道ニシテ常経ニ非サルナリ漫ニ発令者ノ意図以外ニ逸脱ス可カラス

 四 典則ハ運用ヲ待ツテ始メテ光彩ヲ発揮ス而シテ運用ノ妙ハ人ニ存ス人々宜ク身ヲ以テ責ニ任シ機宜ニ応シ之ヲ活用スヘシ固ヨリ濫ニ典則ニ乖ク可カラス又之ニ拘泥シテ実効ヲ誤ル可カラス

 七 為ササルト遅疑スルトハ指揮官ノ最モ戒ムヘキ所ト為ス苟モ之ヲ為シ之ヲ断行セハ縦ヒ其方法ヲ誤ルモ尚為ササルト遅疑スルト寧ロ方法ヲ誤ルヨリモ甚シキモノアレハナリ 

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2015年9月 8日 (火)

古墳発見発表のウソ

  本塾の記事でこんな大恥をかかされたことはない。

 今日報じられた新潟県胎内(たいない)市教育委員会の発表訂正内容である。この古墳発見の同委員会発表が、拙著『海と周辺国に向き合う日本人の歴史』の記述が補強されるものとして、12/9/9のエントリー「越後に前期古墳」で取り上げ背景説明までしてしまった。

 共同通信や毎日新聞は、同委員会が当初の発表に誤りがありそれを訂正したとしているが、仮に拙著にそのまま引用していれば、回収したくなるほどの「ウソ」発表である。前回発表は訂正ではなく、まず撤回し、お詫びすべきではなかつたか。

 前のエントリーの内容は全文削除して本文末に一部を移動する。以下に今回発表との相違点を列記しておく。なお、日本海側最北端なある前方後円墳は菖蒲塚古墳で北陸道から会津へ向かう分岐点に位置に位置し、すでに古代史上通説化しているので弊著の訂正は免れた。

【2回の発表の相違点】
項目      前回発表   今回発表
--------------------------------------
墳形     前方後円墳   円墳
全長     41m        39m
築造時期  4世紀前半   前方部と見られた
                  溝は15世紀・奈
                  良時代以降
被葬者   初期ヤマト政権  未成年者
        と同盟関係に
        あった王
---------------------------------------

【2012年9月 9日当塾記事】

越後に前期古墳

新潟県胎内(たいない)市にある「城(じょう)の山古墳」(4世紀前半)から、長大な舟形木棺や矢を入れる靫(ゆぎ)、刀剣、銅鏡などが未盗掘の状態で出土し同市教委が6日、発表した。北部日本海側では例のない、ヤマト政権期の畿内的要素を持っており、市教委は「初期ヤマト政権と同盟関係にあった王の墓」とみている。(産経新聞2012.9.6)

 ヤマトトトビモモソヒメ→卑弥呼?→ヤマト政権→大彦命→四道将軍→北陸・東海・会津地方に版図拡大……。これは、戦後古代史で「記紀による大和政権の勢力範囲誇大記述」というのが定説になっていた。

 前述の古墳は、そのほぼ一世紀前後あとのものとみられ、能登以北の日本海側にはなかったものだ。この時期は「なぞの4世紀」と呼ばれる。記紀では日本武尊の武勇伝などが主で、そこから神功皇后→朝鮮遠征→難波王朝という過程が説話としてえがかれ、そのまま史実とは見なされていない空白期間である。

 ヤマトトトビモモソヒメで始まった大型前方後円墳をベースに、その墳形の伝播が大和政権の勢力範囲を示す指標となっている。この墓は長径41メートルの楕円形というが、円墳でも方墳てもない、前方後円の形がくずれた形とも言えなくない。(中略)

【追記】

14/11/12付の新聞夕刊によると、周辺部の追加発掘で前方後円墳が確定したようです。

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2015年9月 6日 (日)

地域安保法制反対デモ

Dscf2434 1週間遅れで行われた地域の安保法制化反対デモ。主催者発表で参加者500人。子供連れと年配者が多く、若い学生などは見かけなかった。(千葉県市川市大洲)

 そうだよ。若い学生はここでなく、1時間あれば行ける国会前で頑張ってほしい。

 写真下は、デモ参加者に自宅門前に出て、深々とお辞儀を繰り返す小柄な老紳士。今回目撃した最も感動した場面である。

Dscf2440

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2015年9月 5日 (土)

習主席、お疲れ気味?

