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2013年11月11日 (月)

アメリカの心変わり 3

 前々回「アメリカの心変わり」という2回シリーズの外交ものを掲載した。外交、それも中東となると国内の関心は至って低調のように思う。米国内でもそうだろうか。記事の内容は、アメリカが異様なほど敵視していたイランに対し、同国の政権交代を機に核開発問題を話し合意に乗せ、制裁解除もスケジュー化の段階まで進めたことに関してである。

 シリアへの攻撃を、ロシアとの協業で化学兵器撤去というアサド政権維持に方針転換したこともある。また、サウジがイスラム過激派を後方支援する図が浮かび上がっている。これらがあって、イスラエルのロビー活動や、友好国サウジアラビアの意向に比重を置いたアメリカ外交に心変わりが生じたのではないか、と書いた。

 また、そういった懸念に対し、アメリカ外交当局が打ち消しに躍起になっていること、これがまた尖閣問題に対するアメリカの中立姿勢を否定する姿にそっくりだとも書いた。集団的自衛権であれ沖縄米軍基地であれ、アメリカのネオコン以前の戦略でしか物が見えないような日本外交を指弾したつもりである。

 その後、大塚和夫『イスラーム主義とは何か』(岩波新書)を読み返してみて、別な観点を思いついた。結論をいうと、アメリカはシリア、レバノン、イラクなどで今後もイスラムのスンニ派とシーア派の抗争激化が果てしなく続くことを望んでいるのではないか、ということである。

 この陰謀論めいた憶測を排したいのが塾頭の本心だが、仮に日中韓が東アジアで協業し、アメリカと競合するようなことになれば直ちにアメリカの国益に反するという考えもあるだろう。CIAの暗躍ぶりを知ると「若しや」という気にもなる。

 前掲書では、サウジが18世紀以来のワッハーブ主義(イスラム教の厳格化を求める内部的改革運動)を推進したサウード家などがアラビア半島に樹立した国で「サウディアラビア出身者からイスラーム主義者を見出すとすれば、サウディ政府からお尋ね者とされているウサーマ・ビン・ラーディンなどがふさわしいのかもしれない」とまでいっている。

 さらにイランは、同じイスラム復興を唱えていても、サウジと違ったナショナリズムを基盤とする国民国家である。また、エジプトのムスリム同胞団について同書は、「反帝国主義などといったナショナリズムと共有する側面をもちながらも、宗教=イスラームをもっとも本質的な要素としてイデオロギーの前面に出すことによって、ナショナリズムとは決定的に異なった指向性をもった運動」としている。

 それに対し、クーデターを起こしたエジプト国軍や世俗派は、明らかにナショナリズム指向と位置づけられるだろう。そうしてみると同国内における激しい対立やイラク、シリア、レバノンなどにおける内戦状態も、シーア派対スンニ派という側面がある一方、ナショナリズムと原理主義間の主導権争いとも見れる。

 その場合、それらの各国でナショナリズム国家ができた場合、イスラエルは四面を反ユダヤ国家で包囲されることになり、逆にイスラム原理主義が優勢になれば、パレスチナの足元での抵抗運動激化で治安悪化は避けられないことになる。

 つまり、これまでとってきた介入政策は、犠牲だけが大きく、どれひとつとして成功したケースはない。そういった周辺国の中でどちらかの一方が勝利するのではなく、騒乱状態が続くのがイスラエルにとって最も安全であるという結論なのだろうか。

 そんな発想をアジアに持ってこられたらたまらない。日本外交は、北朝鮮ではないが「主体性思想」をもっともっと高めなくてはならないのではないか。

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