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2013年8月26日 (月)

「国」を発明した人

 イギリスの哲学者・トマス・ホップズは、日本でいえば秀吉の天下から徳川初期の時代に生を受けた人です。その人は「リヴァイアサン」こそ国家である、と定義づけました。リヴァイアサンとは、キリスト教の「ヨブ記」四十一章にある卓絶した力を持つ伝説上の怪獣です。

 リヴァイアサンは、誇り高い地上の王である一方、それは、ワニのような、蛇のような、あるいは鯨のような巨大な怪物だが、その力で人間を守ってくれるなら便利な存在だ、としました。リヴァイアサンなくして、平和もなく、人間の存在もないと考えたのです。

 宗教も、民族も、王侯も平和を保障するものではなかったのです。それからの3世紀余は、ヨーロッパ各地で国家をつくることに狂奔する時代になります。だけど、怪獣ですから凶暴な本性はいずれ現れます。

 日本ではホップズより早く、日蓮が「立正安国論」を書いてリヴァイアサンならぬ「南無妙法蓮華経」でゆきましょうと鎌倉幕府に迫りましたが果たせません。信濃の国とか甲斐の国など国家以前の「国」で戦国時代となり、近代国家成立は明治維新まで待つことになりました。

 リヴァイアサンの凶暴性は、第一次、第二次の世界大戦でその極限に達します。「国なんてどうでもいい、なくしてしまえ」という発想も当然でてきます。革命歌「インターナショナル」には、そんな感じが出ています。

 しかし、「国」はやはりあった方がよかったようです。国が集まって国際連盟を作り国際連合を作って「戦争」を否定しました。EUの発想も同じです。「集団的安全保障」(「集団的自衛権」とは違う)を目指しているからです。基本は、日本国憲法にある「国の交戦権はこれを認めず」の精神です。

 冷戦中はベトナム戦争など、代理戦争と呼ばれる戦争があり、テロとの戦いを唱える戦争もありました。しかし、それらは反省期に入っています。第三次大戦も起きていません。エジプトやシリア、アフガンなど内戦まがいの戦闘が続いていますが、それはしっかりした「国」がないせいでしょう。

 やはり、「国」はないよりあった方がよさそうです。

(本文は、バックナンバー2011年1月18日「あなたにとって国とは?」を改編・採録したものです)

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コメント

ホッブスの思想は、絶対王政を肯定するためのものであるのは、よく知れています。また、戦争の原因は「感情」でもありません。「やはり、「国」はないよりあった方がよさそうです」という言葉には確信を窺うことができません。国益になるとムキになるのは、ナショナリズムのなせる業でしょう。ましまさまにどうしてもわかってほしいのは、「国」を承認した途端、それが何を招来するか、です。一つ一つ批判するのはコメント欄では困難ですが、このブログを参照見てください。
http://ameblo.jp/maruyamakanji/entry-11593050457.html

投稿: 張三李四 | 2013年8月30日 (金) 10時15分

あった方がいい国とない方がいい国は確かにあります。
国益と国益が衝突する。解決の方法が戦争、というのが古い戦争論です。別な方法、それは交渉です。だけど国がなければ交渉は成り立ちません。
ナショナリズムは悪、国は悪。善悪二元論はとりません。ナショナリズムにもいいナショナリズムがあります。それがなくて、みじめな支配を甘んじざるを得なかった例は数えきれません。

ご案内のウエブ拝見しました。ありがとうございました。

投稿: ましま | 2013年8月30日 (金) 12時01分

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