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2013年5月21日 (火)

中国とのつきあい方 2

 前回、『礼記』の句が意識されて、いわゆる「尖閣棚上げ」の鄧小平論が出てきたのではないかと書いた。しかし、そのヒントとなった前掲書『対談・中国を考える』では、司馬遼太郎がそういった想像に、冷水をあびせかける。
 
 これを、解説者・山内昌之の表現を借りると次のようになる。

 司馬遼太郎は、漢文的世界の中国と現実の中国は別物たと述べている。これは、自分の頭の中に存在する漢詩や漢文でイメージされる世界が、生きた政治や外交の舞台である現実の中国とは同一でないということだ。

 司馬は1978年、25年前に「中国もしくは中国人とはなにか、ということは、21世紀に近づくにつれ、人類の切実な課題になってくるにちがいない」と予言している。そして、どんな観察、事例を積み重ねようと「一個の概念化を遂げることは至難」であるとし、「結局、中国は謎であるという一種の定説のとおり」と投げ出してしまう。

 しかし徒労であっても、やらざるをえないとして始まったのが、前掲書の陳舜臣との座談である。そこで、司馬は、日本ならびに日本人は「普遍性を身につけることが大事」だという。これはまた難解である。

 この「普遍性」とは何ぞや。文才のない塾頭には、具体例がないと分からない。しかし、前後の文脈を通して感ずることは、言葉の意味は違うが「島国根性」「ひとりよがり」「希望的、または悲観的観測」そして「閉鎖的」であってはならない、ということのようにとれるのである。

 対談中、結論めいたことばが次のようにでてくる。

  日本人を救う方法は普遍性を知ることであって、普遍性を知る手近な方法は中国を知ることかも知れない。アメリカやフランスも普遍性は多分にあるわけですね。ところが、アメリカ、フランスという文化で眩惑されてしまって、普遍性がよくわからなくなる。それよりも中国の庶民を見てたら、それでいい。インテリを見ずにね。それが日本人には永久にわからないかもしけないけれど、これがわからなかったら、日本は自滅するな。

 そういえば、日本国憲法前文には「普遍」のことばが、2度でてくる。

  その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
 
  自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。

 ちなみに、自民党改憲案からは「普遍」のことばが一切排除されている。「普遍」の反対語は「特殊」である。自民党案は、普遍ではなくより特殊な国にしようとしていることが、歴然としてくるのである。司馬のいう「自滅」の道をたどらないようにする決意を、より強くするものである。
 

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コメント

司馬遼太郎という売文家の言葉を借りて偉そうに公設を垂れるのは愚かな行為だとは思わないのですか?

投稿: ken | 2013年5月24日 (金) 14時49分

評価していただいたものと理解します。

投稿: ましま | 2013年5月24日 (金) 20時17分

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