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2014年6月16日 (月)

変る中東変わらぬアメリカ

 日本人が見ても奇妙きてれつな集団的自衛権論争は、世界から見て神秘で異様な現象に見えるだろう。それと同様に中国の周辺国へのツッパリと口汚い日本攻撃は、経済成長に追いつけない政治の未成熟さを示すものと映っているに違いない。

 今、アメリカをはじめ最大の関心事は、中近東の変容ぶりとそれへの対処であろう。もっとも、そういった安全保障問題が、日本のようにサッカーW杯報道一色でかき消されているかどうかは定かでないが……。オバマ大統領の頭の中をしめているのはサッカーはどこが優勝するかではない。

 新鋭空母ジョージー・ブッシュがペルシャ湾の波をかきわけ、イラクに近づいている。ブッシュといえば、大量破壊兵器を隠し持っているというニセ情報をもとに、悪名高いイラク戦争の泥沼に突っ込んだ前大統領の名だ。

 オバマはそこから爆撃機や無人機などを飛び立たせるかどうか、数日以内に決断しなければならない。今度の敵は、独裁者フセインではなく、イスラム最過激武装集団「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」だ。

 ISILは、アメリカが9.11事件の首謀者そしてテロリストの頭領としたウサマビンラディンと、その組織・アルカイダが源流だとされる。もともとソ連の侵攻を受けたアフガンで、それに抵抗するイスラム教徒の志願兵がサウジアラビアなどから集まった。彼らの多くは厳格な教義を守る敬けんなスンニ派信徒で、ラディンもその一人である。彼らを陰で支えたのがアメリカだった。

 スンニ派といえば、これに対抗するのがイスラム教の中では少数派のシーア派である。その根拠地がイラン。親欧米で石油輸出にも理解のあったパーレビー王朝を民衆革命で倒したのが、シーア派の宗教指導者ホメイニで、アメリカ大使館を学生たちが占拠したため、アメリカは共に天をいただかぬ敵国となった。

 イラン・イラク戦争というのが起き、シーア派住民が多いにもかかわらず、それに次ぐスンニ派のフセインがイラクの支配者であった。独裁者と言われてもイランとの戦いだ。アメリカはこれにもフセインに手を貸した。フセインの誤算は、石油採掘権の争いから隣国クエート王国に軍隊を入れたことだった。

 国連の非難だけでなく、石油の宝庫アラビア半島の利権が危機にさらされる事態にアメリカをはじめ多国籍軍が反攻を開始し、たちまちイラクを追いかえした。これで、イラクもアメリカの敵となる。アメリカと対敵するということは、即、パレスチナ問題で、アメリカが支持するイスラエルの宿敵になるということだ。

 アメリカは、テロ支援国という名目で前述のようにブッシュがイラク戦争を始めた。またイランとは、核兵器問題で経済制裁を強化することで、国際的孤立化をはかった。アメリカがイスラム圏で友好国として信頼する国は、サウジアラビアなど、スンニ派王国に比重が移っていった。

 アメリカが、中東で戦争に手を染める大義名分として、自由と民主主義を根付かせるためという一項がある。イラクやアフガンで生まれたはずの民主主義政権、そしてアメリカが歓迎したいわゆる「アラブの春」でも選挙により選ばれた政権は、いずれも弱体でアメリカの期待には応えられていない。

 言っちゃ悪いが、独裁政権の方が治安がたもてるのである。そういった状況につけこんできたのがISILなど、過激武装組織だ。その典型がシリアでの反政府派への潜入であり、そこから方向を転じてイラク北部でマリキ現首相打倒のため行動を起こしているISILである。

 ISILの資金源はスンニ派王族の寄付などだといわれ、また、政府軍から横流しや奪取した近代兵器も多いといわれる。シリアでアサド政権側が勢いを盛り返したのは、イランやレバノンん本拠を置くシーア派のテコ入れが利いているという観測がある。アメリカがテロとの戦いを控えるとイスラム宗派同士の戦いとなる。

