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2013年5月 9日 (木)

沖縄も中国の領土

 「琉球に領有権があり議論に乗せるべきだ」という中国の主張が、事実上中国の国営紙である「人民日報」に学者の論文として掲載された。毎日新聞の8面に時事電としてベタで載っている(9日付、東京朝刊)。この主張は、尖閣を自国領土とする中国の論理を延長すれば必ず出てくる結論で、当塾では去年の9月30日、「核心的利益、反日、暴走」でこのことを予想した。

 その結論部分を「人民網」日本語版で紹介する。

馬関条約が締結され、清政府に琉球復興の力はなく、台湾及びその附属諸島(釣魚島諸島を含む)、澎湖諸島、琉球が日本に奪い去られた。だが1941年に中国政府は対日宣戦し、馬関条約を破棄した。その後、日本の天皇はカイロ宣言とポツダム宣言の日本の戦後処理に関する規定を受諾した。これらの規定に基づき、台湾及びその附属諸島、澎湖諸島が中国に復帰するのみならず、歴史上懸案のまま未解決だった琉球問題も再議できる時が到来したのである。

 馬関条約とは、日清戦争終結で行われた下関条約のことである。これが暴論であることは、朝鮮を中国領と主張するのと同じで、国際法上もとても理解が得られるものでない。つまり、日清戦争で日本に負けた怨念は台湾奪還だけでは不十分で、清・明の時代の冊封体勢に引き戻そうという、大国主義・覇権主義が台頭しているということである。

 こういった領土拡張の欲望は、軍部や権勢欲の強い政治家のもとで、相手が弱いと見ると次々に繰り出される。それは、かつての日本を見ればよくわかることである。この野望を封ずるには2つのことしかない。

 万全の自衛力整備と、国際世論を味方につけることである。そしてその裏付けとなるのは、国民の父祖から引き継いだ国土・領域は守り抜くというという強い意志である。日米同盟の集団的自衛権や核の傘が守ってくれるというのは、人のいい幻想である。

 冷戦時代なら、共産主義の防波堤という名目が建てられたが、そんな時代ではなくなっているのである。以上について、安倍を先頭とするタカ派政治家は勇ましいことを言うが何ひとつできていない。

 憲法を改正して軍隊にするとか、核武装するとか、米海兵隊に基地を貸すとか、そんなことをしなくても自衛隊で十分である。若し、専守防衛に不安があるというなら、必要最小限の装備増強をはかればそれでいい。

 日本の領土を侵略するには、膨大な人的・物的損害を覚悟しなければならないと思わせればいいのである。際限ない核武装競争や軍拡競争をしても何の国益にもならないということは、2度の大戦や冷戦を経て今や常識化している。

 さて、今回はそのようなことを言うつもりではなかったが、上記の中国の論文は、果せるかな日本発の井上清研究がその骨格をなしているようだ。中国は人民の支配する国、日本は独占資本家に支配されている国という、情緒が先行する左翼学者特有の時代物である。

 その点は、中国も「歴史認識」がいかにあやふやであるかということに通じているのだが、日本の政治家がそれに輪をかけたような有様で、まともな、世界を納得させるような反論ができていない。

 川口順子解任騒ぎを一つとっても、日本国民の領土保全や隣善外交への関心と、国際世論へのアピールが不足していることを痛感せざるを得ない。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

昔から『喧嘩と結納は倍返し』と相場が決まっています。
昨今の深刻な尖閣の騒動ですが、
これは明らかに安倍晋三や前原誠司など日本側のネオコン勢力の妄動が原因しています。
中国としては、売られた喧嘩を買ってるつもりなのでしょうが真面目な一般市民は大迷惑。
この話は100年以上前の昔の話を蒸し返しているのですが、例えるなら定年を過ぎた熟年夫婦の喧嘩で、何十年も前の婚約時代の浮気話を蒸し返すようなもの。
その話が問題になったのは事実ではあり、嘘では無いが、遥か昔に決着がついている終わった話なのです。
この問題で、4月9日米国務省のベントレル副報道官代行は、
『米国は沖縄における日本の主権を承認している』と述べ、人民日報の主張を一蹴した、と毎日が報道しているのですが、
ところが同じベントレル副報道官代行は、『尖閣諸島の主権問題については特定の立場を取らない』と述べたとあります。
完全に前後が矛盾する。
前半部分が正しいならアメリカは中立ではなくて日本支持なのですが、
アメリカ国務省としては暗に『尖閣諸島は沖縄には含まれない』と示唆していると解釈するべきでしょう。

