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2013年7月 6日 (土)

「国防軍」なら戦争に勝てるか

 毎日新聞顧問の岩見隆夫は、毎日OBには珍しい再軍備改憲論者で、発表意見に対し当塾でも複数回反論を試みてきた。

http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-60e0.html
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-a4c9.html

 7月6日付の毎日東京朝刊「近聞遠見」では、”「国破れて憲法残る」では”という再軍備論を載せて安倍内閣の後方支援を買って出ている。

 同じ毎日新聞によく掲載される野坂昭如や大江健三郎の意見に対し、「野坂、大江らは、かつての戦争末期を知り、敗戦体験を持つほぼ同世代の著名な有識者だが、<国を守る>とは何か、をつきつめて考えたことがあったのだろうか」と冒頭部分で書き出す。

 塾頭は、同じ疑問を全く逆の立場で石原慎太郎や江藤淳らに感じていた。そして、新憲法を占領軍の押しつけで屈辱的なものという論調を、大部分の庶民はこれを喜んで受け入れ、屈辱感に打ちひしがれたのは、「戦犯や戦争協力でパージされた指導者、農地改革で土地を失った地主かそれらの係累に違いない」と、当時を知る者として証言した。

 ところが岩見のは違う。戦争が始まったのが就学前、敗戦を迎えたのは、満州の大連で小3か小4の頃だろう。帰ってこれたのは終戦から1年半たった後で、幼い彼の心に刻まれたのは「不幸にして侵略されたり戦争に巻き込まれたりした場合、絶対に負けてはならないこと、敗北は民族の大悲惨である」ということである。

 彼の体験からくるこの気持ちはわかる。攻め込んできた中国共産軍をパーロ(正式には「八路軍」)やソ連軍をロスケと呼んだということを紹介しているが、これまで使用人だった中国人や朝鮮人が戦勝国民として急に威張り出し、立場が逆になったこと、ソ連軍が野蛮に振舞い多くの犠牲者がでたこと、脱出引き揚げのための言語に尽くせない辛酸、これは私の身内から聞いているし、捕虜として強制労働させられた先輩の証言も多くある。

 「戦争は勝たなければならない」。この執念は、マッカーサー指令部のもと民主化・自由化が進んだ国内とは違う。負けたため他民族から受けた侮辱・不条理が強烈に作用する。「ロスケ」などの蔑称に言及したことからもわかる。「負けさえしなければ」という愚痴は、親からも繰り返し聞かされていたはずだ。

 ここで、岩見の口調を借りて反問してみたい。「<どうして負けるような戦争を始めたのか>、をつきつめて考えたことがあったのだろうか」と。また、「外国から追われるような屈辱の逃避行をしなければならなかったのか」を。

 そして、このようにもいう。「独立国として、また<不敗>の備えとして精強な軍隊を持つのは初歩であり、軍事大国とか軍国主義とは無縁のものだ。9条擁護論者はそれに反対している」。彼の論理は、ここで急短絡する。

 不敗のための 「精強な軍隊」とはどういう状態を指すのか。中国の軍事大国化に対処できる「精強な軍隊」なら、果てしない軍拡競争を招く。世界一の「精強な軍隊」でもベトナムで負け、イラク・アフガンでも負けといっていいではないか。

 彼のために極言しておこう。どんな「精強な軍隊」を持っても中国には勝てない。国土が広く人口の多い方が最終的には勝つのだ。ただし、国民の国防への意識、平和への強い情熱と行動、これならば対等に戦っていける。

 わが国の領土・領域への寸土の侵略も許さない自衛隊。他国の領土・領域での武力行使をせず、世界平和構築に意を注ぐ誇り高い自衛隊があればよい。現憲法の解釈では不自然だというなら、その線に沿って憲法を補強することだ。

 岩見は、護憲論者が「国防をどうすればいいのか、何も触れていない」と説くが、塾頭が変わって答える。「上記の方法で国を守り、憲法の理想主義を実現させる」、これが戦争を知らない世代への最大の贈り物ではないかと。

