戦争法案を葬る近道
12日のエントリー「安倍さんが怖いのは」で、「もちろん野党ではない(苦笑)。強行採決である」と書いた。昨日の衆院委員会の模様を報道が大きく取り上げ、一般の関心が、近年では珍しく若年層にまで広まっていることを、身近に感ずるようになった。
その「強行採決」ぶりが紙面や映像の上で踊っている。野党は、委員会席でブラカード作戦という新手に出た。中には、「自民党、感じ悪いよね」というカードもある。安倍内閣の身内、石破大臣の発言からとったものだ。
与党内では「パフォーマンスだ」という、苦りきった声も出ているようだが、採決の音頭をとった浜田特別委員会委員長でさえ「(既存法案を含め)10本をまとめたこと自体いかがなものか」という疑問を呈している。
今日も5野党が退席する中で衆議院本会議で採決が行われた。「安倍さんが怖い」強行採決がこれで2回になった。しかし本当に”怖い”のは、もっと後のことなのである。
討議は参議院に場を移すが、オリンピック競技場問題、終戦記念日と戦後70周年の談話、中国訪問問題の行方、北朝鮮拉致問題それらにまつわる世論調査の反応など、首相にとっての難関が続く。
その中での参院審議、この特別委員会の委員長に、自民党は鴻池祥肇氏を充てる予定だが、かつて郵政民営化に反対したり、女性問題などのほか、とかく問題発言に事欠かない人のようだ。果たして、安倍さんの思惑通りにいくかどうか疑問が残る。
この法案が参議院で可決成立するためには、次の過程が必要となる。
①参議院特別委員会で可決→本会議へ回付②へ
過半数が得られず否決→廃案(まず、ありえない)
②参院本会議で過半数で可決→成立へ
否決、またはこれから60日(休日除きで)9月24日までに可決できない場合→衆議院に差し戻される。→③へ
③衆議院再審議、3分の2以上の賛成で可決→成立へ
3分の2に達しない場合否決→廃案
「強行採決」は、2回目が終わったばかりで、これからまだ続く。ぎりぎりを迎える9月の日程は次の通り。
9月20日 自民党総裁選
24日 60日ルール最終日、②参照
27日 通常国会最終日
下旬 首相が国連総会出席
そこで「安倍さんの怖いのは」いつになるかである。上記①が最大の焦点である。旧盆や行事の多い8月中で終わらせるというのは参院軽視ととられ、無理に通そうとすれば露骨な「強行採決」になる。9月に入っても20日の総裁選が近づくにつれ、選挙対策のための「強行採決」と言われかねない。
こうして、60日ルールの期日が迫れば、憲法違反の恐れがあって、衆院の再議決を必要とするような法案の決議には、棄権するしかない、という自民総裁選の対抗馬がでてくるかも知れない。また公明党も、さすがにつきあいきれないという議員がふえれば、安保法案を葬る可能性がなきにしもあらずだ。
労働組合の一部に法案反対のスト権確立を目指すという動きもある。また、学生をや若者を中心にデモ参加者の広がりも見られる。
しかし、1350万人の請願署名、580万人が参加した安保改定阻止第2次実力行使、33万人による徹夜国会包囲デモにもたじろがず、「野球見物をする声なき声」の方を尊重すると言ったのが、岸信介お祖父さまだ。安倍首相の腰折れはないだろう。
当時にはなく、今使えるものは、毎週のように行われる内閣支持率の世論調査とネットによる発信だ。これらを加え、安倍政権の内部崩壊を誘発するのが、戦争誘発法案を葬る、遠いようで最も近道なのかもしれない。
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コメント
困ったときの神頼み――。
「世界の安保環境の変化」→そんなの、毎日変化してますよ。
「一国だけで平和を守れない」→日独伊三国同盟で負けたのはどこの国だったっけ。
投稿: ましま | 2015年7月18日 (土) 10時47分
今回の安倍晋三の『なんちゃって平和法案』の不思議さや不真面目さ、違憲性に付いて有識者が色々詳しく論じているし、
護憲左派の政治ブログでも大きく取上げている。
そのなかで、一番秀逸だったのが毎日新聞の17日夕刊の極短いコラム近事片々
紹介すると、
『空にポッカリ無責任。誰も自分が抜かったとは言わない日本式責任所在不明の法則。
新国立競技場。号砲は撃ち直せても問題の根っこは。
◇
ポッカリ落とし穴。「想定外をなくすため基準は明確にしない」。
安保論議の詭弁(きべん)。』
今回の安倍『平和法案』の一番不思議なところとは、1年半前に問題となった何が秘密かが秘密の特定秘密保護法と同じ仕組みで、
何処から何処までが法律の適用範囲なのかが一切不明なのです。
まさに今回近事片々が指摘したように、
『想定外をなくすため基準は明確にしない』。
これ、法律ではありませんよ。
安倍晋三の平和法案ですが、これは今まで法律家とか政治家が想定していた『法律』とは、仕組みとか発想がまったく別なのです。
投稿: 宗純 | 2015年7月18日 (土) 09時00分