 北京の抗日戦勝記念パレード、テレビで繰り返し写す。各種兵器や弾薬(中谷防衛大臣・定義=ミサイルともいう)のについての解説や来賓の配列順など、耳にタコができるほどだ。その中に、「習主席が世界に例がない左手で敬礼している」というのがあった。

 ウヨさんなら「左翼の国だから」といいたいだろうが、行進する兵隊はちゃんと右手で敬礼している。マスコミが当局に質問したら、「あれは手を振ってこたえたのが敬礼に見えただけ」という答えが返ってきたという。

 繰り返し見ているが、その言い訳は苦しい。「写実修正主義」そのもの、「左利きだ」とでもいえばよかったものを、後で誰かがきっと処分されるに違いない。

 マスコミは言わないが、それより塾頭が気になったのは、なにか覇気のない疲れ果てたようなお顔だ。安倍首相も時々そんな表情(広島記念式典の時がそうだった)を見せるが、歴史的パレードで、映像に残るヒトラーの姿とは大違いだ。

 ヒトラーは、右手を斜め上に真っ直ぐ延ばすナチス的敬礼をし、行進するヒトラー・ユーゲントなどもそれにならった。顔は闘志満々、ドイツ国民はそれにつられてしまったのだ。ついでに昔の日本はどうだったのか。

 中学の軍事訓練(「教練」といった)で習ったところによると、「直立の姿勢で右手の指が帽子の縁にあたる位置にあげ、ひじは真横に張る」であった。従って帽子をかぶっていないときは挙手の礼はしない。お辞儀ではなく、腰から上の上体を曲げず、わずかに前傾する礼をした。

 海軍は、艦内が狭いのでひじを張らないでいいということも聞いた。だから、金正恩にしろ習近平にしろ、無帽で挙手の礼をすると、なんとも奇異な感じがする。

 かといって、今、スポーツ国際試合で君が代演奏の際の仕草が、右手を心臓のあたりに当てたり(女子サッカー)肩を組んだり(男子同)とばらばらだ。これを、オリンピックを機に統一しようなどということを、今の政府なら言いだしかねない。

 それならば、習主席のお疲れ気味が気になるが、左手の敬礼は愛嬌があり、まだましだ。

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2015年9月 4日 (金)

反戦塾乗・外電3つ

【その1】テレビ朝日系(ANN) 9月4日(金)5時53分配信

 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が北京で会談し、互いに第2次世界大戦の「戦勝国」であるという立場を強調して蜜月ぶりをアピールしました。(以下略)

 前回「歴史修正主義の本場は中・韓へ」を書きましたが、ロシアもその資格がありますね。中立条約を破って急遽「抗日戦争」に参加したのは、玉音放送のわずか一週間前、大勢がすでに決まっている頃でした。

 大小各種各種ミサイル、艦載機、北朝鮮顔負けの維持更新をプーチンさんは朴槿恵さんと並んで見物、メッセージはいずれも「平和」です。そうすると、安倍さんが安保法制化を「平和安全法制」と名づけるのは、もしかして正しいのかもしれません。(◎´∀`)ノ

【その2】インドネシアが高速鉄道計画を撤回、日中の受注競争振り出し。ロイター 9月4日(金)4時10分配信

[ジャカルタ 3日 ロイター] - インドネシアは、日中が激しい受注争いを繰り広げていた同国初の高速鉄道計画を撤回した。政府高官が3日、明らかにした。

首都ジャカルタと南部バンドン間の150キロメートルを時速300キロ以上の高速鉄道で結ぶ計画だったが、ジョコ大統領が高速鉄道は必要なく、中速度の鉄道で十分と判断したという。

また日中両国はこれに伴い、新たな計画を提出することが可能としている。

 日中間の角逐に、「これはヤバイぞ。火の粉をかぶりそうだ」とインドネシアの外交当局が警戒した――、これが真相でしょう。そこで日本は、不要になった時速200Kmクラスの旧型新幹線をリニューアルして提供するという提案すれば……。( ^ω^ )

【その3】2015年9月4日(金)5時1分配信 TBS

東欧ハンガリーの首都ブダペストでは、ドイツなどを目指そうとする難民数千人が駅構内や列車に殺到し、大混乱となっています。こうした事態を受けて、ハンガリーのオルバン首相は欧州議会のシュルツ議長らと緊急協議を行いました。
 オルバン首相は3日、欧州議会のシュルツ議長らとの緊急協議の場で、難民について、「どうかもう来ないでほしい」と訴えました。

 また、難民らがトルコを経由して自国に押し寄せていることから、「トルコは安全な国だ。そこに留まった方がいい」とも述べました。

 さらに、難民の多くは最終的にドイツ行きを希望しているとして、「これはヨーロッパの問題ではなく、ドイツの問題だ」と持論を展開しました。

 これが普通の国の本音でしょう。やはりメルケルさんは偉い!!(当塾・前々回エントリー)のです。それにしても、同じ宗教の本家筋であるトルコやサウジへ難民が行く気をおこさないのは、シリアなどを空爆しているからでしょうかね?。(-゛-メ)

【つけたし】絵文字を多用しましたが、世界中にひろがり、英語ではEmoji、複数でEmojisだそうです。オバマさんも優れた日本文化として絶賛しているとか。これは著作権がどうなっているのでしょう。(゚ー゚)

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2015年9月 3日 (木)

歴史修正主義の本場は中・韓へ

 安倍首相の戦後70周年談話をここへきて改めて評価したい。それは、主語をぼやかすなど本人の本心ではないかも知れないが、彼にまつわりついていた《歴史修正主義》をまがりなりにも撤回するものだったからだ。

 そこへ躍り出たのが中・韓の歴史修正主義もしくは歴史黙殺主義である。70年前の戦争終結ははっきりした結論がある。日本はアメリカに負けたのである。連合国に中華民国は入っていたが、中国人民解放軍は地方軍閥(八路軍といった)であり、9月2日の調印に参加していない。

