« 「周回遅れ」は本当だ! | トップページ | 拝啓山口那津男さま »

2013年12月 3日 (火)

考古学で見る天皇制

♪天に替りて不義を討つ
     忠勇無双のわが兵は
 歓呼の声に送られて
     今ぞいで立つ父母の国
 勝たずば生きて帰らじと
     誓う心の勇ましさ

 こんな戦時歌謡がある。徴兵され戦地へ旅立つ若者をこうして送りだした。中国宋の時代の民衆革命をえがく『水滸伝』の主人公、梁山泊が掲げたモットーと、上の歌の第一小節がまったく同じであることに、今気がついた。昨今は何かというと中国人と日本人の異質性を強調し、日本独自の文化・習慣を優越したものとする風潮がある。

 一部雑誌は、誰が読むのか知らないが毎号そのような見出しで拡販をねらう。多分、戦中・戦前・教育勅語の時代が最も”美しい国”だったと信ずる右翼もどきが買うのだろう。残念ながらその当時の日本人の精神構造は古来中国のそれと同じなのだ。

 中学では、英語と同様「漢文」が必須科目だった。最初は「子曰く(シノタマワク)」で始まる孔子の論語だ。中味は、朝鮮族が伝統的に尊ぶ儒教の基本で、教育勅語が掲げる徳育もこの線に沿ったものだ。

 「天」というのは、中国から来た概念だ。天皇の「天」は高天原の「あま」とはちょっと違い、天下とか天命といった使われ方にに近い。その呼称も天武天皇、すくなくともその7代前聖徳太子の頃までその発想はかった。そして男系相続による万世一系などという発想もなかった。だから神話で皇統の始祖を天照大神すなわち女神とする。

 『日本書紀』や『風土記』によると、古代九州の有力女酋として神夏磯媛、八女津媛、田油津媛、早津媛、諸県君泉媛、海松橿媛などの名があがる。畿内でも神武紀に名草戸畔 丹敷戸畔 新城戸畔といった在地勢力の首領に女性の名が記されている。

 魏志倭人伝では、倭国王を女性の卑弥呼とし、壱与がその後を承継したとする。当時の中国人はよほどこれを奇異に感じたのだろう。倭国のかわりに「女王国」と書くこともある。女王の任務は祭祀、占い、予言など巫女にふさわしい役柄と、その他の税務・貿易や軍事であろう。古墳の遺物もそれと矛盾しない。

 剣、鏡、勾玉は三種の神器として皇位継承に使われる。本物かどうかは別として、その風習のもとは九州に有り、鏡は中国伝来の器物だ。巫女の役割は古代ほど大きくなる。桃を祭祀に使うなど中国の長江南岸や道教の影響が考えられる。そういった祭祀的役割は神功皇后、推古、皇極、斉明などの女帝はもとより、斉明の皇女で孝徳の皇后間人にも受け継がれ、政治主導する地位にあったようだ。

 要は、天皇は中国の影響抜きでは考えられないが、一方独自の伝統も育んできた。上に掲げる天皇の役割も律令制採用以前は、を天皇・皇后・皇太子・皇子などが適宜分担するという、あいまいさがあったのだろう。厳密に血統を重視するようになったのは、南北朝、すなわち『神皇正統記』以後としてもいいのではないか。

 先月28日の「マクロな歴史認識」の続きを書くつもりで、結論を考えている時夕食時間になり、たまたまNHKの「クローズアップ現代」”明らかになる古代の「日韓交流史」”を見た。内容は、今年3月、福岡県古賀市で6世紀後半頃の古墳から朝鮮半島の新羅産と見られる金銅製馬具が出土したこと、近年日本式の前方後円墳が韓国で多数見つかったことから、双方の考古学者の交流が深まっているということである。

 古賀市で発掘された馬具というのは、復元写真で見ると塾頭が見たことのない立派なもので、小さな古墳の横穴から見つかったなど、日韓交流史書き換えが必要なほど、なぞの深い遺物と言える。韓国から若い考古学者が来日し、共同研究で日本に新知識をもたらしているという。

 また、韓国にある前方後円墳の映像も紹介されたが、立派に整備復元され市民に公開されているようだ。前方後円墳といえば、大和朝廷に縁の深い人物を葬るための形式として、その形状、構造、副葬品などで建造時期などが特定されるようになった。

 しかし、韓国の学会は、前方後円墳の形は韓国に起源があり、それが日本に渡ったものという説に30年ほど前まで固執していた。その後炭素同位元素半減期などで、出土物の科学的証明が可能になり、日本の考古学の正しさは韓国でも認めるようになった経緯がある。

 韓国の前方後円墳の存在は、古代日本の天皇にかかわる勢力圏があった証拠でもあり、現今の韓国の反日感情では受け入れがたいと思うが、日韓考古学者の協力関係は画一的な成果をあげており、これからも国家を超えた発展が期待されるという。

 そうすると、前回記事の”「周回遅れ」は本当だ!”の続きということにもなり、民間交流がグローバル化の主流を担い、偏狭なナショナリズムを駆逐するという、米国歴史学者の証言が一足早く実現していることになる。塾頭は、日本の政界の現状より、この潮流に期待を込めたい。

|

« 「周回遅れ」は本当だ! | トップページ | 拝啓山口那津男さま »

東アジア共同体」カテゴリの記事

歴史」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/468248/54134723

この記事へのトラックバック一覧です: 考古学で見る天皇制:

« 「周回遅れ」は本当だ! | トップページ | 拝啓山口那津男さま »