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憲法」カテゴリの記事

コメント

お久しぶりです。選挙報道を分析するために買った際に読んだが、看過できぬ点はやはり、言わねばねと思い、カキコミますね。「不敗」の備えを全面に押し出し、精強な軍隊の必要性を「初歩」として説いていること。やはりそれをクリアするには最低限、核兵器が必要なんでは?ご丁寧に、昭和天皇を印籠代わりにして核武装論の露払いまで婉曲的に仕掛けている。これはもう、筋金入りの壊憲主張!
そもそも第一項なんぞ、民主主義国家ならば似たり寄ったりの内容を掲げている代物であり、いくら岩見がキバッて堅持と宣うても、そらぞらしいだけ。安部も維新もご同様さま(笑)。
第二項こそ、自衛隊がスウェーデンやスイスみたいな国以上に「平和的な」存在として曲がりなりにもやってこれた証なのに、それが気に入らなくてしかたないのだろう。だいたい、どうして国敗れて…なのか?噴飯モノである!
大陸間弾道ミサイルSS20、数発かまされたら日本は壊滅的ダメージに陥るアレに、常時狙われていた冷戦時代も、同じことは右翼どもに言われていたと記憶しているんですがねえ。がちの戦争になったら憲法もへったくれもなくなるだろ(笑)。そうならねえように、戦争を厳重に回避させるために憲法があるんでは?
また、岩見は語るに落ちるバカっぷりをさらしているではないか?
「精鋭と言われた関東軍は名ばかりで、非戦闘員を残したまま逃げ散った」
おいおい、言われたってもんじゃねーよ(笑)。
大日本帝国のアレは、西洋列強からも尊敬されていたんじゃなかったっけ?お爺たま??
あの戦闘国家、軍国日本の時代、人権なんぞ糞くらえの時代に(笑)鍛えられた陸軍の、そのまたドエートな(笑)関東軍ですら、ロスケにびびって逃げ散ったわけだ。肉弾三勇士もでてこないし、布団爆弾も飽き飽きしたんだろかね(笑)。
岩見は、一体、どういう訓練、教育をしたら「逃げ散らない」軍隊を作れると考えてるのだろうか?まず、切り札たる自前の核兵器は必要かなあ。その上で帝国時代を軽く上回る教育などのソフト面での強化を図らないとダメダメだろうな。
ヒトラーでも望めないような「不敗」の備えを夢想する岩見よ、モルヒネがまわりすぎているのか?
憲法は自衛隊誕生という矛盾をはらみつつ、不戦の誓いだけは堅持してこれた。これは凄いことである。岩見みたいな安直な国家主義に阿ると、確実に英米のジュニア・パートナーとして、世界中のテロリストに四六時中狙われる国に成り下がるであろう。おちおち、新宿や渋谷に買い物にも行けやしない。一方で、テロとの戦いを勝手に作っておいて、対策、対策だとますます管理社会を推し進め、反対批判をタブー視する社会を築き上げるのは必至である。
改憲学者の小林さんや護憲の重鎮、樋口さんたちが「理不尽な改憲」にロックンロールしているさなかの岩見発言である。
失礼ながら、死にそこないにみのもんたの視聴者層を扇動されちゃあ、たまったもんじゃない!
世界は苦しみつつも戦争を回避すべく、理想も求めている。前述したスウェーデンやスイスを先制攻撃するようなバカな国は存在しないという「時空を越えた現実」も歴然とあるわけだが(笑)、彼らともまた違う存在として自衛隊もあってよいではないか?ほとんどの日本国民は専守防衛で徴兵制度ではない今の自衛隊の存在を認めている。金属バットや出刃包丁で他国の軍事組織から自衛は無理とも認識している(笑)。自衛権自体、共産党ですら認めているのに、あえて軍隊だの徴兵制度だのとほざくって、まともな思考回路じゃない。
「不敗」の備えなんて、老害の妄想である。極右思想のナニモノでもない!
あえて大江さんをもじっていえば「あいまいさ」も戦後日本の悪知恵なのである。そして、新世紀の新しい自衛組織の在り方としての憲法九条と自衛隊という議論こそが建設的な日本の生き方にも繋がると思う。
「安らかにお眠り下さい」せいぜい、角さんの鼻唄でもお聞き下さいませ。

投稿: 暇 | 2013年7月 6日 (土) 20時04分

暇 さま
コメントありがとうございました。

なにかシッチャカメッチャカいっているようてで、全体を通じてみると筋が通っている。

こんなこと、私たちが言うんではなく社共のおじさんおばさんが言えばいいのにスローガンだけ。

おっしゃる通りですね。

投稿: ましま | 2013年7月 6日 (土) 20時27分

自衛隊と言う軍隊が現憲法下で認められている以上、少なくとも9条の改正は無意味に思えますし、「国防軍」はただの名称変更でしかない気がしますが、そう思わない“知識人”という輩が多いのでしょう。

ただ、心情的にはその気持ちは分らないでもないですがね

投稿: 玉井人ひろた | 2013年7月 7日 (日) 22時01分

『愛国心とは、ならず者の最後の砦(避難場所)』
との言葉が思い出される今回の毎日の石見隆夫の主張ですね。
愛国心が国を亡ぼした68年前を完璧に忘れている。
朝日や毎日などのマスコミが愛国心を煽りに煽って、結果、『国破れて』日本が酷い目にあったのです。
ロスヶだのパーロだのと、よくも平気で新聞紙上で書けたものです。
日本が満州で酷い目にあったと言うが、満州は日本から遥か1000キロ以上はなれた外国(中国)ですよ。
『日本が侵略していた』との認識があれば、到底口から出ない種類の話です。
石見隆夫の主張ですが、
一言でいえば『負ける戦争は悪い。』に尽きるでしょう。
野蛮な帝国主義が跳梁跋扈した19世紀の発想であり到底現在では誰も主張しない種類の話ですよ。
第一次世界大戦を経験した人類は日本国憲法9条1項の『すべての戦争は違法』とのパリ不戦条約が正しいと知っている。
不戦条約は大日本帝国も批准しており、第二次世界大戦でも実は有効で、だから『自衛だ』との屁理屈をつけて戦争を始めている。
この抜け道を塞いだのが国連憲章であり、日本国憲法9条2項。
石見隆夫ですが100年前のパリ不戦条約どころか200年前の世界に先祖がえりしているので、右翼の中の右翼の極右ですね。

