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2015年3月28日 (土)

イスラム世界大混乱

 チュニジアで日本人観光客テロで犠牲。ドイツ機、アルプス山脈に正面衝突。いずれも前代未聞の海外大ニュースだ。塾頭も驚くことには人後に落ちない。しかし、これで世界情勢が一変するというニュースではない。

 ウクライナの危機は遠のいた。塾頭の見るところ、当初予想した通りプーチンの勝ちである。ロシアの勢力圏を認めさせたことで、西欧側から見ると憎らしいほど落ち着きはらっている。プーチンに昔の国際共産主義やソ連崩壊まで続いた膨張主義の幻影を見るのは適当ではない。

 グルジアにしろ、ウクライナにしろ領土を広げてしまうとそれだけ諸費用がかかる。広い大地に労働力を投下して農林業生産力を高める時代ではなくなったのである。そういった点では、北方領土もそうだ。戦略的価値がなければ、返還で得られる利権の方に目を向けた方がいいという判断だ。

 今日のテーマ、イスラム世界大混乱はもっと深刻だ。サウジアラビアが他の湾岸王侯国などをさそって、イエメンに対して戦闘を開始したというニュースである。ホルムズ海峡に機雷が敷設されれば、国の存亡にかかわるなどといった、どこかの国の軽率なたとえ話ではない。

 ホルムズ海峡が封鎖されても、反対側の紅海にパイプラインが通っている。イエメン沖はもともと海賊が多いところだが、イランが戦闘に加わったりすればここも通れなくなる。すでにサウジの軍艦が出動している。国の存亡にかかわりはしないが、相当深刻なことになる。

 日頃饒舌の安倍官邸からは何も聞こえてこない。全くそういった危機感がないようだ。つまり、集団的自衛権容認のためのあり得ない架空の話であったことがこれでわかる。
 
 これまでの、背後にアメリカがついているとか、ソ連がついていると言った状況はない。中東、アフリカまたはイスラム圏全体に及ぶ戦国時代の到来で、第三次世界大戦の様相を見せるようにもなりかねない。

 サウジアラビアは、近代兵器を持つ大国だが、これまで1度も主体的に戦闘に参加したことはなかつた。イエメンという国はかつて南が共産圏、北が資本主義の共和国で両者の仲が悪く紛争も絶えなかったが、イスラム圏に大混乱をもたらすようなことはなかった。

 以前書いたように、アラビア半島はほとんどが砂漠で、海岸近くには国境があっても、内陸で接するサウジアラビアとの間に国境線がなかった。従って出るのも自由、入るのも自由だ。サウジはイラクに神経をとがらしても、無力なイエメンは、無視することができた。

 その一方、治安確保が手薄なことから、紅海の対岸ソマリアなどと同様、テロリストの本拠とか隠れ家となることが多かった。9・11の首謀者とされるウサマ・ビン・ラディンもサウジアラビア人だかイエメン出身である。

 サウジ参戦がただならぬ事態であるのは、相手が北部と首都サヌアを制覇し、大統領イディを国外に追い出したシーア派の軍事組織フーシだからだ。背後には当然シーア派国家イランの影が見え隠れする。

 イエメンには、その前から独特の勢力を保ち過激派の訓練基地とも言われるアラビア半島のアルカイダ(AQAP)がある。そもそもの本家はアフガニスタンにあり、イラク・シリアに発生したイスラム国(IS)とは一線を画していたが、最近は見境がつきにくくなっている。

 ことを複雑にしているのは、イラク・シリアにまたがるイスラム国(IS)の存在だ。去年発生したばかりだが、すでに台風の目となり、いつ巨大化してもおかしくない勢いだ。サウジと同じスンニ派ではあるが、その厳格な原理主義は王侯とか大統領と言った世俗的な権威・権力を否定しており、ヨルダンなどと共同して攻撃に乗り出した。

 一方、ISに追いまくられたイラク現政権はシーア派であり、イランと友好関係にあった。IS壊滅ではサウジと利害が一致し、それぞれ独自に戦っている。中東の混乱はパレスチナ問題に端を発したと思われていたのが、その解決を見ることなく、規模も性格も全く異なる段階に突入したようだ。

 ISには、依然として世界各地から戦闘員が加わっているようだ。それがなくても至る所に飛び火する危険が存在する。ロシアのチェンチェン、中国のウイグル自治区、パキスタン・タリバン運動、インドネシア、アフリカのボコハラムやチュニジアなど各地のほか、テロなら世界中どこでも起きる。
 
 この沈静化、解決に向けた仕事を誰がするのか。そもそもの原因を作った欧米はもとより、世界の警察官アメリカも火中の栗を拾う余力はない。国連は被害者である国の大統領が逃げてしまったらどう対処するのだろう。

 集団的自衛権など、あさっての議論をしていても、何の役にも立たない。日本政府は、せめてこの程度の国際認識のもと、本当の意味で「積極的平和主義」を持ってほしい。

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コメント

ISが出来上がった根源は、アメリカが中心に行った湾岸戦争で、その時に攻撃され生き残った残党や戦闘員が集まってできた組織だそうですね。

やはり、ブッシュに言われて小泉総理が初めて自衛隊を海外に出動させたあの戦争の因果が今巡ってきたようです

投稿: 玉井人ひろた | 2015年3月28日 (土) 21時54分

湾岸はともかく、ニセ情報をもとにフセインを殺しに行ったあのイラク侵攻はひどい。

アメリカでも大半は「失敗だった」と思っているようだが、「あの戦争は正しかった」と70年前の反省をしないトップがいる国では大きなことを言えませんね。(≧∇≦)

投稿: ましま | 2015年3月29日 (日) 06時19分

「あの戦争は正しかった」
この言葉、サヨクの人が、自分たちと意見の合わない中道の人、右寄りの人、主に自民党の政治家などを「こんなこと言いやがって」と攻撃するときによく使っているのを目にするんですが、実際にこんなこと言ってる政治家とかっているんですか?

聞いたことがないんですが。

投稿: makoto | 2015年3月29日 (日) 08時31分

makoto さま

ちょっと長い文を書いたのでお休みにしようと思っていましたが、ご指摘を受けたことに応えようと思いました。

長くなったので次の本文に移します。ありがとうございました。

投稿: ましま | 2015年3月29日 (日) 10時59分

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