投稿: 宗純 | 2013年5月10日 (金) 15時47分

どうもこの問題は、前原がどうの安倍首相がどうのという些細な問題すではないような気がします。彼らが表から退いても中国はそう簡単に態度を変えないと思います。

やはり「党」の基盤建て直しと強化だと思います。そもそも人民解放軍の敵は当初蒋介石でした。しかし農民の組織だけでは勝てない、そこで反日・抗日を旗印に学生やインテリを呼び込み人民戦線として再編強化に成功した、

毛沢東や鄧小平など軍出身者が実権を握っている時は問題なかったのに、胡錦濤や習近平では統制がうまくいかない。そこで伝統的モットーに里帰りして難関を乗り越えようとしているように見えます。

投稿: ましま | 2013年5月10日 (金) 20時23分

塾頭様の中国脅威論には、やはりどうも腑に落ちない所があるように思います。

塾頭様の中国国内情勢の分析に関しては「なるほど」と勉強になるのですが、中国は今や世界の政治大国で、例えばアフリカの資源競争に割り込むかと思えば上海協力機構がらみでアフガンやイスラエル・パレスチナの紛争にも関与したりと、良くも悪くも八面六臂の活躍と聞き及びます。たかが対日関係、尖閣問題ごときで、軍事的に不利な現状で今の国際的地位を揺るがすような冒険に出るようには、やはり私には思えません。仮に日本を本気で締め上げるなら、手段は他にいくらでもあるのですから。先日来塾頭様が指摘されている中国の強硬派と戦前の日本軍部との比較は、少なくとも当時と今の国際情勢を考え合わせる限り、ちょっと飛躍に過ぎるように思います。

そういうわけで私も今の日中間の齟齬の直接の原因は日本側の無用な強硬策にあり、その背景としての歴史修正主義の蔓延にあると考えています。そもそも中国と全く政体の異なる韓国とも関係が悪化しているのですから。欧米メディアに久々「日本警戒論」が復活しつつあるのも、中国や韓国の工作のせいなどとタカを括って済む話ではないように思います。

>彼らが表から退いても中国はそう簡単に態度を変えないと思います
果たしてそうでしょうか?安倍氏やそれに通じる修正主義的な政治勢力が退潮して、例えば鳩山政権ぐらいの穏健派が本格的に巻き返すことができれば、それだけで随分情勢打開の可能性が開けると私は考えますが・・・(まあ、そんな可能性は残念ながらほぼ絶望的でしょうけれど)。

投稿: ちどり | 2013年5月11日 (土) 01時01分

ちどり さま
コメントありがとうございました。

ご返事になるかどうかわかりませんが、中国の内情は全く霧の中で、「これが真相」といったものはないとと思います。

それから対外的に表れる現象や公式声明などは、一つの理由・原因によるものでなく、権力機構内部の複数以上の要素が重なり合って出てくるものと思われます。

日本以外への拡大外交は、やはり本文で書いているように大国主義・覇権主義の一環で欧米にとって代わろうということでしょう。

コメントで中国内部の権力構造のことを書いたのは、中国共産党史関連の図書から類推したもので、これも理由のひとつとして書き足したものです。

なお、前原など日本の政治家の品定めはするでしょうが、個々にそんなに(独裁的な)力があると見ていません。尖閣国有化もそうですが、「些細な問題」で揺さぶりをかけるというテクニックだと思います。ただ、日本の政治家の「歴史認識」とくに「侵略」の否定などは、日本国民としても許しがたいことで、当塾で日頃述べているとおりです。