 アメリカの敵はここへきて3転4転。撤兵後の平穏維持のためシーア派のマリキ首相を救わなければならない。長年の盟友、サウジなどスンニ派国さようならという気持ちになるのは自然の勢いだ。その中で歴史的なパレスチナ紛争解決のためのイスラエルへの肩入れをやめ、中東から手を引きたいオバマは、中東のことは中東で解決してくれ、というのが本音だろう。

 だけどアメリカにはこれを許さぬ勢力および雰囲気がある。「あんなに大勢の人が虐殺され、難民が大勢出ているのにアメリカはだまって見ているのか」という、世界の警察官・保安官気どりから抜け切れないのがその一つである。

 また、自由と民主主義を守るのは自らの安全にかかわることで、これには武器をもって戦わなければならないという好戦的な風土がある。先進国の中でいまだに銃規制さえ実現できないのだ。妥協的行動はたちまち「弱腰」という非難を受ける。

 オバマは過激派が入り込んだシリアの反アサド政権側を支持することに二の足を踏むようになり、イランのアサド支持を妨害することをやめた。そして、化学兵器廃止などでロシアなどとも協調する。ウクライナ問題でもロシアへの口撃は激しいが、抑制されたヨーロッパ各国とプーチンの自信たっぷりの落ち着きぶりの前で空転気味だ。

 イラクへ地上兵力の投入をしないと言いながら、空母をペルシャ湾にはなばなしく投入するのは、前述のアメリカ人気質で「腰抜け」と見られることを避けたい一心だ。油井大三郎氏が書いた『好戦の共和国アメリカ』と題する新書があるが、敵の作り方と敵味方のめまぐるしい変化はどこからくるのだろう。

 同じとは言えないが、尖閣などをめぐる中国と日本、太平洋戦略などでも似たようなことが言えそうだ。集団的自衛権さえあれば、日本国の安全や国民の生命が守れるという、集団的自衛権行使賛成派は、そのあたりをどう見るのだろか。

これからでもいい。国民の前でぜひ議論してもらいたいものだ。

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コメント

このアルカイダ系の過激派武装勢力の略称がマスコミによってISILとISISと二種類存在していて、
毎日新聞はISILで、毎日系のテレビ放送はISISと何故か使い分けているようです。
赤旗は、つい最近ISILからISISに名称を変更している。
アメリカの世論ですが、今まではブッシュ大統領の始めたイラク戦争に対して『成果があった』(良い戦争)が3分の2、「成果がなかった』(悪い戦争)が3分の1だったが、
今回のISISのイラク北部制圧で正反対に逆転してしまった。
イラク戦争開始から11年目でやっとアメリカ人も真実に気が付いたようですが、
ISISの正体ですが、シリアの反体制派だとの理由で欧米やサウジアラビアなどが支援していた連中が、体制を立て直したシリア政府軍に追われて、国境を越えてイラク北部に進入したようです。
カダフィ打倒で勢いづいてアルカイダが隣国のアルジェリアとかマリに侵入したのと良く似た構図。
北アフリカも中東も同じで、これ等はすべてが基本的にアメリカの戦争だったのでしょう。

投稿: 宗純 | 2014年6月18日 (水) 08時45分

コメントありがとうございました。
いつものことながらよくお調べですね。そうなんです。アフリカも中東もなぜか全く同じ構図になりました。

過去に経験したことのないような戦闘が続いています。他国の介入や武器流入がなければこんな悲惨な殺し合いがはてしなく続くということはなかったでしょう。

赤組と白組の区別がつかなくなった。または白組だと思ってたらいつのまにか赤組、パキスタンやアフガンも混迷を深め、世界の警察官もアメリカ流正義ではもはや処方を書けなくなった。

そんなところへ、安倍首相流「積極的平和主義」が通用するとでも思っているのですかね。

投稿: ましま | 2014年6月18日 (水) 17時04分

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