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2015年4月 5日 (日)

続・中国の脅威

 4月1日の記事「中国はどこまで脅威か」は、最初、「一極主義から多極主義へ」という題で考えていたのを変更したものである。理由は、これではわかりにくく、インパクトに欠けるな、と思ったからだ。

 そのせいで、題の中味としては中途半端で終わってしまったようなところがあるので、つけたしておきたい。

 なぜ脅威なのか、防衛庁のサイトには次のようにある。

○3月5日、中国は、第12期全国人民代表大会第2回会議において、2014年度の国防予算を発表
【公表の概要】
・予算額は6082.3億元(対前年度比:12.2%増)
 *円換算:約12兆9317億円=我が国の平成26年度予算案んおける防衛関係費の約2.7倍
 *ドル換算:約71333億ドル=米国の2015年度国防予算(国防省要求額、暫定値)の約1/4
 ⇒中国の公表する国防費には、外国からの兵器調達の費用が含まれておらず、実際の国防費は公表額の約1.3~2倍との指摘があることに要留意

 そのあとに、海・空戦力の近代化やミサイル戦力の近代化などが写真やグラフを交えて続いている。さらに、最近に至っても尖閣列島近辺への領空・領海侵犯報道が続いていることや、かつては魚釣島上陸の秘密作戦計画などがあったことを暴露されたこともある。

 このように、南シナ海の南沙諸島などの軍事基地化と相まって中国に脅威を感じるのは当然、といった流れがマスコミを含め一般化している。しかし、日米の軍事専門家や中国ウォッチャーは、おしなべて冷静な判断をしており、政治的にはともかく軍事的な脅威にはなっていないという判断をしている。

 たとえば、12年に海軍力強化の花形として登場し、上記サイトに写真も載っている空母・遼寧の能力は、中国の陳炳徳参謀長さえも「アメリカの空母と中国のそれとは20年の開きがある」(富阪聡『中国人民解放軍の内幕』)と言っている。

 仮想敵国を設け、図上作戦を立てるのはどの国でもやっている。危機感で国民や選挙民を操ろうとする政治家の存在も当たり前と言っていい。シビリアンコントロールが完全に利いていれば、軍が偶発的なことで戦端を開き、それが拡大するという最悪のケースも避けられる。

 過去の戦争から教訓を導き出せる政治家なら、どこに歯止めを置くかを常に心得ている。それを人任せにして、早く「普通の国」になりたい願望の方が優先するような政治家は、世界でも珍しいのではないか。

 中国は最近、尖閣が中国の領土であるという主張を突出させるようなことがなくなったように見える。、中国の論理は歴史的事実に即して破たんしたものであることが次第に分かってきた。ずばり言って中国の狙いは鉱業権の共有だったのだ。

 当塾でも過去に書いたことがあるが、鉱業権の範囲はその国の大陸棚に及ぶ、という学説がある。アメリカにもそれを支持する意見がある。尖閣が日本の領土であっても、海底油田開発では中国にも権利があるというわけだ。

 通常、こういった海で利権が重複する場合、関係国の共同開発が行われるのが通例である。かつて日韓海底油田共同開発が行われ、地上基地は済州島にあった。そして、日中間でも東シナ海の共同開発について協議が行われていた。

 塾頭の記憶によると、共同開発計画は中国側が極めて熱心だったのに対し、日本側は中国の国営と違って民間に事業が委託されるため、予備調査の結果採算ベースに乗らないということから事業化に冷淡だった。

 そのうち、日本側の「尖閣に領土問題は存在しない」発言などもあり、協議は中断したままとなった。最近、中国がやや軟化し始めてきたのは、この地域に豊富な石油・天然ガスが賦存しないということが分かってきたからだともいう。

 日本が実効支配する尖閣など、狭く小さな岩礁を大きな犠牲を払って奪うメリットはあまりない。そうすれば、鉱業権・漁業権などについて双方に有利な基本的なルール作りをするということで問題は解決するはずだ。抜きがたい棘があるとすれば、歴史認識問題だけである。

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コメント

田中角栄ー周恩来会談で尖閣問題は棚上げになり、鈴木善幸ーサッチャー会談で日中尖閣問題棚上げは確認されたはずですが、一方的に国有化した日本に非があるのではないでしょうか?