最後に、日本のかつての軍部・官僚との比較ですが、「本当にそうなると誰も思っていなかったのに、強がりをいっていたつもりがだんだんその方向へ行ってしまった」という、開戦の動機、これは他でもよく見られる現象です。また大陸へ侵略拡大も中央の意図に反し、事後承認であったことがいくつか知れらています。

投稿: ましま | 2013年5月11日 (土) 08時15分

前原誠司や安倍晋三個人の話ではなくて、これらの日本版ネオコンに引きずられた結果、日本国の病的に右傾化しているのです。
ここが一番の問題点でしょう。
このブログ記事ですが、現在の日本では大手マスコミの社説の論調と瓜二つで、それほど違いがない。
もっと言えば今の日本では自民党から共産党までこのブログ記事の論調と同じであり少しも違いがない。
有り得ない話ですが、今の日本は挙国一致の大政翼賛状態なのです。
それほどまでに日本の右傾化は進行してしまっているのですから恐ろしい。
何度も言っていることですが、尖閣は日中双方が棚上げで合意していたのは、間違いようのない事実ですよ。
尖閣(沖縄)の施政権の一部放棄を隠し続ける政府・マスコミの罪
2013年04月05日 | 軍事、外交
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/fd44124d5ab7e39896763f8c9ac03274
日本が一方的に条約を破棄すれば相手の国が反発するのは当然なことですよ。
ましてや今回の場合には、条約はそのまま存在しているのに、日本が一方的に無視しているのですから、中国が怒るのは当然です。

投稿: 宗純 | 2013年5月12日 (日) 15時27分

宗純 さま
前にも言ったことがあると思いますが、主張していることは、かつて海底資源開発に関与したことがあり、日中・日韓の歴史を古代から追ってきた塾頭のオリジナルです。

大政翼賛会だとか病的右傾化などという決めつけは、まっとうな議論を封殺するだけで無益だと思います。
日本が一方的に条約を破棄したという宗純さまの意見は何条約でしょうか。

もし漁業権のことなら、これは領海の線引きと別の問題で分けて考えなくてはなりません。中国の主張を見ても漁業権には一切触れていません。

あくまでも、領土・領海の問題です。「棚上げ論」は解釈次第でどうにもとれる問題で、話し合いにより双方で解決できないことではありません。

投稿: ましま | 2013年5月12日 (日) 19時05分

ましまさん、不真面目ですよ。
日本の病的なテレビや新聞報道を完璧に無視しています。
騒動になっているのは、沖縄の主権云々ではなくて、
マスコミが大騒動していたのは中国漁船衝突事件であり、
あくまで尖閣諸島での中国船の操業問題だったのですよ。
明確すぎるこの事実を頭から否定されたのでは話にもなりません。
国際的な条約がある限りは日本領海で操業していても中国船が拿捕出来ない海上保安庁は、無理筋の衝突事件であると別件逮捕の転び公妨をでっち上げた。
今回の騒動はあくまで尖閣の騒動で引き起こされている事実は否定出来ないはずです。
この話では、出発点である小渕書簡を白紙撤回にしない限りは日本側に勝目がない。
ところが、日本側は政府やマスコミが一体となって隠蔽して『無かった事』にしているだけ。
小渕書簡の隠蔽に、何と本来ならブレーキ役の共産党など野党間でが参加する挙国一致の大政翼賛が出来上がっている。
日本の右傾化も、ここに極まれりである。

投稿: 宗純 | 2013年5月13日 (月) 09時37分

海上保安庁が領海内で不審船を発見、領海外への退去を求めたところ体当たりをしてきた。これを公務執行妨害として逮捕するのは筋として通っています。

漁業にたずさわっていたから逮捕したわけではありません。これも明々白々の事実です。

今の日中問題はそんな次元をとっくに超えています。

投稿: ましま | 2013年5月13日 (月) 10時36分

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