« 窮地に立つ汚染水対策 | トップページ | 反戦塾乗13/9/9 »

2013年9月 8日 (日)

オバマ、計算できてるの?

 シリア攻撃をめぐるオバマの計算がわからない。米国内に止まらず、世界中がこれ振り回されている。だれにも解けない高等数学なのか、幼児のレベルなのか。ノーベル賞受賞者なのだ、前者にかけたい気持ちだ。以下、時事ドットコムから。

 【サンクトペテルブルク時事】オバマ米大統領は6日、20カ国・地域(G20)首脳会議閉幕を受け記者会見し、シリアで起きた化学兵器攻撃を前に「世界は手をこまねいていてはいけないという認識が広がっている」と述べ、軍事介入への支持は拡大しているとの認識を示した。大統領はその上で、シリア危機への対応について10日にホワイトハウスから国民向けに演説すると語った。
 大統領は、シリアで化学兵器が用いられたという点ではG20参加国の全てが一致したと指摘。さらに、参加国の多くはアサド政権による攻撃だとの米政府の結論に「異論を抱いていない」と述べた。(2013/09/07-01:40)

 しかし、アメリカに同調した国は日本を含む約半数で、それもほとんどの国は何らかの条件を付している。そして世論調査は各国とも反対一色。米国下院も今のところ反対が多数を占めておりオバマの提案がすんなり通るとは思えない。

 このところ、イギリス、ロシアをはじめ「国連の調査結果を待って」という国が多くなっており、シリアに対する何らかの措置は、安保理の討議にゆだねるべきだという国際世論が高まっている。これを無視してオバマが単独行動に走れば、イラク進攻以上の国際的孤立に曝されることになる。

 そこで10日のオバマ演説が注目されることになる。演説には盛り込まれないだろうか、彼にはいろいろな計算があるはずだ。まずアメリカの国益。アメリカはシリア、またはシリアの意を受けたテロリストなどから攻撃を受けていない。

 したがって、自衛のためという理由はたたず、親戚のようなイスラエルを化学兵器から守るためにも、シリアが国内で使用したことが国際規範である「レッドライン」を越えたという、なにか「集団的自衛権」に基づく先制攻撃であるかのような説明になる。

 日本の安倍首相などは、これに「理解を示す」という姿勢を維持する。しかし、国連憲章から見て相当無理があるというか、あきらかに違反しているのである。もっともアメリカには、国連は場所を貸しているアメリカの道具に過ぎないという、軽視した態度が昔からある。

 肝心のイスラエルはどうか。隣国レバノンでアサドの援助により強力な勢力を保つ武装勢力ヒズボラは、アサド攻撃には報復攻撃をすると明言している。したがってもしアメリカによる攻撃があれば、イスラエルがヒズボラによるミサイル攻撃の標的になる可能性が高い。

 また、アサドの力が弱まることを喜ぶのは、反政府勢力内のムスリム同胞団とクルド族である。民衆の支持が多いムスリム同胞団がこの国の主流になれば、現在軍の弾圧を受けているエジプトの同胞団も勢いづき、パレスチナ・ガザ地区、ヨルダンなどの同勢力にイスラエルが取り囲まれることになる。

 一方クルド族は、アサド政権崩壊があれば独立の好機と見るだろう。国をもたない最大の民族といわれるクルド族はトルコ、イラクなどにも勢力を有し、一斉に同調しかねない。このほかに、あらゆる地域から流れ込んでいる最過激派・アルカイダ系武装組織が反政府側についているとも言われる。

 そうすると、アサドを支援していたイランを含め、アメリカのシリア攻撃を歓迎する国は、周辺にひとつもなく中東はかつてない混乱に陥るだけだ。ついでに言っておくが、ブッシュのイラク進攻の際に言われた、アメリカの狙いが「石油利権の確保」という俗説は、アメリカのシェール・ガス開発で中東への関心が急速に薄まっており、成り立たない。

