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2014年10月27日 (月)

中東用語メモ(前承)

 前回の”どうなる「アラブ国」”は、塾頭ペースに過ぎて、”中東用語”濫発で終わった。理解を深めるためには「用語」をどう解釈するかが肝心だ。正確にはWikipediaその他で学問的な定義をしなければならないが、その余裕も能力もないので、ここは「余談ながら」といったことにしたい。

■イスラム原理主義
 もともとは、キリスト教原理主義からきている。したがってイスラム原理主義というのは、新しい造語である。キリスト教の場合、福音書に重きを置くプロテスタントの中でも原典に忠実で、新しい解釈を排し、予言を正しいものとする主義である。それをイスラムに応用したもの。

 当初、エジプトを中心に周辺国に広がるイスラム同胞団や、アフガンにおけるタリバンなどを称した。最近は、その後他の過激派武装組織を含め総称されるようになってきた。もともと、神以外の権威・権力を否定する考えが強いイスラム教にあってサウジアラビアは王族が支配する国である。しかし、聖地メッカを擁し、ムスリムの保護者を認じていることから、戒律も厳しく、その点ではより原理主義に近い。

 イランを原理主義と称することはあまりないが、世俗的なパーレビー王朝を崩壊させたシーア派宗教指導者ホメイニの革命は、原理主義復活の様相を示していた。宗教指導者が政治を上回る権威を保持している点は、タリバンにおけるオマル師の存在と同様である。

■タリバン
 アフガンの内乱に際し、ソ連軍が集団的自衛権を口実に侵攻してきた時、これら対抗したのがイスラム武装集団・タリバンである。さらに義勇軍として、湾岸諸国などの若者が加わった。その中心人物がウサマ・ビンラディンである。

 その彼を背後から支持・援助していたのがアメリカであった。しかしその後、パレスチナにおけるイスラエルの横暴を黙視し、湾岸戦争ではサウジに基地を置いてき、女性兵士で聖地が蹂躙されたなどの理由から、彼がアメリカに敵意を抱くようになる。

 9.11事件の有力な計画犯人と断じたアメリカは、ソ連敗退後タリバンが権力を握った政権を握っていたアフガンに対し、彼を逮捕引き渡すよう求めた。アフガンは熟議の上オマル師の指導もあってこれを断った。コーランには、客人があって、たとえそれが親の敵であっても3日間は歓待しなければならないという教えがある。砂漠の厳しい生活環境がそれを要求する。

 親の敵どころか、ソ連を撃退した恩人でもある。「はい。それでは」というわけにはいくまい。アメリカは、自衛権の発動という理由で、国連の決議をたてに同志国と共にアフガンに攻め入り政権を倒した。それ以来タリバンをテロリストと位置づけ国家の「敵」とすることになった。

 ご承知の通りビンラディンは、パキスタンの隠れ家で、いきなり踏み込んできた米特殊部隊に逮捕され、連行途中の船上で殺害された。パキスタンにとっては、明らかな主権侵害だがそれに抗議する力はない。

 前回、パキスタン・タリバン運動という同国内過激派が分裂し、その一方が「イスラム国」に加担することを決めたというニュースを書いた。その中でただ一つの真実は、アメリカがあれだけの犠牲を払いながら、パキスタン・アフガンともにアメリカに憎悪を抱いても好意をもつ住民がゼロに等しいということだ。

■アルカイダ
 かつて、志願兵などをアフガンで養成・訓練したのが始まりとされる。これまで、世界に散らばった過激派武闘集団やナイジェリア、マリのボコ・ハラムなども当初そういう言われ方をしてきた。しかし、塾頭はいささかそれに疑問を持っていた。

 というのは、ビンラディンがそういった世界戦略があって、集団を指揮命令するような力があると思えなかったからだ。ただし、思想的感化を受ける可能性はある。9.11に彼がかかわったとしてもその程度であって具体的戦術は現場主義だったのではないかと想像する。

 イスラム国はアルカイダから破門されたという。その表現が当たっているかどうかは別として、綿密な計画性が見られるイスラム国とアルカイダは異質な感じがする。アルカイダに、昔の威力がなくなったと評する解説もある。

 塾頭は、当初イスラム国が「国」を名乗ることは原理主義との原則から見て矛盾があるという気がした。しかし彼らはそれを最初から意識して、アルカイダとは違うぞ、という意気込みと力を誇示したかったのではないか。

 それが成功するとも考えられないが、ブッシュ時代の「テロとの戦い」では対応できず、発想の転換を迫られている時代がきたという現実を、世界に突きつけていると見て間違いないだろう。

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