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2014年8月23日 (土)

米、イスラム国打倒へ

 9.11を画策した容疑のウサマビンラディンをかくまったという理由でアフガンのタリバン政権を倒したり、大量破壊兵器を隠し持っているというニセ情報をもとにイラクのフセイン政権を倒したアメリカ。近代兵器を投入した戦争には違いないのだが、それら一連の行動を「テロとの戦い」と位置づけた。

 シリアからイラク北部にかけて突如現れた「イスラム国」。アメリカは、地上軍は派遣しないと言いながらこれに空爆をかけている。理由は、少数民族クルド族救援や米国人記者処刑への報復だ。

 根に「アルカイダからは除名されたが、ビンラディンの系譜を引く最過激反米テロリスト集団という位置づけのせいではないか。新聞は「イスラム国打倒へ」というタイトルを掲げているが、相手が国ならテロとの戦いではない。

 毎日新聞の22日東京夕刊では次のように伝える。

 【ワシントン西田進一郎】ヘーゲル米国防長官は21日、国防総省で記者会見し、イラクとシリアで勢力を拡大するイスラム過激派組織「イスラム国」について、高度な軍事力や豊富な資金などが結合した「これまで見たことがない組織だ」と強い警戒感を示した。また、同席したデンプシー統合参謀本部議長は、イスラム国を打倒するにはシリア国内でも空爆を行う必要があるとの認識を示した。ただ、米軍が直接空爆する可能性を現時点では否定した。 
      
 ヘーゲル長官は、イスラム国は「単なるテロ組織の枠を超えている」とし、「あらゆる事態に備えなければならない」と強調した。米国はイスラム国に対抗する長期的な戦略を追求するとし、「米軍の関与は終わらない」と語った。また、シリア国内でのイスラム国への空爆について「引き続きあらゆる選択肢を考えている」と排除しない考えを示した。

 日本の新聞は、産経がアメリカの行動に賛成、読売がそれに次ぎ、毎日・朝日は慎重な態度をとるが、ヘーゲルのいう「これまで見たことがない組織」で「単なるテロ組織の枠を超えている」点についての分析、解説はまだ見ない。

 なぜ「国」を名乗るのか。アラビア語の感触がわからないが、国連加入を目指す近代国家のそれとは違うような気がする。「国」を宣言した最高指導者アブ・バクル・バグダディは、自らを「カリフ」と自称する。

 イスラム教では、ムハンマドは神が遣わした最後の伝道者であり、彼の死後正統な後継者として選ばれたものをスンニ派では「カリフ」という。750年から1258年まで、イスラム帝国と称されるアッバース朝が成立した。首都をバグダードに置き、経済的にも文化的にも繁栄の極に達する。

 カリフ体制はこの時までで、以後モンゴル軍の侵攻を受け有名無実の存在となり、広大なイスラム世界(コーランていうウンマ=イスラム共同体)が分裂・散在するようになった。イスラム国は、あきらかにこの古き良き時代「ウンマ」を意識しているようだ。

 同じスンニ派であっても、部族・王族の国サウジアラビア、軍事独裁政権の国エジプトは、ムスリムを糾合したウンマではなく、カリフを政治的・軍事的に上位に置く体制を認めるはずがない。シーア派であるイランは、カリフそのものの存在を認めていない。

 その他、ムスリム同胞団などイスラム系諸組織からも、その過激さ故に敬遠されているようだ。四面楚歌の中、地元のイラク・スンニ派住民から支持を受けていても、空爆や反対勢力に対する武器援助で簡単に制圧できるという見方が有力になっているのだろうか。

 しかし不気味なのは、他の反体制派武装組織から移籍した戦闘員約800人のほか、外国人はアラブ諸国や欧州、中国などの約1300人で、その多くは最近になってトルコ国境から流入したという。建国を宣言した後の約1カ月間に約6300人が新たに組織に加わったとの報道もある。

 ネットで、アメリカ人をナイフを持って処刑する覆面の男性を見た人も多いだろう。彼の英語の訛りから見て、イギリス・ロンドンの近くの育ちだという。つまり、国の支持はなくても、既存勢力に不満をいだくムスリムの国境を越えた支持があるという現象だ。

 実態は今一つ不明瞭だが、空爆の効果は限られている。反面、イスラムの長い歴史体験の中で、アメリカが今後何世紀にもわたって、際限なくテロの対象から逃れられないという危険をおかすことにはならないか。

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コメント

アメリカですが、『歴史は繰り返す』で、
2001年の9・11事件で、今まで実質的に自分が育てていたアフガニスタンのタリバンを突如として『敵』に認定した13年前を思い出す馬鹿馬鹿しい話ですね。
シリア領も空爆と言い出したが、
半年前には逆に、インチキ臭い理由でシリア政府軍を空爆すると張り切っていた。ところが、ロシアのプーチンに空爆する寸前で止められている。
欧米諸国が応援しようとしていたシリア反政府軍とは、実はISISであり、
彼等が以前から毒ガスを常用していた連中だったことが、イラク北部に侵攻したら発覚するが、その程度はもちろん全員が知っていたのです。

投稿: 宗純 | 2014年8月23日 (土) 16時45分

宗純 さま
コメントありがとうございました。

アメリカ情報組織のいい加減さを知ったオバマも中東処理にはほとほと困っている。情報というのは、誰かの都合でじうにでも作れるもののようですから。

このところのアメリカの対外政策は、破れかぶれでのようすね。やはり、伝統的モンロー主義回帰が最善の道でしょう。

そのご主人様に嬉々として尻尾を振るポチの姿、なんとも哀れというしかない。

投稿: ましま | 2014年8月23日 (土) 17時40分

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