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2013年11月 7日 (木)

アメリカの心変わり 2

 最初に最新の国際ニュースにちょっと触れておく。まずアメリカ。バージニア、ニュージャージー両州の知事選、ニューヨーク市長選の結果がでた。いずれも共和党内の超保守を代表する茶会系候補は遠ざけられ、オバマ路線の候補が当選した。

 このところ、アメリカ国民は外交に目が向かず、関心はオバマケアーなど内政に限られているようだ。地方選とはいえ、全国にテロとの戦いによる大勢の傷病兵などの問題もある。ブッシュ政権のようなパスクアメリカーナ(アメリカ一極主義)に戻せという時代ではなくなったようだ。

 次に北京天安門広場におけるウイグル自治区住民による抗議活動。山西省共産党委員会前の爆発は、イスラム教徒による連鎖ではなさそうだ。これが中東のアラブの春のような政権転覆につながることは考えにくい。

 回教、回族という言葉があるように、漢民族は長い歴史の中でイスラムと共存してきた。さらに古くは胡人(ペルシャ、アーリア民族など)から多くの技術や文明を取り入れ、漢や唐の文化と融和させた。この方には、胡弓、胡瓜、胡桃、胡椒、胡姫、胡麻、胡蝶など日本でもなじみの言葉が山ほどある。

 共産党による異民族との同化政策は、核心的利益であっても、基本的な歴史認識の誤りとなることを党幹部は自覚しなければならない。

 ここから本題に入る。サウジアラビアが国連安保理非常任理事国入りを辞退するという異常な事態は、先月21日に「ひきこもり日本」という題で記事にした。
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-2a37.html

 中身は、このシリーズのひとつとしてもいい内容だが、重複を避け別の角度から検討を試みたい。また、シリア情勢については、下記のURLで書いているので同様に参考に供したい。
2013年9月 8日「オバマ、計算できてるの?」
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-cd5e.html
2013年9月10日 「オバマ、計算通りか?」
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-b891.html

 世界の石油エネルギーを牛耳ることで富の源泉としたアメリカは、需要の増大で戦後は輸入国となった。これを補ったのが中東、なかんずくサウジアラビアである。石油資源国有化やOPECの勃興で揺らいだように見えたが、探鉱、採掘、精製、輸送、販売などはメジャーズに頼らざるを得ず、サウジ王室とアメリカの親近関係に陰りを見せるようなことはなかった。

 そこに波乱を起こしたのがイランである。親欧米のパーレビー王朝を、亡命中のイスラム・シーア派のカリスマ的指導者ホメイニが倒した、いわゆるホメイニ革命である。欧米の石油利権は否定され、これに反対する国は敵視した。

 アメリカ大使館の学生などによる占拠事件は、両国の関係を極端に悪化させ、互いに話の通じ合わない敵性国に位置付けた。アメリカは、核開発疑惑で経済制裁等の包囲網を築いたが、同様な行動を進める北朝鮮より強い態度で臨むのは、それが中東であり、好戦的なイスラエルの先制攻撃を招きかねないということだろう。

 スンニ派だけにとどまらず、イスラム全体の総本山メッカの保護者として自負するサウジ王家にとって、シーア派国家イランは脅威である。強力な革命軍を擁するイランがペルシャ湾口ホルムズ海峡を封鎖するようなことが起きれば、簡単に経済封鎖されてしまう。

 サウジの北に位置するイラクについては、湾岸戦争、ブッシュによる侵攻とフセイン政権打倒、自衛隊派兵などで比較的知られているが、現在でも国内のシーア派とスンニ派の抗争で数十人単位の死者がでるテロが続発している。

 もともと、シーア派が多数の国である。アメリカの要求で民主的な選挙をすれば多数派が勝利し、イランに好意をいだくシーア派の政権になることは分かっていた。独裁者とされていたフセインは少数派のスンニ派出身だが支配層を固めることに成功していた。

 かつて、イライラ戦争と呼ばれたイラン・イラク戦争があったが、この時は、アメリカがひそかに手を回し、フセインを援助していたことはあまり知られていない。ブッシュがニセ情報でイラク開戦をしたということと合わせ、何のために多くの血をイラクで流したのかわからない、オバマが文句なしに手を引く政策に転じたのは、遅きに失したとはいえ当然である。

 これまでに見てきたように、エジプト、シリアなどのほかアルジェリア、マリ、ソマリアなど各地で過激な戦闘やテロを引き起こす主体には、かつてのビンラディン門下アルカイダ系の武装組織がかかわっていると言われる。

 しかし、実態は不明でそれぞれに組織的連携があるとも思われない。イラクでシーア派を襲うスンニ派もアルカイダ系であるという憶測がある。いずれも、武器や豊富な資金に支えられている。武器は政府軍などから奪取したもの横流れ品など様々のようだが、資金はどこからくるのか。

 石油危機の頃の塾頭の経験だが、サウジには一夫多妻のもと多数の王子、王族があり、それぞれに石油利権が分配されている。政権の禁輸政策などの枠外として扱うことができるような話しがあったことを知っている。

 イスラム教では、持てる者は持たざる者に喜捨をしなければならない義務がある。サウジの王族の喜捨がシーア派に行くことはないだろが、スンニ派を守る熱心な信者に流れていくことは十分考えられる。アメリカやロシアはもとより、どの国もこれは迷惑だ、と思い始めたのではないか。

 アメリカが核問題解決を話し合うため、柔軟路線に転換したイランの新指導者と話し合いをはじめ、国連のIAEAとも接触を開始するなどよりを戻した。イスラエルやサウジは裏切られたようで内心面白くないだろう。

 しかし、オバマ政権スポークスマンは「これまで通りの緊密な同盟関係に何の変化もない」といった弁明に追われている(下記参照)。日本の尖閣諸島に対する国境問題への弁明とどこか似てはいないか。

 国境問題や人種・宗教問題など、できるだけ2国間または国内で解決してくれ、必要ならシリアの化学兵器のように国連にまかせる。東西対決はもう古い、シェールガス開発で中東にこだわることもなくなった。アメリカは、たしかに心変わりをしたのだ。

毎日新聞 2013年10月23日

【ワシントン白戸圭一】サウジアラビアが国連安全保障理事会の非常任理事国ポストを辞退したことについて、カーニー米大統領報道官は22日の記者会見で「米国とサウジアラビアは、双方の国益にとって重要な安全保障分野で強固な関係を有している」と述べ、サウジアラビアとの良好な関係を維持する考えを強調した。

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