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2013年8月 9日 (金)

法制局長官人事に考える

 小松一郎という人が内閣法制局長官に起用されることになったようだ。長年積み重ねられてきた「集団的自衛権を保有するが行使はできない」という憲法解釈を、一内閣の手で一挙にひっくり返そうという魂胆が丸見えの人事である。

 法制局長官は次長から昇格するのが通例である。安定速度で走行している自動車が急ハンドルを切ったらどうなるか。後続車や対向車の危険を招き大混乱になるだろう。つまり法解釈の変更には、しかるべき秩序が必要なのだ。

 自民党改憲案お好みの「公益及び公の秩序」という表現と正反対である。法制局経験のない小松氏を起用して急ハンドルを切ろうというのは、まさに「公の秩序」を無視した異例の措置で、柳井元駐米大使など古いアメリカ仕込みの「有識者会議」でつくろってみたところで暴挙にかわりない。

 さて、小松一郎とはどういう人か。外務省に入って国際法畑からアメリカ公使、スイス大使、フランス大使などを歴任した。その著書に、「泥棒と警官、善良な一般市民」といったたとえ話で集団的自衛権を解説したという記事を何かで読み、購読しようかなと思った。

 『実践国際法』という本で5000円以上もする。当塾の乏しい予算では高すぎるのでやめた。そのかわり、アマゾンの本の紹介ページで、はしがきよりの抜粋が載っていた。そこからの引用という「手抜き工事」だが、同書執筆の動機が書いてあったのでそれを書く。

 どうすれば「国際法を味方につける」ことができるか、換言すれば、いかにして外交実務において「国際法を使う」のかということである。これは当然のことながら、戦略的な側面と戦術的な側面の双方がある。このような実務者の立場からの、専ら機能的な視点から、国際法の基本的論点を概説することができないかと大それたことを考えたのが、本書執筆を思い立った動機であった。

 まさに、『実践国際法』という書名そのものである。著者が外務省に入省した時は、ベトナム戦争のさなかであり、79年にはソ連がアフガニスタンに侵攻した。いずれも、集団的自衛権行使を名目に米ソ両大国が軍事介入したものである。

 また近くは、9.11が引き金となってNATOがアメリカとの集団的自衛権を理由にアフガン出兵をしている。いずれの場合も、国連憲章が想定した「集団的自衛権」の行使とは相当の隔たりがあり、その経緯・結果も国連の想定したところからかけ離れている。

 そういった中、大国が国連を舞台に国際世論をに巧みに操り、時には国際法を利用し、また時には無視しながら外交を「実践」してきたのは事実だろう。小松氏はそういった体験の中から、「憲法違反にならない」抜け道を構築するのが任務だと思っているのではないか。

 たしかに、成文法ではない「国際法」は時とともに変化していく。東西対立、アメリカの一極支配そういったもので国連憲章も日本国憲法も揺さぶられ続けてきた。しかし、これまでの「実践国際法」がこれからも続くという保証はない。むしろ変化するのが当然だ。

 いや、米軍再編など環境はすでに変化し始めている。今、国際平和と人類の安寧を確固としたものにするため、過去の体験を糧にして原点に立ち返り、日本の立場を見直す時期に来ているのではないか。

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