 もうひとつが選挙目的という俗説である。2期目当選を果たしたオバマは、中間選挙が近くあるとしても、その次を狙うための人気取りの必要はない。アメリカ国民の好戦性にとって”弱腰”大統領とみられることが致命的な欠点となるだけだ。

 しかし、9.11の時とちがって今回のシリア攻撃には、期間や攻撃目標に限定条件がついたり議会の承認を前提にするなど、「早打ちマック」のような人気狙いの効果は全くない。ロシアを悪者にしようとする試みもあったようだが、的がしぼれずこれも不発になった。

 こうして見てくると、オバマにとってプラスにカウントされる要素は皆無といっていいのだ。そして、国連の調査で、被害者があったとすればその結果についての報告は、加害者不明のまま月末にずれ込む。

 それからでは、攻撃の名目も効果も失われ、オバマの計算はなにひとつ実現しないということになる。かりに、オバマに高等数学を用いた計算があるとするなら、G20で高まった国際世論をバックにロシアを引き込み、国連を舞台に二度と化学兵器使用ができないような仕組みを安保理で構築することであろう。

 こうすることにより、アメリカが中東から手を引く最終幕をかざり、オバマが歴史に残る功績を残した名大統領という地位を全うできる。どちらかというと共和党がよく使った手ではあるが、オバマの計算はこうにでもしないと成り立たないのだ。

 10日の演説にこれを期待したいが無理だろうか。

|

« 窮地に立つ汚染水対策 | トップページ | 反戦塾乗13/9/9 »

中近東」カテゴリの記事

コメント

オバマですが最初からシリア攻撃は限定的で地上軍は絶対に派兵しないと明言している。
具体的には自軍の損害が考えられる航空機ではなくて数千キロはなれた場所からの巡航ミサイル。
シリアですが今までのイラクとかアフガン、リビアとは違いS300対空ミサイルなど防空能力は格段に優れているし、イスラエルには敵わないが実戦経験もある。
好戦的に見える今のオバマですが、民主党共和党の違いが無くオバマ以前のアメリカ大統領なら、口に出すよりも手のほうが早く、とっくにぶっ放している。
オバマ以前なら空爆してから、世界に発表していた。
アメリカですがケリー国務長官などが闇雲に暴走し、オバマが渋々付いていっている風に見えますね。
そもそも米陸軍参謀総長時代には『シリア反政府軍の実体は外国人のアルカイダ』だと今の米軍トップの統合参謀本部議長が断定しているいるし、NHKクローズアップ現代のシリア毒ガスの特集番組でも同じようにアルカイダ説を報道しているのです。
米議会でもシリアを空爆したらアメリカ空軍がアルカイダ空軍に成ると心配する声まで出ています。

投稿: 宗純 | 2013年9月 8日 (日) 13時44分

日本語には「弱腰」のほかに「へっぴり腰」という言葉がある。あてはめるならこっちのほうですね。こういう変数が入るともう計算するの余地がなくなってしまう。なんでオバマはこんな崖っぷちに自ら立ってしまったのか。まるで脚本のない芝居を見ているよう。

投稿: ましま | 2013年9月 8日 (日) 16時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/468248/53183068

この記事へのトラックバック一覧です: オバマ、計算できてるの?:

» 王座から追われた欧米 [マスコミに載らない海外記事]
Paul Craig Roberts 2013年9月7日 “過去300年間の進化的発達のヨーロッパ諸国の競争は、全てこの四つの言葉に帰結する。利己性、虐殺、無恥、そして堕落” 厳復 “欧米文明”のふりをしていた悪魔に、欧米以外の世界が追いつくのに、わずか300年しかかからなかったと言うべきか、あるいは、胸を張って当然の... [続きを読む]

受信: 2013年9月 8日 (日) 23時36分

« 窮地に立つ汚染水対策 | トップページ | 反戦塾乗13/9/9 »