投稿: コメット | 2015年4月 6日 (月) 11時02分

コメット さま

「棚上げ」というのが曲者ですね。日本側は、元来日本領土だけど議論することをは棚上げにしようと解釈したのでしょう。

明治時代に無人島だった同島で事業開始した日本人がいて、沖縄県とともに日本領土とするよう政府に陳情しました。

政府は、日清戦争に勝てる見通しがついたころ沖縄県に編入しました。中国は戦争末期のどさくさにまぎれて掠め取ったと言ってますが戦後同地域の海底石油資源が有望だという調査結果が明らかになるまで一度も抗議をしていません。

同島は、もともと領土編入とともに国有地となり事業者に賃貸、その後払下げ申請で個人所有となりました。

その後の経過はご存知だと思いますが、石原慎太郎が所有者から買い取ろうとしたため、もとの国有地にした方が中国との摩擦を少なくできる、と野田内閣が判断したものでしょう。中国の大誤解だと思います。

投稿: ましま | 2015年4月 6日 (月) 11時57分

日本政府とかマスコミが『尖閣棚上げ』を否定しているのは事実ですが、
ただ、実際問題として日本政府が尖閣諸島を棚上げにしていたと言うか、
中国に対して気を使っていたのは否定出来ない事実ですよ。
日本固有の領土だというが、日本人は原則立ち入りが禁止されていて、最近では益々この方針が強化されています。
またに日中漁業協定や小渕書簡では『尖閣棚上げ論』が現実化しているのは明らか。

世界第二位の経済力の中国が今後、益々膨張するのは避けれないでしょう。
この様な場合ですが、必ず勝てるとの確信が有るなら断固戦うのも一つの選択肢です。
問題によっては無視するとの手も有る。
しかし勝てそうもないし無視も出来ないなら、棚上げとか話し合いなどの妥協の道を探るしか方法はありません。

日本ですが益々病的な右傾化が止まらない。
朝日新聞は4日、
『外務省がホームページで韓国を紹介する記述を『我が国(日本)と自由と民主主義、市場経済の基本的価値を共有する重要な隣国』という表現から『我が国にとって最も重要な隣国』という表現に変えたことが2日、確認された』と報じる。
1月15日、日韓国交正常化50周年で韓国与党セヌリ党最高委員ら韓日議員連盟の議員が日本の安倍晋三首相を訪問した時の挨拶でも、恒例だった『価値観の共有』との表現が消えていたのです。
中国と本気で事を構える心算なら、韓国などそれ以外の隣国との友好は大事だが、安倍首相の日本外交は周りの周辺国全部と敵対する方向で、これでは成功しない。

投稿: 宗純 | 2015年4月 6日 (月) 16時09分

宗純 さま
コメントありがとうございました。

岸田さんが可哀そうというか、安倍首相外交は惨憺たるもの。それでも首相のかじ取りができない外務官僚は過去最悪です。

中国なら福田さんや山口さんなら要人とちゃんとした話ができる。北からの拉致被害者救援に最も精力的のはずが、実現は遠のくばかり。

こと外交に関してはまさに破たん国家です。マスコミの弱腰も戦後最悪。沖縄から国民一揆がはじまりそう。

投稿: ましま | 2015年4月 6日 (月) 17時31分

この韓国と『価値観の共有』が抜けていた事実は朝日が小さく報じただけで、他のメディアは報じない。
多分、日本人では誰も知らない、
あるいは、知っていても気にしていない。
ところが相手の韓国国内の報道では日本とは大違いで、大きく報じているし、この違いは大きな出来事だと思っているのです。

2015年04月07日のSputnik(旧ロシアの声)のニュースですが、
『日本政府は第2次世界大戦時に隣国へ行なった攻撃に対し、「痛切な反省」を表した。岸田外相はこの表現が記載された外交青書を内閣閣議で読み上げた。』と報じている。
このニュースでは、『安倍首相は2012年の首相就任以来、第2次大戦に降伏日に2度と戦争をしないという宣誓を一切行なわず、アジア隣国に行なった暴力への謝罪も行なったことがないことについて、国際社会からは何度も憂慮の念が表されている。』とも書いている。
同じ日のSputnik 日本の オピニオン記事でも取上げられていて、
『余儀なくアジア諸国に 頭を垂れた日本』と題して、
『中国へのへりくだりのもうひとつの発露として、4月7日に発表された日本外務省の外交青書に、第二次世界大戦中の侵略行為に対する「深い反省」という言葉が使われたことが挙げられる。』
と解説しているが、日本国内では外務省の発表した外交青書にそのような新しい書き込みが有る事実は誰一人報じない。

投稿: 宗純 | 2015年4月 8日 (水) 15時49分

価値観の共有というのは言葉を変えれば一極主義に通じます。カナダ、オーストラリアを含めてそういう言い方をしたげど、今時もうはやりません。韓国はさっさとそんな発想を捨てています。

こだわっているのは一部一極主義者でしょう。

投稿: ましま | 2015年4月 8日 (水) 17時35分

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