投稿: 宗純 | 2013年7月 8日 (月) 09時20分

玉井人ひろた さま
 改憲派の中に「自衛隊」も「防衛軍」も英語でいえば同じだ、という人がいます。それはそのまま返せますね。

 「それならなぜ無理してわざわざ変えるの?」って。

日本語はちょっと違うようです。「隊」は団体、楽隊、縦隊など人の集まりですが、「軍」は、軍人、軍歌、軍部など、その属性をいうことが多い。

 その属性は、生殺与奪を担う権力の匂いが感じられます。人殺しのための特権ともいえましょう。そのために一般人と違う法律・社会があります。旧日本軍は一般人を「地方人」と呼びました。

投稿: ましま | 2013年7月 8日 (月) 21時27分

宗純さま

幼児体験というのはおそろしい。

いろいろな知識を身に付けながら、そこから一歩も踏み出せないのは、もっと恐ろしい。

安倍首相の「アンポ!反対!」体験も同じですね。

投稿: ましま | 2013年7月 8日 (月) 21時36分

西山太一さんがテレビに出る機会が増えたので、ここ二週間は専ら、毎日を読んでいます。
しかし残念なことに、まだ岩見隆夫が近聞遠見をやっているんですねえ。
11月2日記事ですが、体裁だけ調えられてはいますが、根本的におかしな文章だと思いました。
いかにも傲慢な麻生を叱り付けた思い出話、見方によってはブンヤごときが年上を盾に、曲がりなりにも有権者の代表を躾しているみたいで、鼻についてしまいました。
三木さんに『たらし込まれた』くだりも、大平さんに優しい声をかけられた件も、一喜一憂する、この人の『無邪気さ』ばかりが強調されているだけ。
看過できない点としては『大平派が分裂するかも』と新聞記事にしたことが、岩見にしてみれば『書いてはならん罪』そのものになっている点。
大平の政治的キャリアにとって致命的になろうがなるまいが、有権者には関係ない話ですよね?
事実として、いやこの場合は可能性として、分裂ありうると思えたから、毎日新聞という『天下の公器』に書いたわけでしょう?この人には、職業人としての気概より、大平さんとの[*はたして大平さんが岩見をどこまで信じているか、愛しているかは、このコラム程度では判別は無理であろう。政治家をそんなに無邪気に信じられる岩見のイノセントぶりに吹き出してしまった。]信頼関係に後ろ髪をひかれてしまうって、何だかなあ(笑)。
ラストの段落は、何だかブラックジョークにすら思えました。
<良好>への双方の理解と努力がないと、政治社会は劣化するだって!劣化に拍車を駆けた張本人の御発言だけに重いですねえ(笑)。
それで思い出しました。この男と同世代だった他者の今は亡き政治記者の思い出話を…。
「中曽根さんと福田さん、まあ、なんと手回しがよいことか!こちとらが群馬に記者仲間と仕事に行ったら、宿屋の情報を探って日本酒を贈ってきやがった。さすがに怖くなって、そっくり贈り返してやったよ(笑)」
「政治記者は政界記者になってはならんと、丸山さんが指摘されたことが、やっぱり心に刺さっている。曲がりなりにもそうならんように心掛けたいと思っています」
これを誰かとは敢えて書きません。かつては岩見とも『積極的護憲論』というテーマで物申していた方でありました。
岩見を未だに商品として活用するのは毎日の悪癖です!!
何のための秘密保護法案反対キャンペーンか?壊憲派、徴兵制度を『いいじゃないか』と言ってのける老害は毎日の士気を下げるのでは?
岩見の影響力がいかほどなのかはわからないですが、毎日上層部の本心を糾したいですね(笑)。
ただ、何故だが彼の顔の左隣にある、79歳のおばあさんの投書が岩見の毒消しになっていたのが救いでした。
ほぼ同世代のこの女性と岩見の根本的な違いは、知的想像力の有無です。
『遠きを見聞し、近くを見抜く』かな?
佐高信さんに『筆刀両断』して欲しいところ。

投稿: 暇 | 2013年11月 2日 (土) 09時36分

暇 さま
いつもの快刀乱麻のコメントありがとうございました。鋭い切り込み、ただものじゃあないな(笑)。

同じ記事を読みましたが、彼よりちょっと年上の塾頭、これはちょっと岩見、危ないな、と感じました。

総理級の政治家誰だれをよく知っている、彼とはこういう信頼関係がある、ツーカーの友達つきあいをした、などなどを自慢話にするようでは先が知れています。

そんな自慢話に関心のない他人がどう反応するのか、同じようなことをくどくど繰りかえすことも意に介しない。

毎日新聞にどういう意図があったにしても、老人酷使です。紙面からはお引き取りねがったほうがよさそうです。

投稿: ましま | 2013年11月 2日 (土) 10時29分

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