 韓国も然りで、そのあたりはアメリカの史家がよく知っており文献資料も豊富だ。今日は北京で派手なプロパガンダが虚構(――「挙行」の変換ミスだがそのままでもいい感じ)される。

 両国の良識的な研究者や政府の外交筋の中には、マスコミや軍部などが「歴史修正主義」になだれ込み、民族主義をかきたてることに、内心戸惑いもあるのではないか。

 いずれも自らまいた種だから急な方向転換は難しいだろう。塾頭はどこの国であろうと非科学的な修正主義には真っ向から反対する。日本の大手マスコミがこのあたりを的確に解説すればいいのだが、どこか物足りないのも気になる。

 そこへいくと産経には、両国の歴史の深層を突く記事がでることがある。かつて日本の歴史修正主義の旗振り役を演じていたにしても、「産経新聞の存在価値」を先月7日に当塾が取り上げたのが当たっているようなところがあるのだ。

 下記の引用のように、韓国は産経記事に抗議しているが、記事の中味は朝鮮併合まであった李氏朝鮮の事大主義・事大党などのことを含む歴史で、塾頭が調べた複数の韓国人作家による歴史書でも明記されていることである。

 その中身は、当ブログでも「朝鮮・韓国」の23回シリーズ(カテゴリ・INDEXを参照)に書いていおり、産経記事は
http://www.sankei.com/world/news/150831/wor1508310008-n1.html

を見ていただくとして、末記の韓国当局の抗議もなんとなく一歩引いているのが見える。

 しかし、日本語で見れる朝鮮日報や中央日報電子版なども見ていただきたい。例の「妄言(でまかせ・いつわり・うそ)」という言葉の濫発で、反論にはなっていない。そして清を権力の後ろ盾とした閔妃を朴槿恵訪中で連想したという点について、そんな古いことを……というが、日清戦争や、日韓併合そのものが「古い話」という自己撞着に陥ることになる。

 日本が謝るべきことは閔妃暗殺への加担や関東大震災での殺人、3・1事件弾圧、そして大戦突入による犠牲などがある。しかし際限なくお詫びの対象にすることは歴史修正主義蔓延のもととなり、歴史学的にも国際的にも孤立してしまうことになるだろう。

韓国政府は1日、在日韓国大使館を通じ、産経新聞のウェブサイト「産経ニュース」と「SANKEI EXPRESS」紙(8月30日付)に掲載された野口裕之・本紙政治部専門委員の「米中二股 韓国が断ち切れぬ『民族の悪い遺産』」と題する記事について、「日韓関係に否定的な影響があるのではないか」と憂慮を表明。記事の削除も要望した。

 韓国大使館員がこの日、産経新聞東京本社を訪れ、「表現の自由は尊重すべきで韓国政府も支持しているが、韓国外交、政策全般に関して理解の不足、認識の違いがあり、大統領と朝鮮時代の閔妃(ミンピ)を連想するのはいかがなものか」と述べた。

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2015年9月 1日 (火)

メルケルさん偉い!!

 先月29日のエントリーの結論に難民受け入れに前向きなドイツのメルケル首相を「偉い!!」でしめくくったところ、あたかも誤認であるかのようなコメントをいただいた。何が本当かは常識的に判断すればわかるが、そのままにしておくと誤解のもとにもなるので、今配達された毎日新聞・東京の夕刊の記事を(全文を掲載するのは当塾の方針に反するが)以下引用しておく。


 【ブリュッセル斎藤義彦】ドイツからの報道によるとハンガリーに集まっていた約2000人の難民のうち、約800人が8月31日から1日にかけ、ドイツ南部バイエルン州に列車で到着、ミュンヘンなどの施設に収容された。メルケル独首相は31日の記者会見で難民の受け入れと統合策が「国家の中心課題になる」として、定住・就労や独語教育などに取り組むと述べた。
    
 列車でハンガリーからドイツに向かった難民は一時、ハンガリー・オーストリア国境やウィーンに留め置かれた。数百人はオーストリアに残され、残りはドイツに到着した。ミュンヘン駅に到着した難民はドイツに感謝の意を述べた。

 メルケル首相は今年、80万人と予測される難民のうち半分は定住するとの見通しを述べた。ドイツが債務危機を乗り越え、脱原発を実現した実績をあげ、難民の受け入れを「成し遂げる」と決意を語った。一方、難民への攻撃や収容施設への焼き打ちには「国家として厳しく対応する」として「人間の尊厳を傷つけるものは容赦しない」と極右ネオナチなどの難民排除の動きを批判した。

【つけたし】当ブログは、毎月前月分をまとめてCDにバックアップするのを長年の慣習にしている。今日それを試みたらDVDドライブが機能しない。半日苦闘したが、先月7日にウインドウ7を10に無償グレードアップしたせいかも知れないと気が付いた。

 7に戻せるのは1カ月以内だ。危ない危ない。やってみたらやっぱり原因はそれだった。いずれCDもフロッピーと同じ運命をたどるのだろう。バラパゴス化する塾頭である。

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