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2013年9月26日 (木)

「テロ」と「悪魔」

 いつも言っているように、このところ世界から国対国の戦争がなくなっており、代わって内戦とか無差別テロが猖獗をきわめている。前ブッシュ米大統領が言いだしたのは「テロとの戦争」だが、本来はテロ防止・撲滅は警察のやることで、近代兵器を駆使した軍隊の出る幕ではない。

 ブッシュは、そこを何とか戦争にしたかったのだろう。テロを支援する国だとして、イラン、イラク、アフガン、北朝鮮などを「ならず者国家」と名指し、アフガン、イラクを戦争の相手国にした。前回記事のように、オバマ大統領に代わってから次第に様相が変わってきたものの、テロとかテロリストという言葉は依然健在で、「聖戦をかたる悪魔」の位置づけに変化はない。

 欧米諸国の中には、テロ→悪の枢軸→イスラム教→アラブといった『文明の衝突』的な発想が今も生き続けているようだし、日本でもそういった潜在意識がないとはいえない。塾頭は、これを非常に危険な傾向であり、このまま続けば将来も衝突・抗争が絶えることなく続くと考える。
 
 最近では、ケニアの首都ナイロビのショッピングモールで銃乱射事件が起き、政府発表で6~70人の死者がでた。多分最終的には100人を超えるであろう。このような人が集まる場所での事件は、自爆テロを含めアフガン、イラク、パキスタンで毎日のように起きており、政変がらみのエジプト、シリアなどの動乱も、その犠牲者の多さから世界に大きな反響を与えている。

 そういったニュースの中で上がってくる「主犯」グーループについて、おそらく一般の人がどこまで区別できているか疑問がある。一般の人でなくても、イランとの話し合いをさぐるオバマをはじめ各国政権首脳は、ブッシュのような単純な価値判断による行動を控えざるを得なくなっている。

 「テロ」として、なんでも一様に考え排撃するのではなく、それぞれの根源にある問題点を解明し融和をはかることを優先する。そして、争いへの介入や武器援助を断乎拒否し、イスラムの価値観を尊重・理解することによって、時間がかかってもやがて共存共栄の道は開けるはずだ。

 以下、マスコミにでてくるいわゆる「テロ集団」やイスラム教各派などについて、用語解説的に考えてみることにする。

アルシャバブ=今回のナイロビ銃乱射事件で犯行声明を出している。もともと本拠は隣国ソマリアのイスラム圏である南部にあり、アルカイダ系組織といわれる。今回はケニア軍が弾圧に力を貸しているということで越境し、事件を起こした。

アルカイダ=米軍に暗殺されたウサマビンラディンがアフガンで軍事要員訓練のために組織。イスラム過激派の中核とされ最も危険視されているが、現在は各地に散り、武闘を繰り返している。上記の事件でも犯人に移住先の英米人が含まれているとされ、いわゆるホームグロウンテロにも大きな影響を与えている。また、アルジェリアで日本人を含む人質事件を起こした犯人もアルカイダ系とされるが、各地の組織は縦横のつながりは薄いと見られている。

タリバン=アフガンのソ連侵攻後に政権を獲得、厳格なイスラム国家を築いた。しかし、アメリカが9.11事件の首謀者だとして、同国に滞在するウサマビンラディンの引き渡しを要求、これを断ったため戦争となりタリバン政権は崩壊した。現在、また勢力を復活させ、アフガン国内の広い範囲を支配下に置くようになった。パキスタン軍部に強い影響力を持つ。

イスラム原理主義=組織の名前ではないが、その前置詞としてよく使われる。「原理主義」は、もともとキリスト教プロテスタント福音派の原典至上主義をいうが、それをイスラム教に転用したもの。イスラム教はコーランに忠実であることを信仰の中心に置いており、その意味からイスラム教徒は全員が原理主義といえないこともない。 

ムスリム同胞団=穏健な原理主義に立ち、国境を越え医療や福祉で信者救済にあたるので貧困層の支持が強い。しかし国家、軍、世俗派などと対立することも多く、選挙に勝ったのに非合法化されるなど、エジプトでは弾圧されている。 

ハマス=パレスチナのガザを実効支配するイスラム原理主義組織でムスリム同胞団と重なる。ヨルダン川西岸を根拠にするファタ派と違い、イスラエルとの妥協を排除するので、イスラエルからはテロリスト扱いされる。

ヒズボラ=シリアのアサド政権から支持を受け、レバノンを本拠とし議員も出しているなど、レバノンでは公然としたシーア派武装組織。イスラエルにとっては、ゴラン高原を挟んで対峙する目の上のたんこぶ。

シーア派=ホメイニ革命以来、イランがよって立つ国教。イラクでも多数派をなし、選挙で政権につく。イラクではスンニ派(全イスラム教徒の中では約9割の多数派)との対立によりテロが頻発。

その他=アフリカ各地やロシアのチェチェン、中国のウイグル自治区、フィリピン・ミンダナオ島など、民族差別や貧困その他の理由でイスラム教徒によるテロや暴動が起きることが多いが、これらもテロ扱いされる。

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