« カメラは珍し物好き | トップページ | 秘密保護法案 »

2013年10月25日 (金)

原発事故、起きて当然

 放射能は、線量よって人を死に至らしめる猛毒中の猛毒だ。原発は蟻の這入る隙もなく、水も漏らさぬ完璧な装置であると思いこんでいた。ところが、ネズミは通すは、汚染水は漏らし溢れせさせるは、とてもそんな水準にないことが分かった。

 ここに、原発の古典ともいうべき武谷三男編『原子力発電』(岩波新書)という本がある。1976年2月初刊本で、線量をレム、放射性物質の単位をキューリーとしていた時代である。その冒頭「序にかえて」を見ると、現状を知って書いたのではないか、と思えるほどなのだ。

 原子力利用の長い道のりは、目前の目的のためにあせればあせるほど、ますます遠い見果てぬ夢となっていく。原子力はまだ人類の味方でなく、恐ろしい敵なのである。日本の諸所方々に建設され、さらに計画されている大型の原子力発電所が何をもたらすだろうか。さらに世界の原子力発電所が人類に何をもたらすだろうか。われわれは無関心でいるわけにはいかないのである。

 現代はいまだに原水爆時代であって原子力時代ではない。これは私がすでに東海一号原発導入のとき以来唱えつづけてきたことであるが、現在もそのまま成立する。一般にいって前後の技術革新をになう主要な技術は、第二次大戦中に開発されたもので、戦争の性格を強く持っている。圧倒的規模での大量生産、大量消費は第二次大戦の「みな殺しの戦争」のやり方を、利潤場面に転用したやり方であり、戦争は勝つことだけに目的があり、後は野となれである。戦後平時の各国独占資本のシェア争いの場面で同じことが行われ、あとは野となれ式競争が、地球汚染をまねき、特にブレーキのない日本で公害天国を現出した。

 第二次大戦およびその後の技術革新の特徴を象徴的にあらわしているのが原子力である。これは戦争技術としては人類滅亡を、今日直ちに用意しており、平和利用も不用意にやられたとしたら、やはり、じわじわと人類を滅亡に導くだろう。

 福島第一原発の事故は、はしなくも原子力村の存在を表面化したが、前述の「利潤場面」の悪質な利益共同体的実態を暴露した本が現れた。若杉冽(れつ)『小説・原発ホワイトアウト』(講談社)だ。

 毎日新聞(10/22)が明らかにしたところによると、著者は、匿名ながら現役のキャリア官僚であり、発刊の結果、原発再稼働にひた走る経済産業省と電力業界、政治家を結ぶ闇のトライアングルを描き霞が関からの「内部告発」として波紋を広げているという。本人と会って取材しているだけに全く虚構とは思えない。そこで、
http://mainichi.jp/feature/news/20131022dde012040012000c.html

 電力業界の政治献金で飼い慣らされた与党政治家と業界幹部、両者と軌を一にする経産官僚が原発再稼働に向けて暗躍する姿を縦軸とし、役所のあり方を疑問視する若手官僚の抵抗、原発テロ計画といったエピソードが横軸として交錯していく。「柱の部分は私の知る事実がベース。役所では表立って話題にしませんが、裏ではみんな『詳しすぎる。作者はだれだ』と大騒ぎです」。
業界団体「日本電力連盟」に“上納”される預託金は年間400億円。これで業界に有利な政治状況をつくり出す、……

という内容を紹介している。

 このような経営体質が、相次ぐ現場の不始末続出を招いているものとして、新潟や福島県知事そして、原子力規制委員会などの不信感を高めており、武谷のいう「目前の目的のためにあせればあせるほど、ますます遠い見果てぬ夢となっていく」のが現状で、小泉元総理の脱原発宣言も、そのあたりを直感的に読んだからではないか。

 最後に、汚染水の保管・保安体制が、かつて石油会社に勤めた経験のある塾頭が、発火の危険性のある危険物・石油の貯蔵に比べ、いかにずさんで技術レベルの低いものであるかを記した過去ログをつけくわえておく。
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-f979.html

|

« カメラは珍し物好き | トップページ | 秘密保護法案 »

石油・エネルギー」カテゴリの記事

コメント

原子力村にはもう一つの「原子力ムラ」があることを書いた人物がいます。
福島県いわき市出身の社会学者「開沼 博」という若者が書いた『「フクシマ」論・原子力ムラはなぜ生まれたか』と、その続編『フクシマの正義「デモで原発は止るのか?」』を読んでみてください。
少し考え方の角度が変化するはずです。

投稿: 玉井人ひろた | 2013年10月25日 (金) 22時24分

ご紹介ありがとうございました。
地元図書館に蔵書があり、早速予約を入れておきました。

投稿: ましま | 2013年10月26日 (土) 06時31分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/468248/53715634

この記事へのトラックバック一覧です: 原発事故、起きて当然:

» 今読んでいる本に、驚き [つぶやき古道(コミチ)]
書店で昨年末から非常によく目立つのが原発事故や東日本大震災を扱った本が目立つのは、今の時期としては当たり前です。 そのなかでも、政治家が書いた本がやたらと年末から増えました。 その中でも最も、福島県内... [続きを読む]

受信: 2013年10月25日 (金) 22時09分

« カメラは珍し物好き | トップページ | 秘密保護法案 »