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2013年8月31日 (土)

それでも米は自制を

 アメリカ・ホワイトハウスがシリア政府の化学兵器使用の証拠を公表した。以下時事ドットコムより。

(前略) ホワイトハウスは同日、シリアのアサド政権が今月21日にダマスカス郊外で化学兵器(神経ガス)を使用したという情報機関による証拠を公表した。
 大統領はこれを踏まえて、化学兵器の使用は「米国の安全保障上の利益を脅かす」と指摘。大量破壊兵器が米国に対し用いられる危険が増すとも警告し「米国は世界のリーダーとして、国際規範で禁じられた兵器の使用をいとわない政権の責任を問う義務の一端を担っている」と主張した。

 介入のタイミングについては「最終決断は下していない」とし、軍から幅広い選択肢を提示されている中で、地上部隊の派遣を含む長期作戦は排除していると語った。国連安保理決議案をめぐる交渉には影響されない姿勢も示した。

(中略)ケリー国務長官も証拠の公表を受けて記者会見し、化学兵器攻撃によって子供426人を含む少なくとも1429人が殺害されたと強く確信していると述べた。
 長官は「われわれはアサド政権の支配地域からいつ(化学兵器を搭載した)ロケットが発射され、反体制派地域のどこに着弾したのかを知っている」と説明。政権高官が化学兵器の使用を確認し、国際社会への発覚を恐れていたとも述べた。

 ホワイトハウスによれば、化学兵器攻撃が行われた21日、政権側の要員がガスマスクを使用していたほか、反体制派に対して過去にも複数回にわたり小規模の化学兵器攻撃が仕掛けられていた。米政府は、アサド政権の兵器使用への「強い確信」という評価を、確認の一歩手前の最も強い立場表明だとしている。(2013/08/31-09:41)

 アメリカ・民主党は、ブッシュで代表された共和党よりリベラルで、大量破壊兵器保有という偽情報で始まったイラク攻撃を批判し、反戦勢力の支持をバックにオバマ大統領を実現させたと思われている。
 
 したがつて、オバマは武力行使に国連決議、同盟国の同調などいくつかのハードルを設けてきた。しかし、頼みとするイギリスが議会の反対でイラクの時のようにいかず、NATO各国も最初から反対のドイツ・イタリアをはじめ、フランスもアメリカと同様、国内世論が軒並み反対一色である。

 それなのに、なぜオバマは武力行使にこだわるのだろうか。だれも教えてくれない。この、アメリカが得た情報開示やこれから報告される国連の現地と調査の結果によっても、上述の世界の潮流は変らないと思う。

 冷泉彰彦著の『民主党のアメリカ共和党のアメリカ』日経新聞出版社、という本がある。その中で真相をつくものかどうかは別として、2008年に大統領選を争ったオバマ、マケインの両党候補の主張を例に挙げ次のように分析している。

 イラク反戦を訴えつつアフガンでは強硬なオバマ、ブッシュ路線の継承を宣言しつつ核兵器削減交渉はするというマケインの姿勢は、長い歴史の中で民主党と共和党が取ってきたパターンに、実は大変に忠実なものなのだ。大義を認めない戦争には反戦、大義を認めた戦争には積極的という民主党、国内的にナショナリズムを煽っておきながら、敵とはドラスチックな交渉をやりたがる共和党という、両党の行動バターンに沿ったものということが分かれば、この二人の政治信念が二大政党の対立軸として典型的なものということが理解できるだろう。

 そこで、アメリカの強硬姿勢が「正義」なのか、という点である。オバマは国内向けに「米国への脅威」をいうが具体性がない。それよりも、「米国は世界のリーダーとして、国際規範で禁じられた兵器の使用をいとわない政権の責任を問う義務の一端を担っている」に、「正義」のよりどころを求めているように見える。

 つまり、北朝鮮やイランが核兵器を使うようなことがあれば、世界人類のために迅速に行動してその根を絶つという強いメッセージになるということだ。核兵器と化学兵器を同類に考えること自体は間違っていない。

 しかし、シリアの内戦に化学兵器が使われたからといつて、武力介入することが「正義」といえるだろうか。巡航ミサイルで政権施設などに限定的な攻撃を加えるといっても、さらにシリア国民の犠牲がふえないという保証はない。また、アサド政権を倒してもあとに安定した民主国家ができる保証もない。

 化学兵器使用をけん制する方法は、武力行使しかないという結論は性急だ。常任理事国で拒否権行使を持つソ・中と協力し打開策を探る努力を続けるのが先だ。イラクで学習したことを繰り返さない、その方がアメリカの国益にかない、「正義」への近道ではないのか。

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コメント

先月、イギリスのロイター通信の記者がアメリカ政府の定例記者会見で面白い質問をして話題です。
トラックバックさせていただきました。

「化学兵器使用が国際法違反なら、広島と長崎への原爆投下は違反とはならないのか?」

投稿: 玉井人ひろた | 2013年9月 1日 (日) 20時57分

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