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2013年7月26日 (金)

公明党加憲案の危うさ

 読売新聞は、「憲法改正 実現への布石を周到に打て」という社説を7月25日に掲げている。改憲そのものは同社の社是であり、安定多数を獲得し基盤を固めた安倍政権の方向性と100%一致する。その中で次のような議論を進めるための提案をしている。

公明党は、参院選公約に「加憲」論議の対象として環境権や地方自治拡充、自衛隊の存在の明記、国際貢献の在り方を挙げている。

 党内で検討を重ね、具体的な条文を作成してはどうか。自民党などとの共通点、相違点が明確になり、議論が深まろう。

 
 石原慎太郎発言のように「現憲法を破棄する」というクーデターなみの無茶をしない限り、96条の議員の3分の2の壁が立ちはだかっており、それを無視して前へ進めることはできない。自民の圧勝で安定多数の道が開けたとはいえ、改憲の中味を熟成させ改憲の機運を高めるという遠回り作戦で3分の2確保を目指すしかない。

 自民は、評判の悪い第2次改憲案を引っこめ第3次案を模索する方針のようだ。同じ改憲志向の維新などを加えただけでは到底3分の2に達せず、どうしても公明の力を借りなくてはならない。そこで、その手順として読売のような意見が示されたということだろう。

 自民が狙う「国防軍」創設に公明が反対しており、時間をかけたにしてもそう簡単に共同案ができるとも思えないが、上述の公明党参院選公約の「自衛隊の存在の明記、国際貢献の在り方」を手掛かりに、9条改正の一里塚にしようという考えが出てくることは想像にかたくない。

 これに対する野党の対抗策は何か。自民党のような復古調憲法ではなく、現憲法の精神を擁護するためには、やはり不具合のところを修正補強する改正案を掲げて与党案と比較できるようにしておく必要がある。これを主導できる政党は、現在のところ存在しない。政治家有志連合などが憲法学者などを加えて立案するのも一方法だろう。

 改正案の焦点は、やはり公明党が指摘する「自衛隊の存在の明記と国際貢献の在り方」である。現9条2項では「陸海空軍」を持たないとしているが、この表現だけで自衛隊がそれに相当しないと解釈することはかなり苦しい。

 そこで、伝統的護憲論者にあったような、「自衛隊段階的縮小案」とか「自衛隊違憲論」がでてくる。しかし、激甚災害時の機動的な出動実績や、昨今の国際環境や国土防衛を米軍に全面的に依存することに疑問があることを考えれば、もはや自衛隊不要論で国民を引きつけることはできない。

 だからといって「自衛隊の存在の明記」するというのは安直に過ぎる。国民の生命・財産を守るため命がけの仕事をしている警察・消防・海上保安などの存在は、これまでも憲法に触れられていない。自衛隊だけを取り上げるというのは、警察などとは違って、他国に向けた武力行使を可能とする特別の任務と法的地位を有する、つまり「軍隊」と同じ意味を持たせることになるのだ。

 さらに「国際貢献の在り方」についてもそうだ。自衛隊を念頭に置いているのだろうが、国際貢献は自衛隊に限らない。消防隊が中国に渡った前例もあるし、医療、環境保全など民間による数知れない実績がすでに高い評価を得ている。自衛隊の任務は、基本法にゆだねればいい。国際情勢のめまぐるしい変化に対応するためにも憲法で規定するよりいいはずだ。

 公明党は、このような陥穽(落とし穴)をどれだけ避けて通れるか。党の存亡にかかわる問題として重視してほしい。もうひとつあげておこう。自民党案には、戦争放棄に対して「自衛権の発動を妨げるものではない」という一項がある。

 国連憲章に「自衛権」「集団的自衛権」の記載があるから、日本の憲法に自衛権を明記し、その行使を正当付けるのは当然、というロジックだ。これほどひどい勘違いはない。当初の国連憲章草案にはなかった文言をアメリカの要求により取り入れられたものが両自衛権である。その文言は、自衛権を口実とする武力行使に、大きな制限を設けるために追加挿入されたものである。

 その、国連憲章の精神を踏みにじってきたのがアメリカとソ連である。しかし、中東紛争などの結末から、現在は大きな反省期に入っている。国連憲章の理想を先取りした日本国憲法が、今活き還る絶好のチャンスであることを銘記しなければならない。

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